夏に向けて気をつけなければならないのが、ハチによる被害です。中でもスズメバチは危険性が高いことで知られていますが、日本にはさまざまな種類のスズメバチが生息していることをご存じでしょうか?そこで今回は、日本に生息するスズメバチの種類とその特徴、見分け方について解説します。また、スズメバチに遭遇したときの対応のしかたや、万が一刺されてしまったときの対処法もご紹介しますので、ぜひご一読ください。
この記事を読んでわかること
日本には17種類のスズメバチが生息しており、その中の8種類は特に危険性が高いスズメバチです。毒性や危険性が最も強いのが「オオスズメバチ」で、刺されると死につながることもあります。また、被害件数が多く確認されているのが「キイロスズメバチ」で、民家の軒下などに巣を作るのが特徴です。 なお、スズメバチは女王蜂・オス蜂・働き蜂という階級の異なるハチで構成された「社会性昆虫」で、1年ごとのサイクルで新たな巣を作り活動しています。 スズメバチに遭遇した場合は刺激しないよう静かに避難します。万が一、刺されたときは応急処置も有効で、アナフィラキシーショックの症状がある場合はすぐに受診が必要です。
スズメバチの基本情報
スズメバチといっても多くの種類があり、日本には17種類ものスズメバチが生息しています。一般的に「スズメバチ」とは、ハチ目スズメバチ科に分類される昆虫の中で「スズメバチ亜科」に属しているハチの総称です。
また、スズメバチ亜科の中でも「~属」のように種類が分類され、その中で特に危険性が高いのがスズメバチ属の8種類であるといわれています。
一般的なスズメバチの活動時期
スズメバチは種類によって活動時期に差はありますが、基本的には次のようなサイクルで活動します。
- 春…女王蜂が冬眠から目覚め、単独で巣を作り始める。
- 夏…働き蜂が生まれ、巣を大きくしていく。
- 秋…働き蜂が減少していく。オス蜂と新女王蜂が生まれ、交尾をしてオス蜂は死ぬ。新女王蜂は越冬準備のため巣を離れる。
- 冬…新女王蜂のみ、枯れ木や土の中で冬眠する。
特に、7月上旬~9月頃はスズメバチの活動が活発な時期です。巣を守るために威嚇性や攻撃性が増すので注意しましょう。
スズメバチは社会性昆虫
スズメバチは基本的に、女王蜂・オス蜂・働き蜂といった階級の異なるハチで構成された「社会性昆虫」で、他の昆虫と比べると社会性がとても発達しています。
女王蜂は春には巣作り・産卵・幼虫の世話を単独で行いますが、夏に働き蜂が生まれると産卵だけに集中し、働き蜂に残りの仕事を任せます。働き蜂は生殖機能を持たないメスのハチが担い、オス蜂は生殖のためだけに存在します。
このようにスズメバチは階級ごとに役割を持ち、ひとつの巣を守っているのです。
攻撃性の高いスズメバチの天敵
攻撃性の高いスズメバチにも天敵はいます。オニヤンマやオオカマキリ、クモなどは、スズメバチと互いに捕食し合うので天敵といえるでしょう。
また、スズメバチタマセンチュウやスズメバチネジレバネといった寄生虫は、スズメバチにとって一方的な天敵です。寄生虫がスズメバチの体内に住みつくと、活動能力や生殖機能が奪われます。そうなると、スズメバチは社会構造を維持できなくなるため、巣が崩壊してしまうのです。
スズメバチ9種類!危険性の高いハチから低いハチまで
スズメバチの基本情報がわかったところで、スズメバチの詳しい種類の特徴について見ていきましょう。スズメバチの中で危険度の高い順にご紹介します。
オオスズメバチ
スズメバチ属の中で、毒性・危険性ともにトップを誇るのがオオスズメバチです。オオスズメバチの毒はハチの中で最も毒性が強く量が多いとされ、刺されると死につながる危険性があります。また、オオスズメバチは身体が大きく、攻撃性が高いのも特徴のひとつです。巣の近くを通るだけで威嚇し攻撃してくることもあり、エサが少なくなると他のスズメバチを襲う習性もあります。
キイロスズメバチ
スズメバチ属の中でも、特に被害件数が多いのがキイロスズメバチです。キイロスズメバチは民家の軒下や屋根裏などに巣を作り、市街地や都市部にも生息します。オオスズメバチに比べると、体が小さく毒の量も少ない反面、毒性はオオスズメバチを上回るといわれています。
モンスズメバチ
スズメバチの多くは暗闇での視力がないため夜は飛び回りませんが、モンスズメバチは夜も活動する習性があります。エサとなるセミの減少によりモンスズメバチの数も減ってきているため、被害件数は減少傾向ですが、毒性は強く攻撃性も高いため遭遇した場合には注意が必要です。
チャイロスズメバチ
