ぐっすり眠れない、イライラする、生理痛が重いなどの不調を感じていたら、それは自律神経が乱れているからかもしれません。実は自律神経と女性ホルモンは、脳の視床下部がコントロールするので、互いに密接に関わっています。まずは基本的な生活習慣を見直すことで自律神経を整え、快適なライフスタイルを送りましょう。
そもそも女性ホルモンとは?
女性ホルモンは、女性らしい身体をつくり上げる作用がある他、妊娠する能力を築く働きを持っています。人体の臓器の働きを調整するホルモンは全部で40種類以上ありますが、その中で女性ホルモンと呼ばれるのは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類です。
エストロゲンは女性美をつくるホルモンです。肌の新陳代謝を高める、髪のツヤを保つなどの美容面だけでなく、血管の弾力を保つ抗動脈硬化作用もあります。さらに脂質代謝を良くする作用や、骨の破壊を抑えて骨の形成を助けることにも役立っています。排卵の準備をするホルモンで、生理の終わりごろから排卵前にかけて分泌が高まります。
プロゲステロンは妊娠を維持するホルモンです。受精卵を守ったり、その着床や発育を手助けしたりと妊娠維持のために良い環境をつくるのが役割です。排卵後に分泌され、排卵を抑制する働きがあります。
男性にも女性ホルモンがあるの?
男性にあるのが男性ホルモンで女性にあるのが女性ホルモンというイメージを持つ方が多いですが、実は男性の体内でも女性ホルモンがつくられますし、女性の体内でも男性ホルモンがつくられます。では男性の身体のどこで女性ホルモンが作られているのかというと、まずは精巣と副腎で男性ホルモンがつくられ、その男性ホルモンから酵素によって女性ホルモンがつくられています。男性の女性ホルモン量は、女性のおよそ半分程度といわれています。
女性ホルモンが多いとどうなるの?
女性ホルモン分泌量は、正常であれば一定の範囲で保たれています。多い・少ないではなく、バランス良く分泌されているか、ということが大切です。ところが正常な範囲を超えて過剰に分泌されると、心と身体にさまざまな不調をもたらします。具体的には、PMSや生理痛の悪化、皮下脂肪の増加、不安やイライラ、疲労感を感じやすくなるなどの症状に加えて、乳がんや子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がんなどのリスクも高まります。
女性ホルモンが少ないとどうなるの?
女性ホルモンが少ないと、頭痛やめまい、肌のくすみ、抜け毛などのほか、無気力感やイライラ、気分の落ち込みなどメンタル的な不調も引き起こします。さらには生理不順や無月経などの月経異常や、子宮の病気につながる場合もあります。原因としては、精神面でのストレスや急激な体重の増減、喫煙、過度な運動などが考えられます。喫煙をしている女性は、平均して閉経が2年ほど早くなってしまうという報告もあります。
本来卵巣には女性ホルモンの分泌量を脳にフィードバックする働きがあり、脳は女性ホルモンが多い時は分泌を抑え、少ない時は多く分泌させるなど、必要に応じて視床下部に指令を出します。ところが司令塔である視床下部はストレスの影響を受けやすく、これが働かなくなると、生理の状態や体調にも影響が出てしまいます。
女性ホルモンと自律神経は互いに影響し合っています
自律神経とは、内臓や代謝、体温といった身体の機能を自分の意思とは無関係に24時間コントロールする神経のことです。活動時に活発になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経に分かれ、日々バランスを取りながら心と身体を支えています。
女性ホルモンの分泌を司る脳の視床下部は自律神経の中枢でもあるため、自律神経と女性ホルモンのどちらかのバランスが崩れると、もう一方のバランスも乱れやすくなります。例えば、生理によりエストロゲンの分泌量が大きく増減すると自律神経のバランスも崩れやすくなりますし、自律神経が乱れると女性ホルモンのバランスに影響し、生理不順やPMSなどの不調を引き起こします。また20代や30代などで閉経する「若年性更年期障害」は、女性ホルモンの減少により起こる更年期障害と異なり、ストレスや過労、無理なダイエットにより自律神経と女性ホルモンが乱れることで起こるといわれています。
自律神経の乱れは不眠につながることも
眠る時には通常、リラックスする副交感神経が働きます。しかしながら、交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行われないと、睡眠時に交感神経が働いてしまいます。交感神経が働いていると体温が下がらず、「睡眠ホルモン」と呼ばれる「メラトニン」の分泌が不足してしまいます。メラトニンは脳から分泌され、体内時計に働きかけることで覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があります。
セロトニンとメラトニンの関係
睡眠に導くホルモン、メラトニンをつくるには、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」が必要です。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させる、ストレス耐性を上げる他、体内時計や睡眠を調整する機能が備わっています。このセロトニンは、朝から分泌され始め、日が沈むに従ってメラトニンに変化していきます。メラトニンは睡眠の質を左右するので、セロトニンを増やすことこそが、メラトニンを増やすことにつながり、睡眠の質を高めてくれるのです。
セロトニンへと変化する「トリプトファン」とは?
