健康診断などで尿酸値を指摘された方の中には、「尿酸値を下げるには何をすればよいのだろう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。自覚症状がないことも多いだけに、数値の異常を指摘されるとショックを受けてしまうのも無理はありません。
本コラムでは尿酸値が上がる要因について理解を深められます。今すぐ始められる対策も紹介しています。尿酸値を改善したい方はぜひ最後まで読んでみてください。
尿酸とは
尿酸は、食べ物から取り入れたり、体内で発生したりした「プリン体」が分解された後にできる燃えカスのようなものです。プリン体は食べ物の旨味成分で、穀物や肉、魚、野菜などの食物全般に含まれています。食事から取り入れたプリン体は、体を動かすエネルギー源になります。
私たちの細胞にもプリン体が含まれており、古くなった細胞が分解される段階で発生します。プリン体は主に肝臓で分解されて尿酸となり、尿や便として排泄されます。
尿酸値が高い要因
尿酸値が上がってしまう要因は大きく2つです。
- 体内で尿酸が過剰に作られる
- 尿酸の排泄スピードが低下する
通常、尿酸の産生スピードと排泄スピードは同程度に調節されていて、体内の尿酸量は一定に保たれています。産生量が増えたり排泄量が減ったりすると、産生と排泄のバランスが崩れて尿酸が体の中に溜まってしまうのです。血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると、「高尿酸血症」と呼ばれる状態になります。
尿酸値が高いとどうなる?
尿酸値の高い状態が長期間続くと、さまざまな疾患を引き起こす要因になるため要注意です。高尿酸血症により発症リスクが上がる疾患は、以下のとおりです。
- 痛風
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 尿路結石
- 生活習慣病(糖尿病や脂質異常症など)
- 慢性腎臓病
血液中に溶ける尿酸量には限りがあり、溶けきれなくなった尿酸は結晶化して体内に沈着してしまいます。結晶が関節にできると「痛風」、尿路にできると「尿路結石」を引き起こします。
高尿酸血症は、体内の代謝バランスが乱れているサインです。代謝バランスが乱れると、尿酸値だけでなく血糖値やコレステロールの値にも影響を及ぼしてしまう可能性も。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病、動脈硬化の進行による心筋梗塞や脳卒中の発症リスクも高めてしまいます。
高尿酸血症の方は慢性腎臓病を合併しやすいことも知られており、尿酸値の高さはさまざまな病気の引き金となり得るでしょう。
尿酸値を上げてしまう食事
尿酸の材料であるプリン体は、体内で作られるだけでなく普段の食事からも取り入れられています。以下でプリン体を多く含む食べ物や、尿酸値を上げやすくなる飲み物をご紹介します。心当たりのある方は、少しでも量を減らすよう心掛けましょう。
プリン体が多い食べ物
プリン体は、内臓類や肉類、魚介類に多く含まれています。プリン体が特に多い食材は以下のとおりです。
- レバー
- 干物(マイワシ、マアジ)
- あんこう(肝酒蒸し)
- カツオ
なお、プリン体は水に溶ける性質があります。食材そのものに加えて、肉類や魚介類を使ったスープなどの飲み過ぎにも注意してください。
尿酸値を上げる飲み物
体内で尿酸の産生を増やしたり、排泄を遅らせたりする飲み物にも注意が必要です。尿酸値をアップさせやすくする飲み物には、以下のようなものがあります。
- 清涼飲料水
- アルコール
清涼飲料水に含まれている果糖は、体内で分解される際に尿酸の産生を促進してしまいます。さらに、果糖が分解されて生じる乳酸は、尿酸の排泄を妨げてしまいます。果糖だけでなく、ブドウ糖と果糖が組み合わさっている白砂糖にも注意が必要です。
アルコールも清涼飲料水に含まれる果糖と同様、尿酸産生を促進する働きがあります。「プリン体が含まれていないお酒なら安心」と考えがちですが、種類を問わずアルコール自体が尿酸値を上げてしまいます。アルコールには利尿作用もあり、体内の水分量が減ることで相対的に尿酸値が上がりやすくなってしまう点にも注意しましょう。
尿酸値を下げる食習慣
尿酸値を下げるのに役立つ食習慣を5つ紹介します。
- 摂取カロリーを適切にする
- プリン体を多く含む食べ物に注意する
- 野菜・海藻をたくさん食べる
- アルコールを減らす
- 水分をたくさん摂る
それぞれの食習慣について詳しく見ていきましょう。
摂取カロリーを適切にする
1日当たりの摂取カロリーを適切に管理することが、尿酸値を下げる食習慣への第一歩です。座っていることが多い方であれば、1日当たりの適正カロリーは以下のとおりです。
- 男性:2,000〜2,400kcal
- 女性:1,400〜2,000kcal
尿酸の原料になるプリン体は、ほぼすべての食べ物や飲み物に含まれています。プリン体の量が少ない食べ物であっても、摂り過ぎてしまうと尿酸値は上がりやすくなってしまうのです。
カロリーの摂り過ぎにより引き起こされる肥満も、尿酸値との関連性が強いとわかっています。肥満により体の機能が低下すると、腎臓からの尿酸排泄が遅れてしまうと考えられています。
プリン体が少ない食べ物や飲み物
プリン体の少ない物を意識的に摂取することも大切です。尿酸の原料であるプリン体が少ない食べ物や飲み物は、以下のようなものが挙げられます。
- 牛乳
- 鶏卵
