更新日
公開日

急性心筋梗塞で助かる確率とは?突然の胸痛の原因、症状、検査、治療方法を解説

急性心筋梗塞で助かる確率とは?突然の胸痛の原因、症状、検査、治療方法を解説
甲斐沼 孟 医師

執筆者
甲斐沼 孟 医師

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

急性心筋梗塞は危険な病気であることは間違いありませんが、その生命予後は適切な初期対応を実施するまでの時間に大きく左右されることが知られており、早期に治療をすれば助かる確率がその分高くなるといわれています。突然の胸痛を感じる急性心筋梗塞の発症原因、典型的な症状、適切な検査、代表的な治療法などを解説していきます。

急性心筋梗塞の特徴

急性心筋梗塞の特徴

急性心筋梗塞は、急に胸に激痛が起こり、胸に締めつけられるような圧迫感を感じる疾患であり、命に直結する可能性を有する危険な心臓の病気です。急性心筋梗塞は、心臓の筋肉を養っている冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる血管が突然閉塞して、冠動脈疾患を起こすことによって心筋の一部への血液供給が大きく減少することで発症します。

生命に必須とされている心臓への血液供給が数分以上にわたって中断されると、心臓の横紋筋の筋肉組織が壊死することにつながって、胸痛など胸部症状を発症することがあります。

急性心筋梗塞を発症した際には、すぐに救急車で病院を受診して早急に治療を施さないと、死を招きやすい恐ろしい病気といえます。心臓のポンプ機能は、普段は心筋が収縮と拡張を繰り返すことで維持されていますが、心筋梗塞を起こして心筋の一部が機能しなくなると、ポンプ機能が正常に働かなくなり、心不全や心室細動という危険な不整脈などを引き起こします。

急性心筋梗塞を引き起こす3つの原因

急性心筋梗塞を引き起こす3つの原因

不規則な食生活

急性心筋梗塞を引き起こすひとつの原因としては、日常の食生活が不規則であり、特に塩分の摂取を過剰に取り込んでいる場合が挙げられます。

血液中に塩分が増加すると、血圧が必然的に上がり、血圧が高い状態が続くと血管壁はその圧力に耐えようとして生理的に厚く変化すると共に硬くなってしまい動脈硬化が進行します。

したがって、常日頃から塩やしょうゆ、豚骨ラーメンなど塩分や脂肪分を多く含む汁を飲み干したりせず、食卓で塩の代わりに、酢やレモンなどを上手に活用することで心筋梗塞に罹患しにくくなると考えられます。

また、一般的に血液中のカリウムが増加すると、ナトリウムが排出されて血圧が下降する傾向を認めるため、カリウムを豊富に含む野菜などから日常的にミネラル成分を摂取している方は心筋梗塞になりにくいといえます。 

不規則な食生活

カリウムを豊富に含むのは、トマト、カボチャ、ほうれん草、サトイモなどの野菜類、バナナ、シイタケ、納豆などが代表例です。 

また、野菜に含まれるビタミン群は、動脈硬化を促進する活性酸素を除去してくれますので、野菜類、海藻類、大豆製品などは、身体に大切なミネラルやビタミンの宝庫として急性心筋梗塞を未然に予防する効果が期待できます。

そして、カルシウムの摂取が少ないと、骨などからカルシウムが溶け出て血液中のカルシウムが増えて、血管内にも血栓ができやすくなると指摘されています。

ですから、カルシウムを豊富に含む牛乳や小魚、大豆製品、ヒジキや昆布などの海藻類などを多く食品として摂取すれば、急性心筋梗塞の発症リスクが低減すると考えられます。

運動不足

運動不足

日常生活習慣における運動不足は急性心筋梗塞の発症危険因子として知られており、血液中に悪玉コレステロールを増加させて、内臓周囲に脂肪を沈着しやすくします。

現代では、自動車などの便利な乗り物が簡便に利用できる生活が当たり前になっており、駅やショッピングモールなどの公共施設にもエスカレーターやエレベーターが整備されています。

