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【医師監修】歯周病とはどんな症状?原因や治療法を知っておこう

【医師監修】歯周病とはどんな症状?原因や治療法を知っておこう
大西 正嗣 歯科医師

監修者
大西 正嗣 歯科医師

医療法人正翔会 理事長。東海地区で4店舗展開(岡崎エルエル歯科・矯正歯科、葵デンタルデザインオフィス、名古屋みなみ歯科・矯正歯科、加納歯科医院)。一般歯科、小児歯科、歯科口腔外科、矯正歯科などの全ての分野での治療に対応。

歯周病には口腔ケア以外にも、ストレスや食生活、喫煙、歯並び、妊娠などさまざまな原因があります。歯周病のまま放置すれば、最悪の場合は手術や抜歯を受けることになるかもしれません。

このコラムでは、歯周病の原因や進行、全身への影響、治療法、予防・対策について解説します。

歯周病とは?

歯周病とは?

口腔内の病気として広く認知されている「歯周病」ですが、具体的にはどのような症状を指すのでしょうか。

歯周病とはどんな病気のこと?

歯周病とは、歯を支えている歯ぐきや骨が溶けていく病気です。歯と歯ぐきのすき間の掃除を怠ると、そこに細菌が溜まって炎症が起こります。この状態を放置し続けると膿が出て、最悪のケースでは歯を抜かなければなりません。

歯周病の症状は?セルフチェック!

「日本臨床歯周病学会」によると、下記にいくつ当てはまるかで、歯周病の進行度をセルフチェック可能です。

【全体】

1.周囲から口臭を指摘された・自分で気になる

2.朝起きたら口の中がネバネバする

3.歯みがき後に、毛先に血が付いたり、すすいだ水に血が混じったりすることがある

【歯肉の症状】

4.歯肉が赤く腫れている

5.歯肉が下がり、歯が長くなった気がする

6.歯肉を押すと血や膿が出る

【歯の症状】

7.歯と歯の間に物が詰まりやすい

8.歯が浮いたような気がする

9.歯並びが変わった気がする

10.歯が揺れている気がする

【引用】歯周病とは?|日本臨床歯周病学会

チェックが1〜3個の場合は、軽度の歯周病かもしれません。チェックが4〜5個以上の場合は、歯周病が進行しているため、早期に治療を受けると良いでしょう。

こんな方は注意!歯周病の原因と進行

【医師監修】歯周病とはどんな症状?原因や治療法を知っておこう

歯周病が悪化する原因と、症状の進行について詳しく解説します。

歯垢が歯周病を引き起こす

口腔内(口の中)には数百種類もの細菌が存在します。ただ、細菌たちは普段から悪影響を及ぼすわけではありません。歯磨きを怠ったり、甘いものを食べ過ぎたりすると、細菌たちは「歯垢(プラーク)」という物質を作ります。

この歯垢は1mg当たり約10億個もの細菌(歯周病菌)を有し、むし歯や歯周病を引き起こすのです。細菌は歯肉に炎症を起こし、歯を溶かしていった結果、永遠に歯を失うこととなりかねません。

さらに歯垢を放置し唾液中に含まれるリンやカルシウムと混ざる事で「歯石」という物質へと変化します。歯石はブラッシングで除去できず、細菌は歯周病を悪化させる毒素を出し続けます。歯石の除去は歯科医院を受診する必要があります。

知らないうちに歯周病リスクを上げている可能性も

歯周病を悪化させる原因は、歯磨きのし忘れや甘いもの(砂糖)の摂取し過ぎだけではありません。下記で紹介する項目が原因となり得ますが、あくまで一例でありこの他にも多数原因が存在します。

糖尿病

糖尿病は、インスリンの作用不足により高血糖が続く病気です。糖尿病にかかると、細菌への抵抗力や壊れた組織の修復力が低下するため、口腔内では乾燥などが起こって歯周病の悪化へとつながります。

喫煙

喫煙は歯周病にかかりやすくなり、重症化しやすくなるといわれています。タバコの作用で毛細血管を収縮させる作用があります。歯周病のサインである出血量を減らし、その上、タバコで口腔内が汚れると、歯肉の腫れや出血をさらにわかりにくくするため、本人も気付きにくいでしょう。さらに喫煙者は非喫煙者に比べて、歯周病の治りが遅くなりがちです。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしり・食いしばり

歯をギシギシと左右にすり合わせる「歯ぎしり」や、グッと強い力で噛み続ける「食いしばり」は、歯ぐきの炎症をもたらします。歯ぐきの炎症は、歯周病の発症につながるのです。

