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【医師監修】残暑でも注意!熱中症の予防策と対処法|正しい知識を身につけて熱中症から身を守ろう!

【医師監修】残暑でも注意!熱中症の予防策と対処法|正しい知識を身につけて熱中症から身を守ろう!
村上 友太 医師・医学博士

監修者
村上 友太 医師・医学博士

福島県立医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、福島県立医科大学脳神経外科学講座に入局。2019年同講座助教。2022年3月より、東京・新橋にある東京予防クリニックの院長として、一般内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。脳神経外科専門医、脳卒中専門医、神経内視鏡技術認定医、抗加齢医学専門医。認知症学会会員、内科学会会員。医師の副業プラットフォーム「頼めるドクター」を主宰

熱中症は夏場の暑さが過酷な日に発症しやすいですが、今年も残暑が厳しいことが予測されます。『急激な発汗』と『体内のナトリウムと水分のバランスの崩壊』によって発症する熱中症は、適切な予防策を取れば防ぐことができます。そのためには正しい知識を身に付けておくことが大切です。このコラムでは熱中症とはそもそもどんなものなのか、予防するにはどうすれば良いのかを解説します。夏場を迎える前にこのコラムを参考の上、しっかりと準備しておきましょう。

熱中症とは

熱中症とは暑い環境下において身体が適応できなくなり、熱が体内にこもってしまった状態になる症状の総称を指します。熱中症には『日射病』と『熱射病』があり、それぞれ熱中症を発症させるきっかけが違うだけで症状は一緒です。

日射病と熱射病の違い

  • 日射病:日射病は炎天下にスポーツや激しい労働をしたようなときに汗がたくさん出て、身体の水分が足りなくなってしまい脱水の状態
  • 熱射病:めまいや吐き気、頭痛のほかに意識障害、昏睡、全身けいれんなどが起きることがあり、極めて危険な状態

熱中症になると血液内のナトリウムと水分のバランスが崩れた状態になって、体調不良を引き起こします。体調不良の主な症状は以下のとおりです。

熱中症の主な症状

  • めまいや顔のほてり
  • 筋肉痛や筋肉のけいれん
  • 身体のだるさや吐き気
  • 異常な汗のかき方
  • 体温が高い、皮膚の異常
  • 呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない
  • 水分補給ができない

これらの症状が出た場合は、すぐに医療機関へ相談、または救急車を呼びましょう。またできるだけ、涼しい場所へ移動しましょう。重ね着などしている場合は、衣服を脱がし、身体を冷やして体温を下げましょう。飲料を飲める状態であれば、塩分や水分を補給しましょう。

参照元: 日本気象協会推進 熱中症の症状 | 熱中症ゼロへ

熱中症に気付きにくい方のための症状チェック

熱中症は自覚症状がない場合もあって、気付いたら倒れていたなんてことも少なくありません。特に赤ちゃんや高齢者の方はご自身でも気付かないうちに熱中症になっていることがあるので、周りの方が気付いてあげることが大切です。以下のチェックシートを参考に、暑い時期は周りの方が赤ちゃんや高齢者を気にかけてあげるようにしましょう。

【熱中症チェックシート】

乳幼児 高齢者
不機嫌であやしても泣き止まない泣いているが涙の量が少ない食欲がない眠りがち熱があるのに発汗しない尿の量が少ない便が硬くコロコロしている口や鼻の中が乾いている舌が白っぽい なんとなく元気がない、言葉数が少ない落ち着きがない食欲がない眠りがち便が硬くコロコロしている脈が速い舌が乾いている手足が冷たい

参照元:くすりと健康の情報局

熱中症の予防策

熱中症の予防策

熱中症は暑さに身体が慣れていないと発症しやすくなるので、正しく予防をして身体を暑さに適応させれば予防できます。熱中症は重症化すると命に関わる危険性もあるので、厳しい暑さが続く夏場はしっかり準備しておきましょう。

熱中症の予防策

  • 効率的に水分を補給する
  • 気温に合わせた行動をとる
  • 規則正しい食生活
  • 適度な運動で暑さに慣れる
  • 睡眠時の環境を適度に保つ
  • 熱中症を予防するグッズを使用
  • 熱中症が起こりやすい場所を避ける

最近では熱中症を効率良く予防できるグッズも増えてきて、身に付けるだけで身体を冷やせるようなグッズの種類も豊富にあります。毎年、夏の暑さが過酷になってきているからこそ、正しい予防策を身に付けておきましょう。

効率的に水分補給をする

熱中症は急激な発汗によって水分が一気になくなることで発症するので、日頃から適切な量の水分を補給することが大切です。『効率的な水分補給』とは一定量のナトリウムを含んだ水分を、1日を通して摂取し続けることを指します。

