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老化の原因「糖化」とは?原因と予防法を紹介

老化の原因「糖化」とは?原因と予防法を紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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老化を促進する要因として注目されている「糖化」。活性酸素による酸化が「体のサビ」と言われるのに対して、糖化は「身体のコゲ」と呼ばれ、肌のシミやくすみ、シワ、たるみなどの美容面の悪影響だけにとどまらず、身体のさまざまな不調を引き起こす要因です。

「食事は治療」をポリシーにする管理栄養士の金津里佳さんに、糖化のメカニズムや考え方などについて伺いました。

糖化のメカニズム

糖化のメカニズム

「糖化」とは、エネルギーとして消費しきれなかった血液中の余分な糖質と、たんぱく質が結びつき、そこに体熱が加わった反応のことで、「メイラード反応」とも呼ばれます。

糖化するとたんぱく質は変性・劣化し、使いものにならなくなります。そして最終的に「AGE=Advanced Glycation End Products(終末糖化産物)」という非常に毒性の強い物質を生成します。

糖化ダメージ

糖化ダメージ

通常、AGEは代謝によって体外に排出されますが、加齢による代謝能力の低下や、食事の偏りによって、体内に蓄積されやすくなります。

AGEは身体のたんぱく質にダメージを与え、免疫力の低下や肌の劣化など、たんぱく質本来の働きを低下させてしまいます。

免疫力

昨今、インフルエンザなどのウイルスによる感染症が気になります。

私たちヒトには、咳やくしゃみで排出されなかったウイルスを、ASL(気道表面液)によって排除する仕組みがあります。ASLと血糖値のブドウ糖濃度には相関があり、ブドウ糖濃度が上昇するとAGEが増加して、ASLの働きを阻害してしまいます。

したがって、糖化を予防することは免疫力を上げることにつながるのです。

美容

肌のハリ・弾力のもととなるコラーゲンは、たんぱく質、鉄、ビタミンCで作られます。たんぱく質が糖化するとコラーゲンは硬くなるため、シワ・たるみが顕著になり、顔の輪郭もシャープさを失います。年齢を重ねると肌の黄ぐすみが気になりますが、これもAGEの量が増えることが原因と考えられています。またシミ部分にはAGEが大量発生しているといわれています。

髪の構成成分もたんぱく質です。そのため、AGEが増えると、髪の内部が軟化し、ハリやツヤ不足に陥ります。

血管

血管もコラーゲンでできています。手の甲に浮き出る血管はコラーゲン劣化のサインです。また血管組織が硬くなると、心臓から血液を押し出す圧が余計にかかるため、高血圧や動脈硬化のリスクが高まります。結果、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患にもつながります。

骨は、コラーゲンにカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が結晶化したもの。骨の体積の半分はコラーゲンで構成されています。コラーゲンがAGEから影響を受けると骨の合成スピードが低下し、骨粗鬆症の引き金になります。

軟骨の成分にもコラーゲンが含まれています。運動不足や体重過多を指摘される“膝軟骨のトラブル”も、実はコラーゲンの糖化が起因しています。

認知機能

たんぱく質は脳のさまざまな機能を担っています。脳の認知機能とAGEの蓄積には相関関係があり、アルツハイマー型認知症は、3型糖尿病と言われています。

その他の疾患

女性ホルモンの影響といわれる、ばね指”や、加齢によるものとされる“五十肩”もAGEと大きく関係しています。さらにAGEは、糖尿病やがんなどの疾患の要因にもなります。

糖化は思っている以上に、トラブルや病気の原因になっているということを覚えておきましょう。 

糖化を起こしやすい理由は?

糖化を起こしやすい理由は?

AGEを大量に生み出す根本原因は主に2つあります。順番に見ていきましょう。 

エネルギーを生み出す栄養素を糖質に依存している

食べたものをエネルギーに変える際、三大栄養素の中でもたんぱく質は身体を作ることに使われるため、脂質と糖質が主にエネルギーに変換されます。麺類や丼ぶり物など、糖質メインの食事では、エネルギーを生み出す栄養素が糖質に偏るため大量にAGEが生産されます

腸粘膜の状態が悪い

食卓にさまざまな料理が並んでいても、その栄養をすべて体内に取り込めているわけではありません。特に腸粘膜に炎症があると、たんぱく質や脂質、ビタミン・ミネラルなどの大事な栄養素が消化吸収されにくくなります。一方、逆に吸収されるスピードまで上がるのが糖質です。血糖値も一気に上がります。

腸粘膜の炎症は、エネルギーを生み出すために必要な栄養素を不足させるため、身体は糖質だけでエネルギー産生できる回路を回すことになります。このことが糖質ばかりを欲するようになる原因です。慢性的な栄養不足にも陥りやすくなります。

糖化を起こしやすい人は?

糖化を起こしやすい人は?

