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【医師監修】耳が聞こえにくい原因は?考えられる病気や治療法を紹介!

【医師監修】耳が聞こえにくい原因は?考えられる病気や治療法を紹介!
磯野 志真 医師

監修者

医師

磯野 志真

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会所属の耳鼻科の女性医師です。大学病院、市中病院などでの勤務経験に基づき、一般的な耳鼻科疾患から、小児の難聴・中耳炎、成人の頭頸部癌まで幅広く診療した経験があります。他にもAGA外来、一般内科、健康診断科等の幅広い勤務歴があります。高いエビデンスに基づいた分かり易い内容をお伝えできるように努めます。

最近「耳が聞こえにくいな」と感じていても、何となく「歳のせいだろう」「気のせいかな」と放置してしまっている方も多いのではないでしょうか。耳の聞こえにくさにはさまざまな原因がありますが、病気が関係している場合もあります。この記事では、耳が聞こえにくい原因や、考えられる病気とその治療法などについて紹介します。最近、耳が遠くなったなと感じる方は参考にしてください。

耳が聞こえにくい原因は何?

耳が聞こえにくい原因は何?

耳が聞こえにくい状態を「難聴」といい、難聴にも「伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)」と「感音性難聴(かんおんせいなんちょう)」の2種類があります。

伝音性難聴は、外耳や中耳の機能が正常に働かなくなり、音が伝わりにくくなることで耳が聞こえづらくなる病気です。伝音性難聴の場合は、補聴器などで音を大きくすると聞こえるようになり、手術や治療で聴力の回復も期待できることもあります。

一方、感音性難聴は内耳よりも奥の中枢神経の障害によって起こる病気です。感音性難聴は伝音性難聴と違って、補聴器を使っても音を聞き取りにくく、治療による回復も難しいことが多いです。

ここからは、そもそもなぜ難聴が起こるのか、耳が聞こえにくくなる原因について頻度の多いものを解説します。

異物混入

耳の中に蚊やダニといった小さな虫や、ビーズ、ゴミなどの異物が間違って入ってしまい、耳が聞こえにくい状態になることがあります。原因を取り除けば治る可能性がありますが、自分で無理に取ろうとすると、耳の中を傷つけてしまう危険性があります。早めに病院を受診し、取り除いてもらいましょう。

耳垢栓塞(じこうせんそく)

耳の中で耳垢が詰まって、外耳道をふさいでしまうことを「耳垢栓塞(じこうせんそく)」といいます。基本的に耳垢は自然に外に出ていくので、耳内で溜まりにくくなっています。ただし人によっては耳の構造上溜まりやすい方もいるので、耳垢が詰まって聞こえが悪くなる方もいます。また耳掃除によって、間違って耳垢を耳の奥に押し込んでしまう場合もあるので注意しましょう。

鼓膜の損傷

耳をぶつけたり、ぶたれたり、耳かきをしたりした後などに、突然耳が聞こえにくい状態になった場合は、鼓膜を損傷している可能性があります。鼓膜は耳の中で太鼓のように音の振動を伝える役割をしているので、傷があることで音の響きが悪くなり、耳の聞こえに影響するのです。痛みを感じない程度の小さい傷は自然にふさがっていきますが、痛みがあるときは、耳鼻科を受診しましょう。

ウイルス・細菌・カビなどの病原体の感染

耳の穴から鼓膜までの細い耳の通り道を外耳といいますが、ここに細菌やカビなどの感染があると、難聴の原因となる外耳炎を起こしてしまいます。

また、鼓膜より奥の部分を中耳といいますが、中耳は「耳管(じかん)」という管により喉とつながっています。ウイルスや細菌などの感染が喉にあると、耳管を介して中耳に感染がおよび、難聴の原因のひとつである急性中耳炎などの原因になります。

騒音

騒音

イヤホンやヘッドホンをつけて耳元で大音量を流したり、ライブで大音量の音楽を聞いたりした後に、耳が詰まる感じや耳が聞こえにくくなることがあります。工事現場のような騒音が鳴り響く環境に長時間いる場合でも同じような症状が表れます。これは、内耳にある蝸牛(かぎゅう)が、大きな音や衝撃によって損傷を受けたことで起こるものです。この場合、早期の治療で改善する可能性があります。

ストレス

人間関係や仕事などによる精神的ストレスや、生活習慣や睡眠不足など身体に与える身体的ストレスが長期間続くと自律神経が乱れ、耳が聞こえにくい状態に陥る場合があります。同時にめまいや耳鳴りを引き起こす場合も多く、その症状がストレスとなって、さらに症状を悪化させる可能性があります。

