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家族信託のトラブル事例とは?回避方法を知って上手に利用しよう

家族信託のトラブル事例とは?回避方法を知って上手に利用しよう
セゾンのくらし大研究 編集部

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豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

「うちの家族が認知症になったら、銀行口座などはどうなるのだろう」という心配を抱えていらっしゃるなら、事前に対策を講じるのが重要です。対策のひとつとして家族信託が挙げられますが、優れた方法であるものの、トラブルも散見されるので注意しましょう。

今回の記事では、家族信託を検討なさっている方のために、トラブルと防止対策を中心に解説します。

この記事を読んでわかること

  • 家族信託では「信託契約書が法的に無効だった」「一部の家族に黙って進めて後で言い争いになった」「そもそも家族が認知症になってしまい契約ができないといわれた」などのトラブルが起こりえる
  • トラブルを回避するためには、ご家族が全員で話し合いをし、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要
  • あえて家族信託ではなく成年後見人制度を使ったほうが良いケースも存在する
  • 「我が家の場合の最善」を考え、一つひとつ丁寧に進めることがおすすめ
家族信託サポート
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そもそも家族信託とは?

そもそも家族信託とは?

家族信託は2006年の信託法改正を受け、翌年2007年からスタートした比較的新しい制度です。言葉自体を聞いたことがなかったり、聞いたことがあっても内容がわからなかったりする方もいらっしゃるかもしれません。そこで最初に、家族信託とはどんな契約なのかを詳しく解説します。

家族信託の概要

家族信託とは、認知症など、将来的に判断能力が低下した場合に備え、信頼できるご家族に財産の管理を任せる手法をいいます。

所有権を財産権(財産から利益を受ける権利)と管理権(財産を管理・運用・処分できる権利)とに分け、前者のみを本人に残し、後者は家族に渡す契約と考えましょう。

家族信託と成年後見人との違い

家族信託と混同されがちなものに成年後見制度があります。

簡単にいうと、家族信託は万が一に備えて信託契約を結んで財産を管理してもらう方法であるのに対し、成年後見制度は判断能力が不十分と判断された方のために財産管理や身上監護などの契約を行う制度です。

成年後見制度はさらに、法律に基づく法定後見と、当事者の意思に基づく任意後見があります。より細かい違いは、以下の表にまとめたので参考にしてください。

家族信託 法定後見 任意後見
目的 認知症への備え・生前からの財産承継 判断能力が不十分な方の支援 判断能力があるうちに行う自身の希望に沿った内容での支援の依頼
身上監護権の有無 なし あり あり
財産処分自由に運用・処分可能 財産維持が原則 財産維持が原則
財産処分における家庭裁判所の許可不要 必要 必要
監督 信託管理人を任意で設定 家庭裁判所または後見監督人による監督  家庭裁判所または後見監督人による監督

家族信託のメリットとデメリット

家族信託のメリットとデメリット

家族信託にはメリットがある一方、デメリットもあるため注意が必要です。それぞれについて詳しく解説します。

家族信託のメリット

家族信託のメリットは以下のとおりです。

  • 成年後見制度よりも柔軟な対応ができる
  • 認知症による財産凍結に備えられる

まず、家族信託においては、委託者(財産の管理を頼んだ方)の財産を受託者(財産の管理を頼まれた方)が処分する際は、特に家庭裁判所の許可はいりません。

また、成年後見制度では財産の維持=損失を出さないことが重視されるので運用はできませんが、家族信託では自由にできます。

加えて、元気なうちから家族信託契約を結ぶことで、認知症による財産凍結に備えることが可能です。

例えば、認知症を発症して判断能力が低下してしまった場合、銀行口座が凍結され、家族でも現金が引き出せなくなることがあります。

他に当てがなければ本人や家族の生活費を確保できず、生活に多大な支障が生じるはずです。しかし、事前に家族信託契約を結んでおけば、仮に認知症を発症して判断能力が低下してしまっても、受託者である家族が銀行口座から現金を問題なく引き出せます。

家族信託のデメリット

一方、家族信託のデメリットは以下のとおりです。

  • 判断能力が低下すると信託契約を結べない
  • 受託者に課せられる義務が多く管理作業が大変

大前提として、家族信託は委託者の判断能力が低下したら締結することができません。契約を結ぶ以上、一定以上の判断能力があることが前提になるためです。

また、家族信託において受託者となる方は、善管注意義務や忠実義務などさまざまな義務を負います。

毎年1回、一定の時期に貸借対照表や損益計算書を作成し、その内容を受益者に報告しなくてはいけません(帳簿等の作成等・報告・保存の義務、信託法第37条)。

つまり、何かとやらなくてはいけないことが多く、管理作業も膨大になる点に注意が必要です。

家族信託で考えられる失敗例とは?

