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高齢者の脱水症状に注意!症状や主な原因、正しい予防法を確認しよう

高齢者の脱水症状に注意!症状や主な原因、正しい予防法を確認しよう
村上 友太 医師・医学博士

監修者

医師・医学博士

村上 友太

福島県立医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、福島県立医科大学脳神経外科学講座に入局。2019年同講座助教。2022年3月より、東京・新橋にある東京予防クリニックの院長として、一般内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医、抗加齢医学専門医。認知症学会会員、内科学会会員。医師の副業プラットフォーム「頼めるドクター」を主宰

脱水症状と聞くと、夏の暑い時期などに起こると思っている方も多いかもしれません。実は、冬の寒い時期にも脱水症状は起こります。また、高齢者の場合だと、発見が遅れやすく気づかないうちに重症化しているケースも多いのです。そこで今回は、脱水症状の種類や主な原因、具体的な処置などを詳しく紹介していきます。脱水症状について詳しく知りたい方はご一読ください。

1.そもそも脱水症状とは?

1.そもそも脱水症状とは?

脱水症状とは、体液の量が正常範囲を超えて減少した状態です。体液は、人体の機能を維持するために必要な液体のことで、血液、リンパ液、唾液、粘液、汗、消化液および尿などのことを指します。

脱水症状の主な原因は発汗です。大量の汗をかくとナトリウムなどのミネラル分や水分が流出し、体液の量や濃度が変化するためです。また、嘔吐や下痢なども大量の水分が体外に排出されるため、原因のひとつとされています。

特に高齢者は水分の摂取量が少なく、また身体の中の水分がさまざまな原因で失われるため、脱水症になりやすくなります。これから詳しく説明していきます。

参照元:脱水症って、どんな病気でしょう。|経口補水療法

1-1.脱水症状には3種類ある

脱水症状には3つの種類があります。それぞれ確認していきましょう。

・低張性脱水

体液の濃度が薄くなるタイプで、水分よりもナトリウムなどのミネラル分が多く失われている状態です。長時間のスポーツなどで大量に汗をかいているのに、水やお茶などのミネラル分をあまり含んでいない飲み物をたくさん飲んだときに起こります。症状としては、吐き気やけいれん、だるさなどです。

・高張性脱水

体液の濃度が濃くなるタイプで、体内の水分のみが不足する状態です。主に汗を大量にかき、水分が体外に流出したときに起こります。ミネラルはほとんど失われませんが、意識の混濁や激しい口渇状態、発熱なども起こすことがあります。水分補給が難しい高齢者や乳幼児がなりやすい症状です。

・等張性脱水

水分とナトリウムが同等の割合で失われる脱水で体液全体が不足するタイプです。下痢や嘔吐などにより体液が一気に失われることで起こります。体液の量がとても減少するため、生命の維持機能にも支障をきたします。

2.熱中症との関係は?

脱水症状と似ているのが熱中症で、体温が高くなりすぎてしまうことで起こります。脱水症状は熱中症の一種で、そのままにしておくと熱中症のリスクが高まります。

理由としては、体液が減少することで体温調整機能に支障が起こり、汗が出にくくなって体内に熱がこもってしまうからです。熱中症が重症化すると命の危険もあるため、熱中症を防ぐためにも、その前段階である脱水症状を予防することが重要です。

3.脱水症状の主な原因やタイミング

ここからは脱水症状の原因や起こりやすいタイミングについて紹介していきます。

3-1.脱水症状の原因

脱水症状は以下のことが原因で起こりやすくなります。詳しく見ていきましょう。

【脱水症状が起こりやすい主な原因】

  • 運動
  • 日常生活
  • 飲酒
  • 病気

・運動

運動の強度が上がることで、身体は発汗量を増やし体温の調節が行われます。たくさん汗をかくと水分やナトリウムなどのミネラル分を多く失ってしまいます。そのため気温が高いときだけでなく、気温が低いときや屋内での運動でも、水分補給をしない状態での激しい運動は控えるようにしましょう。短時間の運動であれば水分補給のみでも問題ないですが、1時間程度の長時間の運動や運動量の激しい場合には、水ではなくミネラルを含むスポーツドリンクがおすすめです。

・日常生活

・日常生活

日常生活の中で、飲酒のあとや入浴前後、就寝時は特に体内の水分量が減っています。特に濃い尿が出るときや尿量が減ったときなどは注意が必要です。のどが渇いてから水分を補給するのではなく、時間を決めて水分補給をするようにしましょう。

・飲酒

飲酒すると体液のバランスが保ちにくい状態になります。原因はアルコールによる利尿作用で、お酒を飲んだ量よりも尿の方が多く出てしまうためです。特にビールは利尿作用が強いため、1Lのビールを飲むと1.1Lの体内の水分を失うとされています。特に夏の炎天下でのビールは、発汗することでより体内の水分が減り脱水症状になりやすいため、気をつけましょう。

