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廃業届とは?提出するメリット・デメリットや手続き方法について

廃業届とは?提出するメリット・デメリットや手続き方法について
セゾンのくらし大研究 編集部

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個人事業主が事業をやめる際には「廃業届」を提出しなければなりません。ただし、廃業届を提出すると個人事業主ではなくなってしまうため、廃業の意味や影響を理解したうえで決断することが大切です。

本記事では、廃業届の概要やメリット・デメリット、廃業届の提出方法などを解説します。廃業ではなく休業したい場合の方法も紹介するので、事業をやめようかどうか迷っている方は参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること

廃業届は、個人事業主が事業をやめる際に税務署に提出する書類です。廃業届の提出により、破産手続きや倒産する前に事業を終わらせることができ、関係者への被害を抑えられます。廃業届を提出する際は、個人事業税や消費税の事業廃止届など、ほかの届出も必要な場合があるので、忘れずに提出しましょう。廃業だけにとらわれず、休業やM&Aといった手段を検討することも有効です。

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そもそも廃業とはどういうことなのか?

そもそも廃業とはどういうことなのか?

まずは廃業や廃業届の概要、破産との違いなどについて解説します。

廃業について

廃業とは、個人事業者や法人が、自らの意思で事業や法人格を消滅させることです。廃業の理由はさまざまですが、例えば以下のような例が挙げられます。

  • 法人化(法人成り)する
  • 事業の後継者がいない
  • 経営不振
  • 会社員として就職する

廃業届とは個人事業主が廃業するために必要なもの

廃業届とは、個人事業主が廃業する際に税務署に届け出る書類です。廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業主が開業届を提出する際とまったく同じ書類です。なお開業届と同様、廃業届の提出にあたって費用は発生しません。廃業届の書き方は「廃業届の書き方を紹介」で解説しますが、非常にシンプルです。

一方で、法人が廃業する際は「解散登記」や「清算結了登記」など、さまざまな手続きが必要になり、登記には費用もかかります。

廃業と破産の違いとは

廃業は、あくまで自己の判断で事業をやめることをいいます。一方で、破産は経営状態が悪化して、事業継続が難しくなることです。前述のとおり廃業の理由はさまざまで、法人化など前向きな理由もあります。必ずしも破産や業績悪化とセットということではありません。

廃業届の提出時期

個人事業主が廃業する場合、廃業から1ヵ月以内に廃業届を提出する必要があります。廃業のタイミングを選べるのであれば、届出が必要になる時期を逆算して廃業日を決めるのも一案です。

例えば廃業の理由が法人化(法人成り)なら、会社設立日までに廃業届を出しておくと良いでしょう。また、個人事業を廃業して小規模企業共済の共済金を受け取りたい場合は、廃業届の写しが必要になるので、共済金を請求するタイミングに合わせる方法もあります。

廃業届を出さなかったらどうなる?

廃業届は、個人事業主が事業を辞めた事実を税務署に知らせるための手続きでもあります。そのため、廃業したにもかかわらず廃業届を出さないでいると、税務署からは事業を継続しているとみなされます。

廃業して事業所得が発生していなければ、確定申告しなくて良いと思う方もいるかもしれませんが、税務署は廃業の事実を知らないため「無申告」を疑われる可能性があります。不要なトラブルを招かないためにも、個人事業を廃業したら忘れずに廃業届を提出しましょう。

廃業届を提出するメリットとデメリット

廃業届の提出には、次のようなメリット・デメリットが存在します。それぞれチェックしていきましょう。

メリット

廃業届を提出するメリットには、以下のものがあります。

  • 破産手続きを回避できる
  • 倒産するより関係者に迷惑がかからない

廃業届は、経営状況が悪化する前に事業を終わらせる有効な手段です。債務が膨らんで支払えなくなると、債権者や自らが裁判所に申し立てることで破産手続きが行われます。しかし早めに廃業届を出すことでそのような事態の回避が可能です。

