新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いについて、よくわからないという方は多いのではないでしょうか。つみたて投資枠と成長投資枠は投資対象商品や年間投資枠に違いがあります。
このコラムでは、つみたて投資枠の概要と活用方法について解説します。新NISAの仕組みに詳しくない方でも簡単に理解できる内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
- つみたて投資枠の投資対象は長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
- つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、成長投資枠240万円と併用可能
- 成長投資枠と組み合わせることで幅広い投資戦略に対応できる
新NISA制度と旧NISA制度の違いは?
新NISAと旧NISAを比較した表は以下のとおりです。
新NISA | 旧NISA | |
制度 | つみたて投資枠・成長投資枠(併用可) | 一般NISA・つみたてNISA(併用不可) |
非課税保有期間 | 無期限化 | 一般NISA:5年 つみたてNISA:20年 |
口座開設期間 | 恒久化 | 2023年まで |
年間投資枠 | 成長投資枠:240万円 つみたて投資枠:120万円 | 一般NISA:120万円 つみたてNISA:40万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | 一般NISA:600万円(120万円×5年) つみたてNISA:800万円(40万円×20年) |
特記事項 | 売却した分の投資枠(簿価分)は翌年から再利用が可能 | 投資枠の再利用は不可 |
旧NISAとの違いは、主に以下の5つです。
- 非課税投資枠が拡大される
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
- 非課税保有期間が無期限化
- 非課税保有限度額がアップ
- 売却すれば投資枠が翌年以降に復活
それぞれ順に解説します。
非課税投資枠が拡大される
新NISAでは、旧NISAと比較して非課税となる年間投資枠が拡大されています。
新NISA | 旧NISA | |
年間投資枠 | 成長投資枠:240万円 つみたて投資枠:120万円 | 一般NISA:120万円 つみたてNISA:40万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | 一般NISA:600万円(120万円×5年) つみたてNISA:800万円(40万円×20年) |
年間投資枠の拡大によって、NISA制度を活用した投資戦略の幅が広がります。
つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は併用可能です。
年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合算すると年間最大360万円となります。旧NISAは一般NISAとつみたてNISAの併用ができないため、新NISAでは商品選択や投資方針の選択肢が広がるでしょう。
非課税保有期間が無期限化
旧NISAの非課税保有期間は一般NISAが5年、つみたてNISAが20年です。新NISAでは非課税保有期間の上限が撤廃されました。
非課税保有機関の無期限化によって、さらに長期的な視点での資産形成につながります。
非課税保有限度額がアップ
新NISAの非課税保有限度額は、総額1,800万円です。
新NISA | 旧NISA | |
非課税保有限度額 | 1,800万円 うち成長投資枠は1,200万円まで | 一般NISA:600万円(120万円×5年) つみたてNISA:800万円(40万円×20年) |
旧NISAはつみたてNISAと一般NISAの併用ができないため、非課税保有限度額は最大で800万円でした。限度額の拡大により、大きな資産形成を目指しやすくなりました。
売却すれば投資枠が翌年以降に復活
旧NISAは一度使用した投資枠を再利用できません。一方、新NISAでは資産を売却した場合、非課税保有限度額の総枠内であれば翌年以降に再び利用できます。
例えば1年目に100万円で買い付けした株式を2年目に全て売却した場合、3年目には100万円分の非課税保有限度額が復活する仕組みです。保有銘柄の組み換えや資金を捻出するための売却など、さまざまなシーンに対応しやすくなります。
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAで設けられる「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の特徴をまとめると、以下の表のとおりです。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 無期限 | |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託など |
この章では、つみたて投資枠と成長投資枠の違いについて解説します。
つみたて投資枠とは
つみたて投資枠の年間投資枠は120万円です。
旧NISAのつみたてNISAと同様に、投資対象商品は「長期の積立・分散投資に適した投資信託」に限定されています。投資信託とは、集めたお金を金融のプロが運用し、成果を投資家に還元する仕組みの金融商品です。
非課税保有限度額は1,800万円とされており、つみたて投資枠のみで使い切ることが可能です。
成長投資枠とは
成長投資枠の年間投資枠は240万円に設定されています。投資対象商品は投資信託のほか、上場株式などが含まれます。
つみたて投資枠を使わず、成長投資枠のみの利用は可能です。ただし、成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円とされています。
つみたて投資枠と成長投資枠の投資対象とは?