歯ぎしり・食いしばりの主な原因はストレスや歯並びなど。特にストレスの影響は大きく、睡眠中に歯ぎしりをすることでストレスを解消しているともいわれています。

嚙み合わせ・歯並び

噛み合わせや歯並びも歯周病の因子です。歯並びがガタガタだと歯ブラシが行き届かない箇所が出てきて、細菌や膿が溜まりやすくなるでしょう。噛み合わせが悪く「噛むと特定の歯にだけ強い力が加わる」という状態が続くと、歯ぐきに負担がかかって歯周病の原因となります。

口呼吸

口腔内の唾液は、歯ぐきに付いた歯周病菌を浄化する作用があります。しかし口呼吸を続けていると唾液が乾燥し、自浄作用が働きません。唾液の中にはリゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどが含まれ、口腔内に侵入した細菌の活動を抑えています。自浄作用とともに細菌の繁殖を阻害する重要な働きがありますが、口呼吸をしていると唾液の減少により上記の作用が減少してしまいます。

食生活

甘いものやジャンクフードが口腔内に悪影響を及ぼすことは当然ながら、飲酒も歯周病の原因となりかねません。たしなむ程度なら問題はありませんが、多量にアルコールを摂取すると身体機能が低下することで「唾液の分泌異常」や「口腔衛生の悪化」を招くのです。

ストレス

ストレスが細菌を直接増やすわけではありませんが、慢性的にストレスが溜まると自律神経のバランスを乱します。結果的に細菌などに対抗する免疫力が低下し、歯周病を進行させてしまうでしょう。

遺伝

歯周病の原因は細菌であるため、歯周病自体が遺伝することはないと一般的に考えられています。ただし、唾液の質は遺伝する可能性はあります。「歯のメンテナンスをしっかりしても歯周病になる方」また「歯のメンテナンスを怠っても歯周病にならない方」がいることから、まれに家族歴が関係する場合もあります。ただ、直接的に関係しているという研究成果は出ていません。いずれにせよ「遺伝のせい」と考えず、日々のメンテナンスには誰もが取り組むと良いでしょう。

妊娠

妊娠

妊娠中はホルモンバランスの変化により、唾液の分泌量が少なくなります。前述のとおり、唾液は自浄作用を働かせているため、唾液の分泌量が少なくなることが歯肉炎や歯周病を引き起こす原因になりかねません。また、ホルモンバランスの変化により起こる妊娠性歯肉炎というものもあります。

骨粗鬆症

特に閉経後はホルモンバランスが崩れ、骨代謝に影響するエストロゲンの分泌が低下します。閉経後に起こった骨粗鬆症では、エストロゲンの減少により全身の骨がもろくなり、歯を支える「歯槽骨」ももろくなるためです。

症状の進行

症状の進行について段階を追って解説します。実は、歯周病は見た目で分かるほどの変化が起こるのです。

健常な歯

健常な歯では、歯ぐきが薄ピンク色で引き締まっています。ブラッシングでは出血せず、歯肉にも弾力があります。

歯肉炎の発生

歯ぐきは赤色に変わります。歯肉炎が起こると「歯ぐきの腫れ」や、ブラッシング時に「歯ぐきからの出血」といった症状が見られます。

歯周炎に進行

歯周炎に至ると、歯ぐきは赤紫に変色します。「歯ぐきが下がる」「歯が動く」「口臭がキツくなる」「ブラッシングで血や膿が出る」などの症状が見られます。

歯が抜ける

歯周病の症状が手遅れになると、歯が抜けます。歯が抜けると「咀嚼が難しくなる」「喋りにくくなる」「顔が老ける」などが引き起こされます。

歯周病になるとどうなるの?

歯周病になると最悪のケースでは歯が抜けるだけでなく、全身に悪影響を及ぼしかねません。

糖尿病への影響

歯周病は糖尿病を悪化させると考えられています。歯周病菌は血管内に侵入して、毒素をばら撒きます。毒素は血液中の糖分の吸収を抑える「TNF-α」の生産を促進。その結果、血糖値を下げるインスリンの作用を阻害し、血糖値をコントロールできなくなってしまうのです。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすリスク

誤嚥性肺炎は発熱や激しい熱、息苦しさ、呼吸時の異音などが生じる病気です。飲食したものが食道ではなく、気管を通って肺に入るケースがあります。その後、炎症を起こし肺炎を発症する可能性があります。誤嚥性肺炎を起こした患者さまの肺からは、歯周病原因菌(嫌気性グラム陰性桿菌など)が高い頻度で見つかることから、歯周病と肺炎に強い関連性があるとされています。