また、倒産すると取引先にも大きな迷惑がかかります。そのため廃業届の提出は、取引先の損害を抑えるメリットもあります。

デメリット

廃業届を提出するデメリットには、以下のものがあります。

  • 個人事業主としての事業が継続できなくなる
  • 資産売却の際に在庫などの商品価値が大きく下がる可能性がある
  • 取引先も廃業するリスクがある

廃業届を出すことで、これまで営んできた個人事業が続けられなくなるのは大きなデメリットでしょう。廃業の理由によっては、経営者の社会的な印象に悪影響が出る可能性もあります。

また、廃業にあたって、在庫や設備の処分費用、事業所や店舗の原状回復費用などの金銭的負担もかかります。本来は資産価値がある在庫でも、急いで売却しようとすると低い売却価格で手放すことになるかもしれません。

廃業することで取引先の売上が落ちてしまう場合は、その取引先も連鎖して廃業に追い込まれるリスクもあります。

廃業届の提出方法や必要書類

廃業届の提出方法や必要書類

ここでは、廃業届の提出方法や必要な書類を紹介します。スムーズに手続きを進められるようチェックしておきましょう。

廃業届の提出先や提出方法

廃業届は納税地を管轄している税務署に提出する必要があります。開業届を提出する際も納税地を管轄している税務署に提出しているはずなので、事業所が変わっていなければ基本的に同じ税務署へ提出することになります。

提出方法は該当の税務署への持参と郵送の2つがあります。またe-Taxでの提出も可能です。

廃業届提出時に必要な書類とは

廃業届を提出する際は、以下の書類も忘れずに提出しましょう。

 個人事業税の事業廃止届出書

個人事業を営んでいる都道府県によっては、個人事業税の事業廃止届出書を提出しなければならないところもあります。例えば東京都で廃業する場合は、事業の廃止した日から10日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を所管の都税事務所等に提出する必要があります。自治体によって書類の名称が異なるため、自治体のホームページなどで確認しましょう。

個人事業税の事業開始の届出をしていない方もいるかもしれませんが、個人事業税の納税通知書が届いている場合は、事業開始(廃止)等申告書提出が求められます。

 所得税の青色申告の取りやめ届出書

確定申告時に青色申告を選択している場合は、青色申告をやめる書類を提出する必要があります。青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までに、納税地を管轄している税務署に提出しましょう。提出方法は税務署への持参か郵送、またはe-Taxの利用です。

 給与支払事務所等の廃止届出書

事業専従者として働いている家族や従業員に給与を支払っている場合は、給与支払事務所等の廃止届出書も提出する必要があります。廃業した日から1ヵ月以内に、給与を支払っている事務所所在地の所轄税務署に届け出ましょう。

提出方法は、税務署への持参か郵送、またはe-Taxの利用となります。

 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

所得税の予定納税をしている方で、廃業によって予定納税額が多くなることが予想される場合は、本書類によって減額を申請できます。予定納税とは、前年の所得税額が原則15万円以上ある方が、所得税および復興特別所得税の一部を前もって納める制度です。

該当する方で予定納税の減額を希望する場合は、第1期分および第2期分は、その年の7月1日から7月15日まで、第2期分のみまたは特別農業所得者の減額申請は、その年の11月1日から11月15日までが提出時期です。納税地を所轄する税務署に、持参または郵送で提出しましょう。またe-Taxの利用も可能です。

 消費税の事業廃止届出書

消費税の課税事業者である個人事業者が廃業した際は、消費税の事業廃止届の提出も必要です。こちらも納税地を管轄している税務署に、持参または郵送で提出しましょう。他の書類と同様にe-Taxの利用も可能です。

