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自律神経失調症とは?なんとなく体調が優れない時は自律神経失調症の症状かも?

自律神経失調症とは?なんとなく体調が優れない時は自律神経失調症の症状かも?
甲斐沼 孟 医師

執筆者
甲斐沼 孟 医師

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

最近、なんとなく体調が優れない、あるいは気分が落ち込んでしまうという経験はありませんか?その不調の原因が、もしかすると自律神経の乱れからくる自律神経失調症かもしれません。

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることでさまざまな症状を引き起こす病気の総称を指しています。

自律神経失調症のなかには、ストレスや不安などからくる軽症のうつ病、あるいは不安神経症や気分障害などの症状が一部含まれると考えられています。自律神経失調症は誰にでも発症する可能性があります。

今回は、自律神経失調症の原因、症状、治療方法などについて解説します。

自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)とは?

自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)とは?

自律神経失調症は、自律神経がストレスによって正常に機能しないことによって起こるさまざまな症状の総称です1)。

自律神経失調症においては、自律神経が過剰なストレスによって正常に機能しないことによってさまざまな症状を引き起こすことが知られています。

自律神経失調症の主要な症状は、眠れない、疲労が取れにくい、頭痛やめまい、息苦しさ、便秘、下痢などの便通異常症状が出現する以外にも、情緒不安定や不安感など精神的な不調症状が現れることがあります。

自律神経失調症は自律神経の乱れによって引き起こされると考えられていますが、実際に自律神経の働きを直接的に正確に調べる方法は乏しく、さまざまな検査を行っても明らかな異常や確定的な原因が指摘できないことも良く経験されます。

多彩な不調症状から疑われる病気に関する精密検査を施行しても特に明確な異常が見つからず、常日頃から過大なストレスや不規則な生活習慣が認められて、ホルモンバランスの乱れといった自律神経失調症を引き起こしやすい特徴がみられる際に、自律神経失調症が疑われます。

自律神経失調症のセルフチェック項目

自律神経失調症のセルフチェック項目

自律神経失調症においてはそれぞれの症例によって自覚症状が異なり、さまざまな症状が現れる自律神経失調症を自分自身でセルフチェックする方法があります。

普段から「もしかすると自分は自律神経失調症かも?」と心配されている場合には、まずは以下のさまざまな症状の有無を自分でチェックしてみてください。

1.よく頭痛やめまい、立ちくらみなどを感じる

2.急に胸が苦しくなったり息苦しくなったりする

3.たびたび動悸(どうき)がする

4.便秘や下痢などに伴って腹痛症状が起こりやすい

5.手や足がしびれることが多い

6.胸やけや胃もたれを感じ食欲不振に陥る

7.慢性的な肩こりや腰痛などで悩んでいる

8.寝起きが悪い、あるいは寝て起きても疲労感や倦怠感が残る

9.不安な気持ちになることが多く、憂鬱な気分に襲われて何事にもやる気が起こらない

10.些細なことでイライラする機会が増えた

11.物事に神経質になり、そわそわ落ち着かない

12.怖い夢をみる、もしくは金縛りにあう頻度が多い

13.寝つきが悪く、夜中にいったん覚醒するとなかなか眠れない

14.風邪を引きやすく体調不良になりやすい

自律神経失調症の場合は、上記のような症状が現れやすいと考えられています。特に、女性はホルモンの乱れで自律神経失調症になりやすいリスクが高く、月経前後、あるいは閉経後更年期、そして妊娠中や産後授乳中の場合は、自律神経失調症を発症する危険性が高まりますので注意が必要です。

自律神経失調症の原因

自律神経失調症の原因

日々のストレス

日頃から常に精神的にストレスが掛かっている状態では、自律神経失調症に罹患しやすいと指摘されています。

例えば、仕事や業務のプレッシャーなどを始めとする精神的ストレス、日々の蓄積された過労、自分が置かれている環境下での光や音、温度などに関する身体的ストレス、職場でのパワハラ・セクハラなどを含むハラスメントなどさまざまな理由によって自律神経のバランスが崩れます。

また、周囲の人間関係に伴うストレスにより、交感神経と副交感神経のバランスを崩してしまう場合もあります。

生活習慣

乱れた生活習慣とは、日常的な活動周期が一定でなく不安定であることを意味しており、例えば慢性的な寝不足、あるいは不規則な生活や偏った食事などが生体リズムを狂わせてしまい、自律神経の乱れにつながると考えられます。

不規則な生活習慣があり夜更かしをしてしまいがちである、夜勤が多い職業である、あるいはジャンクフードだけで食事を済ましてしまうなど、偏った不適切な食生活などにおいても、交感神経と副交感神経のバランスを崩してしまいやすいです。

女性ホルモン

女性ホルモン

自律神経失調症は、一般的に男性よりも女性の方が罹患率を高く認めると認識されており、その背景として女性ホルモンの影響によって自律神経失調症を発症する恐れが懸念されています。