チャイロスズメバチは他のハチの巣を乗っ取って繁殖する「社会寄生性」の珍しい昆虫です。チャイロスズメバチの女王は、モンスズメバチやキイロスズメバチの働き蜂が羽化する頃、単独で巣に侵入します。
そして、巣の持ち主である女王蜂を殺し、自分の卵を産みつけ、モンスズメバチやキイロスズメバチの働き蜂に世話をさせるのです。攻撃性が高くアゴや毒針が発達しているため、刺されたときの痛みが強いといわれています。
ツマグロスズメバチ
ツマグロスズメバチは全体的に黒色で、腹部がオレンジ色をしているスズメバチです。日本では、本州ではなく沖縄県の島々に生息しています。
ツマグロスズメバチは林や農地周辺の地面付近に巣を作る習性があり、刺される被害も多いので注意が必要です。オオスズメバチほどの毒性はありませんが、攻撃性が高い特徴があります。
ツマアカスズメバチ
ツマアカスズメバチは外来種のスズメバチです。元々は東南アジアやインド、中国などに生息するハチですが、2012年に長崎県の対馬市で確認されて以来、福岡県や宮崎県、大分県でも確認されるようになりました。
ツマアカスズメバチは黄色い脚とオレンジ色の腹部が特徴的で、身体は小さめです。攻撃性は集団ごとに異なるといわれ、おとなしい個体もいるようですが、海外ではツマアカスズメバチに刺されたことによる死亡事故も発生しています。
また、ツマアカスズメバチは昆虫やミツバチをエサとするため、在来種のミツバチや養蜂、生態系への影響が懸念されています。
コガタスズメバチ
コガタスズメバチは見た目がオオスズメバチやキイロスズメバチと似ていますが、オオスズメバチと比べると小さく、羽の下が黒いのが特徴です。
都市部や住宅街の環境に適応し、庭木や生け垣の茂みなどで見かけることがあります。コガタスズメバチは毒性・攻撃性ともに低いといわれますが、巣を刺激すると刺されることがあるので注意しましょう。
ヒメスズメバチ
ヒメスズメバチはオオスズメバチの次に大きいスズメバチです。身体は大きいですが巣は小さく、木の穴や民家の屋根裏などに巣を作ります。基本的におとなしい性格なので、刺激をしない限り攻撃されることはないでしょう。
クロスズメバチ属
クロスズメバチ属のハチは、今までご紹介したスズメバチ属とは別の種類です。日本では、クロスズメバチ、キオビクロスズメバチ、ツヤクロスズメバチ、シダクロスズメバチ、ヤドリスズメバチの5種が生息しています。
どの種も体調10mmほどの小さいスズメバチで、体が黒っぽく白や黄色の縞模様があるのが特徴です。毒性も攻撃性も弱いですが、巣を刺激すると刺されることがあります。
スズメバチの見分け方
さまざまな種類のスズメバチがいることがわかりましたが、どのように見分ければ良いのでしょうか?ここでは見分け方について覚えておきましょう。
大きさで見分ける
スズメバチは身体の大きさである程度見分けることができます。スズメバチの大きさ別に下の表にまとめました。
巨大(約3~4cm) | オオスズメバチ、ヒメスズメバチ |
大(約2.5~3cm) | モンスズメバチ、コガタスズメバチ |
中(約2~2.5cm) | キイロスズメバチ、チャイロスズメバチ、ツマグロスズメバチ、ツマアカスズメバチ |
小(約1.5cm) | クロスズメバチ |
ただし、スズメバチは同じ種類でも大きさに個体差があります。例えば、オオスズメバチでも働き蜂の中には2cmほどの大きさの個体もいるため、危険度の低いハチと間違えてしまうケースもあるのです。
また、ハチの大きさと危険性は比例しないという点にも注意しましょう。身体が小さなスズメバチでも、毒性や攻撃性が高く、危険度が高いものもいます。
巣で見分ける
スズメバチの種類は巣で見分けることもできます。スズメバチの種類によって巣に違いがあるため、身体の見た目や大きさで比べるよりも見分けやすいでしょう。それぞれのスズメバチの巣の特徴は次のとおりです。
オオスズメバチの巣
オオスズメバチは地中や木の穴の中、土壁の中などに巣を作ります。巣の形状は釣り鐘型で底が開いており、波模様が特徴的です。
キイロスズメバチの巣
キイロスズメバチは地中や木の穴、民家の屋根裏、換気扇などの閉鎖空間の他、木の枝や軒下などの開放空間にも巣を作ります。巣の形は球状で、貝殻のような模様をしているのが特徴です。
モンスズメバチの巣
モンスズメバチが巣を作る場所は地中や木の穴の中、民家の屋根裏、換気扇などの閉鎖空間です。巣の形状は釣り鐘型で、底は開き、波模様になっています。
チャイロスズメバチの巣
チャイロスズメバチは他のハチの巣を乗っ取りますが、巣を乗っ取れないときは自分で巣を作ります。チャイロスズメバチの巣はモンスズメバチの釣り鐘型の巣に似た形状です。地中や壁の中などの閉鎖空間を選び、外皮がない状態の巣を作ることもあります。
