今年の夏は、南から北まで全国的に猛暑日が続きました。今か今かと秋を待ちわびていた方も多いのではないでしょうか。日本は高温多湿といわれ、特に今年は人の体温を超えるような暑さが続いたうえに、高い湿度のために体温調節がうまく働きにくくなることが多くなります。そのため、なんとなく身体がだるい、食欲がない、などの不調を感じたりして、いわゆる「夏バテ」の症状が出ていませんか。
今回は、夏バテに良い野菜たちと食材を使って、日常生活をひと工夫する方法をお伝えします。さぁ、実り多き秋を元気に過ごすために、夏バテ対策しましょう。
1.夏バテとは?
夏バテとは、夏の身体の不調。夏負けとか夏やせともいいますが、暑い日が続くと、身体には大きな負担がかかります。暑さからくる、体力が消耗して疲れやすくなったり、 胃腸の働きが衰えて食欲の低下や食事の偏り、栄養が取れなくて体重が減少したり、さらに睡眠不足、だるさ、といった症状がでてきます。炎天下と冷房の効いた室内との温度差によることも多いようです。夏バテ解消には、自然なリズムの生活を基本に、休養と睡眠とともに栄養バランスのある食事を摂ることが大切ですよ。
2.バテ対策に有効な野菜たちとは?
夏の暑さで不足しがちなビタミン類は野菜や果物から取りましょう。特に夏野菜には、夏バテに負けないようにスタミナをつけてくれる、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンなどを含む野菜が多いので、積極的に摂りたいものです。
2-1.【ゴーヤ】苦み成分で夏バテ解消野菜!
ゴーヤはきゅうりと同じウリの仲間ですが、独特の苦みを持ち、にがうりとも呼ばれ、未熟な果実を食べます。この独特の苦み成分はモモルデシンという成分で、胃液の分泌を促して、食欲をアップしてくれる効果があり、夏バテ防止に重宝する野菜です。他に、免疫力アップ、疲労回復、肌荒れに良いビタミンCがたっぷり含まれ、むくみを解消する働きのあるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルも豊富に含まれています。ゴーヤは、生でそのまま食べても、漬物にしても、炒めても、焼いても、何にしても美味しい野菜です。
≪選び方≫
鮮やかな濃い緑色で、全体に太くて端の先端は細くとがっていて、ずしりと重い感触があるものを選びましょう。表面のちりめん状のイボは硬くはりがあり、イボがつぶれたり、傷ついたり、黒ずんだりしていないもの、イボの大きさが揃って密についているものが新鮮です。熟してくると、緑色が薄くイボが大きくなり、苦味も弱くなり、食べやすくなります。完熟するとオレンジ色や赤い果肉になりますが、とても甘くなります。他にサラダゴーヤと呼ばれる白ゴーヤがあり、苦みが少なく生食に向いています。
≪保存と冷凍方法≫
夏は特に日持ちがしないので、丸ごと常温保存なら、新聞紙などで包み数日で食べきりましょう。冷蔵庫の野菜室に保存するときは、丸ごと、ポリ袋などに入れて立てて保存します。カットなら、縦半分に切り、種とワタを除き、切り口をキッチンペーパーで包み、ラップに包んで入れます。冷凍保存するには、薄切りにして、水気を拭き取り、冷凍保存袋に入れます。また、水にサッとさらしてから、冷凍にするのも良いです。
≪特徴≫
- 新鮮であるほど栄養価は高いですが、その分苦みも強くなります。表面の皮の緑色が濃くて、イボが小さいと苦味が強いです。苦みがあるのは皮の部分で種子やワタは苦くありません。ワタには果肉よりもビタミンCが多く含まれていて苦みも少ないので、できるだけ食したい部分です。また、苦味を取るためには、薄切りにしてから軽く塩揉みして洗い流すか、サッと熱湯をかけたり、下茹でしたりすると良いです。
- 含まれるビタミンCは加熱に強いので、茹でたり、炒めたりしても損失が少ないのが特長です。ただし、水溶性のビタミンCのため、水に浸けておくとビタミンCは失われていくので、要注意!
