神聖なものとして「清め」にも使われる塩!普段、何気なく使っている身近な調味料として欠かせない「塩」ですが、知っているようで知らないのが「塩」ではないでしょうか。
生きていくために空気や水とともになくてはならない代替品のないミネラルであり、身体にとって、多すぎても少なすぎてもいけないのが塩です。また、塩は料理の味を決める!といっても過言ではない調味料です。塩は栄養的にも味覚的にも、かけがえのない食品です。
そこで今回は、調味料ソムリエのMICHIKOさんに、美味しい塩を選ぶポイントを解説していただき、合わせておすすめの商品をご紹介します。ぜひ、参考にしてください。
1.本来の塩の味とは?
1-1.塩は「塩味」・「酸味」・「苦味」を感じる
「塩って、どれも同じ、しょっぱいだけじゃない!」って思っていませんか。もちろん、塩はしょっぱいですが、それだけではありません。塩には、塩味だけでなく、酸味や苦味など多くの味わいがあるのをご存知でしょうか。塩の味わいは、塩に含まれる成分(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等)の含有量や製造方法の違いによって味わいが異なってきます。
例えば、塩化ナトリウムの量が多く含まれているとしょっぱく感じ、少ないとミネラル類の複雑な味わいが感じられます。また、カルシウムは、酸味を生み出し、マグネシウムは苦味を演出します。
1-2.塩は精製方法で味が変わる
食塩(精製塩)は、海水から作られ、ミネラル分やニガリがほとんど取り除かれた、塩化ナトリウムが99%以上で塩味を強く感じられます。海水から作られる平釜塩は、塩化ナトリウムの含有量が精製塩などより低く、ミネラルが豊富で、複雑でまろやかな味わいです。
岩塩は、数万年かけて結晶したもので、純粋な塩化ナトリウムに近いです。なかなか溶けにくいことが独特の味につながっています。色のついた岩塩は、なかに含まれている鉱物で色が決まります。
2.カラダのなかでの塩の大切な働きとは?
2-1.カラダのなかでの塩の働き
塩は、私たちの体内のいろいろなシステムの働きを守り、維持してくれます。身体の水分量を一定にしたり、味覚や食欲を正常に保ってくれるなど、多くの仕事をしてくれます。
- 胃の中で消化を助けてくれます。
- 小腸で栄養素の分解と吸収を助けてくれます。
- 味や温度といった刺激を脳に伝えたり、脳からの命令を筋肉に伝えます。
- 筋肉の収縮や神経細胞の情報伝達の働きをしてくれます。
- 細胞の外と中の体液の濃さを一定にし、細胞を健康に保ってくれます。
- 腎臓では体内の塩分を調整して、体液を一定の濃さにしてくれます。
2-2.塩不足が招くこと
私たちの整体機能を正常な状態で維持するために、塩はなくてはならない大切なものです。塩が不足してしまうと、免疫力は簡単に低下しやすく、立ちくらみを起こしたり、眠さやだるさを感じたり、身体のあちこちが支障をきたし動かなくなってしまう、といわれています。塩の摂取は不足しすぎても、取り過ぎても身体に良い影響はありません。塩の摂取は「適量」を心がけましょう。
3.調味料ソムリエプロがおすすめ「塩」3選
(1)「天日海塩 土佐の塩丸」(有限会社ソルティープ)
高知県土佐、鰹の一本釣りで有名な漁師町で、海水を太陽と風の力と人の手だけで結晶化させてできる天日塩です。ご両親が作り続けてきた天日塩「土佐の塩丸」から、息子さんが「二代目 土佐の塩」を誕生させました。海水をくみ上げ、ネットタワーの上から繰り返し流し、風で水分を蒸発させて濃い海水を作り、それを結晶ハウスに移し、さらに太陽熱で水分を蒸発させながら、日中60℃にまで上昇するなかで、毎日塩の感触を手で感じながら撹拌を繰り返します。
塩になるまで夏場で約1ヵ月、冬場で2ヵ月以上かけて出来上がります。天日海塩は火を使った炊き上げなどは一切しないためじっくりと結晶化することで海水中の約80種類のミネラルがそのまま含まれます。色は真っ白ではなく、少し黄味がかった素朴な色、味はしょっぱいだけでなく、旨味のある、まろやかなでさわやかな自然の甘さがあります。
生野菜に振りかけたり、ステーキや焼魚の振り塩、おにぎりや卵かけご飯など、シンプルな料理がよく合います。ひと粒、ほお張れば、潮風と太陽の香りがしてくるような手間暇をかけた作り手の愛情が感じられる塩です。
- 【「天日海塩 土佐の塩丸」を使ったおすすめレシピ】
- ★豚肉とアボカドのミルフィーユ仕立て
- 豚肉にアボカドとバジルの葉をプラス!天日海塩の美味しさを味わえる一品!
