住宅ローン減税は、マイホームの購入を検討している方ならぜひ知っておきたい制度です。年末時点でのローン残高に応じて税負担額が軽減されます。ただし、限度額や対象期間など注意するポイントは多いです。このコラムでは、適用条件や注意点まで詳しく解説します。住宅の性能や、新築や既存物件など種類に応じた差もチェックできますので、ぜひ参考にしてください。
- 住宅ローン減税では、ローンの年末残高の0.7%を所得税・住民税から控除できる
- 控除期間は新築なら最長13年間、中古は最長10年間
- 控除額の上限は住宅の性能に応じて変動する
- 住宅ローンの借り換えや、ふるさと納税との併用で控除額が変動する可能性もある
住宅ローン減税(控除)とは
住宅ローン減税は、ローンを借りている方の税負担を軽減する施策です。ここでは、住宅ローン減税の仕組みや2022年に実施された制度変更など、基本的な知識を解説します。
住宅ローン減税=住宅ローン控除
住宅ローン減税は、正式には「住宅借入金等特別控除」といい、国がマイホームの購入を促す目的で設けている制度です。住宅ローン控除とも呼ばれます。2022年に制度改正が行われ、適用される期間が2025年まで延長されており、2025年12月31日までに入居した方が対象となります。
住宅の購入者が増えれば、住宅メーカーや不動産・建設会社はもちろん、家具や家電、関連設備、引っ越しなどいろいろな業界で売り上げが増えます。つまり、住宅ローン減税は家を買う方のためだけでなく、経済の活性化を目的とした制度として根づいてきたのです。始まりは1972年に導入された「住宅取得控除」までさかのぼり、時代に合わせて変化しながら続いてきました。
参照元:国土交通省「住宅ローン減税等が延長されます!~環境性能等に応じた上乗せ措置等が新設されます~」税制改正の概要
控除される仕組み
住宅ローン減税を活用すると、毎年、次の金額のうち低い方が、最長10年間あるいは13年間にわたって所得税や住民税から控除できます。
- 住宅ローンの年末残高×0.7%
- 最大控除額(年間14万~35万円)
1年間の最大控除額は、住宅の環境性能や、新築・中古などの区分、入居年によって異なります。詳細はこのコラム中の「控除の上限額に住宅の環境性能が影響する」をご覧ください。控除はまず所得税から行われ、所得税を超えた部分が翌年の住民税から97,500円を上限に控除されるのが原則です。
参照元:
国土交通省「住宅ローン減税」令和4年度税制改正のポイント
大田区「住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)について」控除される金額
2022年に行われた税制改正での変更点
住宅ローン減税は2022年に大きな制度改正が行われました。ここではその変更点を紹介します。最も重要な変更は、ローン残高に対する控除割合の引き下げです。これまで1%だった控除率が0.7%に引き下げられました。例えば、4,000万円の残高がある場合の控除可能額は、280,000円(=4,000万円×0.7%)となります。
この変更は、低金利の長期化により、改正前の控除率1%を大きく下回る住宅ローン金利が増えてきたことによるものです。払っている利息以上に税額控除が大きくなって得をする「逆ざや」の解消を狙った改正でした。
一方、控除期間は、新築住宅については延長されています。以前は原則最長10年間だったところ、最長13年間に。
また、環境負荷を軽減するなど住宅の性能が高いほど最大控除額が増えるように設定されています。ただ、2024年以降に新築の建築確認を受ける省エネ基準を満たさない住宅は、適用対象外となるので注意してください。
参照元:国土交通省「住宅ローン減税」令和4年度税制改正のポイント
住宅ローン控除を受けるための条件は?改正による変更点も
次に、住宅ローン控除を受けるための条件を解説します。ここでは新築を中心に説明しましょう。
所得金額
住宅ローン減税の適用は、合計所得金額が2,000万円以下であることが条件となります。高所得者層を過度に優遇することにならないようにするため、変更前の3,000万円から条件が厳しくなりました。
床面積
住宅ローン減税が適用される床面積は、原則50平方メートル以上となっています。店舗などとの併用住宅の場合は、自宅部分が床面積の2分の1以上あることが条件です。
ただし、2024年以前に建築確認を受けた新築住宅は、床面積が40平方メートル以上でも住宅ローン減税が使えます。単身者のマンション購入などを想定したものですが、この場合の所得金額は1,000万円以下である必要があると厳格化されています。
建築確認の期限は当初、2022年の税制改正で2023年以前となっていましたが、2024年の改正で延長されました。2025年の改正でも同様に期限を延長する方向で検討されることになっています。
物件の築年数
