人生100年時代といわれ、老後資金を確保するための資産形成が必要になっています。これから資産形成を始める方もすでに始めている方も、運用益が非課税になるNISAは優先的に活用したい制度です。2024年からさらにNISA制度が拡充されたので、詳しく把握しておきましょう。
この記事では、つみたてNISAについて詳しく解説します。投資には元本割れするリスクがありますが、元本割れしにくくするポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- つみたてNISAは、元本割れのリスクを抑えられる可能性がある
- つみたてNISAが初心者向きである理由は、運用益が非課税になり、少額から長期投資できるから
- 新NISAは旧NISAと比べて非課税となる投資枠や保有期間が拡充された
- 投資対象が異なる投資信託へ長期分散投資するのが、リスクを抑えるコツ
※本記事は、2023年以前のNISA制度について記載しています。新NISA制度については以下の記事をご確認ください。
つみたてNISAは元本割れする可能性がある?
「つみたてNISAで元本割れした」「つみたてNISAは損する」など、SNSや個人ブログでの経験談を見たことがある方は、NISAを始めるのを躊躇してしまうかもしれません。
つみたてNISAは、「積立」という言葉がついていても積立貯蓄とは異なり、積立で購入するのはあくまでも値動きのある投資信託です。投資なので、売却した際に投資した金額(元本)を下回らない保証はありません。
しかし、つみたてNISAは投資初心者が投資を始めやすい仕組みになっています。その特徴は以下のとおりです。
【投資方法は積立のみ】
投資とは、値動きのある金融商品を買うことです。一番安い時に全ての金額を投資できれば良いですが、逆に一番高い時に買ってしまう可能性もあります。一度に多額の資金を投資すると、一番高い時に買ってしまった時には損失が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。
投資のタイミングをとらえるのは難しいので、あらかじめ決まった金額を続けて投資する「積立投資」をすれば、安い時に買い損なったり、高い時にだけ買ってしまったりする事態を避けられます。
つみたてNISAは投資方法が積立投資に限られているので、投資のタイミングを自分で選ぶ必要はありません。
【購入するのは投資信託のみ】
投資先にはさまざまな国や地域があり、金融商品(株・債券など)によってもリスクの大小が異なります。リスク(値動きの幅)を小さくするためには、値動きの異なる複数の資産に分散投資することが大切です。
さまざまな地域の金融商品(株や債券)を全て自分で買うためには大量の資金が必要です。この点、つみたてNISAではインデックスファンドと呼ばれる投資信託を購入するだけで、各市場全体の動きに連動した運用成果を期待できます。
投資信託とは、投資の専門家が投資家から集めた資金を一つにまとめて運用し、その成果(損益)を投資家へ分配する金融商品です。
投資信託を購入する場合、その投資信託が投資する対象(国や地域・株や債券など金融商品の種類)とその投資割合を確認して選べば、個別の銘柄を自分で購入する必要はありません。
【長期投資の効果が期待できる】
つみたてNISAでは、買った商品を最長20年間非課税で保有できます。金融庁の試算によると、投資地域や商品を分散して積立投資をした場合、保有期間が5年では元本割れする頻度が3~10%程度あったのに対して、保有期間が20年では元本割れする頻度がゼロでした。
つまり、このデータは投資地域や商品を分散した積立投資を長期間続けると、結果的に元本割れする可能性が低くなる傾向があることを示しています。
投資には値動きがありますが、過度に敏感になりすぎず、積立・分散投資を長期間続けることが重要で、それを実現できる仕組みがつみたてNISAには備わっています。
そもそもNISAとは
NISAとは、投資から得られる利益が非課税(通常税率20.315%)になる制度です。現行のつみたてNISAは2024年からさらに拡充されて新NISAとなります。その違いについても詳しく見ていきましょう。
現行のつみたてNISA
つみたてNISAは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するために2018年1月から開始した非課税制度です。
NISAにはつみたてNISAと一般NISAがあり、現行制度ではどちらか一方の選択制です。
