もし離れた家族に見守りや介護が必要になったら。移動が大変、仕事を休めないなど、悩みを抱えた方も多いのではないでしょうか。そこで今、急速に注目されるのが、実家の「スマートホーム化」。親の生活ぶりをリアルタイムで見られたり、遠い場所から家電を操作できたりと、見守り・介護を助ける仕組みです。
工夫の末に実家のスマートホーム化を行い、認知症の母親を遠隔からサポートし、「仕事を辞めない選択」を実現したのが、テクニカルライターの和田亜希子さん。 余裕のない生活にゆとりができ、壊れかけた親子関係も修復できた秘訣を、介護職経験者の筆者が聞きました。
SwitchBotは、シンプルな機器で家のあらゆるシーンをスマート化する、革新的なブランドです。工具や専門知識がなくても簡単に設置できて、従来のスマートホームのような高額な費用負担を心配する必要はありません。また公式サイトでは、24時間対応のサポートサービスを提供しているので初めての方でも安心してご購入いただけます。
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―プロフィール
和田亜希子(わだ・あきこ)
金融機関やWEB関連企業を経て、2001年に独立。サイト制作やアフィリエイトに関する情報を発信するテクニカルライターとして活動している。2021年よりスマートホーム化についても発信を開始。著書に『離れて暮らす高齢親の見守りのため実家をDIYでスマートホーム化』がある。
「母の涙」を見た日
──まず、スマートホーム化するまでご実家はどんな状況でしたか。
2021年の夏に父が病気で亡くなり、一人暮らしになった母に認知症の症状が出てきて、それと絡んで家で転倒を繰り返すようになったんです。
そのため、私は横浜の自宅から、千葉県香取市の実家に帰ることが増えまして。母に突発的なハプニングが起きて、仕事を中断したりキャンセルしたりで、毎週自宅と実家を行き来するようになりました。
──大変だ。横浜から香取まで、どれくらいかかりますか?
高速バスや電車なら、片道3時間半くらい。新型コロナの時期と重なって、小型バイクで5時間ほどかけることもありました。
──和田さんも疲弊されたと思います。
はい。母はギリギリ自力で生活できますが、買い物やゴミ捨てはできないので、私が帰ったときに料理の食材を買い、作り置きしていました。ゴミも帰ったときにまとめて捨てて。でも母の認知症も進んで、帰るたびに家の中の散らかり方がひどくなっていきました。
──どんな風に?
キッチンも冷蔵庫の中もごちゃごちゃで、私がいっぱい作って冷凍したおかずも、なぜか全部解凍して腐っちゃって。「お母さん、なんで!?」みたいに繰り返し文句を言ってしまいました。
母を毎回のように責めてしまって、母は「情けない」と涙を何度かこぼしていました。母が静かに涙をこぼすのを見て。こちらも自己嫌悪に陥り、悪循環でした。
──2人とも大変でしたね。スマートホーム化を決意されたきっかけは何ですか。
母の熱中症ですね。連絡が取れず、防犯用のウェブカメラにも母が映らない。電話しても出なくて、結局仕事を中断して家に帰ったら、ベッドの下で倒れていて救急搬送されました。
そこで家をいつでも見守れるよう、スマートホーム化に取り組み始めたのが、父が亡くなって1ヵ月半後の2021年の秋でした。
スマートホームとは、AIやIOTなどを活用した便利で快適な住宅のことを指します。さまざまな家電をインターネットにつないでスマホなどで操作することができ、家から離れている外出時などでも家電を操作できたり、時間短縮ができたりとメリットがあります。
──どこから着手されましたか。
見守り用の「ネットワークカメラ」です。もともと防犯用カメラが2台設置していたんですが、置く場所を変えました。
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1個は母がいるリビングに、もう1個は寝室に置きました。あとはトイレに行く途中でよく転倒していたので、廊下にもスマートフォン(以下スマホ)から360度ぐるっとレンズを回転して操作できるカメラを導入しました。
──だいたい行動範囲は見られますか?