家族信託で考えられる失敗例とは?

家族信託は何かと便利な契約ではあるものの、慎重に進めないとトラブルのもとです。ここでは、家族信託で考えられる代表的な失敗例を紹介します。

両者間の契約のみで済ませた

家族信託契約を締結する際、信託契約書を私文書で作成するとトラブルになりがちなので注意しましょう。信託法上では、信託契約書の作成は私文書であっても問題ないという解釈がなされています。

しかし、私文書は当事者同士での作成書類に過ぎず、後になって偽造される可能性もゼロではありません。

また、保管した場所を忘れたり、紛失したりする可能性もあります。そもそも、当事者のみで作成した信託契約書の場合、法的に有効となる条件を満たせないリスクもあるため注意が必要です。

一方、公正証書は公証人が作成した信憑性の高い文章であり、偽造される可能性も極めて低いでしょう。また、公証役場に原本が保存されているため、紛失するリスクもありません。

後述する信託口口座を作る際も、内容に特段問題がない信託契約を締結したことの証明になるため、手続きがスムーズに進められます。

信託口口座が開設できない

家族信託を行うためには、専用口座=信託口口座が必要になります。

しかし、信託口口座は全ての金融機関で扱っているわけではありません。普段使っている金融機関で信託口口座の扱いがない場合は、別の金融機関を検討することになります。

早めに情報収集をし、どこの金融機関を使うか決めておきましょう。

想定外の税金の支払いが発生

家族信託で起こりがちなトラブルのひとつに、想定外の税金の支払いが発生することが挙げられます。具体例は以下のとおりです。

  • 委託者以外に受益権を移転させたので贈与税が発生した
  • 受益者の不動産所得が増え、相続時に支払う相続税が高額になった

このようなトラブルを避けるためには、「どのような場合に税金が発生するか」を踏まえて信託契約書を作成しなくてはいけません。司法書士や税理士など、専門家にも相談して進めましょう。

家族仲が悪くなる

家族仲が悪くなる

家族信託が原因で家族仲が悪くなるケースもあります。

一部のご家族が無断で手続きを進めたことで、他のご家族が「そんな話は聞いていない」と言い出すなど、トラブルに発展するおそれもあるので注意してください。

家族信託を行う際は、委託者・受託者・受益者になる方以外のご家族とも話し合いをし、理解を得ておきましょう。

相続人の遺留分問題が発生する

相続人の遺留分問題も避けて通れません。

遺留分とは、被相続人(亡くなった方)と一定の関係にある相続人(両親、子など)に認められる法律上最低限の財産の取り分です。遺留分が認められる家族・親族と遺留分は以下のとおりです。

配偶者 1/2
子 1/2
父母 1/3
兄弟姉妹 なし
配偶者+子 配偶者、子ともに1/4
配偶者+父母 配偶者は1/3、父母は1/6
配偶者+兄弟姉妹 配偶者1/2

仮に、家族信託契約書の内容が遺留分を侵害するものだった場合、侵害する部分の契約が無効になる可能性があります。

相続が発生した場合、誰が相続人になるのか、遺留分が認められる相続人とその相続分はいくらかを把握し、侵害しない形で信託契約を結びましょう。

抵当権について調べず不動産を家族信託の対象にした

抵当権について調べず不動産を家族信託の対象にしたことで、ローンの一括返済を求められるトラブルも起こります。

抵当権が付いている不動産は、金融機関の承諾がなければ信託登記を行えないためです。融資の契約違反として扱われ、ローンの一括返済を求められます。

名義が委託者の方になっている不動産がある場合は、その不動産に抵当権が付されていないか調べておきましょう。付されていた場合は、金融機関に相談するのをおすすめします。

