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任意後見制度の問題点とは?ここだけは押さえておきたいポイント!

任意後見制度の問題点とは?ここだけは押さえておきたいポイント!
セゾンのくらし大研究 編集部

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豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

将来、判断能力が衰えた場合に必要な支援が受けられるよう、あらかじめ、本人の判断能力があるうちに、信頼できる方(任意後見受任者)との間に契約(任意後見契約)を結んでおく任意後見制度。実際に本人の判断能力が不十分となった段階で契約が発効し、任意後見契約に基づく支援がスタートします。

法定後見制度(本人の判断能力が衰えた状態になったあと、家庭裁判所に申立を行い、後見人等を選任してもらう制度)と比べて自由度が高く、本人の希望を反映した支援が受けられる点が魅力とされていますが、留意点も存在します。以下、見ていきたいと思います。

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任意後見人には「取消権」がない

法定後見制度における後見人は、本人の日常生活に関する行為以外のすべての法律行為について代理権を有しており、これに加えて「取消権(日用品の購入その他日常生活に関する行為を除く)」も有しています。

取消権とは、「本人が行った法律行為が本人にとって不利益となる場合に、取り消すことができる権利」です。これに対し、任意後見人には、任意後見契約に定める範囲で、本人の代理権はあるものの、取消権はありませんので、注意が必要です。

おひとりさまの任意後見契約は誰と結ぶの?

2019年の法務省調査では、任意後見受任者の内訳は、親族の割合が最も高く、約70%となっていますが、頼れる親族がいないおひとりさまは、弁護士、司法書士などの専門家や社会福祉法人などの法人との間に任意後見契約を結ぶケースが多いようです。

この場合、2つ問題点があります。

1つは、任意後見契約発効後のコストです。親族が任意後見人となる場合は、任意後見人の報酬を無報酬とすることも多いと思いますが、専門家や法人等が任意後見人となる場合、無報酬というわけにはいきません。任意後見人に支払う報酬と任意後見監督人に支払う報酬を合算すると、法定後見制度を利用する場合よりもコスト高になる場合もあります。

もう1つは、任意後見契約締結後、本人と任意後見受任者とが疎遠となってしまうリスクです。任意後見契約は、本人に判断能力があるうちに締結しますが、実際に本人の判断能力が衰え、任意後見監督人選任申立が必要になるのは、何年先になるかわかりません。

本人とのコミュニケーションが容易に取れる親族(特に同居の家族)であれば、本人の状態の変化の把握についても問題がないと思われますが、専門家や法人の場合、どうしても本人と疎遠になりがちです。本人の状態の変化に気付かないまま、いつまで経っても任意後見監督人選任の申立が行われない可能性もあります。

任意後見契約を補完する「見守り契約」と「財産管理契約」

本人と任意後見受任者とが疎遠となってしまうリスクを回避する観点から、任意後見契約を補完する契約として活用されているのが、「見守り契約」です。見守り契約は、定期的な電話連絡や訪問等を通じ、本人の安否確認や健康状態の把握を行うための契約で、本人と疎遠になることを防ぐとともに、任意後見監督人選任申立を行うタイミングを適切に判断しやすくなります。任意後見契約と異なり、契約締結と同時にその効力を発生させることができます。

「財産管理契約」は、「判断能力に問題がなく、任意後見契約に基づく支援を受けられない状態ながら、身体が不自由になってきたので、任意後見契約発効前から財産管理上のサポートを受けたい」という方に適した契約です。

見守り契約同様、契約締結と同時にその効力を発生させることができ、契約内容に基づき、預貯金の口座の管理、地代・家賃等の受領、税金や公共料金等の支払い、日用品の購入、郵便物の管理などのサポートが受けられるようになります。こうした契約は、締結しておくと確かに安心なのですが、任意後見契約発効前の段階で、専門家や法人に毎月支払う報酬が別途発生することになります。

発効しないままの任意後見契約。実利用の本格化には道半ば?

現在、登記されている任意後見契約の数(閉鎖登記を除く)は100,000件を超えているとされています。また、法務省、最高裁の調査等によれば、年間の任意後見契約の登記件数は、2015年に10,000件を突破し、その後もコンスタントに10,000件~14,000件程度の水準をキープしている一方、ここ数年の任意後見監督人選任申立の件数は、年間700~800件程度の低水準で推移しています。

80歳を過ぎてから任意後見契約を結ぶ方が多いなか、この数字は極めて不自然で、本来は任意後見監督人を選任すべき状態になっているにもかかわらず、選任の申立がなされていない事例が相当数にのぼることがうかがえます。

発効すべきタイミングが訪れているのに、発効しない任意後見契約…。その背景には、さまざまな理由が考えられます。任意後見監督人選任申立手続きの煩雑さ、契約発効後に発生する任意後見監督人への報酬の支払いや報告などを負担に思い、任意後見契約をあえて発効させず、本人のための財産管理等をできる範囲で行っている親族も多いのかも知れません。

また、「母と任意後見契約を結んでいます。数年前、母の認知症の症状が悪化してきたので、任意後見監督人選任の申立を行いたいと思い、妹に話したところ、『お姉ちゃん、お母さんの財産を好き勝手に使うつもりでしょ!(そんなことが起きないように、任意後見監督人を選任するのですが)』と猛反発され、任意後見監督人選任の申立ができないままになってしまっています」というご相談事例もあります。

魅力的な面も多い任意後見制度ですが、現段階では、まだまだ使い勝手が悪い面があり、実利用が進んでいるとはいい難い状況です。利用促進を図るために、運用の改善や必要に応じた法改正を求める識者の声もあります。一方で、超高齢社会を生きる私たち一人ひとりにとって、任意後見制度を含めた成年後見制度について、正しい知識を身につけるための努力が求められていると思います。

成年後見制度についてのお問い合わせは、セゾンの相続まで!

セゾンの相続では、成年後見制度についての情報提供を行っており、成年後見人選任申立書や任意後見契約書の作成をサポートしてくれる司法書士などの専門家のご紹介も可能です。この機会にお気軽にお問い合わせください。

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