1年間の投資額は40万円が上限で、いったん上限まで投資をすると途中で売却しても投資枠は復活しません。
つみたてNISAの概要 | |
利用可能者 | 日本在住の18歳以上の方(口座を開設する年の1月1日現在) |
非課税対象 | 一定の基準を満たした投資信託への投資から得られる利益 |
口座開設可能数 | 1人1口座ただし、つみたてNISA・一般NISA、どちらか一方を選択 |
非課税投資枠 | 1年間で40万円が上限(枠の再利用は不可) |
非課税保有期間 | 最長20年間 |
投資可能期間 | 2023年12月末まで |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した金融庁の基準を満たした投資信託。例えば公募株式投資信託の場合、以下の要件をすべて満たすもの ・販売手数料はゼロ ・信託報酬(投資信託の運用管理費用)は一定水準以下 ・顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知する ・信託契約期間が無期限または20年以上分配頻度が毎月でないヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていない |
新NISA(2024年~)
2024年からは新NISAとして制度が変更され、非課税投資枠が拡大し非課税期間が無期限になるなど制度がさらに拡充します。
現行NISAではつみたてNISAと一般NISAのどちらか一方の選択制でしたが、新NISAではつみたて投資枠(現行つみたてNISA)と成長投資枠(現行の一般NISA)の併用が可能になります。
2024年以降のつみたて投資枠の概要 | |
利用可能者 | 日本在住の18歳以上の方(口座を開設する年の1月1日現在) |
非課税対象 | 一定の投資信託への投資から得られる利益 |
口座開設可能数 | 1人1口座つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能 |
非課税投資枠 | 1年間で120万円が上限 |
非課税保有期間 | 無期限 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円(枠の再利用が可能) |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した金融庁の基準を満たした投資信託(現行のつみたてNISA対象商品と同様) |
現行制度との関係 | 2023年末までに現行のつみたてNISA制度で投資した商品は、新しい制度の外枠で、現行制度における非課税措置を適用 |
つみたて投資枠のみを利用した場合、1年間最大120万円の投資を続けると15年間で非課税保有限度額の1,800万円に到達します。
NISAは初心者が利用しやすい投資制度!理由は?
NISAは投資初心者にとっても利用しやすい仕組みになっている制度です。その理由を詳しく見ていきましょう。
利益は課税対象にならない
投資から得られる利益には通常は20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で取引した商品については非課税になります。
例えば、つみたてNISAで買った投資信託を20年後に売却した際に、売却益が10万円あったとしましょう。つみたてNISAで取引していない場合は、その利益から2万315円の税金が引かれ、手元に残る利益は7万9,685円になります。
一方、NISAで取引して10万円の売却益を得た場合は、売却益は非課税になりまるまる10万円が受け取れます。
投資から得られる利益が大きいほど、非課税の効果は大きくなるのが特徴です。
少額から投資できる
現行のつみたてNISAでは、1年間に40万円を上限に投資信託を買うことができ、証券会社によっては投資信託を100円から販売しているところもあります。
100円から投資信託を買える証券会社で少額からつみたてNISAを始めれば、気軽に投資ができるでしょう。また、ポイントを使って投資をすることもできる証券会社では、少額投資に加えてポイントも無駄なく投資に回すことができます。
ただし、投資金額が少なすぎると利益が出てもわずかで、備えたい目標額に到達できない可能性がある点に注意してください。
長期投資に適した商品から選べる
つみたてNISAやつみたて投資枠で投資対象となるのは、金融庁が定める基準を満たした長期・積立・分散投資に適した投資信託です。
具体的には、以下の特徴があります。
【販売手数料がゼロで、信託報酬(運用管理費用)も低い】
