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認知症になりやすい人はどんな人?生活習慣などと関係がある?

認知症になりやすい人はどんな人?生活習慣などと関係がある?
矢島隆二 医師・医学博士

執筆者

医師・医学博士

矢島隆二

新潟大学医学部卒業後、幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症研究を行い医学博士となった。現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点をおいた医療を担っている。神経内科専門医・指導医、総合内科専門医、認知症専門医・指導医、認知症サポート医、日本医師会認定産業医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医。医学博士。講演や執筆の依頼も積極的に受けている。法曹の方々からの依頼で遺言能力を鑑定し、遺言書の有効性についての鑑定書作成もしている。https://yajima-brain-clinic.com/

「どんな人が認知症になるの?」「私も認知症になってしまうの?」などご自身が将来認知症になるかどうか、不安に思ている方もいらっしゃるでしょう。今回は、認知症になりやすい人の特徴について、解説していきます。

認知症とは?

認知症とは?

実は、「認知症」とは病名ではありません。なんらかの原因によって、「日常生活に支障が出る程度にまで認知機能が低下した状態」のことを指しています。そして、認知症にはさまざまな原因疾患や病態が含まれていて、認知症疾患診療ガイドライン2017に挙げられているだけでも、50以上の疾患名があります。認知症のなかでも頻度の多い3大認知症はアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症です。

認知症を予防することはできるの?

認知症を予防することはできるの?

このように認知症の原因にはさまざまな疾患がありますが、世界中で予防のための取り組みが研究されています。2020年に、認知症の専門家から構成されているランセット委員会から、認知症予防に関する研究結果をまとめた分析結果が公表されています。具体的には、「教育」「難聴」「高血圧」「肥満」「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「糖尿病」「過度の飲酒」「頭部外傷」「大気汚染」の12のリスク要因を改善することで、認知症の発症を約40%予防する効果が期待できると分析されています。

また世界保健機関(WHO)は、2019年に「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表しています。このガイドラインでは、「身体活動」「禁煙」「栄養」「適正飲酒」「認知トレーニング」「社会活動」「体重の管理」「高血圧症の管理」「糖尿病の管理」「脂質異常症の管理」「うつ病の管理」「難聴の管理」として、大きく12の項目に分けて推奨する対策が述べられています。

これらには共通している項目も多く、みなさんの生活習慣の中で、認知症予防のために取り組めることもいくつもあります。次の項で詳しく見ていきましょう。

認知症になりやすい9つの生活習慣とは?

認知症になりやすい9つの生活習慣とは?

さて、それでは認知症になりやすい生活習慣や、認知症リスクを高める主な病気について見ていきましょう。特に、先に触れた項目の中で、共通している内容について取り上げていきます。

1.運動不足

運動不足は、将来の認知症リスクと密接に関係していると考えられています。その対策として、150分/週以上の有酸素運動や、75分/週以上の活発な運動が良いとされています。ウォーキングなどの運動を毎日の生活に取り入れて、座ったままの時間を減らすこともすすめられます。また運動は、運動そのものの効果だけではなく、これから述べる高血圧や糖尿病などの生活習慣病に対しても、良い影響を与えることが期待できます。

2.高血圧

高血圧の認知症・認知機能低下に対する影響は、年齢によって異なります。特に中年期の高血圧は、高齢期になってからの認知症や認知機能低下の一因であるため、認知症予防の観点から、積極的な治療がすすめられています。既に血圧が高い方は、食事による塩分摂取を減らしたり、かかりつけ医と相談して血圧を下げる薬を服用するなどして、血圧をしっかり管理されることをおすすめします。

3.糖尿病

糖尿病は、認知症の中でもアルツハイマー型認知症や血管性認知症の危険因子として知られています。特に中年期の血糖管理が、認知症発症予防に必要です。糖尿病は自覚症状の出にくい疾患ですが、後述する健診などの機会を大切にして、放置することなく対策に取り組んでいくと良いでしょう。