セロトニンを増やすためには、まず日光を浴びる必要があります。日光を15~30分程度浴びることでセロトニンが産生され、夜更かしをして朝起きるのが遅いと体内時計が崩れ、セロトニン産生量はかなり少なくなってしまいます。そうなるとメラトニン量も足りなくなり、睡眠の質が下がってしまいます。
またセロトニンを増やすには、「トリプトファン」という必須アミノ酸も欠かせません。セロトニンへと変化するトリプトファンは体内でつくることができず、食事やサプリメントで摂取する必要があります。また食事で摂ったトリプトファンをセロトニンとして分泌するためには適度な運動も必要になります。朝に散歩をする、トリプトファンを含む食事を摂ることが、夜の快眠につながるのです。
女性ホルモンが減ってきた際におすすめの食べ物
食べ物
まずはセロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食べ物として、豆腐や味噌、納豆などの大豆製品、チーズやヨーグルトなどの乳製品、穀類、卵などが挙げられます。日本人がよく朝に食べる、豆腐のお味噌汁にごはん、納豆、卵焼きというのは理想的な食事です。特に大豆製品には、女性ホルモンと似た働きをする「大豆イソフラボン」が含まれているので、女性ホルモンが急激に減る更年期のゆらぎを整えるのにとても有効です。
エストロゲンの合成に関わっている「鉄」も積極的に摂りたい栄養素です。エストロゲンは自律神経を整える役割もあり、不足すると精神面でバランスを崩しやすく、妊娠しにくくなるなどのリスクもあります。鉄が豊富に含まれているのは、レバー、カツオ、イワシ、小松菜、ホウレン草などです。
女性ホルモンが減ることで気分の浮き沈みやイライラなどの症状がありますが、「ビタミンD」には女性ホルモンの減少を補うような働きがあります。さらにビタミンDは乳がん予防や骨を強化するだけでなく、免疫を上げ、アレルギー緩和にも効果があるといわれています。イワシやサケ、ブリ、シラスなどの魚類、しいたけなどのきのこ類に多く含まれています。
また活性酸素を除去する高い抗酸化力があるビタミンCは、ホルモン生成やコラーゲン合成に大きく関わっています。副腎が最も必要とするビタミンなので、ビタミンCが不足すると、抗ストレスホルモンが充分につくられなくなります。ストレスがかかると自律神経や女性ホルモンが乱れるため、現代社会においては積極的に摂りたい栄養素です。野菜や果物、芋類に多く含まれています。
飲み物
ホルモンバランスを整えるうえでは最もおすすめしたい飲み物が豆乳です。女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンが含まれる他、エストロゲンの合成に関わる鉄分が豊富です。その他、カルシウムを豊富に含む牛乳もおすすめです。特に閉経後の女性は女性ホルモンのバランスが乱れ、骨量も減りやすくなります。骨密度の低下を防ぐためにも積極的に摂取しましょう。
女性ホルモンと自律神経を整えるセルフケア術
女性ホルモンと自律神経を整えるには、規則正しい生活習慣が基本です。特にバランスの良い食事と良質な睡眠は欠かせません。前述のような栄養素をバランス良く積極的に摂り、できるだけコンビニ食やインスタント食品は避けましょう。また質の良い睡眠をとるためには、就寝前の過ごし方が大切です。ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かり、寝る前はスマホやパソコンの使用をなるべく控え、脳を覚醒させないように心がけましょう。さらに日頃から適度は運動習慣をつける、ストレスを溜めない工夫も心がけましょう。