副業をしている方にとって、副業の収入にかかる税金は気になることのひとつではないでしょうか。また、副業していることを勤務先に知られたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。この記事では、副業にかかる住民税について詳しく解説しています。住民税の申告方法や、副業が勤務先にバレる可能性と対処方法を紹介しているので、ぜひ参考にして下さい。
副業とは?定義を確認
副業とは、本業以外に仕事をして収入を得ることです。例えば、勤務先での仕事以外に、アルバイトや内職をして収入を得ることは副業になります。
厚生労働省が作成している「モデル就業規則」では、副業を禁止する条項は盛り込まれていません。「第14章 副業・兼業 第67条」によると、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とあります。
ただし、本業の労務提供上の支障がある場合や秘密漏洩の可能性がある場合などは、勤務先は副業の禁止・制限が可能です。また、勤務先の就業規則により副業が禁止されている場合は違反となるため、副業を行う際は事前に確認しておきましょう。
住民税とは?概要をおさらい
住民税を納めていても、どのような税金なのか詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。あらためて、住民税の概要を確認しておきましょう。
行政サービスの活動費になる
住民税は、その地域に住む個人が納める地方税です。道府県民税と市町村民税の2種類がありますが、市町村に一括で納税し、道府県民税分は市町村から対象の道府県に支払われます。課税対象となるのは、その年の1月1日時点で住民登録されている方です。
各個人から納税された住民税は、行政サービスの費用に充てられています。行政サービスとは、上下水道やゴミ処理、公共施設や学校教育の運営など。各地域で提供される行政サービスの費用の一部を、その地域に住む方が負担しているのが住民税なのです。
均等割と所得割がある
では、住民税はどのような計算で負担額が決まるのでしょうか。住民税の課税方法には、金額が一律で決まっている「均等割」と、所得に応じて課税される「所得割」があります。均等割の金額と所得割の金額を合計したものが、納税すべき住民税額です。
均等割は、町内会費のようなものと考えると分かりやすいでしょう。その地域に住む方が、一律で決まった金額の住民税を収めるのが均等割です。均等割の金額は、市町村民税3,500円、道府県民税1,500円の計5,000円と決まっています(2023年度までは、東日本大震災を踏まえて地方団体が防災費用を確保するため、市町村民税と道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています)。
一方で所得割は、所得に対して一律10%を住民税として課税するものです。所得とは課税の計算のもととなる収入金額のことで、勤務先から受け取る給与や事業による収入から必要経費を差し引いたものです。したがって、受け取った給与や賞与の合計金額や事業収入の総額とは異なります。給与所得の場合は、収入金額に応じて決められた給与所得控除額を、必要経費として差し引きます。
ここまで住民税の基本的な計算方法についてお伝えしましたが、住民税の税率は各自治体の判断により変更が可能です。そのため、住む場所によって住民税の金額が変わることもあります。
神奈川県横浜市を例に挙げると、基本となる均等割金額が市町村民税3,500円、道府県民税1,500円であるのに対し、市民税4,400円、県民税1,800円が徴収されているのです。
横浜市では、緑豊かなまちづくりを目指す「横浜みどりアップ計画」の財源として、2023年度まで「横浜みどり税」を年間900円徴収しています。そのため、市民税が4,400円に設定されているのです。さらに、神奈川県では水源環境の保全や再生のための財源として「水源環境保全税」を均等割に300円上乗せして徴収しているため、均等割の県民税が1,800円に設定されています。
また、所得割の税率は通常10%ですが、神奈川県では10.025%。これは先述の水源環境保全税を、県民税の所得割からも0.025%上乗せして徴収しているためです。