はい。母が廊下を歩く姿からどこに行ったかもだいたいわかるので、カメラに映っていなくてもどこで倒れている可能性があるか推測できます。
「声で操作できる」からうまくいく
──次に取り入れたのは何ですか?
複数の赤外線リモコンをひとつにまとめられる「スマートリモコン」ですね。母はできないことが段々増え、十年以上操作してきたリモコン操作もおぼつかなくなってきて。
高齢になると、暑さの感覚がなくなる人が結構いるそうです。母もそうで、冷房をなかなかつけてくれません。電話して「エアコンちゃんとつけてよ」としつこく言うと、母は「人を子ども扱いして」と嫌がりました。本人が暑さを感じていないのですから、仕方ないですよね。
そこでスマートリモコンと、AIアシスタントを搭載した機能を使って声に反応するスマートディスプレイ(※)を連携させて、「母が声で家電や照明を音声操作できる」うえに、遠隔でもエアコンを操作できるようになりました。
さらにスマートエアコンとスマート温度計を連携すれば、「〇度以上なら冷房がつく」などの設定もできますよ。
※スマートディスプレイは、音声だけのスマートスピーカーにディスプレイもついたデバイスで、情報を視覚的に確認できる
──室温次第で自動的にエアコンがつくようになったんですね。ちなみに、お母さまはおいくつですか。
今80歳です。でも、抵抗なく受け入れてもらえました。
ただ、「OK Google」はなかなか覚えられないので、いつも母が座る席に、「OK グーグル」と以下の3つを書いた養生テープを貼りました。
- テレビをつけて
- エアコンを切って
- 電気を消して
──3つだけ書いたのはなぜですか?
3つくらいのほうが覚えられると思ったので。一番使うものだけを先に覚えて、天気予報や時間、今週の予定などは、第2段階に回しました。そのおかげか、どんどん使い慣れていきましたよ。
あとは「スマートディスプレイ」ですね。母は「日時見当識障害」という認知症の症状で、時間や曜日の感覚がなくなってしまいまして。そのため、予定を出してくれるものが必要だったんです。
オンラインカレンダーと連携して、母の予定を表示できます。母が「今週の予定は?」とか言うと、「〇日にリハビリセンター」とかが出て。
──いいリマインダーですね。
あと、母は「OK Google」で音楽をかける機能を愛用していて、坂本冬美や鳥羽一朗などの曲をかけています。
今まではCDを取り替えるのも面倒のようで、同じCDを1~2週間かけ続けていたんです。でもYouTubeなら新しい曲やカバー曲も出てきて、母は「こんな歌もあったのか」って、感動していましたね。
──関連曲を自動でずっと流してくれるYouTubeの機能、たしかにシニアにピッタリかもしれませんね。
あとはYouTubeで猫の動画も見ていたようで。それまではPCやタブレットでもYouTubeなんか見ていなかったのに、声で操作できるからとすごく愛用してくれました。
さらに、玄関に「スマートドアベル」のRing Video Doorbell 4(アマゾン)を導入しました。
呼び鈴が鳴ると、キッチンにあるモニターまで行かなくても、スマートディスプレイで知らない人なのか近所の人なのかがわかって、玄関にいる人と話せます。
高齢者も多い地域なので、怪しい飛び込みセールスもよく来ます。「屋根瓦がずれていますよ」と、親切を装って入り込んでくるリフォーム詐欺まがいの人も。母の代わりに私が遠隔でスマホから応対して追い返せば、来なくなりますし、詐欺撃退にも役立ちます。
「親が楽しめる」からスマートホーム化は成功する
──スマートホーム導入にあたってのポイントはなんですか?
親が楽しめる要素を入れるといいと思います。スマートディスプレイは朝、母が起きてきたのを感知して、話し始めるんですよ。「おはようございます。いい夢は見られましたか、今日の予定は2件あります」と、天気予報やニュースも教えてくれます。
──「今日のナビ」になるわけですね。
母は、スマートディスプレイがスケジュールを教えてくれたり、質問に答えたりすると、「ありがとう」とよく言っていました。そうするとAIも「どういたしまして」と答えるんです。「スマートディスプレイの中に人がいる」感覚みたいで。
夜遅い時間に何か頼んだ時には、特にお礼を言っていました。「明日もよろしくね」とも。
──いい関係ですね。
「AI任せは冷たい」と思う人もいるかもしれませんが、娘の私から「ちゃんと薬飲んだ?」など繰り返し口うるさく言われるより、AIの方がプライドも傷つかないと思います。なのでそこは使いようかなと。
──ほかに、スマートホーム化で大事なポイントは?