・病気

脱水症状は糖尿病や排尿障害、アジソン病などの特定の疾患が原因で引き起こされていることもあります。糖尿病の場合、頻尿や多尿、のどの渇きという症状が出やすくなります。そのため、高血糖な方ほど尿の排出に時間がかかり何度もトイレに行くため、脱水症状が起きやすいのです。

3-2.脱水症状は夏と冬に起きることが多い

脱水症状は特に夏と冬に注意が必要です。夏は発汗も多く気候の変化に身体が対応しにくいため、脱水症状を引き起こしやすくなります。発汗するとナトリウムなどのミネラル分を失いやすいので、水分だけでなくスポーツ飲料などから摂取できるミネラルも一緒に摂るようにして、身体のバランスを保つことが大切です。他にも、服装で温度調節をして余分な発汗を防ぐのも良いでしょう。

冬は乾燥により粘膜にウイルスが付着して、さまざまな感染症が起こりやすいです。なかでも冬に多いウイルス性の風邪や胃腸炎は下痢や嘔吐を起こすことがあるため、脱水になりやすくなります。他にも、インフルエンザなどの高熱が出る感染症も、熱を下げるために体内に大量の水分が必要になるので、症状が起きる前に脱水対策を行うことが必要です。

また、冬は暑い夏と比べると、のどの渇きを感じにくく水分を積極的に摂らないことも多いので、意識して水分を摂取するようにしましょう。

4.高齢者に脱水症状が起こりやすい理由

ここからは、高齢者が脱水症状を起こしやすい原因を確認していきましょう。

4-1.高齢者の身体の特性

人は皮膚にある温度センサーで温度を感じ、この温度を脳に伝えます。ですが、高齢者は温度センサーの感覚が鈍く、暑さを感じにくくなっているのです。また高齢者は脱水も自覚しにくく、脱水の初期ではご自身だけでなく周囲にも脱水状態であることがわかりにくい場合があります。

4-2.高齢者が脱水症になりやすい理由

若年者に比べ高齢者が脱水症になりやすい原因がいくつかあるので確認していきましょう。

・体内の水分量が少ない

食事全体量の減少や水分摂取量の減少で、体内の水分量が不足し脱水症状が起きます。また筋力の低下や水分を蓄える筋肉量の減少なども、脱水症を引き起こす原因です。

・内臓の働きの低下

高齢になり腎臓機能が低下することも脱水症の原因と考えられています。腎臓は体内の水分量を調整する役割があるので、その機能が低下することにより水分やナトリウムなどのミネラル分を留めておく力が弱まり、脱水症を引き起こす原因になるのです。

・のどの渇きに気づきにくい

高齢による感覚機能の低下で、のどの渇きに気がつかないこともあります。そのため、摂取する水分量が減り、脱水症になるリスクを高めてしまうのです。認知症によって、飲み物を飲んだのか忘れてしまい、長時間水分を取らず脱水症になってしまうこともあります。

・病気や排泄障害

病気や排泄障害によって脱水症状が起きやすい場合もあります。糖尿病の場合だと、増えすぎた糖を外に出そうと尿が多く排出され、体内の水分量が不足することになります。他にも、頻尿などで排尿の量が増える排泄障害があるケースも脱水症に陥りやすくなります。

・薬の副作用

服用している薬が原因で脱水症になる場合もあります。血圧を下げる降圧薬は利尿作用があるため、尿を排出することで水分や塩分が不足し、脱水症を引き起こします。

5.脱水症状の具体的な症状と応急処置

高齢者の場合は本人が気づかないうちに脱水症状に陥っていることもあるため、周りの方が意識的に見守り、伝えてあげることが大切です。脱水症状が進行すると、さまざまな不調が現れます。ここでは、脱水症の症状を軽症から重症まで紹介します。

5-1.軽症の場合

軽度の場合、以下の症状が挙げられます。

  • 頭痛
  • 立ちくらみ
  • 微熱
  • 食欲不振
  • 身体がだるい・重い

他にも唇がカサカサしたり、口の中が乾いたりとあらゆる部分で「乾燥」が見られます。また、通常湿っているはずの脇の下が乾いた状態のときも要注意です。他にも脱水症状は行動にも現れ、ボーっとしたりウトウトしたりしている状態が頻繁に見られるようであれば、脱水症を引き起こしている可能性があります。ふらつきやめまいなどの症状や、手足の末端が冷えている状態なども血流が悪くなっているサインなので、注意深く確認しましょう。

脱水症状を起こしている方の応急処置では、十分な水分や身体の機能調整に必要なミネラルを補う必要があります。効果的に両方を摂取するには「経口補水液」がおすすめです。経口補水液は、水にブドウ糖と食塩を溶かしているので、水分とミネラルの吸収を助けてくれます。経口補水液がない場合でも、水1Lに食塩3gと砂糖20〜40gを溶かせば自宅でも簡単に作ることができます。また少量のレモン果汁を入れると飲みやすくなるのでおすすめです。