このように住民税は、各自治体が必要に応じて税率を変更したり上乗せして徴収したりできます。お住まいの地域の税率は、自治体のWEBサイトで確認可能です。概算にはなりますが、自治体のWEBサイトで住民税のシミュレーションができることもあるので、利用してみてはいかがでしょうか。
副業分の収入にも住民税がかかる
本業だけでなく、副業の所得にも住民税は課税されます。勘違いされやすいのですが、副業での所得が確定申告を必要とする金額に達していなくても、住民税の申告は必要なのです。では、住民税の申告をしないとどうなるのでしょうか。
住民税額は、国民健康保険の保険料や、児童扶養手当などの算定のもとになります。そのため、申告をしないと保険料が上位所得者として計算されたり、児童扶養手当などの給付が受けられなかったりといった不利益につながるので要注意です。
また、住民税は税金のため、申告や納税を怠ると延滞税や無申告加算税が発生します。さらに、意図的に申告をしなかった場合には、重加算税が課せられることも。副業の所得がある場合は、必ず住民税の申告をしましょう。
住民税を納める方法は2パターン
住民税の納税方法は、2パターンあります。それぞれの方法について、具体的に確認していきましょう。
給与から天引きされる「特別徴収」
勤務先から給与収入を得ている方は、給与から天引きされる「特別徴収」によって住民税を納付します。前年度の所得に応じて計算された住民税を毎月の給与から天引きし、勤務先がまとめて市町村に納付する方法です。給与所得者以外に、年金受給者も特別徴収で住民税の納付をします。
ご自身で納付する「普通徴収」
給与収入がない方は、市町村から届く納付書で納税する「普通徴収」という方法で住民税を納付します。普通徴収が選択できるのは、給与所得以外の所得に限られるため、副業が給与所得の場合は普通徴収による納付はできません。
「特別徴収」と「普通徴収」の違いは給与所得を得るかどうか
特別徴収と普通徴収の違いは、給与所得を得ているかどうかです。簡単に説明すると、給与所得では特別徴収、給与所得以外の所得については普通徴収で納付します。
特別徴収は、給与から天引きした住民税を勤務先がまとめて納付する方法です。給与所得がない方については、天引きができないため普通徴収で納付することになります。
普通徴収を選択できるのは、副業での所得が事業所得や不動産所得、雑所得など、給与所得以外の所得です。副業が給与所得の場合には普通徴収は選択できないため、特別徴収での納付になります。
副業をしている場合の住民税の申告方法
先述のとおり、副業の収入にも住民税が課税されます。では、その副業の住民税はどのように申告をすれば良いのでしょうか。
確定申告をする
副業の所得金額によっては、税務署に確定申告をして所得税を納税しなければなりません。確定申告をする場合は税務署からお住まいの市町村に所得金額が通知され、その内容をもとに住民税の金額が決定します。確定申告と同時に、住民税の申告も済むことになるのです。
副業の収入から経費を引いた金額がいくらになるのか計算して、確定申告が必要な所得かどうか判断しましょう。
・確定申告をする金額の目安
本業の給与所得以外で得た所得が年間200,000円を超える場合や、給与所等を2ヵ所以上でもらっている場合は確定申告の対象になります。所得とは先述のとおり、収入金額から必要経費を差し引いた金額です。収入とかかった経費を計算してみて、200,000円以下になるようなら、確定申告の必要はありません。
・確定申告の必要・不要にかかわらず住民税の申告は必要
副業の年間所得が200,000円以下で確定申告不要の場合でも、住民税の申告は必要です。勘違いしやすいですが、「確定申告不要=住民税の申告不要」ではないため注意しましょう。
先述のとおり、住民税の納税を怠るとご自身の不利益につながったり、延滞税や無申告加算税が課せられたりといったことがあります。副業での所得を確定申告しない方は、必ず住民税の申告をして下さい。
自治体に申告する
確定申告をしない場合、お住まいの地域の市町村役場にて住民税の申告を行います。所得申告をすると住民税がいくらかかるのか決定するので、支払い手続きをして完了です。住民税の申告方法は自治体によって異なるため、必要書類等を事前に確認しておきましょう。
