相続手続きは、遺言書がない場合、基本的に1.相続人の確定→2.相続財産の調査→3.遺産分割協議→4.相続財産の名義変更という流れで進められていきます。今回は、3.遺産分割協議についてご説明します。
1.相続人の確定→2.相続財産の調査は、こちらの記事で紹介しています。
「相続手続き①~相続人確定&相続財産の調査・編~ここだけは押さえておきたいポイントとは?」
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遺産分割協議とは?
被相続人が遺言書を作成しておらず、相続人が複数いる場合、相続人全員による「遺産分割協議」で遺産分割の内容を決定することになります。遺産分割協議は相続人全員の同意が必要で、ひとりでも反対する方がいると協議は成立しません。協議が成立したら、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名・捺印します。
遺産分割に期限はあるの?
遺産分割自体には法律上の期限はありません。ただし、相続税の申告については、「相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」と期限が決まっています。この期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、未分割のまま、いったん法定相続分で分割したと仮定して、相続税の申告・納税を行うことになります。
未分割で申告を行う場合、「配偶者の税額軽減の特例(※1)」「小規模宅地等の評価減の特例(※2)」など、相続税額を小さくするうえで非常に有効な特例が使えないため、こうした特例を活用できた場合と比べ、納税額が大きくなってしまいます。後日、遺産分割協議がまとまったあと、特例を活用して申告をやり直し、最初に申告・納税した相続税額との差額の還付を受けることも可能ですが、最初の申告・納税時の納税額が大きく、相続人の資金繰りを圧迫する場合もあり、注意が必要です。
※1 配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者が取得した遺産額が、法定相続分または1億6,000万円のどちらか多い金額までの場合、相続税がかからないという特例をいいます。
※2 小規模宅地等の評価減の特例とは、被相続人が居住していた土地や事業に用いていた土地などの評価を大幅に引き下げることができる特例。被相続人が居住していた土地の場合、一定の条件を満たせば、330㎡までの部分につき、80%の評価減ができる特例をいいます。
「二次相続」も視野に入れた遺産分割の検討を
夫婦の片方が先に亡くなった場合の相続(「一次相続」)のあと、残された配偶者が亡くなった場合に発生する2回目の相続のことを「二次相続」といいます。一次相続における遺産分割にあたっては、二次相続時の相続税額まで視野に入れた検討が重要となります。
例えば、夫婦の間に2人の子どもがいた場合について考えてみます。夫が先に亡くなると、妻と子ども2人の計3人が相続人となります。夫の遺産の額が1億6,000万円以下の場合、妻が遺産の全額を取得すれば、先述の「配偶者の税額軽減の特例」を使うことにより、一次相続時の相続税額をゼロにすることができます。
その後、妻が亡くなった後の二次相続においては、子ども2人が相続人となります。一次相続時と比べ、相続人が1名減少し、相続税の基礎控除額(※3)が減少することに加え、一次相続で取得した夫の財産を加えた妻の財産が相続の対象となるため、「一次相続では相続税を納めずに済んだけれど、二次相続までトータルで考えた場合、結局、相続税の負担が大きくなってしまった」ということもあるのです。
このような事態に陥らないようにするためには、二次相続まで見越したうえで一次相続の遺産分割を検討する必要があります。相続税に詳しい税理士のアドバイスを受けながら、検討を進めると良いと思います。
※3 相続税の基礎控除額とは、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出します。
円滑な遺産分割協議が難しいと思われる場合は、遺言書の作成を
以下のようなケースでは、円滑な遺産分割協議が難しい可能性があります。このような場合、生前に遺言書を作成しておくと、亡くなったあとの相続手続きがかなり楽になるだけでなく、無用のトラブルを回避することもできます。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合
子どもがいない夫婦(直系尊属は既に全員他界)の場合、夫が亡くなると、妻と夫の兄弟姉妹が相続人となりますが、夫を亡くした悲しみのなかで、夫の兄弟姉妹とお金の話をしないといけない妻の心情は察するに余りあります。
「長い人生をともに過ごした配偶者の老後資金を確保してあげたい」と考える方は多いと思いますので、このようなケースでは「全財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書を作成しておくと良いと思います。兄弟姉妹には遺留分(一定の相続人に認められた最低限の遺産取得分)がないため、遺留分侵害をめぐるトラブルの心配もありません。
相続人同士の円滑なコミュニケーションが難しい場合
「子ども同士のきょうだい仲が良くない」「配偶者と前妻(前夫)との間の子どもが相続人」というような場合は、相続人同士の円滑なコミュニケーションが難しいと思われます。
また、おひとりさま(配偶者、子どもがおらず、直系尊属も既に全員他界)の相続の場合、兄弟姉妹やその代襲相続人である甥・姪たちが相続人となり、相続人の数が非常に多くなるケースがあります。
なかには連絡先すらわからない方もいるかもしれません。こうなると遺産分割協議を行うこと自体、物理的に困難になってしまいますので、遺言書で遺産の行く先を決めておくことをおすすめします。
相続人の中に認知症の方がいる場合
認知症などで判断能力が不十分な方の場合、その意思表示は法的には無効とされます。しかし、遺産分割協議は相続人全員の同意を必要としますので、認知症の相続人を除外して行うことはできません。
認知症の相続人がいる場合、代理人を選任する必要があります。具体的には、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てを行うのですが、選任の手続きに数ヵ月の期間を要するうえ、費用もかかります。ただでさえ複雑な相続手続きをさらに複雑化させないためにも、認知症の相続人がいる場合、あらかじめ遺言書を作成しておくべきでしょう。
平等に分割しづらい財産構成の場合
「平等に分割するのなら、文句はないから」という相続人は多いのですが、相続財産のなかには、金融資産のように平等に分割しやすい財産がある一方、不動産や経営する会社の株式など、平等な分割がなかなか難しい財産が含まれることがあります。
このような場合は、遺産分割時のトラブルを回避する観点から、遺言書の作成が有効です。専門家のアドバイスのもと、遺留分に配慮しながら作成すると良いでしょう。
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