身体に良い食材といえば、真っ先に思い付くのが「野菜」という方も多いのではないでしょうか。健康やダイエットのために野菜中心の生活をしている、といった方もいらっしゃるでしょう。しかし、「なぜ野菜が身体に良いのか」、また「目安となる摂取量はどれくらいか」といったことについては、あまり知られていない現状があるかもしれません。たとえば、あなたは「野菜を摂った方が良い理由を3つ挙げてください」と言われて、何か答えられますでしょうか。
「食事に野菜を」とよくいわれている一方で、摂取が置き去りにされがちなのが、じつは「野菜」なのです。
たとえば、厚生労働省は1日に350グラム以上の野菜を食べることを推奨していますが、平成30年の同省調査では、成人男性平均で約290グラム、女性平均で約270グラムしか摂取できていないことがわかっています(何と、20代から70歳以上まで、全世代で摂取量は足りていません!)。
ここでは、大事、大事といわれつつもなかなか摂ることができない野菜の栄養的な良さについて解説するとともに、上手な摂り方を紹介します。
なぜ野菜を食べる必要があるのか
野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維など、健康を保つために大切な栄養素がたくさん含まれています。特に食物繊維は、魚や肉には含まれておらず、野菜で摂取する必要があります。
野菜は基本的に低カロリーで、肥満の防止に役立ちます。また、野菜の食物繊維、抗酸化ビタミンなどは、日本人の死因の多くを占める心臓病やがん、脳卒中などの生活習慣病に効果的に働くことが分かっています。加えて、野菜に含まれるカリウムは、余分なナトリウム(食塩)の排泄を助け、高血圧の予防につながることでも知られています。
これらの栄養成分の摂取源として、野菜が寄与する割合がとても高いため、野菜を十分に摂ることが勧められているのです。
野菜に含まれる主な成分と期待される効果は以下のとおりです。
抗酸化成分
身体の酸化は老化や病の原因になります。その酸化を抑制するのに効果を発揮するのが抗酸化成分です。カロテン(ニンジンやホウレンソウなどに含まれる)、ビタミンC(ブロッコリー、ピーマン、パプリカなどに含まれる)、リコピン(トマトなどに含まれる)、ビタミンE(カボチャやアボカドなどに含まれる)などがその代表ですが、これらが多く含まれる野菜を摂取することで、酸化による疾病、たとえば動脈硬化やがん、それに肌の衰え、シミの防止などの効果が期待できます。
食物繊維
食物繊維は、腸内環境を改善し、糖の吸収をゆるやかにしてコレステロールの吸収を抑える効果があります。食物繊維を多く含む野菜には、オクラやゴボウ、ブロッコリーなどがあります。
ミネラル(カリウムやカルシウムなど)を多く含む野菜
カリウムについては前文で触れました。意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、野菜にはカルシウムを多く含むものもあります。カルシウムは骨や歯を形成し、丈夫にする栄養素で、たとえば小松菜、ホウレンソウなどに多く含まれています。
どれくらい野菜を摂れば良いのか
冒頭で触れたとおり、厚生労働省は野菜摂取量の目安として、1日当たり350グラムを推奨しています。その内訳は、緑黄色野菜が120グラム、その他の野菜が230グラムです。といわれてもイメージがわきにくいかもしれません。参考までに、ここに具体的な量を示してみましょう。各野菜であれば、以下の分量になります。
<緑黄色野菜120グラム>
- トマト:3/5個~4/5個(1個150~200グラム)
- ニンジン:3/5個~4/5個(1個150~200グラム)
- ピーマン:3~4個(1個35グラム)
- ほうれん草:3/5束(1束200グラム)
<淡色野菜230グラム>
- きゅうり:2本~2.5本(1本100グラム)
- レタス:7~8枚(1枚30グラム)
- もやし:1袋
- ナス:3本(1本80グラム)
参考:https://omaezaki-hospital.jp/category/activities/good-story/ei-good-story-activities/
「想像以上に多い」と感じられた方もいらっしゃるでしょう。それは、日頃の野菜摂取量が足りていないことの表れかもしれません。日本人の1日の野菜平均摂取量は約280グラムですので、推奨される量350グラムまでには単純計算であと70グラムほどが必要になります。これは、トマト約1/2個、ピーマン約2個です。
野菜の上手な摂り方とは
さて、野菜を摂ることの大切さについては少しご理解いただけたかもしれません。ですが、日常の食事で必要量を食べ切るのは大変です。また、栄養を補うことばかり考えて摂取してしまえば、食事自体が楽しくなくなってしまいます。本記事では最後に、野菜の上手な摂り方を紹介します。
まず前提の確認ですが、野菜には、さまざまな栄養を一度に摂れるという利点があり、生で食べる、焼く、煮る、揚げるなど、多様な食べ方ができる点が野菜の魅力になっています。野菜が「じつは多様に扱える食品だ」という認識は持っていた方が良いでしょう。
「冷凍」を活用
では「どうやって効率よく野菜を摂るか」です。ポイントは、やはり野菜の「さまざまな調理法に向く」という性質にあります。まず活用したいのが「冷凍」です。
野菜は「常備菜」として作り置きすることができます。切り干し大根の煮物やきんぴらごぼうなどは冷凍保存ができるため、たくさん作って小分けして冷凍しておけば、平日の食事作りがラクになりますし、冷凍庫であれば1ヵ月程度は保存が可能なので、「摂りたい時に野菜が摂れる」という環境を生み出すことができます。
普段作っている料理に野菜を入れてみる
野菜をメインにした料理を作ってみるのも一手ですが、たとえばスープやみそ汁などに野菜を取り入れれば、生で食べるよりもたくさんの野菜を摂ることができます。普段作っている料理に野菜をプラスするだけですので、手間も省けて便利です。また、それらを冷蔵庫に保存しておけば、日持ちをさせることも可能です。
なお健康食の話のなかで、「野菜は生と加熱のどちらで摂った方が良いか」という話題にしばしば言及がなされますが、生野菜と加熱野菜のどちらにもじつはメリットがあります。生野菜なら、ビタミンCのような加熱に弱い栄養素をそのまま摂ることができます。また、歯ごたえのある食感を楽しむこともできます。一方の加熱野菜には、火を通すことで野菜のボリュームが減り、柔らかくもなるので、たくさんの量が食べやすくなるという利点があります。シチュエーションに合わせて調理方法を工夫してみましょう。
野菜ジュースなどを活用する
上記のような対策を練ってもなかなか野菜が摂れないようであれば、野菜ジュースなどを活用するのも手です。保存もできるし携帯することもできる、いつでもどこでも手軽に野菜をとることができる点が野菜ジュースのメリットです。ただし、ジュースにする段階で失われてしまう成分(場合によっては食物繊維やビタミンCなど)もありますので、不足がちな野菜をジュースだけで補おうとすることには注意が必要です。
その点、生野菜をミキサーにかけて作るスムージーは、野菜の酵素を取り入れることができ、栄養価が壊れやすいビタミンCも摂取することができます。大麦若葉などの生野菜を絞って作られている青汁も、野菜不足を手軽に解消できる飲み物です。好みに応じて活用してみてはいかがでしょうか。
おわりに
野菜に含まれるビタミンやミネラル、食物繊維などは、健康と美容に気を遣う方であればぜひ摂っておきたい栄養素です。野菜は「じつは多様に扱える食品だ」という認識のもとに、ぜひ一日の食事の中に野菜をちりばめて、野菜の摂取量を増やしてみませんか?