中古物件の築年数について、2022年の改正前は、耐火住宅が25年以内、非耐火住宅が20年以内という条件がありました。これが改正によって緩和され、1982年(昭和57年)以後に建った住宅(新耐震基準適合住宅)であれば良いことになっています。
住宅ローン減税の条件まとめ
新築住宅の住宅ローン減税を受けるための基本条件をまとめると、以下のようになります。
- 取得する方が自宅用にする
- 所得金額2,000万円以下
- 床面積50平方メートル以上
- 2024年末までに建築確認を受けた新築住宅は、40平方メートル以上50平方メートル未満も可(所得金額1,000万円以下が条件)
- 住宅の引き渡しまたは工事が完了してから6ヵ月以内に居住する
- 店舗との併用住宅の場合は2分の1以上が居住用である
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
以上の条件をいずれも満たす場合に、最長13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税・住民税額から控除できます。
新築住宅以外の住宅ローン控除について
住宅ローン減税は新築住宅以外も対象になります。中古物件、買取再販物件(再販物件)、増築・リフォームのそれぞれについて、税額控除できる条件を解説しましょう。
中古物件
中古物件で住宅ローン減税の対象となるのは、新築物件にかかる条件に加え、次のいずれかを満たすものとなります。
- 1982年(昭和57年)1月1日以後に建てられた新耐震基準適合住宅であること
- 地震に対する安全性が証明されていること
2を証明するには、一定の条件を満たす次のいずれかの書類が必要です。
- 耐震基準適合証明書
- 建設住宅性能評価書の写し
- 既存住宅売買瑕疵保険付保証明書
以上の条件を満たした場合に最長10年間、控除対象となります。
再販物件
買取再販物件(再販物件)は、宅地建物取引業者が増改築して売る物件です。新築住宅の適用条件に加え、以下の条件をいずれも満たすことで、最長13年間の住宅ローン減税が適用されます。
- 宅地建物取引業者から買う
- 宅地建物取引業者が住宅を取得し、2年以内にリフォーム工事をして再販売する
- 取得した時点で新築した日から10年経過している
- リフォーム工事の費用が建物価格の20%以上ある
この他、リフォーム工事が大規模修繕や耐震基準への適合、バリアフリーや省エネ改修など、特定の条件を満たす工事が含まれていることも条件です。購入する際には、販売する宅建業者に対して内容を確認することをおすすめします。
増築やリフォーム
増築やリフォームで住宅ローン減税の適用を受けるには、新築住宅の条件に加え、以下の条件を満たすことが必要です。
次のいずれかの工事であること
- 増改築、建築基準法に規定する大規模修繕
- 区分所有する部分の床、壁などの過半で行う修繕
- リビング、キッチンなどの床や壁の全部で行う修繕
- 耐震改修工事
- バリアフリー改修工事
- 省エネ改修工事
以上いずれかの工事について、工事に伴い支払われる補助金を差し引いた費用が100万円を超える場合に、住宅ローン減税を適用できます。2025年までに入居すれば、10年間、ローン残高の0.7%(年間最大140,000円)が控除されるでしょう。
参照元:
国税庁「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム減税制度の手引き」2住宅ローン減税
住宅ローン減税を受けるなら知っておきたいこと
住宅ローン減税の適用を受けるには、多くの条件をクリアしたうえで手続きを進める必要があります。ここでは、住宅ローン減税の適用を受けるに当たって知っておきたいことを紹介しましょう。
住宅ローン減税を受けるには手続きが必要
住宅ローン減税を利用する際、初年度は確定申告が必要です。確定申告は1年間の税金の過不足を確認して清算する手続き。入居した翌年の2月中旬から3月中旬の間に行います。
給与所得のみの会社員の場合、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン減税の適用を受けられるため、基本的に確定申告は不要。一方、もともと確定申告を行う必要がある自営業の方などは、2年目以降も確定申告で住宅ローン減税の適用申請が必要となります。
確定申告の必要書類
住宅ローン控除適用のために確定申告する際に必要となる書類は以下のとおりです。
書類 | 入手する場所など |
確定申告書 | 国税庁WEBサイトや近隣の税務署 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
マイナンバーカード(写し)などマイナンバーが分かるもの | 市町村役場 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁WEBサイトや近隣の税務署 |