4.難聴

近年、難聴による認知機能低下への影響が注目されています。先のランセット委員会の分析でも、難聴による認知症への影響は、特に大きいことが示されています。そのため、聴力が落ちたと感じている方には、補聴器を使用したり、過度の騒音曝露から耳を保護したりして、難聴を軽減する対応がすすめられます。

5.体重および栄養

体重は、肥満だけが悪いと誤解されている人もいるかもしれません。確かに中年期の肥満は、将来の認知症のリスクになると指摘されています。しかし、70歳程度を超えてくると、むしろ肥満よりも痩せている方の方が認知症のリスクになることが知られてきています。従って、標準的な体型を維持していくことが大切です。

また、バランスの良い食事も大切です。雑穀や玄米、マメ・ナッツ類とともに、野菜と果物を400g/日以上摂取することがすすめられています。そして、2000kcal/日以上を摂取している人では、糖類を5%未満に、脂肪を30%未満に抑えることがすすめられています。日本食はバランスが良い食事とされていますが、塩分が多くなりやすいので注意しましょう。

6.喫煙

喫煙は身体の健康を害するだけでなく、認知症と認知機能低下のリスクにもなります。たばこを吸う人は、禁煙がすすめられます。生涯喫煙をしないことが望ましいのですが、喫煙者が禁煙をした場合でも、認知症のリスクは下げられることがわかっています。今からでも遅くありませんので、喫煙されている方は禁煙をご検討されてみてはいかがでしょうか。

7.うつ病

うつ病は、高齢期の認知症発症リスクを高める事が報告されています。ただし、うつ症状そのものは、認知症に伴って見られることもあるため、純粋なうつ病なのか、認知症に伴ううつ症状なのかは、判断が難しい事も多いです。いずれであったとしても、そのまま放置するのではなく、医師に相談されてみると良いでしょう。

8.社会的孤立

友人や家族との交流が極端に少ない社会的孤立の状態にある人は、認知症のリスクが高いことが報告されています。コロナ禍において外出を自粛し、できるだけ人と会わないように意識していた方も少なくないと思います。しかし、行き過ぎた自粛は、認知症予防という観点からは望ましくないかもしれません。感染対策はしっかり行いながらも、短時間でも人と交流する時間を確保することが重要と思われます。

9.過度の飲酒

過度のアルコール摂取を習慣としている人には、認知症予防の観点から、飲酒量を減らすか断酒が勧められます。なお、少量の飲酒であれば、むしろ認知症の発症リスクを下げるという報告はあります。しかし、これはアルコールを好まない人に無理に飲酒をすすめるというものではありません。“節酒”は、習慣飲酒者に“少量であれば認知症予防の観点からも許容される”と説明されるものだとお考えいただいた方がよさそうです。

健康診断や人間ドックでは血糖値や血圧に注目

健康診断や人間ドックでは血糖値や血圧に注目

さて、ここまで認知症になりやすい生活習慣について解説してきました。自分の生活習慣について、あまり深く考えてこなかったと感じた方もいるかもしれません。そのような方でも定期的に自分の状況を見直す良い機会になるのが、健康診断や人間ドックです。

健康診断では、飲酒や喫煙の習慣を見直すことができますし、血圧や血糖値なども知ることができます。高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、自覚症状がでにくいため、なかなか自分では気づきにくいものだと思います。健康診断や人間ドックの機会に、自分の健康状態を知り、改善できるところは改善していく事が大切です。

おわりに

今回は、認知症予防に役立つ生活習慣の見直しについて、解説いたしました。認知症の発症には、遺伝などの先天的な要因もあるものの、決して少なくない要因が後天的なものです。ご自身の生活習慣を見直すことで、心身ともに健全な状態を維持することが、認知症のみならず、いろいろな疾患を予防するという意味からもおすすめです。

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