一般的に、男性ホルモンは思春期に分泌が高まって、それ以後は初老期まで安定する傾向がある一方で、女性ホルモンは思春期の初潮、毎月の周期的な月経習慣、妊娠・出産、更年期から閉経に至るまで一生のうちに複雑な変化を繰り返しています。上記の女性ホルモンの特性から、女性の方が男性よりもホルモンバランスが乱れやすく自律神経失調症を発症するリスクが高くなると想定されますし、近年では女性において更年期に伴う自律神経失調症の発症が注目されています。

女性ホルモンは、一般的に脳の視床下部(ししょうかぶ)から脳下垂体を通じて卵巣で分泌されます。

女性ホルモンは、一般的に脳の視床下部(ししょうかぶ)から脳下垂体を通じて卵巣で分泌される

視床下部(ししょうかぶ)には、女性ホルモンの分泌のほかに自律神経をコントロールする役割がありますが、更年期には女性ホルモンが激減するため、ホルモンバランスの不調が起こり、視床下部に影響を及ぼすことによって自律神経が乱れることも疑われています。

更年期障害では女性ホルモンの分泌がそれまでと比べて減少するため、自律神経の乱れに容易につながる結果、顔面のほてりや頭痛などの不調症状を自覚することがあります。

睡眠不足

睡眠は身体のさまざまな機能をリセットして改善させるために重要な働きを持っていて、1日の中できちんと睡眠しないと疲労が溜まり、常に交感神経が働き続けている状態になります。

交感神経が働き続けると、当然もう一方の副交感神経は働く頻度が低下して、さらに副交感神経が働かない状態が続くと、副交感神経の機能そのものが低下して、身体の至る所に不調が出現するようになります。

睡眠不足が起こっている場合、交感神経が過敏となっている可能性が高く、この状態が長く続くと、ますます自律神経のバランスが乱れて悪循環になることが指摘されています。

食事の変化

普段の生活でトランス脂肪酸を含むマーガリンやインスタントラーメン、揚げ物やスナック菓子などの食べ物を過剰に摂取すると身体にとって有害とされています。

たくさん食べ過ぎると神経伝達機能やホルモン分泌機能に障害が出て、自律神経失調症に伴う症状を悪化させる可能性があります。

また、甘いチョコレートのお菓子など糖分を大量に含む食べ物も過剰に摂取すると血糖異常を引き起こして、時に発汗、動悸、手足の震えなどの症状が出現して自律神経失調症の症状を悪化させる要因になります。 

自律神経失調症の4つのタイプと症状

自律神経失調症の4つのタイプと症状

自律神経失調症には、大きく4つのタイプがあるといわれており、その多くは常日頃のストレスが影響して起こると考えられています。

1つ目のタイプは、本態性型であり、もともと低血圧や虚弱体質、体力の無い人に多く、自律神経の働きが乱れやすい特徴をもつ場合に発症しやすいと考えられています。

2つ目は、心身症型であり、感受性が高く何事にも繊細であり、少しの変化にも敏感に反応するタイプの人が陥りやすいといわれています。

3つ目は、神経症型で、日常生活における過度なストレスが原因となってさまざまな身体の不調を自覚するなど自律神経失調症の中でもっとも多いタイプと認識されています。

最後の4つ目は、抗うつ型であり、慢性的なストレスによって生じたうつ症状から自律神経が乱れる種類であり、主に心身症型の症状が悪化して病状が進展すると抗うつ型に移行する場合があると指摘されています。

身体的症状

身体的症状

個人によって症状の現れ方はさまざまですが、例えば自律神経失調症における典型的な身体的症状としては、倦怠感、息苦しい、眠れない、慢性的な疲労感などの全身症状、あるいは頭痛、動悸、息切れ、めまい、立ち眩み、下痢や便秘などの部分的症状が挙げられます。

それ以外にも、全身や手足の冷え症状、のぼせ、耳鳴り、関節痛、生理不順、口や喉の不快感、頻尿、残尿感、発汗など非常に多岐にわたることが知られており、同時に複数の症状が重なって自覚することもあります。

精神的症状

精神的症状

自律神経失調症における精神的症状としては、代表的には情緒不安定、いらいら、不安感、抑うつ傾向などの症状が挙げられます。

その他にも、自律神経のアンバランスに伴って引き起こされやすい精神的症状としては、不安、不眠、記憶障害、集中力低下、感情の激しい起伏などが考えられます。また、これらの複数症状が一度に現れる、あるいはいったん改善したと思っても別の症状が再び現れることがあります。

受診目安

受診目安

自律神経失調症の症状は個人差が非常に大きいという特徴があります。そのため、症状の多様さにより生活の質を大幅に損なってしまう場合には、我慢し過ぎずにすぐにかかりつけ医を受診し検査を受けるようにしましょう。

