人間ドックも健康診断も検査を受診して体の異常を発見することから、どちらも同じようなイメージがありますよね。健康診断よりも人間ドックの方が費用がかかり検査項目が多いことを知っていても、具体的に「どれくらいの価格差があるのか」「他にどのような違いがあるのか」など、わからないという方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、人間ドックと健康診断の違いを解説します。また、健康診断の代わりに人間ドックを受診する場合の注意点や人間ドックの受診がおすすめの年代も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
人間ドックと健康診断の6つの違い
人間ドックと健康診断には、6つの違いがあります。それぞれどのように異なるのか解説していきますので、人間ドックと健康診断の違いをわかるようになりましょう。
目的の違い
人間ドックと健康診断では、目的に違いがあります。人間ドックの目的は、病気の早期発見や早期治療です。精密な検査をすることで「自覚症状のない病気」や「将来引き起こす可能性のある病気のリスク」を確認できます。
定期的に人間ドックで検査を受ければ、悪化する前に病気を発見し治療を開始できるので、大事に至ってしまうのを未然に防げます。健康診断は、病気の予防目的を主軸としているのが特徴です。
人間ドックより精密でないものの、全身を検査することで体の異常を発見できます。例えば、健康診断で高血圧や肥満と診断された場合は、食事改善が必要と考えられます。
また、血液検査で貧血と診断されれば、鉄分摂取の重要度などがわかるでしょう。このように、健康診断の結果を読み取って正しく対処すれば、病気を未然に防ぐことができます。
費用の違い
費用を比較すると、健康診断よりも人間ドックの方が高くなります。下記の表に人間ドックの費用相場をまとめたので、確認してみてください。
1日 | 2日 | |
男性 | 30,000円〜50,000円 | 60,000円〜80,000円 |
女性 | 45,000円〜70,000円 | 70,000円〜100,000円 |
人間ドックには、日帰りで受診できる1日ドックと宿泊が必要な2日ドックがあります。受診する医療機関によってかかる費用が異なりますが、日帰りでできる1日ドックよりも2日ドックの方が検査項目が多い分、相場が上がります。また、女性の場合は乳がんや子宮がんに関わる検査が加わることがあるため、男性よりも費用が高くなる傾向にあります。
一方、健康診断は無料〜数千円で受診できます。会社員の場合、健康診断の費用を会社が全額負担あるいは一部補助してくれるので、安く受診できます。会社が指定している医療機関以外で個人的に健康診断を受診する場合でも、5,000円~15,000円で受診できるので、人間ドックよりも安価です。
このように健康診断の方が安く受診できますが、「差額人間ドック」を利用すれば人間ドックでも費用を抑えられます。
差額人間ドックとは健康保険協会(協会けんぽ)に加入している方が利用できる制度で、通常費用から助成金を差し引いた金額で人間ドックを受診することが可能です。健康保険協会(協会けんぽ)に加入している方は、ぜひ「差額人間ドック」を利用してみてください。
検査項目の違い
人間ドックと健康診断では、受けられる検査が異なります。人間ドックの場合、身体測定や血圧測定といった健康診断でお馴染みの検査に、眼圧検査や超音波などさまざまな項目が加わります。
基本の検査だけでも約50項目あり、オプションを追加することも可能です。人間ドックなら体のなかで特に自身が気になる部分を調べたり、精密な検査に切り替えたりできます。
人間ドックの検査項目について、詳しくはこちらをご覧ください。
健康診断では、下記の検査を受けます。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部X線検査、喀(かく)たん検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(糖、蛋白)
- 心電図検査
参照元:厚生労働省の資料
健康診断の場合は、医師の判断で省略できる検査があります。健康診断は会社が主体となって実施している場合が多く、管理しやすいように年代ごとに受診する検査が決められていることがあります。
法的な義務の違い
健康診断は実施頻度や検査項目が法律で決められているのに対し、人間ドックは自由に受診できます。人間ドックの場合、個人の意思で受診するかどうかを決めるので、毎年受診しなくても問題ありません。検査については、基本的な項目は決まっているものの、自由にオプションを追加できます。
一方、健康診断は1年以内に1回は受診する必要があります。また、受診すべき検査項目が決まっているのも特徴です。会社員の方は健康診断の受診が義務となっているので、毎年必ず受診するようにしましょう。
受診する場所の違い
人間ドックと健康診断では、受診する場所が異なります。人間ドックを受診するときは、自身で医療機関を選べます。医療機関によって検査項目や費用などが異なるので、WEBサイトを確認して自身に合いそうなところを選びましょう。
健康診断を受診する場合は、会社が指定した場所で受診することになります。会社あるいは近隣の施設で受診する方法や、指定の医療機関まで個別に出向く方法もあります。会社によって健康診断の実施方法が異なり、会社員はその指示に従う必要があります。
受診するタイミングの違い
人間ドックと健康診断の違いとして、受診するタイミングも挙げられます。人間ドックは任意のタイミングでの受診が可能です。土日や祝日に人間ドックを実施している医療機関があるので、平日にお仕事が忙しい方はチェックしてみてください。
一方、健康診断の場合は、受診のタイミングを会社が指定していることがあります。これは、会社が1年以内に1回は健康診断を実施する義務があることが関わっています。
業務への影響を避けるため、同じ日・時間帯に健康診断を受診する方が集中しないよう、会社が受診の予定を組むことになります。会社に勤めている方は、指示どおりのタイミングで健康診断を受診しましょう。
人間ドックと健康診断を両方受診する必要はない?