汗をかくとナトリウムが少なくなり、それを調整するために水分の補給意欲を低下させます。ですが、この補給意欲を低下させる生理現象が起きると、水分が不足した状態が続いてしまい、結果として体温調節がうまくいかずに熱中症を引き起こしてしまいます。こういった状態になるのを防ぐためにナトリウムを含んだ水分を補給しなくてはいけないのです。

ナトリウムを含んだ飲料とは、冷えたイオン飲料や経口補水液の利用が手軽ですが、自分で調製するには1リットルの水、ティースプーン半分の食塩(2g)と角砂糖を好みに応じて数個溶かしてつくることもできます。

気温に合わせた行動をとる

熱中症は気温が高くなるほど汗をかく量が増えるので、発症確率が高くなります。なので、基本的には気温に合わせて自身の行動を制限することが熱中症対策には効果的です。以下の表は熱中症に対する気温ごとの行動指針を示したものです。

暑さ指数
(WBGT)の目安
行動指針
31度以上
(危険)
厳重警戒(激しい運動は中止) 特別な場合以外は運動を注視する。特に子どもの場合には中止すべき。
28〜31度
(厳重警戒 )
厳重警戒(激しい運動は中止) 熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10~20分おきに休憩をとり、水分・塩分を補給する。暑さに弱い人は運動を軽減または中止。
25〜28度
(警戒 )
警戒(積極的に休憩) 熱中症の危険が増すため、積極的に休憩をとり適宜、水分、塩分を補給する。激しい運動では30分おきくらいに休憩をとる。
25度未満 
(注意)
注意(積極的に水分補給) 熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。

 参照元:環 境 省 気 象 庁 熱中症警戒アラート(試行)の運用指針

規則正しい食生活

規則正しく食生活を送ることで、食事から適度な量のナトリウムや水分を補給できるので熱中症を予防できます。特に朝食は重要で、人の水分は睡眠中に約500mlが汗となって失われるという報告もあるため、そこで失ったナトリウムと水分を朝食によって摂取することができます。

欠食は栄養素が不足するだけでなく、水分不足の原因にもなります。栄養が不足すると暑い環境下で疲れやすくなって、熱中症の危険性がさらに高くなるので、栄養と水分を適切に補給するためにも、栄養バランスの取れた食生活を送るように心掛けましょう。

気温が下がった時間帯に適度な運動をする

暑くなり始めた時期にいきなり運動を開始すると、急激な変化に身体が追いつかないので熱中症になりやすくなってしまいます。急激な変化に対応ができないと、体温調節がうまくできずに余分な量の発汗をしたり、尿で水分を排出したりしてしまいます。

これらを防ぐには、暑い時期でも夕方から夜にかけて少し気温が下がってきた時間帯に、軽い運動を開始して身体を暑さに慣れさせておくことが大切です。軽いウォーキングや散歩でも良いので、少しでも長く外にいる意識で予防しましょう。

睡眠時の環境を適度に保つ

熱中症は睡眠時にも発症する可能性があります。睡眠時に汗をかいて水分が不足すると、無意識のうちに体調が悪くなって熱中症になってしまうのです。自宅で過ごす高齢者の方が睡眠時の熱中症になる場合が多く、熱中症になったことに気付かずにそのまま死亡に至ってしまうケースもあります。

また睡眠時の室温が高いために、なかなか寝つけなかったり、汗をかき過ぎたりしてしまうと、睡眠で疲労を充分に回復できなくなってしまうでしょう。疲労が残っていると熱中症になりやすいので、寝室の気温は暑くなり過ぎないように適度に保つ意識を持ちましょう。

熱中症を発症しやすい場所を避ける

熱中症には『日射病』と『熱射病』があり、それぞれ日が当たる場所と高温の場所で発症します。なので、外に出る時は日に当たる場所を避け、気温が高い日は外になるべく出ないようにして、室内にいる時はエアコンで室温を下げるようにしましょう。

とはいえ、熱中症の危険性が高いからといって外に出ない日々を過ごすわけにもいかないので、外出時は日陰を歩いたり、日傘や帽子を使ったりして対策をするようにしましょう。

熱中症を予防するグッズを使用

熱中症を予防するグッズを使用

最近では熱中症を予防できるグッズが販売されています。昔のように『打ち水』や『うちわ』で凌げるような暑さではないからこそ、現代の過酷な暑さを凌げる適切な道具を使いましょう。

熱中症を予防するおすすめグッズとして、首にかけて使用するネックファンや小型扇風機、アイスネックリング、ネッククーラーなどがあります。簡易的な扇風機ではありますが、首元から冷やすだけで、身体全体の体温を下げることができるので外でも使える便利なグッズです。

体内のナトリウムと水分を効率良く摂取できるように配合された水も熱中症予防として効果的です。夏場は飲み物をこれに変えるだけで熱中症になる確率を大幅に下げられます。

経口補水液OS-1(オーエスワン®シリーズ)

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ナトリウムを効率良く摂取できるタブレットタイプの食品もおすすめです。普段飲む飲み物と一緒に摂取しておけば十分にナトリウムを摂取できます。

inタブレット塩分プラス

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熱中症の症状が疑われる際の対処法

【医師監修】残暑でも注意!熱中症の予防策と対処法|正しい知識を身につけて熱中症から身を守ろう!