例えば、めまいや頭痛などの症状を認めるが故に、「毎朝会社に仕事をしに行けない」、「思い通りに家事ができない」状態になってしまい、なかなか外出できなくなり家に引きこもりがちになってしまう方は、専門医療機関を受診して相談するように心掛けましょう。

自律神経失調症の特徴として、内臓に明らかな異常がないことが挙げられるために、自律神経失調症を抱えている人は辛い症状を自覚していても、周囲に気付かれにくい状態であるといえます。

自律神経失調症に伴う症状が非常に多岐にわたり、症状がつらくても周囲の人々から気付いてもらえずに、より症状が悪化傾向を認める際には専門医療機関に受診しましょう。   

自律神経失調症の治療

自律神経失調症の治療

生活習慣の見直し

普段の生活で睡眠不足や運動不足が継続すると、自律神経やホルモンバランスの乱れにつながって心身共に不調症状を引き起こしやすくなります。したがって、規則的な睡眠と食事を摂るように心掛け、適度な運動をすることが重要です。

毎日の仕事量や飲酒量、カフェインの摂取量なども定期的に見直すなど実践して基本的な生活習慣が整っている状態であれば、ストレスに対しても柔軟に向き合うことができるようになると考えられています。

通常では、交感神経は活動する時により優位に働き、副交感神経は休息するときに働くために、交感神経が優位となる日中はできるだけ活動をして、副交感神経が優位となる夕方以降はなるべく休憩時間を取るように認識しておきましょう。

それぞれの神経の役割に自然と応じた日常行動を行うことで、自律神経のバランスが整いやすくなると推奨されています。

また睡眠時間に関しては、1日当たり5~6時間以上確保すると良いとされています。また、規則正しく朝食を含め毎日3食をある程度決まった時間に摂取することで自律神経の切り替えが順調に運ぶと考えられています。

薬物療法

薬物療法

自律神経失調症を効率的に治癒させるためには一定の専門的な知識が必要であり、自力や自己判断のみで治すのは難しい場合も存在するため、専門の医師に相談することが必要です。

自律神経失調症に伴う自覚症状がひどい場合には、症状を改善したり、不安やストレスを軽減したりするために医学的な観点から有用な治療薬を活用することもあります。

例えば、不安な気持ちやうつ状態で悩んでいる場合には「抗うつ薬」、眠れなくて苦悩している方には「睡眠薬」などが処方されることも考えられます。

それ以外にも、ホルモン剤などによる対症療法や睡眠周期を整える睡眠療法などが挙げられますし、基礎疾患を有する場合には普段の服用薬の種類や合併疾患なども考慮しながら、自律神経失調症の治療を進めていくことも可能です。

自宅でできる改善方法

自宅でできる改善方法

自律神経失調症は、日常生活における過剰なストレス刺激や生活習慣の不規則性によって引き起こされると考えられており、これらを回避して改善することで自然と不調症状が軽快していくことが多いです。

自分なりにストレスを解消して生活習慣を整備していくことは、自律神経失調症における症状を改善するために重要な行動様式であり、これらを優先的に改善するだけでさまざまな不快症状が緩和されることもあります。

自律神経失調症を抱えている場合は、ストレッチ、音楽療法、アロマセラピー、散歩や体操、入浴など日常的に気軽に取り入れることができるストレス解消法を実践することでストレスが多少なりとも緩和されることがあります。

少しでも自分がリラックスできる、楽しくて心地良いと感じることができる時間を意識的に設ける、あるいは自分特有の長続きしそうな趣味を持ったりすることでストレスをコントロールできることがありますし、積極的に交友関係を広げることも効果的です。

症状が改善しない場合は精神科や心療内科の専門医へ相談しましょう

症状が改善しない場合は精神科や心療内科の専門医へ相談しましょう

自律神経失調症は何らかの原因で自律神経に関連するあらゆる機能が乱れることによって起こることが知られており、その直接的な原因として、不規則な生活によって自律神経が興奮し続ける、あるいは更年期に伴うホルモンの乱れなどが典型例として考えられます。

自律神経は全身の器官をコントロールしているため、そのバランスが何かしらの原因で崩れてしまうと多種多様な症状が現れますし、自律神経失調症が呈する症状は個々によってさまざまです。

普段から自律神経失調症に関連した気になる症状を有する場合には、精神科や心療内科など専門医療機関に相談してみることをおすすめします。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

引用文献

1)許斐 氏元, 大塚 康司, 稲垣 太郎, 永井 賀子, 井谷 茂人, 齊藤 雄, 小川 恭生:自律神経失調症を疑っためまい症例の経過と睡眠障害の関与. Equilibrium Research. 2021 年 80 巻 6 号 p. 527-539

DOI https://doi.org/10.3757/jser.80.527

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