皆さんは、花をご自宅で飾られたり、お庭で育てられたりしていますか?もし日常生活で花を飾る習慣がない方も、お店に飾ってある花や、道に咲いている花を眺めて、「綺麗だな」と良い気持ちになったり、「癒される」と感じたりされることも多いと思います。このコラムでは、お花の「綺麗・癒し」だけではない、「自分発見」という新しい楽しみ方をご紹介いたします。
花や植物のリラックス効果
日本人にとって四季を感じるということは、その季節の花や植物と共にあるといっても良いでしょう。
「春は桜の開花を心待ちにして、お花見を楽しむ。初夏はローズガーデンで色とりどりのバラやその香りを堪能する。梅雨の時期には、雨に濡れたアジサイを美しいと感じる。暑い夏には、高原や山に行って、森林の中で深呼吸をする。秋には燃えるような紅葉に心を動かされ、落ち葉の香りにホッとする。雪の下からひょっこり顔を出した黄緑色の芽に冬の終わりを感じる。」
このように、四季折々の花や植物を楽しまれている方も多いのではないでしょうか。
そして多くの方が、花や植物に、「癒し」の力を感じているのではないでしょうか。お花を眺めていると「なんだかホッとする」、「気持ちが穏やかになる」と感じられたり、森の中で深呼吸することで、「心身ともにリフレッシュする」と感じられたりしますよね。森林浴、森林セラピーという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
このような花や植物によって、「癒し」や「心身のリフレッシュ」を感じる、という今まで何となくそうだろう、と思われてきたことは、現在では、大学の研究機関等で科学的に証明されてきています。私たち人間は、進化の過程において何百万年という時間を自然の中で過ごしてきているので、花や植物があることで癒される、というのは当然のことかもしれません。
参照元:「自然セラピー/研究紹介」千葉大学自然セラピー研究室,特任研究員/名誉教授 宮崎 良文
参考文献:「Shinrin-Yoku(森林浴): 心と体を癒す自然セラピー」宮崎 良文(著),創元社,2018
新しい花活のすすめ~花セラピーとは?
今日は、この花や植物の癒しの力を活用した「花セラピー」をご紹介します。
花セラピーとは、花と人の心を結ぶ癒しの手法です。花には、鮮やかで多様な色彩と個性的な形があります。それぞれのお花には、各々が持つ癒しの力(お花から得られる心理効果)というものがあり、これを活かしているのです。
お花から得られる心理効果、というと難しく感じるかもしれませんが、あるお花に対する印象、というのもそのひとつです。例えば、ひまわりの花を思い浮かべてみてください。ひまわりの花からどんなことを感じますか?「元気」「明るい」というような印象が浮かんだ方は多いと思います。ということは、「元気になりたい」「明るい気持ちになりたい」と思っているときにひまわりを飾るのは、効果的だと思いませんか?
花セラピーでは、こうしたお花から感じる印象を花心理グラフとしてまとめ、活用します。花心理グラフは、あるお花に対して「どのような感情や感覚をどのくらい感じるのか」を心理アセスメント手法で調査し、結果をグラフ化したものです。この結果によると例えば、黄色のガーベラを見ると、「幸福感」や「元気」という印象を持つ方が多い、ということがわかるのです。
黄色のガーベラのグラフ
参考文献:「あなたを輝かせる花セラピー」青山克子(著),評言社,2017
花セラピーは生花を使用
次は少し具体的に花セラピーのセッションをご紹介します。花セラピーでは、生のお花を使います。色とりどりのお花の中から、ご自身の好きなお花や気になるお花を選んで、心のままに自由にアレンジメントを作ります。生け花やフラワーアレンジメントのように、型というものはありません。心のままに自由にアレンジメントを作るので、その作品には作り手の心のうちが表れてくるのです。
そうして何気なく選んだ気になるお花からご自身の深層心理に気付いたり、花の生け方や花を挿した位置から自分の本心が分かったりするのです。また花セラピー体験をしている皆さんは、自由にアレンジメントを作っている間にどんどんと、自然と笑顔になっています。3歳ぐらいの小さな子どもからお年寄りまで、お花を活けてみたいと思った方なら誰でもできる、そして一輪からでも楽しめる、それが花セラピーです。
昨今、私たちは多くのストレスにさらされています。そして、ここ数年は新型コロナウイルスによって、さまざまな制約の中、新しい日常に適応せざるを得ない状態となり、さらなるストレスを溜め込んでしまっています。そのような時代にあって、花セラピーとは、自身の心のうちに気付き、お花の癒しのパワーで私たちの心を癒してくれる新しい手法として拡がってきています。