どんなに運用利益が大きくなってもコストが高ければ、実際に手元に残る利益は少なくなってしまいます。購入時や保有時に手数料(コスト)が抑えられることで、効率的な運用成果が期待できます。
【頻繁に分配金が支払われない】
投資信託の保有期間中は、運用利益を投資家に分配せずにその利益をさらに運用に回すことで、利益が利益を生む「複利効果」が期待できるメリットがあります。
2024年改正の新NISA!メリットは非課税保有期間の無期限化
NISA制度は2024年から新NISAとなり、制度が拡充してさらに使い勝手が良くなります。具体的なメリットを見ていきましょう。
【非課税保有期間は無期限】
現行のつみたてNISAでは、非課税で保有できる期間は最長20年です。つみたてNISAで投資信託を購入して20年経つと、売却をするか課税口座に移すかの2択になります。
仮に20年後に値上がりしていれば、売却して売却益を非課税で受け取れるので問題ありませんが、値下がりしていると、そのまま売って損失を確定させたくなければ、課税口座へ移管して保有を続ける方法があります。
ただし、課税口座でその後値上がりして売却益が出ると課税されますので、それ以前につみたてNISAで保有していた非課税メリットは全くありません。
新NISAでは、つみたて投資枠で買った投資信託の非課税保有期間は無期限になりますので、期間に縛られることなく老後資金の必要時など自分のライフプランに応じて、かつ投資信託が値上がりしているタイミングなどで売却することができます。
資金のニーズと売却益が出るタイミングとの重なる時期を選択しやすくなり、売却益非課税のメリットも受けやすくなります。
【非課税保有限度額(総枠)は1,800万円、枠の再利用が可能】
つみたて投資枠で年間最大120万円を積立投資すると、最短15年で非課税保有限度額(総枠)に達します。時間をかけたい方は、年間100万円ずつ18年、年間60万円ずつ30年など、自分のペースで積み立てることが可能です。
また、ひとたび1,800万円の非課税保有限度額(総枠)に達しても、資産を売却して1,800万円を下回ると、その下回った金額分の投資枠は復活でき、1年間の非課税投資枠の範囲内で投資ができます。
新NISAで元本割れしないポイントは?
投資は原則元本保証ではありませんが、元本割れしにくくするために値動きの幅(リスク)を小さくする方法はあります。リスクを小さくするためのポイントを見ていきましょう。
長期の運用をする
金融庁の試算によると、投資地域や商品を分散して積立投資をした場合に、保有期間が5年では元本割れする頻度が3~10%程度あったのに対して、保有期間が20年では元本割れする頻度がゼロでした。
つまり、投資する地域や商品を分散して積立投資を長期間続けると、結果的に元本割れする可能性が低くなる傾向があることがわかります。
値動きがある商品には、価格が上がる時もあれば下がる時もあります。しかし、国内・先進国・新興国の株・債券に1/6ずつ積立投資した際の過去の実績を見ると、一時的に値下がりすることはあっても、20年間(1995~2015年)という長期で見ると年平均4%の累積リターンが出ています。
リターンが比較的低い国内の株式・債券に半分ずつ投資した場合でも、20年間(1995年~2015年)で年平均1.9%の累積リターンが出ているので、国内定期預金(同期間の年平均0.1%)と比べると大きな差になることがわかります。
成長が見込める商品を選ぶ
NISAの最大のメリットは、運用から得られる利益が非課税になることです。通常20.315%かかる税金が引かれることなく運用益がまるまる手元に残るのは大きな魅力でしょう。
そのためには、まず運用益を得なければ非課税のメリットはありません。つまり、運用利をもたらしてくれそうな商品を選ぶことが重要です。
例えば、時間の経過とともに順調に成長が見込まれて値上がりしそうな地域・業種・企業などに投資をする投資信託(つみたてNISA・つみたて投資枠の場合)が挙げられます。
専門家の意見やコラムなどを参考に、こうした投資信託を選ぶとよいでしょう。
おわりに
つみたてNISAは、金融庁の基準を満たす長期・積立・分散投資に向く投資信託のみが投資対象のため、既にある程度のリスクを抑える効果が期待できる制度です。
新NISAのつみたて投資枠は、これまでのつみたてNISAと同様の商品を購入できる他、非課税投資枠が1年間120万円へ増額され、非課税保有期間も無期限へと拡充されました。投資にリスクはつきものですが、長期・積立・分散投資で、非課税メリットを活かした資産形成に取り組んでみてはいかがでしょうか。