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成年後見人になる前に確認しておくべきこと3つ!

セゾンのくらし大研究 編集部

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高齢の親の財産管理に悩む方は多いと思います。親の財産管理をするために成年後見制度の利用を検討する方も多いのではないでしょうか。しかし、成年後見制度は複雑な制度ですので、利用する前にさまざまなこと理解して確認しておかなければなりません。この記事では特に重要な3つの事項について解説します。

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成年後見制度とは

成年後見制度とは、判断能力が不十分なため契約等の法律行為を行えない方(被後見人)を後見人が代理し、必要な契約等を締結したり財産を管理したりして被後見人である本人の保護を図る目的の制度です。

成年後見制度は、例えば、認知症等を理由に判断能力が衰えてしまった父親に対し、子どもが成年後見制度を用いて成年後見人となり、父親の財産を不当な契約などから守ることができるようになります。

民法第8条において「成年被後見人」は「精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人」と定義されています、ここでいう「精神上の障害」とは、加齢や認知症、その他の病気などさまざまな事情で十分な判断力を持っていない、持てなくなった方のことを含むと解されています。

なお、成年後見人とは、成年後見制度のもと、家庭裁判所により、本人(成年被後見人)の利益を守る代理人として選任された方をいいます。

なお、成年後見人は多くの権限を保有しているのも特徴のひとつです。被後見人の財産管理をすることができるため、便利になると考える方も多いでしょう。しかし、権限とともに重い義務もあるため、権限だけでなく義務もしっかりと理解することが重要です。

成年後見制度を利用する目的

成年後見人制度を利用する方は何か目的があって検討されていると思います。成年後見制度を被後見人の財産を守り生活を助けるために利用しようと考えている方が多いでしょう。この目的は必ず心得ておく必要があります。

親が高齢となり、金融機関での手続きや難しい判断ができなくなった際に、子どもが成年後見人となるケースが多くあります。親が自分で預貯金を引き出すなど、法律行為をできない場合、普段の生活が難しくなってしまいます。

そのような場合には、成年後見制度を利用することで、成年被後見人(先ほどの例では、父親)名義の預貯金を引き出したり、財産を処分したりすることができます。成年後見人が預貯金を引き出す際は成年被後見人のために使う目的で引き出すことが可能です。

このように、生活上で必要な判断を欠く方が、円滑に生活できるよう法律行為を成年後見人が代理人としてサポートできる制度として活用されています。

なお、成年後見人が自身の生活のために自由にお金を引き出して使ったり、株や債券、不動産で運用したりすることはできません。あくまで、成年被後見人の生活や財産を守るために使うことに限られ、成年後見人自身が自由に使えるわけではないということは認識しておく必要があります。

成年後見人の日常業務

日々行うべき業務は数多くあります。どのような業務を行う必要があるのか具体的に確認しましょう。

生活に必要な支払いの実施

成年後見人は、成年被後見人の生活に必要な支出を行います。生活に必要な支出とは電気、ガス、水道など、生活に欠かせないライフラインや医療や介護にかかる費用、日常の食費や日用品です。また、生活に必要な支出を行うために銀行口座に入っている預貯金を日々管理しておく必要があります。

銀行口座など預貯金の管理

成年後見人は銀行口座等から不必要に多額の出費を行っていないか注意深く確認しておく必要があります。成年被後見人が単独で多額の契約をした場合、成年後見人が取引を取り消すことができますので、入出金記録などを管理し、必要に応じて取り消しをする必要があります。

後見事務報告書を家庭裁判所に提出する

成年後見人は年に1回、後見事務報告書を家庭裁判所に提出する必要があります。その際に必要となるのが金銭出納帳です。成年後見人は銀行口座の入出金記録などを管理し、金銭出納帳を作成します。

金銭出納帳とは、口座の入出金などを記録するための帳簿です。金銭出納帳を日々作成しておかなければ、後見事務報告書を作成することが難しくなりますので、日頃から正確に記録しておくことが大切です。

成年後見人は必ずしも介護も行う必要は無い

成年後見人は身の回りのお世話もする必要があると思われている方も多いのではないでしょうか。しかし、介護などの身の回りのお世話は成年後見人が行うべき職務とはなっていません。特に子どもなどの相続人が成年後見人となる場合、介護の負担も大きくなりがちです。必要に応じて他の相続人と分担をするなど事前に話し合っておくのが望ましいでしょう。

成年後見人の業務外の行為

成年後見人が行う必要がある業務についてはしっかり理解する必要があります。成年後見人は多くの負担があります。必ず行う必要がある業務を確実に行うために、行う必要が無い業務との線引きは行っておきましょう。

多くの方が勘違いされているのは介護や部屋の掃除などの身の回りのお世話です。成年後見人となる際は自分が行う必要がある業務と必ずしも行う必要がない業務を区別しておく必要があります。