廃業届の書き方を紹介

廃業届を提出する際は、以下の項目の記入が必要です。説明文を参考に必要事項を埋めましょう。

  • 職業:個人事業を営んでいた職業を記入
  • 屋号:屋号がある場合はその名称を記入
  • 廃業(事由):「廃業」にチェックを入れ、その右側の空欄に廃業の事由(法人成り、業績不振により事業の継続が困難、など)を記入
  • 所得の種類:個人事業に係る所得の種類をすべてチェック、すべての所得の種類を廃業する場合は全部をチェック、一部を廃業する場合は該当の所得の種類を記入
  • 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合:該当する場合、設立法人名、代表者名、法人納税地、設立登記日を記入
  • 開業・廃業等日:廃業日を記入
  • 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無:所得税の青色申告の取りやめ届出書、消費税の事業廃止届出書の提出がある場合は「有」にチェック
  • 給与等の支払の状況:給与を支払っている従業員や事業専従者等がいる場合は記入

参考:国税庁|個人事業主の開業・廃業等届出書

個人事業主が廃業ではなく休業したい場合は?

個人事業主が廃業ではなく休業したい場合は?

個人事業を廃業するのではなく、休業したいと考える方もいるでしょう。ここでは個人事業主が休業することについて、その考え方や対処法について解説します。

所得税は休業という概念がない

そもそも所得税には「休業」という概念がありません。そのため、廃業届や開業届はあっても、休業届というものは存在しません。一時的に休業するからといって廃業届を出すと、事業を再開する際に手間がかかるだけなので、あまりおすすめできません。

なお、個人事業を営む都道府県に納める個人事業税については、自治体によって休止届を設けているところもあります。個人事業税を納めている自治体のホームページなどで確認してみましょう。

休業で所得がない場合に注意したいこと

休業して所得がない場合には、確定申告は必要ありません。しかし青色申告をしている方で、純損失の繰越がある場合は注意が必要です。青色申告者は損益通算しても赤字(純損失)が残る場合、翌年以降3年間にわたり、赤字を繰り越して翌年以降の黒字と相殺できますが、これには毎年の確定申告が必要になるためです。

休業中で所得がない場合でも、純損失の繰越を継続したい場合は所得を0円として申告しましょう。

M&Aという手法も

廃業にしようか休業にしようか迷った際には、M&Aという方法も選択肢として有効です。M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略語で、一般的に企業の合併・買収を指しますが、個人事業でもM&Aは可能です。

独自の技術やノウハウがある個人事業なら買取ニーズがあるため、新たな事業者や経営者を見つけて売却することで利益を得られる可能性があります。M&Aで得た売却益を元手に新たな事業を立ち上げることも可能です。

補助金の利用も検討してみる

運転資金に困っている場合は、補助金の利用を検討してみましょう。株式会社や合同会社などの法人だけでなく、個人事業主も利用できる「小規模事業者持続化補助金」があります。

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が持続的な経営計画に基づいて、販路の開拓や業務効率化に取り組む際、その経費の一部を補助する制度です。

対象となる事業者の規模は、業種によって以下の通りです。

  • 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):5人以下
  • サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
  • 製造業・その他:20人以下

補助される金額は通常枠であれば最大50万円、補助率は3分の2です。なお、他に以下の枠も設定されています。

  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠

また対象になる経費は以下のとおりです。

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • WEBサイト関連費
  • 展示会等出展費
  • 旅費
  • 開発費
  • 資料購入費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

なお、補助金の利用には審査があり、誰でも利用できるわけではない点に注意が必要です。

参照元:全国商工会連合会|小規模事業者持続化補助金

廃業したのち、すぐに開業することは可能?

廃業届を提出したあとに、また開業したいと思った場合には、改めて開業届を提出することで個人事業主に戻れます。ただし、廃業届だけではなく青色申告の取りやめ届出書などの書類を提出している場合は、これらの書類も出しなおす必要があります。廃業してすぐ開業すると、手間だけかかってしまうことになるので、すぐに事業を再開する可能性がある場合は、休業なども検討しましょう。

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おわりに 

廃業届は個人事業主が事業をやめるための手続きです。廃業届を出すことで、破産手続きを回避できたり取引先の損害を抑えられたりするメリットがある反面、金銭的な負担が増すなどのデメリットもあります。廃業の理由によっては、休業やM&Aといった選択肢もあるので、それらの手段も合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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