あまりスマートホーム家電の使用を強制しない方がいいと思います。
「せっかくスマートディスプレイでビデオ通話できるようにしたのに、毎回携帯で電話かけてくる」という人もいるでしょう。でも、それでいいんじゃないかなと。携帯の操作が難しくなったら、声だけで開始できるビデオ通話を使えばいいので。
──まず自主性に任せるわけですね。
あと自動化や、まとめて操作できるようにするのも大事です。
例えば電気の消し忘れが多いなら、寝室で「OK Googleおやすみ」と言うだけで、リビングの照明やエアコンも全部オフにする設定も可能です。
「ゆとり」があるから、穏やかな2人になれる
──スマートホーム導入で、見守り環境をどう改善できましたか。
ゆとりができました。今も隔週で帰省していますが、突然のハプニングで緊急帰省することはなくなっています。あと不在の時でも、スマートディスプレイ「EchoShow」を使ってビデオ通話しています。向こうが電話を取らなくても、自動で会話をはじめられるんです。
──今、お母さまとどんな会話をされていますか。
「EchoShow」のビデオ通話で毎朝10分くらい、「何食べてる?」とかを話しています。医者からも認知症の進行を抑えるには会話が大事と言われ、毎日10分でも意味があればと。
──雑談はすごく意味がありそうですね。話す内容も導入前から変わりましたか。
スマートホームの導入前も電話はしていたんですけど、「エアコンちゃんとつけて」とか「この日に必ず病院に行ってね」とか、うるさいことばかり言っていました。
導入前は母をうっかり危険な目に遭わせたくないという危機感から、母に無理強いをしたり、きついことを言ってしまったりしたと、反省しています。
でも、それをスマートホーム化でなんとかしてから、食事や買い物とか、たわいもない話ができるようになりました。元の穏やかな関係に戻れましたね。
──支えられる側だけでなく、支える側も技術に支えてもらうのが、スマートホーム化なんですね。
「頑張らなきゃいけない」と自分を追い込んじゃう人が多いと思うので、どんどん手抜きをして楽になるのが正解だと、今は思います。
──著書で「新しい機器を導入するのが楽しい」ともおっしゃっていました。スマートホーム化で介護はどう楽しく変わりましたか。
認知症が進行すると、少し前まで自然にできていたことも難しくなっていきます。実際にそれを目の当たりにしてショックも受けますが、逆に見守り家電を使ってからは、「事態が変わったんなら、新しい方法を考えよう」みたいに、何かを考えて導入するチャンスだと思えて。「これを試せるぞ」と、帰省も楽しくなりました。
──「セゾンのくらし大研究」には、同じ悩みを抱える50代以上の読者が多くいます。実家をスマートホーム化する「はじめの一歩」を教えていただければ。
スマートディスプレイを親にプレゼントするのはいかがでしょうか。「EchoShow5」なら、スマホとのビデオ通話だっていつでもできますし、音楽・動画やニュースも楽しめて10,000円以下ですから。
インターネットが家や実家になければ、モバイルWi-Fiがお手軽です。用途次第ではありますが、2,000円台の20ギガプランでも十分だと思います。
──最後に、介護でお疲れの読者に応援のメッセージをいただければ。
ここ数年、安価なスマートホーム化のアイテムが次々に登場しています。ITや便利な製品をがっつり頼って、ストレスや不安、そしてリスクを減らせる方法をぜひ模索してほしいです。
ゆとりが生まれれば、親御さんとの思い出作りにも回せますから。
(取材・執筆=辰井裕紀、写真提供=和田亜希子、編集=ノオト)