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | 融資を受けた金融機関 |
建物・土地の登記事項証明書 | 法務局やオンライン申請システム |
環境性能などの証明書類 | 不動産会社など |
控除の上限額に住宅の環境性能が影響する
2022年の税制改正では、住宅ローン控除の上限額が、環境に配慮した住宅を優遇するようになったことも大きな特徴です。環境に配慮した住宅とは、具体的には次のとおり。
環境性能に応じた住宅の種類
住宅の種類 | 内容 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」にもとづき認定を受けた長期優良住宅や、「低炭素建築物認定制度」の基準に適合した低炭素住宅 |
ZEH水準省エネ住宅 | 日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅 |
省エネ基準適合住宅 | 日本住宅性能表示基準における断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅 |
その他の住宅 | 上記のいずれにも該当しない一般住宅 |
上記のカテゴリーに応じた控除の上限額や控除期間などをまとめると次のようになります。
新築住宅・買取再販物件の借入限度額(カッコ内は最大控除額。控除率0.7% 控除期間13年)
※太字は2024年度税制改正で追加
住宅の種類 | 2022~2023年入居 | 2024年入居 | 2025年入居 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円(年35万円、合計455万円) | 4,500万円(年31.5万円、合計409.5万円) | |
子育て世帯・若者夫婦世帯は5,000万円 (年35万円、合計455万円) | 2024年と同様の方向性 | ||
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円(年31.5万円、合計409.5万円) | 3,500万円(年24.5万円、合計318.5万円) | |
子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円 (年31.5万円、合計409.5万円) | 2024年と同様の方向性 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円(年28万円、合計364万円) | 3,000万円(年21万円、合計273万円) | |
子育て世帯・若者夫婦世帯は4,000万円 (年28万円、合計364万円) | 2024年と同様の方向性 | ||
その他の住宅 | 3,000万円(年21万円、合計273万円) | 0円(2023年までに建築確認を受けた場合2,000万円) |
2022年の税制改正により、2024年入居分から控除上限額が低下することになっていましたが、2024年の税制改正によって一部条件の下では2024年に入居しても上限が変わらないことになりました。上限が据え置かれる条件は、子育て世帯や若者夫婦世帯が環境に配慮した住宅に入居する場合です。同様の措置は2025年の税制改正でも検討されることになっています。
子育て世帯と若者夫婦世帯とは、19歳未満の子がいる世帯や、夫婦のどちらかが40歳未満の世帯を指します。年齢は、入居年の12月31日時点が基準です。
中古住宅の借入限度額(カッコ内は最大控除額。控除率0.7% 控除期間10年)
住宅の種類 | 2022~2025年入居 |
長期優良住宅・低炭素住宅ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅 | 3,000万円(年21万円、合計210万円) |
その他の住宅 | 2,000万円(年14万円、合計140万円) |
最大控除額の元となる借入限度額は、環境性能が高いほど大きくなります。また、新築の場合、従来は一般住宅でも借入上限額は4,000万円となっていましたが、制度変更によって新築の借入限度額は3,000万円に削減され、さらに、2024年以降の入居になると適用できなくなることとされました。
参照元:国土交通省「住宅ローン減税の借入限度額及び床面積要件の維持(所得税・住民税)」
住宅ローン減税の基本の計算方法
住宅ローン減税は2022年の制度改正で大きく変わりましたが、控除額を算出する基本の計算方法は変わりません。住宅ローンの年末残高に一定の割合をかけたものとなります。
毎年の住宅ローン控除額=住宅ローンの年末残高×0.7%
例えば、新築の長期優良住宅に2023年中に入居した場合のシミュレーションをしてみましょう。年末の借入残高が4,000万円だったとすると、控除額は280,000円(=4,000万円×0.7%)となります。