会社員の方は社内で行われる健康診断の受診義務がありますが、人間ドックで代用できます。そのため、健康診断ではカバーできない病気を発見したい方は、人間ドックを受診するのがおすすめです。
人間ドックを健康診断の代わりとして受診する場合は、結果を会社に報告する必要があるので、報告書を保管しておくようにしましょう。
ただし、人間ドックを健康診断の代替にするには条件があり、検査項目が健康診断で必要とされる検査を満たしている場合に限られます。人間ドックは項目数が多く網羅的に検査できるため、ほとんど問題にはなりませんが、念のため受診前に確認しておきしょう。
健康診断の代わりに人間ドックを受診する場合の注意点
健康診断の代わりに人間ドックを受診する場合、気を付けていただきたいことが2つあります。ここでは、人間ドックを健康診断の代替にするときの注意点を解説しますので、受診の際の参考にしてみてください。
人間ドックの結果を会社に伝える必要がある
人間ドックを健康診断の代わりにする場合、結果を会社に伝える必要があります。会社は従業員の健康診断の結果を保存する義務があります。そのため、会社員の方は人間ドックの結果報告書を保管しておき、会社に求められたら提出しましょう。
年齢や状況によっては通知義務のない検査もありますが、基本的には下記の11項目を会社に伝えます。
- 既往歴、業務歴の調査
- 自覚症状、他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部X線検査、喀(かく)たん検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(糖、蛋白)
- 心電図検査
参照元:厚生労働省の資料
ちなみに、会社は従業員の健康を配慮する義務があり、11項目以外の診断結果も考慮されます。人間ドックで異常が見つかった場合、「会社に伝えると人事に影響しそう」と考え、結果の提出を躊躇する方もいるでしょう。
しかし、会社は従業員が安全に働けるように配慮することはあっても、診断結果が悪かっただけで解雇や不当な評価を行うことはありません。人間ドックの結果は、必ず会社に提出しましょう。
前回の受診から1年以内に人間ドックを受診する必要がある
会社に勤めている方で人間ドックを健康診断の代わりとする場合、前回の受診から1年以内に検査を受診する必要があります。年1回の受診は会社員の義務なので、必ず守るようにしてください。
また、会社員に健康診断の受診義務があるように、会社には実施義務があります。会社は、1年以内ごとに1回、従業員を対象とした健康診断を実施することになっています。
そのため、会社は従業員が健康診断を受診していないことがわかれば、受診を要請しなければなりません。会社員の方は、要請を受けてから人間ドックの結果を提出すれば問題ありません。
ただし、会社が実施する健康診断を利用しないことを決めた段階で、人間ドックを受診する旨を会社に伝えることをおすすめします。会社によっては費用の補助を受けられる場合があるので、早めに伝えて人間ドックをお得に受診しましょう。
人間ドックを受診するなら30代からがおすすめ
人間ドックは20歳以上なら利用できますが、費用が高いため受診するのをためらってしまう方も多いでしょう。結論からいうと、30代から人間ドックを受診するのがおすすめです。
個人差がありますが、30代になると仕事に慣れ、生活が安定してくるでしょう。また、体が衰えるだけでなく、生活習慣病のリスクが高くなる年代でもあります。そのため、30代になったら人間ドックを検討するようにしましょう。
男性の場合は、気になる疾病がなければ人間ドックのオプションを追加しなくても問題ありません。ただし、体重が増えてきたり、よくアルコールを摂取したりするなど不安要素のある場合は、オプション追加を検討しましょう。
女性の場合は基本の検査に加え、乳がんと子宮がんを調べることをおすすめします。乳がんや子宮がんは若い方でもかかりやすい病気なので、30代の方は特に受診した方が良いでしょう。受診した方が良い検査は年代によって異なります。ご自身がどのような検査を受診した方が良いか気になる方は『人間ドックで受けた方が良いオプション検査は?年代別の上手な受け方を紹介』をご覧ください。
おわりに
人間ドックと健康診断には、目的や検査項目などさまざまな違いがあります。健康診断は病気の予防が目的のため、検査の項目が少なめです。一方、病気の早期発見・治療が目的の人間ドックは、基本項目だけでも約50種類あるだけでなく、オプションも追加できます。
人間ドックは健康診断の代わりになるので、必要に応じて受診を検討しましょう。30代になると、体が衰えるだけでなく生活習慣病のリスクが高くなる傾向にあるので、人間ドックを考えてみてください。
人間ドックと健康診断のどちらかを選択するには、違いを理解する必要があります。人間ドックと健康診断に関する知識を深め、自分に合った方を選択できるようになりましょう。
人間ドックや健康診断は、健康であることを考える良いきっかけにもなります。最近では、脳の異常を早期発見できる検査も進んでいます。脳の病気(脳血管疾患)は、日本人の死因として多い危険な病気といわれています。
罹患し死に至らないケースでも、その後、介護が必要になるケースが多いです。自覚症状がない場合でも、定期的な脳のチェックで早期発見し対策することの重要性が増しています。