初期費用が高額のため他の家族ともめる

家族信託の手続きを司法書士などの専門家に依頼した場合、相応の報酬がかかります。独断で手続きを進めると、委託者の資産=将来の相続財産を減らしかねません。

他のご家族からの理解も得られるよう、複数の専門家から見積もりを取り、他のご家族にも相談しながら進めましょう。

30年ルールで継承できない

信託期間が長期にわたる信託契約を結ぶ場合、注意が必要です。

信託法においては、信託契約の締結から30年を経過したのち、前の受益者が亡くなったことにより新たに受益権を取得した場合は、その方が亡くなるまでしか効力を有しないと規定されています(信託法第91条)。

いわゆる30年ルールです。委託者のお孫さんに財産を承継したい場合でも、信託契約から30年経つと財産の承継は一度しか行われないため、とん挫する可能性があります。

さらに、受託者が死亡してから1年間、次の受託者が決まらなかった場合、強制的に信託契約が終了することにも注意してください(信託法163条3項)。

家族信託を検討している際に認知症に

家族信託を検討しているうちに、委託者になる方が認知症を発症してしまうと、とん挫するおそれがあります。大前提として、家族信託契約は委託者本人に十分な判断能力がないと契約を締結できないためです。

認知症であっても発症してすぐであれば、十分な判断能力が保たれているかもしれませんが、急速に病状が悪化することもあるため一概にはいえません。

認知症を発症していない元気なうちに契約するのを前提に進めましょう。

身上監護権の設定ができない

家族信託では身上監護権は設定できません。あくまで財産の管理・運用・処分のみを委託することが前提の契約であるためです。

なお、身上監護権とは生活や健康、療養等に関する法律行為を行う権利です。例えば、病院に入院するときの手続きを判断能力が乏しい方に代わって行う場合は、身上監護権が設定されていなくてはいけません。

実際のところ、入院する本人の家族であれば手続きを代わりに行えることがほとんどです。しかし、身上監護権が設定されていない家族以外の方が行うのは難しく、トラブルの原因にもなります。

家族信託契約とは別に、身上監護権については任意後見契約を締結してフォローするなど、相応の対策が必要になるでしょう。

家族信託でトラブルを発生させないための対策

家族信託でトラブルを発生させないための対策

家族信託は便利な制度ではあるものの、万能ではありません。使い方によってはトラブルを招く原因にもなるため、相応の対策を講じる必要があります。具体的な対策として、以下の3つを実践しましょう。

  • 家族全員で家族信託について話し合う
  • 家族信託以外の方法も考える
  • 専門家に相談する

家族全員で家族信託について話し合う

まずは家族全員で家族信託について話し合いをし、知識を深めましょう。一部の家族だけで進めると、「そんな話は聞いていない」「家族信託なんて知らない」と反発を招きかねません。

齟齬を防ぐためにも、事前のコミュニケーションは重要です。そのうえで、家族信託を導入するのか、受託者は誰が引き受けるのかなど具体的な話し合いをすると良いでしょう。

家族信託以外の方法も考える

家族が将来的に認知症を発症し、判断能力が低下した場合に備える方法は家族信託だけではありません。

成年後見制度も活用する余地があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、相続対策自体をしたほうが良いのかも含めて考えましょう。

専門家に相談する

家族信託でのトラブルを防止するためには、専門家に相談するのも有効です。

家族信託における信託契約書にはテンプレートが出回っていますが、知識が不足している方が作成しても不十分なものしかできないでしょう。

ミスが起きたり、余計な税金を払うことになったりなど、想定外のトラブルも起きてしまいます。

トラブルを回避するためには、専門家への相談が有効です。「セゾンの相続 家族信託サポート」では、家族信託に習熟した司法書士と提携し、さまざまなお悩みに対応しています。

相談だけなら無料なので「うちの場合はどうすれば?」とお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

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おわりに 

家族信託は便利な制度ですが、よく理解せずに進めてしまうと思わぬトラブルにつながります。家族信託自体を使うべきか、使うなら誰を受託者にすべきかなど、決めるべき点はたくさんあるので、丁寧に進めていきましょう。

また、法律の誤解による判断ミスを避けるには、専門家への相談が有効です。家族信託に習熟した司法書士に相談し「うちの場合はどうするのが最良か」を考えながら取り組むのをおすすめいたします。

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