老化

年齢を重ねていくごとに内耳や神経も老化し、機能が衰えていくことで耳が聞こえにくくなります。これを「老人性難聴(または加齢性難聴)」といいます。誰にでも必ず起こる老化現象のひとつで、多くは50歳代から始まります。高い音から聞こえにくくなっていくのが特徴です。

薬による副作用

薬の副作用によって耳が聞こえにくくなることもあります。一部の抗菌薬や、抗がん剤、利尿薬は、難聴を引き起こす可能性があるものとして知られています。新しい薬を使い始めたら、耳の聞こえに異常はないか確認しておくことが大切です。

耳垢が詰まっている時の対処法は?

もともと耳には、耳垢を自然に外に出す自浄作用が備わっているため、耳掃除は基本的に月1回程度で十分といわれています。しかし、体質や生活環境によっては耳垢が溜まりやすく詰まってしまう場合もあるでしょう。耳垢の詰まりはさまざまな病気を引き起こす原因にもなるので、耳鼻科などの医療機関で取ってもらうと安心です。

耳が聞こえにくい時に考えられる病気は?

耳が聞こえにくい時に考えられる病気は?

耳が聞こえにくくなっても、「歳のせいだろう」と考える方も多いかもしれませんが、病気の可能性も考えられます。耳が聞こえにくくなる症状を引き起こす病気について詳しく見ていきましょう。

急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)

「急性中耳炎」は、風邪を引いたときの細菌・ウイルスが耳管を通って中耳に入り込むことで炎症を起こす病気です。幼児に多い病気ですが、大人が罹るケースもあります。症状は、耳が聞こえにくい症状の他に、耳だれや耳の痛み、発熱などです。

急性中耳炎は治療を放置すると「慢性中耳炎」や「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」へと悪化する可能性があります。風邪を引いたときに耳が痛くなったり、耳から分泌液が出たりする症状が表れたら、耳鼻科を受診しましょう。

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)

「滲出性中耳炎」は、滲出液という液体が中耳腔に溜まる病気です。滲出液(しんしゅつえき)とは、中耳腔内で炎症が起きたときに、中耳腔の細胞から滲み出てくる炎症性の液体を指します。

通常、この滲出液耳管から喉へ排出されますが、耳管が正常に機能せず、滲出液が排出されないまま中耳腔内に留まることで、耳の中が詰まったような感じや聞こえにくさを感じるといった症状が表れます。急性中耳炎と違って耳の痛みや発熱などの症状が伴わないのが特徴です。

滲出性中耳炎は、3歳ごろから小学校低学年幼児に多い病気で、耳管の機能が小児は不十分であることが原因で発症します。他にも、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、アデノイド増殖症などが存在すると、滲出性中耳炎になりやすいといわれています。

慢性中耳炎(まんせいちゅうじえん)

「慢性中耳炎」は、慢性的に中耳の炎症が起こっている病気です。慢性中耳炎は、急性中耳炎が治らないまま長期間炎症が続いていることが原因で鼓膜に穴が開いてしまい、この穴から病原体が入り中耳腔に炎症が起こることで浸出液が漏出して「耳だれ」を繰り返したりすることが特徴的です。

真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)

「真珠腫性中耳炎」は、鼓膜の一部や外耳道の皮膚が中耳の内側に入り込むことで中耳内部で耳垢が溜まり、これが徐々に大きな塊となって周囲の組織を破壊していく病気です。真珠腫が小さいうちは自覚症状がほとんど見られませんが、徐々に大きくなると難聴や耳だれ、耳鳴りやめまいが生じてきます。さらに真珠種が進行すると味覚障害や顔面神経麻痺などを引き起こしたり、脳炎や髄膜炎などの深刻な病気を合併したりする恐れもあるのです。

外耳炎(がいじえん)

外耳炎は、耳の入口から鼓膜までの皮膚に炎症が起こる病気です。耳の聞こえにくさや耳が詰まる感じ、耳だれ、耳のかゆみ、痛み、腫れなどの症状があります。外耳炎の大きな原因は、耳掃除などで皮膚が傷ついて細菌やカビが感染することが多いです。耳の痒みや痛みで何度も耳の中を触ってしまうと、症状が悪化して治りにくくなる可能性もあるので、気になる症状がある場合は早めに耳鼻科などの医療機関を受診しましょう。

