ご自身が年齢を重ねるのと同じように、親や兄弟も歳をとってしまいます。ずっと健康であれば問題ないですが、介護が必要な状態になってしまうこともあるでしょう。
そんな時に助けてくれるのが介護保険制度であり、その中核を担うのが介護支援専門員(ケアマネージャー)です。ただ、どのケアマネージャーもあなたやご家族のニーズにピッタリ合うとは限りません。実はケアマネージャーを選ぶには、いくつかのポイントがあります。
このコラムでは、現役ケアマネージャーの目線で、良いケアマネージャーの選び方をご紹介いたします。
ケアマネージャーの質が上がっている
厚生労働省の「第23回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」によれば、令和2年10月時点でケアマネージャーは全国で716,225人も登録しています。合格率が20%を切る厳しい試験なのですが、毎年数千人以上の受験者が合格をしています。
登録人数が増えれば増えるほど危ぶまれる質の確保ですが、実はケアマネージャーの教育システムは医療・介護系職種でもトップレベルなのです。
参照元:厚生労働省
厳しい教育システム
ケアマネージャーは受験に合格すればすぐに業務を行えるのではなく、ケアマネージャーとなるには、合格後数ヵ月間の研修が必要です。この研修に合格しないと、ケアマネージャーと名乗ることができません。
さらにケアマネージャーは、他の医療・介護職には無い資格更新制度が導入されています。5年以内に必要な研修を全て受講し、そのすべてに合格しないと資格を更新することができません。ケアマネージャー業務を行っているだけでは、資格を保持することができません。
参照元:介護支援専門員実務者研修
コロナ禍で問われる応用力
日本では2020年1月23日に東京で初のコロナウイルスの感染者が報告されて以来、急速に日本中に広まりました。介護業界もコロナ禍で大打撃を受け、高齢者の生活スタイルも大きく変わってしまいました。
コロナウイルスの感染を恐れ家に閉じこもってしまう高齢者が増加し、介護施設もその経営が危ぶまれています。ケアマネージャーは介護や家族問題だけでなく、コロナウイルスに関する利用者本人の想いまで考慮する必要が出てきました。
より複雑化する状況に、より利用者本位に考えるケアマネージャーも増えてきています。皮肉なことにコロナウイルスが広まって以来、それぞれのケアマネージャーの力量が高まってきました。
参照元:NIID国立感染症研究所
ケアマネージャーの選び方
介護保険で重要な役割を持つケアマネージャーですが、どの方でもあなたの希望にピッタリ合うとは限りません。そこで、みなさんが納得できるケアマネージャーと出会うための方法をいくつか紹介します。
介護状態によって選ぶポイントが変わる
どの分野でも万能と思われることが多いですが、実はケアマネージャーにも得意の守備範囲があります。ケアマネージャーは医療・介護分野の資格を保有し、一定期間の実務経験を積んだ者が受験資格を得られます。その保有資格が介護系か医療系かで得意分野が分かれます。
より医療的な対応を求める方は、病院等の医療現場で働いた経験のある看護師や介護士など、医療のバックグラウンドを持つケアマネージャーが良いでしょう。介護を主に考える方は、介護系の資格を持つケアマネージャーをおすすめします。どちらにウエイトを置くかによって、選ぶケアマネージャーも変わってくるのです。
これらの情報はお住いの地域包括支援センターで問い合わせれば教えてくれます。また、地域包括支援センターもケアマネジメント業務を行っています。要支援と認定された方は、まず地域包括支援センターを訪ねると良いでしょう。
参照元:介護支援専門員受験資格
介護保険外のサービスについて詳しい
介護保険の費用負担は限度額を元に計算されています。一定数のサービスまでは1~3割までの支払いで済みますが、限度額を超えると全額自己負担となってしまいます。
介護保険を利用するからといって、全て介護保険で提供されるサービスを使う必要はありません。現在多くの自治体で介護保険外のサービスがいくつも提供されています。無料で利用できるサービスも数多くあります。