つみたて投資枠と成長投資枠の投資対象は、以下のように区分されています。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託など |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
つみたて投資枠
つみたて投資枠では旧のつみたてNISA対象商品と同様に「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」が対象とされています。具体的な銘柄の例は以下のとおりです。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI)
- セゾン・グローバルバランスファンド
つみたて投資枠の年間投資枠は120万円、非課税限度保有額は最大1,800万円です。つみたてNISAと比較すると上限がアップしており、従来は保有していなかった銘柄にチャレンジしやすくなります。
成長投資枠
成長投資枠の投資対象は、旧一般NISAと同じく「上場株式や投資信託など」です。具体的には以下の例が挙げられます。
- 国内株
- 外国株
- 投資信託
- ETF
- REIT
投資信託のみを比較すると、つみたて投資枠より多くの商品が対象となっています。また、対象商品にはETFやREITが含まれており、幅広い選択肢から商品の選定が可能です。つみたて投資枠の対象商品を、成長投資枠を使って購入する方法も認められています。
購入できない商品
商品のなかには新NISAでは対象外とされる銘柄・ファンドがあります。購入できない商品の例は以下のとおりです。
- 整理・監理銘柄
- 信託期間20年未満
- 毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託など
いずれも新NISAが目指す「長期的な資産形成」に適さないと判断され、対象外となりました。旧NISAでは購入できた商品であっても、新NISAでは対象外とされているケースがあります。
つみたて投資枠と成長投資枠の組み合わせ方法
つみたて投資枠と成長投資枠は組み合わせて利用できます。適している組み合わせ方法は運用方針や投資経験によって異なるため、有効活用するポイントを押さえておくことが重要です。それぞれ順に解説します。
初心者はつみたて投資枠から
初心者や少額から始めたい方は、つみたて投資枠からスタートしましょう。つみたて投資枠で購入できる投資信託は長期の積立や分散投資に適しており、初心者の方でも取り組みやすいです。
まずはつみたて投資枠で少額の投資信託の購入からスタートし、予算や投資方針の変化に合わせてポートフォリオを組み替えると良いでしょう。
まとまったお金がある場合は成長投資枠を
つみたて投資枠と成長投資枠の併用をおすすめする方の特徴は、以下の2つです。
- 幅広い商品に興味がある
- 積極的な投資をしたい
個別株やETFなど、成長投資枠ではつみたて投資枠よりも購入できる商品の選択肢が広がります。銘柄選びを工夫してご自身の考え方に沿ったポートフォリオを構築したい方には、つみたて投資枠と成長投資枠の併用がおすすめです。
また成長投資枠では、年間240万円まで投資できます。旧一般NISAより年間投資枠が増えており、積極的な活用を目指す方にとっては活用の幅が広がる仕組みとなっています。
すぐに売却はせず長期保有が基本
投資の基本は「長期・積立・分散」です。複数銘柄を長期的に積み立てることで、急激な価格変動のリスク軽減につながります。投資信託は銘柄の分散が効いているため、長期保有に適した商品といえるでしょう。
保有期間が長くなるにつれて、価格変動リスクの軽減につながります。無理のない範囲でコツコツ積み立てる計画を立てることが大切です。
新NISAの注意点
新NISAの内容で間違えやすいポイントは、以下の5つです。
- 旧NISAと新NISAは別枠
- つみたて投資枠だけで1,800万円まで使える
- 同じ商品をそれぞれの投資枠で購入もできる
- つみたて投資枠でスポット購入はできない
- 旧NISAと同じ金融機関でなくてもOK!
それぞれ順に解説します。
旧NISAと新NISAは別枠
旧NISAと新NISAの枠は切り離されており、それぞれの非課税保有限度額は独立しています。例えば2023年につみたてNISAの年間投資枠400,000円を使い切ったとしても、新NISAの非課税保有限度額は1,800万円のままです。
NISA制度の非課税措置を最大限活用したい方は、2023年内につみたてNISAの非課税保有限度額を使い切っておくと良いでしょう。
つみたて投資枠だけで1,800万円まで使える
1,800万円の非課税保有限度額はつみたて投資枠のみで使い切れます。つみたて投資枠の年間投資枠は120万円です。
一方、成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円までとなります。
同じ商品をそれぞれの投資枠で購入もできる
つみたて投資枠と成長投資枠で同じ投資信託を購入できます。例えばつみたて投資枠で運用している投資信託を、成長投資枠を使って買い増し可能です。
ただし、つみたて投資枠では一部の投資信託や上場株式などが対象外となります。同じ商品をそれぞれの投資枠で購入する際は、対象商品のリストを事前に確認しておきましょう。
つみたて投資枠でスポット購入はできない
つみたて投資枠で認められているのは、定期購入のみです。一方、成長投資枠は定期購入に加え、スポット購入が利用できます。
都合の良いタイミングで購入したい方は、つみたて投資枠と成長投資枠を組み合わせて活用しましょう。
おわりに
つみたて投資枠では、投資信託の積立購入が可能です。つみたてNISAと比較すると年間投資枠が拡大しているため、毎月の積立額の上乗せや複数銘柄への投資に活用が期待できます。成長投資枠と組み合わせて、ご自身の資産形成に活かしてみてください。
※本ページは2023年10月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。最新情報については、随時金融庁の以下サイトを確認してください。
金融庁「新しいNISA」