軽症の場合は、脱水症の症状が現れて4時間以内に経口補水液を飲ませると良いでしょう。もし医師から塩分摂取について指示があるようであれば、飲む前に必ず相談をして医師の指示を仰ぐようにしましょう。

5-2.中等症の場合

中等症の場合以下の症状が挙げられます。

  • 嘔吐や吐き気
  • めまい
  • 筋肉痛
  • 手足のしびれ
  • 尿の量が少ない、色が濃い

軽症の状態から悪化し、中等度になると頭痛や吐き気などの症状が出てきます。他にも、身体から水分が減ったことにより、体重が減少したり下痢や嘔吐などの体調の変化が見られたりすることもあります。水分量が不足すると排尿も減るので、トイレの回数も意識的にチェックするようにしましょう。

中等症の場合も脱水症の症状が現れて4時間以内に経口補水液を飲みましょう。嘔吐がある場合は、1回嘔吐するたびに同じ量の経口補水液を飲むことが必要です。

5-3.重症の場合

5-3.重症の場合

重症の場合は、以下の症状が現れます。

  • 低血圧
  • 身体がぐったりしている、力が入らない
  • 意識の混濁、失神
  • 臓器不全

体内からたくさんの水分が失われると血液がドロドロの状態になり、内臓器官や血流に深刻な症状が現れます。話しかけても反応がなかったり意識がもうろうとしていたりなどの状態が代表的な症状です。ひどい場合は、身体がけいれんしたり意識を失ったりすることもあります。

身体の痙攣や意識障害がある場合は、口からでの水分摂取では間に合わないかもしれません。自己判断で対応すると命の危険もあるので、点滴などの医療処置を受けるため救急車を呼び、病院ですぐに診てもらうことが必要です。

6.脱水症状のセルフチェック

脱水症状はご自身や周りが気づかない間に進行している場合もあります。ここからは脱水症状のセルフチェック項目を見ていきましょう。

【脱水症状のセルフチェック】

  • のどや口の中が乾いている
  • 脇の下や手足の皮膚が乾燥している
  • 爪を押しても色がすぐに戻らない
  • 手の甲の皮膚をつまんでも、皮膚がすぐに戻らない
  • 尿の色が濃い、尿の回数が少ない
  • 意識がはっきりしない
  • めまいがする

このような症状に当てはまる場合は、脱水症になる危険性が高いでしょう。こまめな休息や水分補給を心がけてみてください。

7.脱水症状の予防策

 高齢者の場合は、本人だけでなく周りの方が気にして管理しておくことも必要です。のどが渇く前に時間を決めて水分補給を行うなど、意識をして脱水症を予防しましょう。ここからは普段からできる予防策をお伝えします。

7-1.1日に必要な水分量を確認しておく

高齢者の1日に必要な水分の摂取量は、体重1kgに対して約40mlといわれています。体重50kgの方の場合は約2Lです。高齢者本人だけでなく周りの方が把握し、必要な水分を摂取できているか確認をしてあげることが必要です。

7-2.まめに水分を摂る

あまり時間をあけることなく、小まめに水分を摂るようにしましょう。高齢者の場合はのどが乾いている自覚がないときもあるので、周りの声かけが必要になります。小まめにチェックするのが大変なときは、起床時・入浴後・運動後・飲酒後・食事前だけでも普段よりも意識して水分を摂るようにしましょう。

7-3.好きな飲み物で水分補給

あまり好きではない飲み物を渡されても、飲みたくないと思ってしまうこともあります。そのため好きな飲み物を把握し準備しておくと良いでしょう。高齢者が飲みたいと思うような工夫が大切です。

7-4.ゼリー飲料などを活用する

7-4.ゼリー飲料などを活用する

飲み物だけでなく、ゼリーやようかんなどでも水分を摂取できます。水分を凝固させたものなので、高齢者も美味しく食べられるでしょう。本人の好みやそのときの体調に合わせて、活用してみてください。

7-5.部屋の環境を整える

部屋の環境を整えると身体の水分量が保たれます。乾燥している場合は、濡れタオルを干したり加湿器を使用したりするなどの工夫をして、室内の湿度を保ちましょう。高齢者の場合は、エアコンを嫌がる方もいますが、夜の就寝時も脱水症の危険があります。無理に節電はせず、適当な温度と湿度を保つようにしましょう。

おわりに

脱水症状を予防するには、小まめな水分補給などが必要になります。しかし、高齢者の場合はご自身で気づくことが難しい場合もあるので、周りのサポートが重要です。なかなか自発的に水分摂取をしてくれない場合は、食事を水分が多いメニューにしたり、好きな飲み物を与えたりするなど工夫をしましょう。放っておくと重症化してしまいますが、脱水症状は予防することが可能です。この記事を参考に、リスクを回避し脱水症状が起きにくい健康的な生活を送りましょう。

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