【解説】薬膳ってどんなもの?

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【解説】薬膳ってどんなもの?

「薬膳」という言葉を聞くと、生薬を使った漢方くさいスープや、朝鮮人参を使ったもの、スパイスをたくさん使った料理、薬草を使った料理やお茶などを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。 

薬膳料理を謳ったカフェやメニューも街中で見かけることも多く、薬膳レシピ本も数多く出版されており、随分と身近なものになったように感じます。とはいえ薬膳料理とはどんなものか、いまいち分からない方も多いのではないでしょうか。 

先に挙げた例はどれも薬膳料理の一部ではありますが、これが薬膳料理全体を指しているわけではありません。生薬や薬草、スパイスを使ったものが薬膳料理というわけではないのです。例えば、真夏日に暑いからトマトやきゅうりを食べる、疲れたから精をつけようとウナギを食べる、今日は寒いから温かい鍋にする、病み上がりで食欲がないからお粥を食べる、こういったことも全て薬膳です。どんな食材を使っているか、ということは薬膳とは関係なく、その人の体質や体調、季節などに合わせて食材や調理法を選ぶことが薬膳なのです。もう少し詳しく薬膳について説明していきましょう。 

1.食べ物が体調を良くすることもあれば悪くすることもある 

薬膳料理、というと特別に感じるかもしれませんが、中国や台湾ではいつもの食事の延長であるので、わざわざ「薬膳料理」というようなものはありません。もともと日本でもそのような食習慣はあったと思いますが、食事の多様化でその観念が忘れ去られてしまったようです。食事は私たちの栄養源であるとともに、体調を整えるいちばん身近な存在でもあります身体の健康も心の健康も食べるもので支えられているのです。 

薬膳では、陰陽五行説などの考え方でその方の体質を判断し、それに合わせて必要な食材や調理法を選びます。例えば、この人は胃腸が弱く、体力がない方で、疲れやすいという症状があり、仕事で夕食を取るのが遅いから、夕飯に取るご飯は玄米よりも白米、しかもおかゆの方が良い、と考えるのです。夏であれば暑さ対策を考えて加える食材を選びますし、冬は寒さ対策の食材を選んだりします。その人の体質、体調、季節や住んでいる場所、生活習慣などを総合して考えるのです。 

その人の体質やその時の体調や季節などに合っていれば、食事を変えるだけで体調が良くなることがあります。一方で、食事だけで体調が悪くなる方もいます。これは体質に合っていなかったり、季節に合っていなかったりするためです。 

源保堂鍼灸院・薬戸金堂の患者さまで過去に見られた例ですと、「汗が止まらない」症状で50代の女性のお話を詳しく聞くと、健康のために生姜湯をたくさん飲んでいます、ということでした。生姜はさまざまな効能がありますし、漢方などでも使うものですから、「身体に良い!」と疑わない方が多い食材です。しかし、この方の場合は生姜湯の飲み過ぎで胃も疲れているようだったので、しばらくはやめてもらうようにしたところ、汗の出方は普通になりました。また、この方は骨粗鬆症の予防のために頑張って牛乳や乳製品をたくさん取っていたのですが、これがかえって胃の疲れを助長していたので、無理に飲まないようにしてもらったところ、胃の不調も改善しました。 

薬膳料理と謳ったものを食べることだけが体調を良くするわけではなく、体質に合わないものを選ばないようにするだけで体調は良くなるものなのです。 

他にも冷え性の人は冷たいものを控えるだけで良いですし、胃がもたれやすい方は甘いものを控えるだけでも調子が良くなることが多いです。冬にアイスを食べているのに「冷え性です」というのは、私たちから見れば当然のことといえるわけです。 

2.「おいしい」と思うことがいちばん大切 

「おいしい」と思うことがいちばん大切

そうはいっても「体質が分からないから何を食べて良いか分からない」という方も多いでしょう。一つの目安は「おいしい」と思うかどうかです。例えば、健康に良いから、といっても食べた後に胃もたれしたり、身体が重くなったり、お腹が緩くなったりするのは明らかに体質にあっていません。少なくともおいしいな、また食べたいな、と思えるかどうかです。 

ここで注意が必要なのは、「頭でおいしいと感じること」と「おなかがおいしいと感じること」は違うということです。例えばケーキなどのスイーツはどちらかというと脳の満足感によりおいしいと思っています。話題のお店など情報から入ることもあるでしょうし、見た目の華やかさで心が踊ることもあるでしょう。しかし大切なのは食べてお腹に入った時に、おなかが心地良いな、楽だな、と感じているかどうかです。 

もう少しこの感覚を分かりやすく説明しましょう。旅行で素敵な和風旅館に泊まったとしましょう。しっかり眠れて心地よく目覚め、朝に散策をして、すっかりお腹が減ったところで出された朝ごはんのお味噌汁を口に含んだとき、胃に染み渡るような感覚を覚えると思います。まさに五臓六腑に染み渡る、という感覚です。これはおなかが心地良いな、と思う感覚です。それとは反するものはおなかが疲れるものです。ケーキを食べた後、夕飯の時刻になってもおなかが空かない、というのはおなかが疲れてしまって停滞しているからです。 

初めにあげた薬膳料理の一部の例でも、おいしいかどうか、というのは大切なことです。鼻について食べる気がしない、スパイスが強くて胃が痛くなる、草を食べているようでおいしいとは思えない、という場合は体質に合っていませんから、無理に食べる必要がありません。逆に大したものを使っていなくても、お母さんの作る料理がおなかに染み渡って元気が出る、畑でとれたてのお野菜を茹でただけなのにおいしく感じる、というのは立派な薬膳料理なのです。おいしいな、元気が出るな、身体が楽だな、と感じるものを極力選ぶようにすると、健康を保つことができます。 

3.まずは季節に合ったものから 

その人に合っているか、を考える際に、その人の体質、体調、季節や生活環境などを総合して考える、とお伝えしましたが、その中で一番実行しやすいことが「季節に合わせる」ということです。現代の住環境ですと、冬の寒さや夏の暑さをしのぎ、快適に過ごせているので、そんなに季節の影響なんて受けるの?と思うかもしれませんが、実際に源保堂鍼灸院・薬戸金堂にいらっしゃる患者さまを拝見していると、昔の書物に書かれている通りの季節の不調を訴える方がほとんどです。 

季節のものを食べると身体は季節のリズムと合ってきます。暑い夏には暑さに強い食べ物がたくさん育ち、そのような食べ物は暑さから来る不調をとってくれる効能があるものが多いです。長雨の時に育つものは、湿気から来る不調を改善してくれる食物が多く、寒い中でも育つ食物は寒さから来る不調を改善してくれるものが多いのです。 

逆に季節外れのものを食べると体調を壊すことが多いです。真冬にきゅうりやトマト、スイカなどを食べれば身体は冷え切ってしまいます。逆に真夏に身体を温める長ネギなどをたくさん食べればのぼせてしまいます。徳川家康は献上品でも季節外れのものは口にしなかったそうです。それほど季節からずれたものが自身の健康管理の上でダメージが大きいということを知っていたのではないでしょうか。 

スーパーに並ぶものは季節に関係なく同じものが並んでいることが多いと思いますが、お住まいの地域の路地栽培で作られたものであれば季節と外れていないものになります。さらに、季節のものは時期外れのものよりも栄養価が高く、お値段もお安く、旬ですからもちろん味もおいしくなっています。今日から実践できる薬膳ですから、ぜひ季節のものを食べてみてください。