住民税で副業が勤務先にバレる?理由と対策
副業をしていることを、勤務先に知られたくない方もいるのではないでしょうか。副業のことを誰にも伝えていなくても、住民税から勤務先にバレてしまうケースがあります。ここからは、住民税から副業が勤務先にバレる理由と、勤務先に知られないための対策について解説します。
副業の収入分を加算して住民税が徴収されるから
先述のとおり、住民税の計算は金額が一律で決まっている均等割と、所得に対して課税される所得割があります。そのため、住民税が給与をもとに計算された場合より多く徴収されている場合、他に収入があるのでは?と疑われるのです。
「普通徴収」にすればバレにくい
副業分の住民税を普通徴収にすれば、勤務先に副業がバレる可能性が低くなります。給与に対して課税される住民税のみを特別徴収で給与から天引きすれば、住民税の金額に疑問を持たれることはありません。
副業の住民税を申告する際、副業分の住民税は普通徴収を選択できます。給与所得と副業の所得の住民税を別々に納付して、勤務先に副業が知られない対策をしておきましょう。
・住民税を「普通徴収」にする方法
住民税の納付方法を普通徴収にするには、書面での通知が必要です。確定申告の際に提出する「確定申告書」第二表の下部に「〇住民税・事業税に関する事項」という項目があります。その中にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で、「自分で納付」を選択すると納付書が送付されてご自身で納付する普通徴収の扱いになるのです。
確定申告書で普通徴収を選択しても、本業の給与所得にかかる住民税は、勤務先から給与天引きで特別徴収されます。
・副業がアルバイトの方は要注意
副業の住民税の納付方法を、普通徴収にできない方は要注意です。具体的には、副業がアルバイトなど給与所得のケース。給与所得の場合は、原則として普通徴収が選択できません。
本業と副業の給与所得を合算した金額で住民税が計算され、市町村から本業の勤務先に通知されます。そのため、勤務先に通知された住民税額により、副業がバレてしまうリスクがあります。
勤務先にバレにくい副業3選
勤務先に副業について知られたくない方は、以下のような種類の副業を選んではいかがでしょうか。ご紹介しているのは副業とはみなされない収入源や、給与収入ではないため勤務先に知られにくい副業です。
不用品を売る
家にある不用品を、フリマサイトやインターネットオークションなどで売却して得た収入は、事業性がなく副業とみなされません。家財や古着など、「生活用動産」と呼ばれるものを処分した際の収入は非課税扱いです。
ただし、売却益を目的として仕入れたものを売って収入を得ることは、事業性があるとみなされ雑所得の扱いになります。そのため所得金額が200,000円を超える場合は、確定申告が必要です。
ハンドメイド品を販売する
「趣味はハンドメイド」という方は、作品を販売してみてはいかがでしょうか。最近では気軽にショップが開けるアプリもあるので、布製品やアクセサリーなどを販売して収入を得るのも良いかもしれません。材料費は経費として計上できますし、趣味と実益を兼ねた副業としておすすめです。
資産運用
株式投資や投資信託など、有価証券の資産運用も立派な副業のひとつです。NISAやiDeCoを利用することで、一定額が非課税になるのも大きなメリット。また、取引には証券会社の口座を利用することが多いですが、特定口座で「源泉徴収あり」を選択すると運用益から源泉徴収されるため申告が不要です。
最近ではスマホひとつで簡単に取引できる、WEBサイトやアプリを利用した投資も人気です。少額から始められるものやクレジットカードのポイントを利用した投資もあるので、投資が初めての方も気軽に始められるのではないでしょうか。
おわりに
副業で得た所得に対する住民税について、詳しく解説しました。副業の収入は確定申告の対象かどうかに目がいきがちですが、確定申告の対象とならない場合でも住民税の申告が必要です。申告や納税漏れが起こらないよう、注意しましょう。また、副業を勤務先に知られたくない方は、住民税をご自身で納付する特別徴収を選択するなど、対策をしておくことが大切です。