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そろそろ夏の準備、赤いものを食べましょう!

そろそろ夏の準備、赤いものを食べましょう
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

執筆者
瀬戸 佳子 国際中医薬膳師・登録販売者

早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・表参道の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基付いた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEBセミナーの講演などでも幅広く活躍。 『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(共に文化出版局)が好評発売中。

5月5日に立夏を迎え暦の上では夏に入ります。ゴールデンウイーク前後から、夏を思わせる日差しや気温の日も出てきますから、そろそろ暑さに対処することが大切です。年々夏の暑さも増してきていますから、まだ過ごしやすい初夏のうちから暑さ対策をしっかりとしていくことが夏の養生では欠かせません。

とはいえ「暑さ対策には何をしたら良いの?」と思われるかもしれません。冷房をつける?水分補給?それも一つですが、東洋医学では他にも季節の不調を乗り切るたくさんの知恵があるのです。

夏には赤いものを

東洋医学では、「因時因地因人」という言葉があり、季節や環境、体質などに合わせて治療を行う、という考え方があります。その方の体質やその時の体調だけを診るのではなく、季節の変化やどんな気候のところに住んでいるのかは体調管理の上で非常に大切な要素です。

この中で体質などによらず、みなさんに行っていただきたいことが「季節に身体を合わせる」ということです。「空調機器などで住環境が良くなっているのに季節の影響をそんなに受けるのかしら?」と思われるかもしれませんが、実際に源保堂鍼灸院・薬戸金堂へ来院される患者さまを診ていると、ちょっとした天気の変化や季節の変化と体調が関係していることが多いです。気温だけでなく、湿度や日照時間の変化、気圧の変化などさまざまなことが体調に影響を与えているのです。

東洋医学では季節や身体などいろいろなものの関係を、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)という考え方で整理しています。よく聞く、「木火土金水」というものです。陰陽五行説ではそれぞれの季節に色を当てはめており、夏の色は「赤」です。季節の色の食材は、その季節の不調を予防したり、解消したりするものが多く、その季節の色の食材をとることが食養生でも大切になります。

夏は、日差し、暑さ、湿気が体調に大きな影響を与えます。これから訪れる梅雨、そして猛暑を乗り切るためにも赤い食材を積極的に食べることで、夏に負けない身体が作られるのです。

陰陽五行説での季節と色の関係

五行
季節 土用*
青(緑)

*土用とは各季節の最後18日間のこと。夏の土用は有名ですが、どの季節にも土用があります。その季節を完成させて、次の季節への準備期間になります。

初夏におすすめの赤い食材

ぜひ初夏から取ってほしいおすすめの赤い食材を3つ紹介します。5月の涼しいうちから食べておくことで、これからくる梅雨や猛暑を楽に過ごせるようにしてくれます。

①トマト

トマト

赤い食べ物の代表がトマトで、初夏から残暑まで活躍してくれるとても良いものです。

トマトの効能:水分を補い身体や喉を潤す、身体の余分な熱を取り除き暑気あたりを解消する、胃を元気にし食欲を増す

トマトは、暑さによる喉の渇きをいやしたり、暑さからくる食欲不振を解消したり、夏の暑さ対策や熱中症予防におすすめの食材です。暑さに弱い方は、立夏を過ぎたら毎日食べる様にすると良いでしょう。量は暑さに従って増やしていくと良いでしょう。ここでトマトを食べる、というのはミニトマトを1個くらい食べているのでは意味がありません。暑い日は、まるまるトマトを毎日1個食べる、というくらいのイメージです。身体に熱がこもりやすい方や本格的な暑さを感じる陽気になったらもっと食べても良いです。

暑くなってきたら、外出前にトマトを食べたり、外出先でトマトジュースを飲むことで、熱中症予防になります。暑さで食欲が落ちがちな時も、トマトは消化を促し、食欲を高めてくれる作用があるのでおすすめです。そのまま食べるだけでなく、トマトスープにしたり、肉や魚にトマトソースとしてかけたりすると、さっぱりして食べやすくなります。

また、トマトにはのぼせた状態を解消する作用があります。夏場に暑さで頭がぼーっとして目が充血するときや、仕事に集中しすぎて頭が熱くなってしまう時などに、頭にのぼりすぎた気を下げてくれる効果があります。(カゼなどの熱を「解熱」するという意味ではありませんので注意してください。)

ただし身体を冷やす作用が強いので、夏場でも冷えやすい方は、食べ方を注意しましょう。生のまま食べると身体を冷やしすぎてしまうので、炒め物やスープ、トマトソースなど加熱した状態で摂ると身体を冷やしすぎずに、夏の暑さに対応した身体にしてくれます。

②梅干し

梅干し

「梅はその日の一日の難のがれ」といいますが、夏になったらまさにその通りでぜひ活用してもらいたい日本の薬食同源の食材です。日本で最古の医学書「医心方(いしんほう)」(平安時代、984年)にも梅は登場するほど古くから日本の生活に結びついており、漢方や民間薬などその効能は幅広く活用されてきました。古くから、梅は三毒を絶つ、といいます。三毒とは、食・血・水の毒のことで、夏バテ予防には欠かせないものといえます。

梅干しの効能:身体を潤し汗を止める、喉の渇きを抑える、下痢を止める、防腐効果や食中毒の予防、胃腸の調子を整える など

他に咳を止める、痰を出しやすくする、二日酔いの解消効果、乗り物酔いの解消のほか、できものや傷の治療などに使われてきました。夏バテの予防には胃腸の調子をいかにキープできるかが鍵になります。梅干しは、胃腸の調子を整えるとともに、酸味による食欲増進効果もあり、夏バテを予防してくれる心強い食材です。

戦国時代にすでに梅干の防腐効果を利用していたようで、握り飯に添えて持参したといわれていますから、食あたりを防ぐ上でも非常に効果のあるものです。お弁当に入れるのももちろんですが、ご飯を炊くときに梅干しを1個入れるのも良いです。梅干しは最古の調味料ともいわれており、お肉を煮るのに使ったり、酸味を活用してドレッシングにしたりするのも良いでしょう。梅酢や梅じそも、ぜひ活用してください。

③あずき

あずき

あずきはあんこや赤飯などで使われることが多いと思いますが、梅雨のむくみ対策にぜひ取り入れてほしい食材です。

あずきの効能:余分な水分を尿として出す、腫れ物を治す、解毒する、余分な熱をとる など

あずきは、水分や熱などのデトックスに優れたもので、利尿作用を促したり、熱を解毒したりする生薬としても使われます。皮の部分にその効能の多くがあります。薬膳では、むくみやお小水の出が悪い時、母乳の出が悪い時などによく使います。より効果的に使うには、甘味を控えた方が良いので、あずき粥や茹であずきを料理に使ったり、あずき茶を活用したりすると良いです。

一方で、乾燥しがちな方は利尿作用が強いので食べ過ぎないようにしてください。胃腸が弱い方も消化に負担がかかるので食べすぎないように気を付けましょう。

洋菓子など乳製品を多く使っているものは胃腸の機能が落ちて水分代謝が悪くなってしまいますので、梅雨や夏場にむくみやすい方は、あんこを使った和菓子の甘味がおすすめです。できればこし餡より皮も入っている粒あんの方が良いです。

このほかにもその時期に旬を迎えるものの多くは、その時期の不調を解消してくれるものが多いです。季節の食材を楽しみながら、梅雨も夏も快適に過ごせるように身体を整えていきましょう。

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