糖依存からの脱却、腸の正常化、栄養不足の改善が糖化を進ませないキーワード。以下の食生活に当てはまる方は要注意です。 

炭水化物の摂りすぎ

お米やパンなどの炭水化物は、厳密にいうと糖質+食物繊維のことですが、炭水化物=糖質ともいわれます。日本人の栄養バランスの理想は炭水化物50~60%、脂質20~30%、たんぱく質13~20%といわれていますが、現代人の身体の組成バランスで考えると、身体づくりに必要なたんぱく質は4割で、糖質は1%未満です。また糖質は自分の中で作れるので、極端に言えば食事で糖質をわざわざ摂取する必要がないのです。

普段から過剰に蓄えがあるうえ、さらに炭水化物をたくさん摂ることで、AGEを防御したり、排出するシステムも追いつかなくなります

すぐにお腹がすく

食後すぐにお腹がすく、日中我慢できないほど空腹になる方は、血糖値の乱高下が疑われ、高血糖によるAGEが産生されている可能性があります。

ちなみに、空腹になりやすい時間は明け方4時頃と夕方4時頃と言われています。その時も我慢できるくらいの空腹かどうか、意識してみてください。

ベジファースト派

血糖値を急激に上昇させないために、一時期ブームとなったベジファーストですが、もともと食べる量が少ないシニア女性の場合は先に食べる野菜でお腹いっぱい!なんてこともあるようです。野菜ばかりの食事で栄養不足になると、糖質を摂りたくなる状態になります。

パンやパスタ、乳製品をよく摂る

腸粘膜の炎症をケアするには、「入れない」食品を意識することが大切です。小麦のグルテンや乳製品のガセインはヒトの消化酵素では切れない成分なので、人によっては食べると腸の炎症を起こすことがあります。腸粘膜の炎症をケアするには、体内に「入れない」食品を意識することが大切です。

朝食を果物やスムージーで済ませる

果物や野菜の手作りジュースのビタミンは壊れやすく、食物繊維も除いてしまうため、糖質がメインの飲み物ともいえます。

さらに果物に含まれている果糖は肝臓でしか消費できないので、肝臓に非常に負荷がかかり、隠れ脂肪肝を引き起こす要因にもなります。果糖はブドウ糖と比べると血糖値を上げにくい反面、7倍ものスピードで糖化(メイラード反応)を引き起こすといわれています。

甘いものに手がのびやすい

甘いものなど糖質を食べるとすぐに血糖値が上がるので、元気になったような錯覚をもたらしますが、実は身体にとってダメージが大きいのです。急激に上がった血糖値は今度は急激に下げられて、眠気やだるさを引き起こします。その後も血糖値の乱高下を繰り返すため、イライラや不安などの要因となってしまいます。AGEもどんどん蓄積されてしまいます。

消化の良いものを勘違いしている

例えばおかゆは胃腸に優しいイメージがありますが、糖質は消化するまでに時間がかかり、逆にたんぱく質を胃は最優先で消化します。
ということは、“おかゆ”(糖質)と“ステーキ”(タンパク質)で比べた時に消化がいいのは“ステーキ”だということになります。

また、糖質が多い食事で血糖値が上がると、血糖値を下げるインスリンが過剰分泌されるため、胃に内容物があるのにお腹がすく、という偽りの空腹を感じることがありますこれが消化が良いと勘違いされる理由です。

糖化抑制のために知っておきたいこと

糖化抑制のために知っておきたいこと

糖質を抑える食事のコツは簡単です。さらに避けなくても良い食事や、無理に摂らなくても良い食品もここで確認しましょう。

朝食にたんぱく質を摂ろう

朝食をパンやおにぎりなど糖質だけですませると、午前中のうちにお腹がすきやすくなります。そんな血糖値が一気に上がって下がる状態は、AGE蓄積も加速します。朝は、納豆や卵などたんぱく源を摂り入れるようにしましょう。

気持ちよくお腹いっぱいを心がける

夕食はお肉やお刺身などたんぱく質の料理を多めに用意しましょう。おかわりする場合はご飯などの炭水化物ではなく、たんぱく質のおかずを食べるようにしましょう。たんぱく質摂取には推奨目安量があり、摂りすぎを気にする方もいるかもしれませんが、それが自分にとって正しい量とは限りません。気持ち良いところで食事を終わらせるのが、自分に合ったたんぱく質を摂る目安です。

たんぱく質でお腹が満たされていると、食後のスイーツは自然と不要になります。 

食事由来のAGEは避けなくてOK

糖化によって生まれるAGEは、褐色で固いといわれますが、ホットケーキや唐揚げ、炒めた玉ねぎも糖化反応を起こしています。また、そもそもAGEの量が多い食品もあります。

食事由来のAGEがすべて体内に留まるわけではありません。身体の中に取り込まれるのは約10%程度で、3%は排出され、7%前後が体内に留まる程度です。「焦げたものは食べない」とまで徹底する必要はありません。 

低GI食品にこだわらなくてOK

よく聞く「GI値」とは、グリセミック・インデックスの略で、ブドウ糖の血糖値上昇率を100とした場合の血糖値上昇を数値化したものです。GI値が低い食品は、血糖値が上がりにくいといわれています。

ただ実はその作用は人によりけり。胃腸の状態、栄養素の消化吸収率、インスリン抵抗性などの条件はその人ごとに異なりますから、低GI食品にそれほどこだわらなくても大丈夫です。

糖質を抑制するのに大事なのは、どの食品かではなく、糖質の「量」です。

できることから食事改善を

できることから食事改善を

甘いものをやめるだけでは、糖化の根本原因は解決できません。糖質依存から抜け出すことで、糖化による肌や身体の老化の進行をゆるやかにするだけではありません。免疫力の向上は1、2ヵ月で期待できます。できることから取り組んでみましょう。

適度な運動はもちろん、食事の面でも糖化を防ぐことを意識し、上手にコントロールすることで、自分を労わりながら健康寿命を延ばしていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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