日常的に歩くことは健康を維持するための基本策であり、歩行時に筋肉を使えば使うほど基礎代謝が上がり、血液循環が良好になって動脈硬化性変化を予防することにつながります。

特に、継続して習慣的に運動を実行する事が効果的であり、ウォーキングなど有酸素運動を1回当たり30分程度、週に3回程度と無理なく実践している場合は、急性心筋梗塞を発症しにくいと考えられます。

動脈硬化(どうみゃくこうか)

動脈硬化(どうみゃくこうか)

急性心筋梗塞を引き起こす原因の多くは血管壁の動脈硬化性変化にあるといわれています。心臓の筋肉を養っている役割を持っている血管は、大動脈が心臓の左心室の部屋から出たところでちょうど枝分かれしている左右の冠動脈です。急性心筋梗塞は、脂質異常症のみならず高血圧などが誘因となって形成される冠動脈の動脈硬化性変化に伴って冠状動脈の血行障害をきたすことによっても発症します。

動脈硬化そのものは食事や運動などを始めとして、普段の日常生活の送り方に少し気をつけることで充分に防げると期待されています。

急性心筋梗塞に関連する知識

急性心筋梗塞に関連する知識

症状

急性心筋梗塞では、胸痛や胸部不快感が有名な症状として知られていますが、それ以外にも無症状のケースもあれば、病状の進行度などによってさまざまな症状が出現するといわれています。急性心筋梗塞の発症状況によっては、腕や肩の痛み、歯や顎の下の部分である下顎部(かがくぶ)にかけて周囲に放散する痛み症状である放散痛(ほうさんつう)、あるいは胸焼け症状として自覚することもありますし、動悸、息切れ、息苦しさ、全身浮腫(むくみ)、意識障害として症状様式が認められることもあります。疼痛症状としては、痛み自体が数分程度で治まる場合、また胸痛の発作症状をたびたび繰り返す場合、あるいは階段や坂道を昇降する際に呼吸苦などの症状を引き起こすケースも見受けられます。

症状に関するチェックリスト

急性心筋梗塞を発症した際には、主に胸痛や胸が重い感じなどの症状が現れるといわれています。

したがって、急激に予期せずに胸の痛みを感じる、胸部が圧迫されるような感じを受ける、胸全体が締め付けられる感覚や焼けつくような自覚症状が認められる際には、急性心筋梗塞を疑う必要がありますのでできるだけ速やかに医療機関を受診しましょう。急性心筋梗塞における症状は多彩であり、胸の痛みが、顎や首周りの頚部周囲(けいぶしゅうい)、あるいは肩や腕、みぞおちなどに広がっていくこともありますし、吐き気や冷汗を伴って意識を失う場合も想定されます。

受診目安

急性心筋梗塞を発症した際には、その半数以上の患者さんで発作前に前兆症状を自覚していると考えられており、例えば今まで経験したことないような激しい胸の痛みを突然感じた場合には急性心筋梗塞の疑いがあるため、迅速に専門医療機関を受診して適切な治療に結び付ける必要があります。

胸痛以外にも冷汗や吐き気症状を伴う胸部不快感などのような症状が認められる場合には、すぐに救急車を呼んで専門医療機関を受診することが重要です。また、受診する際には自家用車やタクシーでは途中で状態が急変した場合に迅速に対応できず、手遅れになる危険性がありますのでできる限り速やかに救急搬送してもらうようにしましょう。

検査

検査

急性心筋梗塞がどの程度重症かどうかを素早く調べるためには、問診や身体診察、あるいは心電図検査を確実に実施することが重要です。特に、12誘導心電図は最も基本的なタイプの心電図検査(一般的な健康診断などで実施されている心電図検査)であり、前胸部に6ヵ所、四肢に1ヵ所ずつ電極を貼って合計10か所の測定器を装着して、安静になっている状態で検査することで、心臓の電気信号を波形として評価することができます。