- 【材料】(2人分)
- 豚肉ロース薄切り(生姜焼き用) 6枚(200g)、アボカド 1個、レモン汁 小さじ1、バジルの葉、ミニトマト 各適量、オリーブ油 小さじ2、天日海塩 土佐の塩丸 適量、
- 【作り方】
- 1)アボカドは種と皮を取り除き、ざく切りにする。
- 2)レモン汁と土佐の塩丸(ひとつまみ)を加えて、スプーンの背などでつぶす。
- 3)フライパンにオリーブ油を熱して、豚肉ロース薄切肉をじっくり両面焼く。
- 4)焼いた豚肉の上に2)をぬり、バジルの葉をはさんで、2層に積み重ねる。
- 5)ミニトマトを飾り、土佐の塩丸を振りかける。
- お好みで黄色パプリカとアスパラガスをサッと炒めて、添える。
(2)「Framboise Salt」(ENNES株式会社)
無添加の果実をオーガニックソルトでコーティングしたフルーツソルト。濃い目のピンク色、料理のトッピングとして食卓をおしゃれに彩ります。
(3)「白トリュフソルト」(ジャパンソルト株式会社)
イタリア産の白トリュフと、フランス産の天然塩を使用しています。食卓に華やかなトリュフの香りが広がります。肉料理の振り塩、カルボナーラ、おにぎりの塩としても。
4.塩の使い方のポイントとは?
4-1. 料理上手は「塩の使い方が上手?」
料理の決め手となるのがほどよい塩加減ですが、“ほどよい”って何を目安にすれば、いいのでしょうか。そのカギとなるのが人の血液の塩分濃度です。私たちが「美味しい」と感じる塩分濃度は、血液の塩分濃度と同程度の0.9%に近いといわれています。有名料理店のお吸い物や料理も同じ塩分濃度だそうです。塩は適度に使えば素材の旨みを引き出して美味しくしてくれますが、多すぎるとどんなに美味しいものでも食べられなくなってしまいます。塩の入れすぎに気をつけましょう。
4-2.塩は「計る」
料理のレシピには“小さじ1”とか、よく書かれていますが、どんな塩を使っていますか。塩の種類や粒の大きさ、サラサラ度合いによって量(カサ)が変わり、同じひとつまみでも塩分量が変わり、塩味の効き目も変わってきます。毎日の料理に使う塩の選び方一つで、毎日の料理で自然に減塩していくこともできます。しっかり計量してから使いましょう。
- サラサラした塩(精製塩 食塩等) 小さじ1=約5~6g
- にがりを含むしっとりした塩(海水塩等) 小さじ1=約4~5g
- 粉雪のような塩(パウダー塩等) 小さじ1=約2~3g
5.忘れてはならない適塩・減塩の大切とは?