熱中症の発症を自覚した場合、慌てずにかかりつけ医に相談するか、歩行が困難な場合は救急車を呼ぶのが適切です。しかし、到着まで時間がかかる場合は救急車が来るまでの間にできることをして患者の容体が悪化しないように尽くすことが大切になります。

【熱中症を発症した際の対処法】

  1. 把握できる熱中症の症状を確認する
    症状例:めまい・失神・大量の発汗・頭痛・吐き気・虚脱感・嘔吐・倦怠感・意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温など
  2. 意識があるかを確認する
    意識がない場合はすぐに救急車を呼んで、救急車が到着するまで患者を涼しい場所に移して身体を冷やします。意識がある場合は救急車を呼ばずに、涼しい場所へ行って身体を冷やして、次の項目へいきます。
  3. 自力で水分補給できるかを確認する
    自力で水分補給ができない場合は救急車を呼ぶか、誰かに医療機関へ連れて行ってもらいましょう。症状がひどい場合は救急車を呼ぶようにしましょう。もしご自身で水分補給ができる場合は、水分を補給しながら様子を見ます。
    *水分はナトリウムを含んだ経口補水液が好ましいです。
  4. 水分補給後に症状が良くなったか確認する
    水分補給をして体調が良くなったら、その後に十分な休息を取って、体力が回復した後に帰宅するようにしましょう。

熱中症が発症する要因

熱中症の症状が疑われる際の対処法

熱中症が発症する要因を知れば、熱中症に効率良く対策が取れるようになります。以下は熱中症が発症する3つの要因です。

【熱中症が発症する要因】

  • 環境的要因
  • 身体的要因
  • 行動的要因

基本は気温や日差しなどの気候的要因によって熱中症になることがほとんどですが、二日酔いや激しい運動など熱中症の確率を高めるような要因もあるので気を付けなくてはいけません。特にアルコールは、身体に残っていると利尿作用が出て水分が減るだけではなく、のどの渇きを感じにくくなるので水分補給をする機会が無意識に減ってしまうでしょう。

気候などの環境的要因

気候などの環境的要因とは気温や日差しなどのことを指します。熱中症は夏場に発症しやすいですが、それは環境的要因による影響が大きいからです。環境的要因の詳細を把握しておけば、自身が身を置く環境でどういった対処を取れば良いか判断できるようになるでしょう。

【環境的要因】

  • 気温が高い
  • 湿度が高い
  • 風が弱い
  • 日差しが強い
  • 閉め切った屋内で熱気がこもっている
  • エアコンを使っていない

環境的要因に対しては、日傘や熱中症防止グッズ、エアコンなどを駆使してなるべくご自身が身を置く空間を快適な状態に近づけるように努力することが大切です。

体調不良などの身体的要因

体調不良などの身体的要因は熱中症になりやすい身体の状態のことを指します。熱中症は気温などの影響を受けて発症しますが、身体の状態が悪いと熱中症になる確率を高めてしまいます。以下の身体的要因を確認して、当てはまる点があった場合は夏に向けて対策をする準備をしておきましょう。

【身体的要因】

  • 高齢者
  • 乳幼児
  • 肥満の方
  • 糖尿病などの持病持ちの方
  • 低栄養素状態
  • 下痢による脱水状態
  • 風邪などによる脱水状態
  • 二日酔い
  • 寝不足などの体調不良

身体的要因において、年齢が要因の場合は周囲の方が気にかけるしか対策ができません。しかし、それ以外の体調不良や病気を持っている場合は病気が治るまで外出を控えるか、体調の不調を改善できるグッズを持って気をつけながら外出するようにしましょう。

部活や仕事などの行動的要因

部活や仕事などの行動的要因は外での運動や疲労度が高い仕事などをしている状態のことを指します。気温が高い時に外での仕事や部活動などのように激しい運動をすると熱中症の危険度が高まります。仕事や部活は暑いからといって個人の判断で辞めたり、続けたりすることが難しいです。なので、まずは自身の行動が熱中症になりやすいということを把握して、自身でできる熱中症対策を実施するようにしましょう。

【行動的要因】

  • 激しい筋肉運動
  • 普段は運動しない方の運動
  • 長時間の屋外作業
  • 水分補給できない状況

熱中症は暑い時期になると発症しやすくなる症状です。熱中症は発症するまでの予兆があまりないので自身で気づきにくく、特に乳幼児や高齢者は『知らぬ間に熱中症になっていた』なんてことも少なくありません。なので、暑い時期がきたら熱中症対策をしっかりして、無事に夏を乗り越えられるようにしましょう。対策を実施する際は発症する要因(環境・身体・行動)を覚えて、それらから身を守る方法を考えることが大切です。

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