ツマグロスズメバチの巣
ツマグロスズメバチは台風が多い地域に生息しているため、草むらや比較的低い木の枝など台風の被害から逃れやすい場所に巣を作ります。初期の巣はフラスコを逆さにしたような形状ですが、最終的な形は球状です。見た目は貝殻のような模様をしています。
ツマアカスズメバチの巣
ツマアカスズメバチは初期には地中や茂みなどの閉鎖空間に巣を作りますが、手狭になると木の枝や軒下などの開放空間に引っ越します。形は球状、貝殻模様が特徴的です。
コガタスズメバチの巣
コガタスズメバチが巣を作るのは木の枝や軒下、生け垣などの開放空間です。初期の形は逆フラスコ型で、最終的には球状になります。外側は貝殻のような模様です。
ヒメスズメバチの巣
ヒメスズメバチは地中や木の穴の中、屋根裏などの閉鎖空間に巣を作ります。ヒメスズメバチの巣は日本のスズメバチの中で最小です。形状は釣り鐘型で底が開いており、外皮は薄く波模様になっています。
クロスズメバチの巣
クロスズメバチの巣は地中や屋根裏などの閉鎖空間に多く見られますが、まれに軒下に作られることもあります。形は球状です。
スズメバチに遭遇した場合の正しい対応
スズメバチに遭遇してしまった場合は、スズメバチを刺激しないように対応することが大切です。そのために、まずは静かにその場を離れましょう。
スズメバチは黒いものを攻撃する習性があるので、避難するときは服やタオルで頭部を隠してください。ただし、スズメバチは追跡能力が高いので、できれば別室に避難してドアを閉めると良いでしょう。もしもスズメバチが室内に入ってしまったら、電気を消し、窓を開けてハチが外に出ていくまで待機します。
また、スズメバチから身を守るためには、黒い服や匂いの強いものを避けることが大切です。スズメバチの巣があるような場所を訪れる際は、強い匂いのシャンプー、柔軟剤、制汗剤、香水などの使用は控えましょう。
スズメバチに刺された場合どうなる?
スズメバチに刺された場合はどうなってしまうのでしょうか?刺されたときの危険性について、確認しておきましょう。
ひどい腫れと痛みが起こる
スズメバチに刺されると、毒の刺激によって強烈な痛みが走り、患部が赤く腫れあがります。スズメバチは毒針を何度も刺してくることがあるため危険です。また、毒液を噴射して攻撃することもあり、目に入ると最悪の場合、失明する危険性もあります。
アレルギー反応を起こす
初めてハチに刺された場合は、1日~数日で症状は落ち着くでしょう。しかし、同じ種類のハチに再び刺されると、ハチ毒に対するアレルギー反応である「アナフィラキシーショック」を起こす可能性があるため、注意が必要です。
アナフィラキシーショックの症状として、全身の蕁麻疹、唇や口の中の腫れ、呼吸困難、動機、めまい、血圧低下、意識障害などがあり、場合によっては死に至る危険があります。
スズメバチに刺されてしまった場合はどうする?
スズメバチに刺されてしまった場合は、安全な場所で応急処置を行いましょう。まず、患部を流水で流し、毒針が残っていたらピンセットで取り除きます。そして、患部から毒液を手で絞り出し、水で洗い流してください。スズメバチの毒は水に溶けやすい性質があるため、患部を絞り出し水で洗い流すことは、体内の毒を減らすために有効といわれています。
このとき、毒を絞り出すために口で吸おうとする方がいるかもしれませんが、口内の傷口から毒が入り込む危険があるのでやめましょう。アウトドア用品店などでは、毒液や毒針を吸う器具も売られているので、野外活動の際は備えておくと安心です。
その後、患部の炎症を抑えるために、抗ヒスタミン軟膏があれば塗っておきましょう。もしも、ひどい腫れや蕁麻疹をはじめ、アナフィラキシーの症状がある場合はすぐに病院を受診してください。
ハチの巣を見つけた場合はプロに依頼する
自宅にスズメバチの巣を見つけた場合は、害虫駆除のプロに相談・依頼することをおすすめします。攻撃性の高いスズメバチの巣をご自身で駆除するのは危険であるため、控えた方が無難です。くらしのセゾンでは、資格を持つ専門スタッフによる害虫駆除サービスを行っています。見積もりは無料なので、スズメバチにお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
おわりに
初夏~秋頃はスズメバチが活発に活動する時期で、巣を守るために攻撃性が高まります。スズメバチが巣を作りそうな野外に訪れる際は、ハチ対策や万が一刺されたときの応急処置の知識を持っておくと安心です。また、民家にスズメバチの巣を見つけた場合はご自身で対処せず、プロに相談するようにしましょう。