- イクラ
- アーモンド
- 練り物(かまぼこ、さつま揚げ)
普段の食事の中で、プリン体が多い物を摂取し過ぎていないか、プリン体が少ない食材などに変えることはできないか、今一度見直してみると良いでしょう。
アルコールを減らす
お酒が好きな方は、アルコールの摂り過ぎに注意しましょう。プリン体の多いお酒としてビールがよく知られています。しかし、実はアルコール自体に尿酸値を上げる作用があるのです。お酒の種類ごとに、1日当たりの適正量を以下に示します。
- ビール:ロング缶1本(500mL)
- 日本酒:1合(180mL)
- ウイスキー:ダブル1杯(60mL)
- 焼酎:グラス1/2杯(100mL)
- ワイン:グラス2杯弱(200mL)
- チューハイ:缶1本(350mL)
お酒は適正量を守り、体に負担をかけ過ぎない程度に楽しむよう意識していきましょう。
野菜・海藻をたくさん食べる
野菜や海藻は、意識的に摂るようにするのがおすすめです。野菜や海藻には、尿をアルカリ性に保つ働きがあります。尿酸は酸性の物質なので、尿はアルカリ性の方が尿酸を多く排出できます。
外食が多い方などは、慢性的に野菜や海藻が不足しがちです。メニューを選ぶ際に野菜や海藻が入っているものを選んだり、サラダセットを付けたりするなど工夫してみましょう。肉や魚の量を減らしても満腹感を得やすいので、無理なく食習慣を改善できます。
水分をたくさん摂る
水分補給を意識的に行いましょう。尿酸は主に尿から排泄されるので、充分に水分補給することで尿酸の排泄スピードを維持できます。1日に作られる尿量の正常値が1.2〜1.5Lなので、水分は1日1〜2L程度補給できると良いでしょう。
水分補給をする際は、糖分が含まれていない物を選ぶよう心掛けてください。清涼飲料水に含まれている果糖は、尿酸値を上げてしまう働きがあるためです。アルコールやカフェインは利尿作用があるので、お酒やコーヒーは水分補給としてではなく嗜好品として楽しむ程度に留めましょう。
尿酸値を下げるための生活習慣
尿酸値を下げるために意識したい生活習慣を4つ紹介します。
- 摂取カロリーの管理
- 栄養バランスの取れた食事
- 適度な運動
- ストレス発散
それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
肥満の解消
身長に対する適正体重を大幅に超えてしまっている方は、肥満の解消に努めましょう。肥満体型の方は尿酸の合成が増加し、尿酸の排泄機能が低下した体質になりやすいことが知られています。要因としては、食べ過ぎや飲み過ぎによるプリン体の過剰摂取や、腎機能の低下が考えられます。
プリン体は量による差はあるものの、ほぼすべての食べ物や飲み物に含まれていると考えて良いでしょう。必要以上にカロリーを摂取してしまうことは、必然的にプリン体の摂り過ぎにもつながってしまいます。肥満の解消を通して体質を改善し、尿酸代謝を適切な状態に戻すことが重要です。
栄養バランスの取れた食事
食事は栄養バランスを意識してください。尿酸値を上げやすい食べ物や飲み物を控え、尿酸を下げる食生活に切り替えることが大切です。尿酸の原料であるプリン体が多く含まれた食材(魚の干物やレバーなど)を適量に抑え、野菜やきのこ、海藻類を取り入れるよう心掛けましょう。
野菜やきのこ、海藻類には、尿をアルカリ化する作用があります。アルカリ性の尿には尿酸が溶けやすくなり、尿酸排泄が促進されます。
適度な運動
日ごろの生活に運動を取り入れることも大切なポイントです。適度な運動は、肥満解消の面からも良い影響を与えてくれるでしょう。運動を取り入れる際は、筋トレなどの無酸素運動よりもウォーキングなどの有酸素運動をおすすめします。無酸素運動は筋肉で乳酸を発生させてしまい、溜まった乳酸が尿酸排泄を阻害してしまうためです。
運動の頻度は週に3回程度、1回当たりの時間は30〜60分程度を目安としましょう。ウォーキングの他にも、ジョギングやサイクリング、水泳などが有酸素運動にあたります。今すぐまとまった運動時間を確保するのが難しい方は、移動に階段を使ったり、一駅分歩いて通勤したりするなど工夫してみてください。
ストレス発散
適度にストレスを発散することも、尿酸値を下げるうえで重要です。過度なストレスは尿酸値と密接に関わることが知られています。
ストレスが掛かって心身の緊張状態が続くと、体の中ではエネルギーが大量に消費されることになります。尿酸はエネルギーを発生させた後の燃えカスのようなものなので、エネルギー消費が増えると尿酸の産生も増えてしまうのです。
ストレスは、ホルモンバランスの乱れも引き起こすことが分かっています。ホルモンは体の機能を調節する役割があるため、バランスが乱れると腎臓からの尿酸排泄が滞ってしまいます。
ストレスをできるだけ避けること、ストレス解消法をご自身の中で用意しておくことがおすすめです。
おわりに
尿酸は、体がエネルギーを消費した後に残る燃えカスのようなものです。尿酸値は、尿酸の産生と排泄のバランスが崩れることで上がってしまいます。尿酸値が高い状態は、痛風だけでなくさまざまな生活習慣病の引き金となってしまうため注意が必要です。
尿酸値を下げるためには、日ごろの生活習慣を見直すことが大切です。尿酸値が上がりやすい食生活を知り、当てはまるものがあればひとつずつ改善してみましょう。適度な運動や定期的なストレス解消も、尿酸値を下げるのに役立ちます。尿酸値を下げる生活習慣は心身全体の健康にも良い影響をもたらすので、ぜひ取り入れてみてください。