心臓病や動脈硬化の進行

歯周病と心臓病には深い相関関係があり、歯周病原因菌が心臓の血管を詰まらせ、心臓の血管の細胞に障害を引き起こすことがアメリカの研究で明らかになりました。動脈硬化症や大動脈瘤にかかった細胞を検査すると、多くの歯周病関連菌(Pg菌=Porphyromonas gingivalisなど)が検出されます。

動脈硬化とは動脈が硬くなり、血栓によって血管が詰まりやすくなる病気です。歯周病は動脈硬化を招くといわれています。さらに歯周病菌が心臓に達することで「細菌性内膜炎」の原因になる恐れもあります。

早産・低体重児出産の可能性

血管内に侵入した歯周病菌が胎盤に至り、胎児の成長に影響を与えた結果、早産や低体重児の出産につながる可能性があるといわれています。

骨粗鬆症

歯周病と骨粗鬆症には関係があると、さまざまな研究で明らかになっています。骨粗鬆症を発症した場合は、歯周病になりやすい方と考えられるでしょう。特に閉経後はエストロゲンの分泌低下により、全身の骨がもろくなるため注意が必要です。

歯周病は治る?

歯周病には段階に応じた治療法が存在します。歯周病が治った方は早期に発見し、治療を進めているため、手遅れとなる前に対処しましょう。

進行度合いで治療は変わる

歯周病の一歩手前「歯肉炎」

歯肉炎になった場合は、丁寧なブラッシングで治る場合もあります。歯石の除去や、歯のクリーニングも必要です。

通院回数:1〜2回

治療期間:2〜3週間

無自覚の場合も「軽度歯周病」

歯周ポケットの深さが3mmを超えると軽度の歯周病です。歯の表面に限らず、歯周ポケットの歯垢や歯石を除去します。

通院回数:2〜4回

治療期間:2〜3ヵ月

歯科医での治療が必要「中度歯周病」

「歯のぐらつき」「口臭がキツい」「歯ぐきから膿が出る」といった症状が出ます。主に歯科医院での治療が必要で、歯周ポケット内の歯石を除去する必要があります。

通院回数:5回

治療期間:3ヵ月以上

放置すると危険!「重度歯周病」

歯槽骨の3分の2以上が溶け、すきっ歯や噛みにくさなどの症状が出ます。ただ、この段階に至っても痛みを伴わないケースが多いです。歯石除去で効果を得られなければ、手術や抜歯といった手段を選ぶことになります。

通院回数:7回〜

治療期間:5ヵ月以上

丁寧なブラッシングや定期健診は必須

丁寧なブラッシングや定期健診は必須

歯周病にかかってしまっても、日常のブラッシングや定期的な歯科健診により悪化を防ぎ、早期発見・治療が可能です。歯周病は重度になっても痛みを感じないケースが多く、ご自身が気付けない可能性もあります。

歯周病の予防と対策

一番大切なことは歯周病にならないことです。具体的な予防と対策について解説します。

まずは毎日の口腔ケアから

歯周病の予防のためには、「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」の両面の対策が欠かせません。自宅でできるセルフケアに加えて、定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受けましょう。

セルフケアに関して、歯磨きでは「歯と歯ぐきのすき間」や「歯と歯の間」に注意して磨き残しを防ぎます。歯磨き粉は、歯周病予防に効果がある商品を選ぶことも大切です。また、寝起きの口腔内は細菌であふれかえっているため、朝食より先に歯磨きをしましょう。そのまま食事をすると、細菌ごと飲み込んでしまいます。

さらに、年に3~4回は歯科健診を受けて、行き届いていない箇所のメンテナンスや歯垢・歯石の除去をプロにしてもらいましょう。

生活習慣の見直しも大切

過度な飲酒や慢性的なストレス、喫煙などの生活習慣は、歯周病の悪化を招きかねません。さらに、よく噛まずに食べると唾液の分泌が少なくなり、間食が多いと歯垢の栄養を与え続けることになります。悪習慣を好習慣に変えられるよう、生活習慣を見直し整えていくことも大切です。

おわりに 

歯周病を放置すると、口腔内だけでなく全身に悪影響を及ぼすかもしれません。強い痛みがないからといって油断せず、セルフチェックで異常を感じた場合には「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」の両方を受けて、早期に対策していきましょう。

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