成年後見人になるための必要書類とは

成年後見人になるためには、家庭裁判所をはじめ、市区町村役場、その他各所より必要書類を準備する必要があります。必要書類について解説します。

裁判所で取得する書類

成年後見人になるためには裁判所で必要書類を取得しておく必要があります。裁判所でもらう書類には以下のものがあげられます。

  • 申立書
  • 申立者事情説明書
  • 後見人候補者事情説明書
  • 収支状況報告書
  • 相続人の関係図
  • 財産目録

市役所・区役所で取得する書類

成年後見人になるためには市役所や区役所でも書類を取得する必要があります。

  • 成年被後見人の住民票
  • 成年被後見人の戸籍謄本
  • 成年後見人の住民票
  • 成年後見人の戸籍謄本

その他の添付書類

家庭裁判所と市役所・区役所で取得できるもの以外で準備しておくべき書類について以下のとおりです。

  • 親族の同意書
  • 収支状況がわかる書類
  • 診断書
  • 本人情報シート(判断能力に関する書類でケアマネージャーに作成を依頼する)

成年後見人制度のメリット

成年後見制度を利用することのメリットは「判断能力が不十分な方を保護し、支援できる」ということに尽きます。これによって具体的に以下の3点のメリットが考えられます。

  • 財産を適切に管理できる
  • 権利の行使が適切にできる
  • 生活に必要な契約ができる

成年後見制度の3つのメリットについて詳しく解説していきます。

財産を適切に管理できる

成年後見制度の1つ目のメリットとして、財産の管理を適切に行うことができるという点を挙げることができます。判断能力が低下した方が「自身の預金がいくらあり」「いくらの支払いがあるのか」ということを適切に判断し、支払いなどの処理をすることは簡単ではありません。

しかし、成年後見人は成年被後見人の預金や不動産などの財産を把握し、管理する義務を負っていますので、成年後見人を立てることによって財産を適切に管理してもらうことができ、生活に必要な支払いなどを漏れなく行なってもらうことが可能です。さらに、預金や不動産を誰かに不当に処分されてしまう心配もありません。

権利の行使が適切にできる

2つ目は、成年後見人を立てることによって相続の際などに成年被後見人の権利を適切に行使することができます。判断能力が低下している方が相続を受ける場合など、他相続人間で不当な相続配分がなされ、相続分が小さくなるなど、不利な立場に置かれてしまう可能性がありますが、成年後見人がいることによって、成年後見人は成年被後見人が不利益を被ることのないよう、適切な権利の行使を行います。

生活に必要な契約ができる

3つ目は、成年後見人がいることによって、老人ホームへの入居契約など、生活に必要な契約を適切に行なってもらうことができます。判断能力が低下している方は、老人ホームの選定やケアの内容など、「何がご自身にとって適切なのか」ということを判断することが困難です。成年後見人が選定されることによって、生活に必要な契約を適切に代理してもらうことができます。

成年後見制度の注意点とは

メリットも多くありますが、注意点も理解しておく必要があります。注意点はどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続税対策ができない

高齢となった方に資産がある場合、さまざまな相続税対策を行なって相続税を圧縮しようと考える方も多いのではないでしょうか。しかし、成年後見制度を利用した方は生命保険契約や不動産購入など積極的な資産活用による相続税対策は行うことができません。

資産が多い方は対策を行うか否かで相続税の負担が大きく変わることもありますが、成年後見制度は生活を守ることを目的としているため、それ以外の行為は制限されるということは事前に理解しておく必要があります。

成年後見人の負担が大きい

成年後見人は、日々の現金出納帳などを作成するなど負担も多く、自分がその業務を継続して行えるかどうかもよく検討する必要があるでしょう。また、長期間にわたってその業務を行う必要があることも多いため自分の年齢やライフプランも考えて職務を継続することができるか判断する必要があります。特にお仕事をしている方は負担が非常に多くなります。

相続時にトラブルになる可能性も

成年被後見人は意思能力が無いことも多く、高齢のため、その後に相続が発生することも多くあり、相続人が成年後見人となった場合、亡くなった後に相続財産をめぐってトラブルになることもあります。

成年後見人となった方には重い義務が課され、様々な業務を行う必要があります。しかし、成年被後見人の財産を必ずしも多く相続するわけではありません。相続時の財産の配分は民法で決まっており、成年後見人となった相続人がもらえる財産が少ない場合もあります。

負担が多いことは成年後見人自身が一番良くわかっていますが、他の相続人は負担がいかに大きいかを理解していないことも多いため、成年後見人以外の相続人は法定相続割合で相続するべきと考え、成年後見人となった相続人と意識のずれが生じることも多くあります。

相続発生後のトラブルを防ぐために、他の相続人に業務内容を説明し、事前に負担の大きさをわかってもらうことも重要です。なお、遺産の分割については相続発生前に話し合っておく方が良いでしょう。また、成年後見制度を利用する以前に、事前に遺言などで遺産の分割をしておいてもらうのもひとつの方法です。

おわりに

成年後見人は責任と義務が伴います。成年後見制度を利用することで親のお金を自由に使うことができると考える方も少なくありません。しかし、実際は責任が重く、さまざまな業務を行う必要がありますので簡単に務まるものではありません。

「こんなはずじゃなかった」とならないように、成年後見制度を利用する前に心構えをしておくことが大切です。ご自身の生活環境や家族の状況も考えて成年後見人としての職務が務まるのかをよく検討してから利用するようにしましょう。

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