また、急性心筋梗塞に対する有用な検査のひとつとして、心臓エコー検査が挙げられ、この検査を実施することによって心臓の心筋の動き(収縮能力)、心臓の大きさや心臓にある弁の形状、心臓内の異物の有無などを客観的に調査することができます。

心臓エコー検査における大きなメリットとしては、患者さん自身の苦痛をあまり伴わずに心臓の状態をリアルタイムに観察できることです。

そして、これらの初期検査を組み合わせて急性心筋梗塞の診断の可能性が高まれば、心臓カテーテル検査に移行します。心臓カテーテル検査は、カテーテルという細い管を血管内腔に挿入して実施する検査であり、検査目的によって冠動脈造影検査、血管内エコー検査、右心カテーテル検査、左室造影検査等の種類に分かれています。

この中でも特に、血液の一部を心臓の筋肉に送っている重要な役割を有している冠動脈の形状や狭窄の有無などを評価するために実践されるのが、冠動脈造影検査となっています。それ以外にも、血液検査や冠動脈CTなどの画像検査を実施して、急性心筋梗塞の正確な診断や重症度の判定などに役立てることもあります。

治療

心筋梗塞では入院前に亡くなる方が多い疾患であり、心筋梗塞を発症した場合はその死亡率は約40%と指摘されています。その一方で、急性心筋梗塞で入院した場合の院内死亡率は10%以下であり、近年の治療成績は目覚ましく向上しています。

心筋梗塞に対する主な治療法としては、冠動脈を閉塞している血栓を溶かすために血栓溶解薬を注射する薬物療法、あるいは比較的低侵襲にカテーテルを使って閉塞病変を解除する冠動脈血行再建法、そして外科的治療としての冠動脈バイパス術などが挙げられます。

特に基礎疾患など合併症が多い場合には、カテーテルを用いた冠動脈血行再建法では、細いチューブ状のカテーテルを血管に挿入して冠動脈の病変部まで進ませて、バルーン(風船)や再狭窄を予防するための薬剤が塗布されている筒状の金属ステントを用いて血管を拡張します。

一方で、多枝病変を有する患者さんや手術リスクが低いと思われる方、薬物療法で充分な効果が得られない、もしくは冠動脈血行再建法が実施困難なケースでは、外科的な冠動脈バイパス手術が行われることもあります。

手術治療においては、冠動脈の狭窄部位や閉塞部分を迂回するように基本的には自己血管を駆使してバイパスを作成し心筋への充分な血流を確保する治療手段であり、昨今では長期的な成績も上昇傾向にあります。

自宅でできる改善方法

急性心筋梗塞では、内科的治療や手術治療が進歩して、元気に退院できる方が増えてきましたが、一度心筋梗塞を罹患した場合には再発する可能性が高く、心筋梗塞を再発予防することがとても重要です。また治療後には、喫煙者においては禁煙することは必要条件であり、普段から塩分控えめのバランスの良い食事を意識して、適度な運動を実践することで体重増加し過ぎないように気をつけましょう。

また、退院後も薬物療法として血栓ができるのを予防する薬剤、脂質異常症や高血圧に対する薬剤などを服用する必要がある際には、医師の指示を遵守して内服を継続するようにしましょう。

改善しない場合は循環器内科専門医へ相談しましょう

改善しない場合は循環器内科専門医へ相談しましょう

急性心筋梗塞は、死に至りやすい危険な病気です。突然の胸痛など症状を自覚した際には、可及的速やかに最寄りの救急医療機関や心臓専門クリニックなど、循環器内科専門医を受診して適切な診断や治療をされることをおすすめします。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする

ライフイベントから探す

お悩みから探す

執筆者・監修者一覧

執筆者・監修者一覧

セミナー情報

公式SNS

おすすめコンテンツの最新情報をいち早くお届けします。みなさんからのたくさんのフォローお待ちしています。