- βカロテンも多いので、油を使った炒め物、天ぷらなどもおすすめです。
- 良質なタンパク質を含む肉や魚介類、卵などと合わせれば、ビタミンCとの相乗効果で夏バテ効果が高まります。
- 夏バテに良いからと食べ過ぎると、逆に腹痛を起こすことがあるので、食べ過ぎには注意しましょう。
2-2.とうがん(冬瓜)
あっさりとした味わいで、食欲がなくても美味しく食べられる!
冬瓜は、文字から冬が旬のように思われますが、実は夏の野菜です。収穫してから、丸のまま冷暗所に置けば、冬まで保存しておくことできるので、冬の瓜という名前がついたようです。熱帯アジア原産の瓜の仲間です。クセがなく、味も香りもやさしく、夏バテ時におすすめです。95%は水分で、栄養はあまり高くありませんが、むくみ防止のカリウムや食物繊維が含まれています。低カロリーなのでダイエット中にも良いです。身体を冷やす働きもあります。透き通るような涼しげな見た目と淡白な味わいが夏におすすめの野菜です。
≪選び方と保存≫
重みがあり、皮にツヤがあり、緑色が濃いなかに白く粉を吹いたようになっているものが良品です。丸ごとのものは、冷暗所にて長期保存ができます。カットされたものは、切り口がみずみずしく、果肉の色は均一に白いものを選びましょう。ラップをして冷蔵庫の野菜室で保存します。
種とワタを取り除き、皮を厚めにむき、食べやすい大きさにカットして、1食分ずつ、冷凍保存袋に入れて冷凍もできます。凍ったまま、炒め物に加えたり、スープや煮物に加えたりします。また、塩を少々加えた湯で下茹でし、冷まして水分を拭き取り、冷凍保存袋に入れて冷凍しても。良く茹でたものは、自然解凍して、そのまま使うこともできます。また、冬瓜は少し苦みがありますが、生食もできます。苦みが気になるときは酢水につけると良いです。
≪特徴≫
- 冬瓜の皮は硬いので、切り分けてから、皮をむくと楽です。皮を厚めにむくと、皮の青臭さやアクが取り除けます。また、皮が持つ翡翠色を残したいときには、ピーラーなどで、薄く向くときれいな色が出ます。
- 一度、下茹でしてから使うと、青臭さが減り食べやすくなり、だしや調味料が染み込みやすくなります。
- みずみずしい冬瓜は、汁物や煮物が美味しいです。タンパク質が少ないので、肉や魚などと合わせると良いです。夏バテ気味なら豚肉、鶏肉と合わせると美肌作りにも。
2-3.かぼちゃ
ビタミンACEで、夏バテ知らずの身体を作る!
「冬至に食べると病気にならない!」といわれていますが、実は夏が旬です。保存がきくため、冬至に食べて無病息災(カロテン効果で風邪予防)を願うようになったようです。市場に多く流通している種類は西洋かぼちゃで、栗かぼちゃとも呼ばれ、ホクホクとした食感と甘みが強く、炒め物、天ぷら、スープ、スイーツなどに向いています。
「ビタミンACE(エース)」と呼ばれる強い抗酸化力を持つ栄養素、βカロテン(体内でビタミンAに変わる)、ビタミンE、ビタミンCが豊富に含まれています。βカロテンは皮膚や粘膜を整えたり、免疫力を上げたりする働きがあり、ビタミンEは若返りのビタミンとも呼ばれ、血液の流れを良くし、身体を温めたり、肌の代謝やくすみ解消にも有効。ビタミンCは美肌作りや免疫力アップが期待できます。特に、皮には実以上のβカロテンが含まれているので、調理は皮ごとがポイント。他に、カリウムは野菜の中でもトップクラスに含まれていて、むくみ予防や高血圧の予防に。食物繊維が豊富で、特に不溶性食物繊維が多く含まれているので便秘の予防や改善にも食べたい野菜です。
≪選び方と保存≫
丸ごと1個買う時は、ずっしりと重くて皮の緑色が濃く、形がきれいで左右対称なものが良品です。ヘタがコルクのように乾燥していて、ヘタの周りがくぼんでいたり、ヒビが入っていたりするものは完熟しています。風通しの良い冷暗所で、2~3カ月ほど保存できます。カットして、切り口が肉厚で皮のふち近くまで鮮やかなオレンジ色、中のワタがみずみずしく、種が大きく厚みがありギッシリ詰まっているものは完熟している証拠です。カットしたものは、種とワタの部分を取り除いて、ラップで包み冷蔵庫で保存。3~4日で食べきりましょう。