ケアマネージャーは、利用者の状況に合わせて臨機応変にプランを作成する必要があります。介護保険外のサービスを数多く知っているケアマネージャーはより多様なプランを提供してくれるでしょう。
フットワークが軽い
多くの利用者を抱え多忙なケアマネージャーですが、電話一本ですぐに対応してくれる方がおすすめです。利用者の状況は頻繁に変化します。その変化を的確に捉えて迅速に対応することがケアマネージャーには求められています。
特に緊急時の場合、対応が遅れると命取りになってしまう場合があります。普段からすぐに対応してくれる方であれば、安心感があるでしょう。
説明がわかりやすい
介護保険のサービスやシステムは、初めて利用する方にとって少々わかりにくいと思われています。そのため、介護保険の利用をためらってしまう方も多くみられています。
そのわかりづらい内容をいかに理解しやすく説明するのかが、ケアマネージャーの力量の見せ所です。その方に合った方法で説明し、納得できるまで対応してくれる方は臨機応変な対応も可能でしょう。たとえ困難な状況になったとしても、諦めずしっかりと対応してくれると思います。
事業所が家から近い
実は、事業所が家から近いことは大事なポイントです。口コミなどから評判の良いケアマネージャーを選んだとしても、事業所が家から離れすぎていると対応が遅くなりがちです。いくら良いケアマネージャーであっても、物理的な距離はどうしようもありません。
事業所から家が近いと対応が早く、より密な関わり方をしてくれる場合が多いです。事業所に戻るついでに近隣の利用者の様子を確認しに伺うケアマネージャーは、珍しくありません。
交代を考えた方が良い場合
せっかく担当ケアマネージャーが決まったとしても、100%利用者のニーズに応えてくれるとは限りません。担当してもらっている中で、いくつも不満点が出てくることはよくあります。
そのような時には、本当にそのケアマネージャーがその利用者に合っているのかを振り返ってみましょう。ここではケアマネージャーの交代を考えた方がいいポイントを紹介します。
電話がつながらない
多忙を極めるケアマネージャーは、もちろん担当の利用者が1人ではありません。居宅介護の場合では1人のケアマネージャーに対し、担当利用者数は35名が基準となっており、40名を超えると報酬が減額されてしまいます。
参照元:居宅介護支援
しかし、忙しいとはいっても毎回電話がつながらない、折り返しの電話が無いのは困りものです。そういう傾向があるケアマネージャーは、お願いしていたことの対応も遅くなる傾向があります。
ケアマネージャーに連絡する時は、迅速な対応を希望する場合が多いです。対応を待っている間により困難な状況になる可能性もあるので、対応が遅いケアマネージャーであれば交代を考えた方が良いでしょう。
話を聞いてもらえない
ケアマネージャーの中には、経験則で利用者を決めつけてしまう方もいます。利用者や家族の訴えを真剣に聞こうとせず、決まったパターンで施設やサービスを提案します。そのようにして決まったサービスは希望にそぐわない場合もあります。
ケアプランは利用者の状態や嗜好、経済状態や生活パターン、家族の意向等の全てを加味した上で作成しなければなりません。意見を伝えても反映してもらえない、一方的に施設やサービスをすすめてくるケアマネージャーが担当になった場合は要注意です。
系列のサービスしかすすめない
ケアマネージャーは、その部署単体ではなく複数の部署や施設を持つ母体に所属しています。自社の利益のために所属する団体の施設を紹介することはよくありますが、関連施設しか紹介しないケアマネージャーは考えものです。
もちろん全てニーズに沿っているのであれば問題は無いですが、何でもグループ内の施設で済まそうとするのは無理があります。必要に応じて介護保険外のサービスをすすめたり、ニーズに応じて臨機応変に他社の施設でも紹介するケアマネージャーの方が信頼できるでしょう。
おわりに
その方にあった介護保険サービスをコーディネートしてくれるケアマネージャーですが、全ての方が万能とは限りません。紹介したポイントを参考に、ご自身やご家族にあったケアマネージャーを見つけてください。