長期優良住宅に2023年に入居するケースの最大控除額は、年間350,000円です。このため、上記の計算どおり280,000円が所得税や住民税から控除される額になります。
もし、年末の借入残高が6,000万円だったとすると、控除額は420,000円(=6,000万円×0.7%)。最大控除額350,000円を上回り、この場合に税額から控除されるのは350,000円です。
住宅ローン減税の注意点
住宅ローン減税の注意点を解説します。所得税・住民税の額や税制改正、住宅ローンの借換などで控除額が変動する可能性もある点に注意が必要です。
支払った税額以上は戻ってこない
住宅ローン減税は、支払った税金から控除を受ける制度です。このため、支払った税額以上は戻ってきません。年間の最大控除額は140,000~350,000円ですが、納める所得税や住民税が最大控除額より小さい場合は恩恵を十分に受けられないことになります。
税制改正などで控除額が変わる可能性がある
税制は社会のニーズや政策の見直しに伴い、変更されることがあります。2022年の税制改正では、住宅ローン控除の控除率が1%から0.7%に減らされ、所得制限も合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に厳格化されました。
制度変更が行われると、住宅ローン控除額が影響を受ける可能性があります。住宅購入の計画を立てる際には、最新の情報を国税庁WEBサイトなどで確認し、入居時期や住宅の種類などを検討するのが大切です。
住宅ローンの借換で控除額が変わる可能性がある
住宅ローンの借換で、控除額が変わる可能性があることにも注意が必要です。住宅ローン控除は、ローンの年末残高を基に控除額を計算しますので、借換で借入残高が減れば控除額も減少。
逆に、借換に伴う費用をローンに含めるといった理由で、借換前のローン残高(A)より、新しいローンの借入金額(B)が増えるケースでは、控除対象額は次の計算式で導くことになっています。
借入金額が増える場合の控除対象額=新しく借りたローンの年末残高×A÷B
例えば、借換直前のローン残高が2,000万円の場合、新たなローンの借入金額も2,000万円で年末残高が1,950万円なら、控除対象額はそのまま1,950万円です。一方、新たなローンの借入金額が2,100万円で、年末残高が2,050万円となっている場合の控除対象額は、2,050万円ではなく、約1,952万円(=2,050万円×2,000万円÷2,100万円)となります。
参照元:国税庁「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」借換を行った場合の住宅借入金等の年末残高
ふるさと納税で控除額が減るかも
ふるさと納税と住宅ローン減税を併用すると、住宅ローン控除の額が減ることも。確定申告をすると、ふるさと納税で寄付した金額を所得税から控除した後に住宅ローン控除が適用されます。これにより、住宅ローン減税で所得税から控除できる額が減ってしまうことがあるのです。
住宅ローン控除では、所得税から控除しきれなかった額がある場合は住民税から控除可能。しかし、それも97,500円までの上限があるため、ふるさと納税で住宅ローン控除額が減ってしまう可能性があるのです。
一方、ふるさと納税には確定申告不要な「ワンストップ特例制度」があります。この制度を使えば、ふるさと納税の控除は住民税のみから行われ、所得税からは控除されません。結果、住宅ローン減税への影響を少なくすることが可能。ただし、住宅ローン控除申請の初年度には確定申告をする必要があります。確定申告をする場合は、ふるさと納税のワンストップ特例を使えないため注意が必要です。
ワンストップ特例制度については、本サイトのコラム「【解説】ふるさと納税のワンストップ特例制度」をご覧ください。
住宅ローン減税についてはプロに相談するのがおすすめ
住宅ローン減税の取り扱いは複雑。住宅性能に応じて最大控除額が変わる他、借換やふるさと納税を行う場合にも控除額が変動する可能性があるのです。住宅の購入を検討している方や、リフォームで住宅ローンを借り、減税制度の適用を検討している方は、プロからアドバイスをもらうことをおすすめします。
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お金の悩みは年代や性別、家族構成などさまざまです。住宅ローン減税を有効活用できるローンのご相談は、豊富なノウハウを持ったiYellグループにぜひお問い合わせください。
おわりに
住宅ローン減税は、マイホームを購入する方にとって大変お得な制度ですが、社会環境や政策修正で時代とともに変遷し、適用範囲や控除率が変わる可能性があります。最新の条件と効果を把握し、所得税や住民税の控除額を適切に計算することが重要です。また、住宅ローンを借り換えた場合や、ふるさと納税と併用するケースでは、控除額が変動する可能性もあります。こうした情報を適切に把握しながら家計に最善のプランを立ててください。