冷凍するときには、種とワタを取り除き、使いやすいサイズに切り、ラップで包んで冷凍保存袋に入れて冷凍庫へ。使う時は、凍ったまま調理します。また、茹でてから潰して、なめらかにマッシュし、冷めてからラップで包み、冷凍保存袋に入れて冷凍庫へ。使う時は、凍ったまま調理します。スープやスイーツなどに。
≪特徴≫
- かぼちゃの皮は硬いので、切るにはコツがあります。かぼちゃの断面をまな板に安定させて置き、包丁の刃先をまな板につけて包丁を入れ、強く押す、と切りやすいです。また、電子レンジで少し加熱すると切りやすくなります。ふんわりとラップをして、1/4個あたり2分ほどが目安です。
- かぼちゃの一番美味しいところは、種の周りのワタの部分なので、ここを残して調理すると、美味しい煮物ができます。また、皮やワタには、実より多くのβカロテンが含まれています。皮はきんぴらにしたり、ワタはポタージュスープに入れたりしても。
- 多く含まれるβカロテンは脂溶性なので、油と一緒に摂ると体内で吸収されやすいです。マヨネーズを使ったサラダだったり、チーズを加えたりすると良いです。
- 疲れている時や、風邪予防には、タンパク質豊富な肉や魚、卵と一緒に食べると免疫力がアップします。
3.夏バテに効く主な食材とは?
“夏バテ”を長引かせないためには、「バランスの良い食事をして、栄養を摂ること!適度な水分補給を忘れずに行うこと!」です。真夏の冷たい食事から、温かい食べ物を選ぶようにしましょう。冷たい飲みものの摂り過ぎは胃を疲れさせ働きを衰えさせて身体の不調の原因にもなります。冷た過ぎず、適温のものを愛飲しましょう。
①不足しがちなビタミン類は野菜から摂りましょう。
ビタミンC、ビタミンE、βカロテンなどの栄養を含む夏野菜を摂りましょう。かぼちゃ、トマト、ピーマン、にら、しそ、にんじん、ブロッコリーなど。
*βカロテンは油に溶けて吸収されるので、野菜炒めや揚げ物がおすすめです。
②エネルギー代謝をアップしてくれる疲労回復ビタミンともいわれるビタミンB群を摂りましょう。枝豆、にら、ゴマ、豚肉、レバー、枝豆、納豆、豆腐、うなぎ、いわしなど。
③疲労物質を分解してくれたり、新陳代謝を促してくれたりするクエン酸を摂りましょう。梅干しやレモン、グレープフルーツ、醸造酢など。
④免疫機能の向上やエネルギー代謝を促進してくれるタンパク質を摂りましょう。肉、魚、卵、牛乳、大豆食品(納豆、豆腐、油揚げ)など。
⑤食欲増進、身体をクールダウンしてくれる薬味野菜や香辛料を摂りましょう。唐辛子、ニンニクを始めとする薬味系の青じそ、みょうが、ネギ、生姜など、香辛料のワサビ、コショウ、カレー粉、キムチなど。
*のどごしの良い麺(素麺・冷麦)が欲しい時には、麺だけで済ませずに、野菜やタンパク質も一緒に食べましょう。
4.日常生活の養生
夏バテは、真夏の飲食による胃腸の冷え、気温や環境の変化による自律神経の乱れ、暑さからくる体力低下などが大きな原因です。夏バテ解消には、休養と睡眠とともに栄養のある食事を摂ることが大切です。不足しがちなビタミン類は野菜や果物から摂りましょう。また胃腸のためにも冷たい飲み物を摂り過ぎないことや、不規則な生活を続けないこと、クーラーで身体を冷やし過ぎないなどの対策も必要です。
- 体感温度
冷房の効いた室内と、蒸し暑い外の温度差を調整しましょう。着るもので上手に体温調節をしましょう。除湿機や扇風機などで、身体に直接冷たい風を当てるのは避けましょう。冷房温度は28度がおすすめです。
- 適度な運動
散歩をしたり、カラダを動かしたりして、血流改善をしましょう。少し汗をかくくらいの運動を1日15分~30分やりましょう。
- ぬるめのお風呂
夏のシャワーから、ゆっくりぬるめのお風呂に浸かりましょう。38℃〜40℃の微温浴をしましょう。身体をリラックスさせ、胃腸の働きを促進する「副交感神経」を優位にしてくれます。
- 十分な睡眠
遅くとも、午前0時には就寝をしましょう。夏の疲れを回復するためにも、早寝早起きを心がけましょう。
5.美味レシピ3選
5-1.ゴーヤとバナナの豆乳ジュース
- 夏バテ乗り切りジュース!
