おならは、食事の際に飲み込んだ空気や消化の際に発生するガスが排泄される際の生理現象であり、臭いや回数には個人差があります。しかし食生活の変化や生活習慣の乱れにより、おならの臭いがキツくなるケースや、回数が増えるケースが出てきます。このコラムでは、おならのメカニズム・臭いの成分と、臭いがキツくなる原因、臭いの改善方法について詳しくご紹介していきます。
おならが出るメカニズムと役割とは?
人の腸の中には、常に200mlほどのガスが存在しています。成人であれば1日に400ml〜2,000mlほどのガスがつくられますが、その大半は血液に溶けて肺へと運ばれ、呼吸とともに排出されます。残りの1割〜2割ほどが、おならとして肛門から排出される仕組みとなっています。
おならは1日に7回〜20回ほど出るのが平均的です。しかし、後述するガスの原因となる食べ物を食べたり、生活習慣が乱れたりしていると、おならの量が増えて回数も増加することがあります。
おならの正体は食事で飲み込んだ空気
おならの成分の約7割は、食事の際に食べ物と一緒に飲み込んだ空気です。この空気は無臭で、臭いの原因となることはありません。早食いが習慣となっている方の場合、食事の際により多くの空気を飲み込んでしまう傾向にあります。その結果、おならの量が増えることに加え、消化器官にも負担を与えてしまうため注意が必要です。
腸内細菌の発酵によりガスが発生
おならの臭いの原因となるのは、食べ物を消化する際のガスや、腸内細菌が発生させるガスにあります。例えば、悪玉菌の一種であるウェルシュ菌が肉などのたんぱく質を分解する際には、アンモニアやスカトール・インドールと呼ばれる成分が発生します。これらは強烈な悪臭を持つことで知られており、肉類を食べた後のおならが臭くなる原因のひとつです。
おならを構成する成分の99%は、窒素・二酸化炭素・水素・メタンなどの無臭のガスですが、アンモニアなどの約1%のガスが臭いの発生原因となります。なお、食物繊維が豊富な食品を食べると、おならの量・回数が増えることがありますが、これは食物繊維が善玉菌のエサとなり、善玉菌の働きを促すことに由来します。その際に二酸化炭素が発生するためおならの量は増えますが、悪臭の原因とはなりません。
おならの臭いの原因となる成分
前述したアンモニアやスカトール・インドールの他にも、おならの悪臭の原因となる成分が存在します。ここではおならの臭いの原因について詳しく解説します。
アンモニア
アンモニアは、尿の臭いの原因でもある成分で、悪玉菌がたんぱく質を分解する際に発生します。肉類を多く食べ過ぎた時や、腸内で悪玉菌が増加している時に発生しやすくなっています。
スカトール・インドール
スカトール・インドールも同様に、悪玉菌がたんぱく質を分解する際に発生するガスであり、大便の臭いの主な原因となる成分です。便秘になった際におならの臭いが強くなるのも、悪玉菌による分解が長時間続くことで大量のガスが発生する点に原因があります。
硫化水素
硫化水素は、「腐った卵のような臭い」「温泉の硫黄の臭い」と形容されるガスのことをいいます。肉や卵、ニンニクなどの硫黄が豊富に含まれる食品を食べると発生しやすくなるのが特徴です。
おならの臭いが強くなる食品
おならの臭いが強くなったと感じる場合、前日の食生活に原因があるケースも多いです。ここではおならの臭いがキツくなる食品についてご紹介します。
ネギ・ニンニク
ネギやニンニクには、悪臭を発生させる硫化水素の元となる、硫黄が多く含まれています。ニラやタマネギなどもおならを臭くする原因になるため、臭いが気になる場合には食べる量を調節すると良いでしょう。
赤身肉・魚などのたんぱく質
赤身肉・魚などのたんぱく質を多く含む食品は、悪玉菌によって分解される際にアンモニアやスカトール・インドールを発生させます。肉類に偏った食生活は腸内環境の乱れにつながり、悪玉菌が増加してさらにおならの臭いが強まることもあります。
乳製品
日本人に多い「乳糖不耐症」の方の場合、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を食べるとおならが臭くなる可能性があります。乳糖不耐症とは、乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を消化する酵素を持たず、便秘やガスの発生を引き起こすことをいいます。牛乳を飲んでお腹がゆるくなる体質の方は、乳製品を控えることでおならの臭いの改善につながるでしょう。
おならの臭いが強くなる生活習慣
おならの臭いが気になる時には、ここまで解説してきた食品に原因があるケース以外にも、生活習慣に原因があることも考えられます。おならの臭いが強くなる生活習慣として、以下の3つが挙げられます。
- 早食い
- 過剰なストレス
- 睡眠不足
それぞれ解説しましょう。
早食い
早食いが習慣になっている方は、食事の際に飲み込む空気の量が多くなり、おならの量が増える原因になります。消化器官にも負担を与えることから、臭いの元となる成分が発生する可能性も高まります。また、食事の際によく噛まずに飲み込んでしまう方も、同様に注意が必要です。
過剰なストレス
ストレスの多い生活を送っていると、自律神経が乱れて腸内環境が悪化する原因となります。過剰なストレスは、無意識に空気を飲み込む「呑気症(空気嚥下症)」につながる可能性も高まり、げっぷやおならの回数が増える結果となります。また、ストレスが原因となって「過敏性腸症候群」を引き起こすと、便秘や下痢を起こしやすくなるほか、おならの臭いが強くなることもあります。
睡眠不足
睡眠不足は、ストレスや疲労の回復を妨げ、ストレスによる悪影響を引き起こしやすくなります。睡眠不足によって自律神経が乱れて交感神経が優位になると、腸の働きが低下することがわかっています。腸に便が長く留まると、悪玉菌による便の分解が進み、悪臭の原因となる成分が発生しやすくなります。
一方で、副交感神経が優位になると腸の働きを促し、お通じの改善にもつながります。副交感神経は、心身ともにリラックスできている状態に優位となるため、日頃からストレスを減らして余裕のある生活を送ることが重要です。
おならの臭いを改善する対策方法とは?