食塩摂取を控えることは健康維持に欠かせません。「健康寿命=本来の長寿」を先に延ばすことはとても大切なことです。和食は、ヘルシーでバランスが良いといわれる一方で、私たちは知らず知らずのうちに、日常の食事からたくさんの塩分をとっています。塩分のとり過ぎは、健康に影響をおよぼす可能性があるので、とり過ぎは控えて、適切な量をとるようにしましょう。
厚生労働省(日本人の食事摂取基準2020年版)が推奨するが推奨している日本人の目標値1日あたりの摂取目標量は、男性が7.5g/日未満、女性6.5g/日未満です。また、日本高血圧学会では高血圧患者の減塩目標は、「男女とも6g/日未満」として示されています。小さじ1杯くらいが1日あたりの目標数値といえるでしょう。
一方で、厚生労働省(「国民健康・栄養調査」(平成30年度))によると、日本人の食塩摂取量は1日あたり男性11.0g、女性9.3g、平均10.1gとなっており、摂取目標値を超えていることが分かります。
また年代別において、最も食塩摂取量が多い年代は、男女ともに60代という結果が出ています。ぜひ、意識的に食塩取らないこと「減塩」を意識していく必要があることが分かるでしょう。
5-1.減塩のコツ
食の楽しみを損なわずに、塩分量を調整していきましょう。
・薄味に慣れる
少しずつ薄味に慣れていき、野菜などの素材そのものの味を生かした料理を楽しみましょう。新鮮な食材を選んだり、調理の方法等で塩分控えめでも美味しい食事を作ることができます。
・カリウムを含んだ食材と一緒に食べる
カリウムはエネルギーや体力を高めたり、体のナトリウム(塩分)量を調整し、余分なナトリウムを体外に排出する働きがあります。生活習慣病の改善も期待されています。カリウムを含む食材として、野菜(青菜類、アボカド、トマト)や海草類(わかめ)、いも類(里芋、長芋)、キノコ類(エリンギ)、リンゴやバナナなどの果物に多く含まれています。
5-2.減塩のために使いたい食材
旨みや味わいを上手に活かすことで、塩分が少なくても満足できる味わいに仕上げることができます。
旨みが多く含まれるだし(かつお節、昆布、干し椎茸等)、酸味(レモンなどの柑橘類や酢等)、薬味(ネギ、ニンニク、ショウガ、青じそ等)、ハーブ(パセリ、バジル、ローズマリー等)、スパイス(唐辛子、胡椒、カレー粉等)、オイル(胡麻油、えごま油等)、旨みの多い食品(のり、トマト、しめじ、白菜、あさり、卵、ブロッコリー等)を活用しましょう。
5-3.食事の摂り方にも「ひと工夫」を取り入れる
毎日の食事のちょっとした心遣いが減塩につながります。
- 醤油やソースなどは料理にそのままかけずに、小皿に取り、つけて食べる。
- 料理・菓子類などは、小皿にとり、食べる量を把握する。
- 味噌汁は野菜などを入れて具沢山にし、汁気を減らす。
- 汁物、ラーメンのスープなどは飲み干さない。
- 市販食品についている調味料やタレ等の分量に気を配る。
- 例)納豆のタレ、サラダのドレッシングなどは、1╱2か1╱3を使用する。
- 市販の惣菜などを使うときは、一品を意識して加える。
- 例)揚げ物(唐揚げ)系は野菜(カット野菜でも)を加えて、電子レンジ等で加熱調理する。
- 例)パスタソース系は野菜やキノコをたっぷり加える。
- 例)牛丼の素系は豆腐を加えて肉豆腐等にアレンジする。
5-4. 毎日の食事を見直す
適塩には多様な味を生かしたバランス食をおすすめします。また、規則正しい食事時間を守り、腹7~8分目、食べ過ぎないように気を付けましょう。
新鮮な野菜や果物はそれだけで美味しいものです。腸内環境を改善したり、食材のもつ栄養素(ミネラル)が豊富な発酵食品(納豆等)や食物繊維を多く含む食材を積極的に食べましょう。乾物類やナッツ類、ドライフルーツ等もおすすめです。また、白米だけよりも、五穀米や十穀米などの雑穀米をブレンドすると、栄養も豊富でかみ応えがあり、食べた感があります。
美味しい塩分濃度を守り、毎日の塩分摂取量を減らすように心掛けましょう。「塩」を上手に使いこなして、美味しさと健康と美を手に入れましょう。