- ゴーヤの苦みをバナナの甘みで飲みやすく!
【材料】グラス1杯分
ゴーヤ 30g(3cm)、バナナ 1/2本、豆乳 100ml、レモン汁 小さじ1╱2
【作り方】
① ゴーヤは半分に切って種とワタを取り除き、ざく切りにする。
② バナナは皮をむき、手でちぎりながら、ミキサーに加える。
③ ②に①と豆乳を加えて、なめらかになるまで攪拌し、グラスに加える。
*バナナの代わりに、りんごなどのお好きなフルーツを入れましょう。
*甘味が足りなければ、ハチミツなどを加えましょう。
*ゴーヤは緑、白、どちらでもOK。白ゴーヤの方が飲みやすいです。
5-2.ゴーヤと冬瓜、タコの梅甘味あえ
- ゴーヤと冬瓜は生使い、梅甘味は野菜の苦みが抑えられてよく合う!
- タコは滋養強壮力が高く、ゴーヤと冬瓜を加えた最強の夏バテ対策コンビ!
【材料】2~3人分
ゴーヤ 50g、冬瓜 150g、ゆでタコ足 1本(90g)、白ごま 適量
(A 梅肉たれ)梅干し 2個、ハチミツ 小さじ1
【作り方】
① ゴーヤは半分に切って種とワタを取り除いて薄切りにする。冬瓜は皮を厚めにむき、種とワタを取り除いて、いちょう切りにする。タコは5mm厚さに切る。
② ボウルに(A 梅肉たれ)を作る。梅干しは種を取り、包丁でペースト状にたたき、ハチミツと混ぜ合わせる。
③ ②に①を加えてあえる。
④ 器に盛り、白ごまをふる。
*ゴーヤの苦みが気になるときは種とワタを取り除いて薄切りにし、塩を加えてよく揉みこみ、水洗いをして、水気をとる。塩を揉み込んだ後、サッと茹でても良い。
*冬瓜の苦みが気になるときは皮を厚めにむき、種とワタを取り除いて薄切りにし、酢水に数分つけて水気をとる。
*梅肉たれは多めに作って、蒸し野菜などにかけても美味しい。ハチミツ梅を使う時は加えるハチミツの量を調整してください。
5-3.3種の野菜の冷たい味噌汁
- 夏バテに良い3種の野菜を加えた冷やし味噌汁!
- 味噌汁は常温でも冷やしても美味しい!発酵食品で免疫力アップを!
【材料】2人分
ゴーヤ 50g、冬瓜 150g、かぼちゃ 100g、油揚げ 1枚、
だし汁 500ml、味噌 大さじ2
【作り方】
① ゴーヤは半分に切って種とワタを取り除き、薄切りにする。冬瓜は厚めに皮をむいて種とワタをとり、いちょう切りにする。かぼちゃは種とワタを取り、皮付きのままいちょう切りにする。油揚げは縦に半分に切って細切りにする。
② 鍋にだし汁を煮立て、①を加えて4分ほど野菜が柔らかくなるまで煮る。火を止めて味噌を溶き入れる。そのまま冷ます。
③ 器に注ぎ入れる。
*粗熱が取れれば、冷蔵庫で冷やしても。
*冬瓜とかぼちゃは、レンチン使いで柔らかくしても。
6.おわりに
さわやかな秋の到来は楽しみですが、夏の疲れがどっと出て体調を崩しやすい時期でもあります。夏バテしたまま回復できずに、秋まで不調を引きずることがないように気をつけたいものです。
夏バテ予防にはサプリメントなどで栄養補給も効果的ですが、身体の内から夏バテ対策をするには毎日の食生活が基本です。夏バテ対策に役立つ野菜類を食事に取り入れながら、食欲アップ、水分補給、睡眠などで体調を整えましょう。
ちょっと歩みを止め、ご自分の生活習慣を見つめ直し、夏バテ知らずで、秋を楽しみたいですね。