最後に、おならの臭いを改善して腸内環境を整えるための3つの対策について解説していきましょう。
- バランスの取れた食事をよく噛んで食べる
- 食物繊維の多い食品を食べる
- 「腸活」に取り組む
一つひとつご紹介していきますので、普段の生活習慣にぜひ取り入れてみてください。
バランスの取れた食事をよく噛んで食べる
おならの悪臭の原因は、ネギ・ニンニクや肉・魚などの食品を分解する際のガスにあります。これらの食品を多く摂取すると、悪玉菌によって悪臭の元となる成分が発生するため、偏った食生活を改善することが重要になります。一方で、食物繊維はおならの量を増やす栄養素ですが、善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立ちます。食物繊維は野菜・果物や豆類に多く含まれるため、バランスの良い食生活を心掛けることが大切です。
また、早食いの習慣がある方は空気をたくさん飲み込んでおならの量を増やす結果となるため、ゆっくりとよく噛んで食事を食べることも大切です。よく噛むと唾液の分泌が促進され、食べ物の消化を手助けしてくれます。胃腸での消化がスムーズになることで、臭いの原因となる成分の発生も抑えられるため、日頃から噛む回数を増やすことを心掛けましょう。
食物繊維の多い食品を食べる
食物繊維は人の体では消化できない栄養素であり、善玉菌のエサになる成分です。適度に摂取することで便通を改善し、腸内環境を整える手助けとなります。食物繊維はおならの臭いの原因にはなりませんが、おならの量を増やす働きがあるため、おならの量や回数が気になる方は食物繊維を減らしてみると良いでしょう。
なお、食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類が存在します。不溶性食物繊維は水に溶けにくいものを指し、便の体積を増やして腸の働きを促して、便通を改善する効果があります。水溶性食物繊維は水に溶けやすい食物繊維で、善玉菌のエサとなって腸内環境を改善する効果を持ちます。
「腸活」に取り組む
ここまで解説してきた通り、おならの臭いは腸内環境と密接に関わっています。私たちの腸には、大きく分けて善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類が、それぞれ「腸内フローラ」と呼ばれる集団を作って棲息しています。腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が増加すると、おならの臭いの悪化のほか、免疫の低下などの悪影響を引き起こしてしまいます。
腸内フローラのバランスは加齢とともに乱れやすくなり、悪玉菌が増加しやすい環境となります。これが加齢による免疫力の低下や体力低下にもつながってしまうため、腸内環境を改善する「腸活」に取り組むことが重要になってきます。腸活に関しては下記の記事でも詳しく解説しているため、合わせてチェックしてみてください。
関連記事:【最新!】腸活のススメ:自身の腸活に自信がないときに読む話
おわりに
食事の際に飲み込んだ空気と、食べ物を消化する際に発生するガスの2種類によっておならは構成されています。悪臭の原因となるのは、肉類やネギ・ニンニクなどを悪玉菌が分解する際に発生するアンモニア・硫化水素などが挙げられます。これらの食品を控えたり、悪玉菌の働きを抑制したりすることが、おならの臭いを抑えるポイントです。
早食いやストレスの多い生活、睡眠不足を避けて、バランスの良い食事をゆっくりと食べることが、おならの臭い改善に役立ちます。他にも食物繊維の量を増やすなど、「腸活」によっても腸内環境を改善できるため、ぜひ今日から生活習慣を見直していきましょう。