メニエール病

「メニエール病」は、平衡感覚や聴覚を司る内耳にリンパ液が溜まり、むくむことで引き起こされる病気です。耳が聞こえにくい状態になる他に、耳の詰まりや回転性のめまい、片耳だけの耳鳴りなどの症状が繰り返し起こるのが特徴です。

吐き気や嘔吐といった症状も伴う場合があります。メニエール病は、30~50歳代の女性に多く見られる病気で、ストレスや過労、睡眠不足、悪天候などが原因で症状が表れるケースが多いといわれています。

突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)

突然発症する難聴で原因がはっきりしないものを「突発性難聴」といいます。耳が詰まった感じになる軽度なものから、全く聞こえなくなるような重度なものまで、さまざまなパターンがあります。

ほかにも、音が詰まって聞こえたり耳鳴りが続いたりといった症状が見られます。原因は不明なことが多いですが、一般的に過労やストレス、睡眠不足などが続くと起こりやすいといわれていて、40~60歳代の働き盛りの世代に多く見られる病気です。聴力の回復には、早めの治療がカギとなります。

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病気別の治療法

病気別の治療法

耳が聞こえにくくなる症状をもたらす病気はさまざまあります。ここでは病気別の治療法とおおよその治療費を見ていきましょう。

急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)

急性中耳炎の治療では、原因となる細菌感染を抑えるために抗生剤などが使用されます。急性中耳炎は鼻から耳管を通って感染が起こるので、ネブライザー(吸入器)を使って鼻と上咽頭の炎症を取り除くこともあります。

抗生剤を投与しても改善しない場合、中耳炎による耳の痛みがひどい場合は、鼓膜を切開する「鼓膜切開術」が必要になります。切開することで、耳の痛みの改善が期待できるでしょう。切開した鼓膜の穴は、中耳炎の症状改善とともに数日でふさがります。

滲出性中耳炎

滲出性中耳炎の治療方法には、いくつかの段階があります。まずは耳に溜まっている滲出液の排泄を促す薬剤を使用します。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎を伴っている場合は、そちらの治療も開始します。

それでも耳に滲出液が溜まっている場合や難聴の程度が重症である場合は、急性中耳炎の治療と同様に「鼓膜切開術」を行います。鼓膜を切開して滲出液や膿を出して、症状の改善を期待します。。

鼓膜切開術を受けても滲出液の貯留を反復する場合は、「鼓膜換気チューブ挿入術」を行います。鼓膜に滲出液や膿の排出を促すための換気チューブを挿入し、数か月から2年程度はそのまま留置しておきます。鼓膜チューブを長期的に入れることで、滲出液や膿が中耳に溜まりにくくなります。

慢性中耳炎

慢性中耳炎は、耳だれなどの症状があり炎症が活動的な場合は抗生剤の点耳薬を使用して治療します。薬が効いて症状は一時的に改善しても、反復することが多いので、慢性化した中耳炎を根本的に治療するためには、手術が必要になります。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎に効果的な薬物がないため、基本的には手術による治療を行います。小さい真珠腫であれば1回で完全に取り除けることも多いですが、大きく進行している場合は、再発を防ぐために数回に分けて確実に真珠腫を取り除き、破壊された耳小骨や鼓膜を再建することが多いです。

外耳炎

外耳炎は、症状が軽度から中度の場合は、ステロイドや抗生剤の点耳薬などを使用し、重度の場合は抗生剤の内服薬を使用して治療します。

メニエール病

メニエール病の治療は、めまいの症状が強い場合は抗めまい薬を使用して症状を抑えるほか、内耳の溜まったリンパ液を体外に出すための利尿剤も併用して治療していきます。めまいが強いと吐き気や歩行困難も出てくるため、入院して治療をすることもあります。メニエール病はストレスが誘因になることが多いので、ストレスを軽減することが再発予防としてとても大切です。

突発性難聴

突発性難聴は、ステロイドや血流改善剤などを使用して治療します。突発性難聴では、難聴の程度が重症であったり、薬の反応を数日間みてほとんど改善が見られない場合は入院して治療することもあります。

おわりに 

耳が聞こえにくい症状の原因には、異物の混入や耳垢の詰まり、病原体の感染、騒音、ストレスなどさまざまな要因があり、これらが原因となりさまざまな耳鼻科的疾患が発症してしまいます。耳の病気はそのまま放置しておくと、他の病気に進展したり、治りにくくなったりと、症状を悪化させてしまう可能性もあります。少しでも耳が聞こえにくくなったと感じることがあれば、「歳のせいかな」「気のせいだろう」と放置するのではなく、病気の疑いも視野に入れ早めに医療機関を受診するようにしましょう。

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