それでは次に、百合の花から自身の深層心理に気付いた私の体験をご紹介します。
嫌いだった百合の花が教えてくれたこと
花セラピーでは、選んだお花からご自身の深層心理に気付いたりすることができる、とお伝えしました。何気なく、あなたが感じる「このお花は好き・この色が気になる・このお花は好きじゃない」という気持ちには、ただの好き嫌いではない、潜在意識のメッセージが隠れているかもしれないのです。
ここで私自身の体験を少しご紹介します。私は子どもの頃から百合が苦手です。嫌いといっても良いでしょう。
百合の強い香りと独特の姿形が苦手でした。
白い百合、黄色い百合もありますが、中には毒々しさを感じるような色合いの百合もあります。小学生の頃に、誰ともなく花を学校に持ってきて、花係が教室に飾るという習慣があったのですが、百合が飾られているときは見たくない、と思う事さえありました。
それが、約2年前に花セラピスト向けの花の心理学を深める講座を受講した際に、百合の印象が少し変わったのです。その講座の中で、あらためて百合に対してどう感じているのか、を考えてみました。
私にとって、「百合」というお花の印象はこういうものでした。
- ひとつの花が大きく、豪華
- 香りが強く、一輪だけでも存在感がある
- 華やかさで人を魅了するオーラがある
- 人に例えるなら、「自信を持って堂々とした、輝いている人」のイメージ
これに対して、「私はどうか」と考えてみました。
- 存在感はあまりない
- 真面目で地味タイプ
- 華やかさとは無縁
- 「私を見て」と前に出ていく自信はない
こんな風に感じていたんです。イメージが真逆、といえば真逆です。
では、「その真逆の百合のような人に対してどう思っているのか」、と考えてみると、実は少し憧れている部分があることに気付きました。心の中で本当は「自信を持って堂々とした、輝いている人になりたい」と思っていたんです。この2年前の気付きは、私にとってとても大きいものでした。「そっか、私、百合みたいな人になりたかったんだね」と心の奥にあった願望が表に出てきました。
花セラピーのセッションで私は「お花を飾って、そのお花のパワー(お花から得られる心理効果)を自身を応援するパワーにしていきましょう」とお伝えしています。ですので、思い切って百合を飾ってみることにしました。それまでは、自身のために百合を飾ったことは一度もありませんでした。
とはいっても、香りが強いのはやはり辛くなりそうな気がします。そう思って、お花屋さんに相談してみたら、ほとんど香りがしない種類があることを教えていただきました。これまで百合を避けていたので、これも初耳の朗報でした。
そうして選んだ百合を実際に自宅の玄関に飾り、日々観察しました。少しずつ蕾が膨らみ、順に花が咲き、そして散っていく様子を見ながら、自身がどんなことを感じるのか確認したのです。そうして、感じたことは、
- 思ったより、嫌じゃないかもしれない。
- 思ったより、近付きたくないかもしれない。
- 思ったより、煌びやかすぎないかもしれない。
- 思ったより自身と違う、ということはないのかもしれない。
ということでした。
「もしかしたら私も百合みたいな人になれるかも」とさえ、思ったのです。ほんの少しではありますが、「自信を持って堂々とした、輝いている人」に一歩近付けたような、そんな気がしました。
いまだに百合は少し苦手なお花ではあるのですが、「輝いても大丈夫だよ、と勇気をくれる花」として時に飾って愛でたいお花になっています。
自分発見~心を自由に解き放つ
ひとつのお花を通じて、
- なぜそんな風に感じるのか?
- それは心の奥にあるどのような気持ちの表れなのか?
- 本当はどうなりたい、どうしたいと思っているのか?
を自分自身の内側に問いかけていくことで、まだ気付いていない自分を発見することができるという、百合を通した私の体験をお伝えしました。
皆さんにも、すぐにできる簡単な方法をお伝えします。まずはお花屋さん(スーパーの切り花コーナーなど)に行って、ご自身が今一番気になるお花はどれかな、と探してみてください。なんとなく、でも良いです。大事なのは、今この瞬間の自分の心が感じたことを大切にする、ということなんです。
- どのお花が気になりましたか?
- なぜそのお花が気になったんでしょう?
- そのお花からどんなことを感じますか?
- あなた自身とそのお花に共通点はありますか?
そのような問いかけをご自身にしてみてください。
そして、もしその花を気に入ったのなら、ぜひご自宅で飾って愛でてください。ご自身の内側からどんなことが出てくるのか、を楽しみながら、心を自由に解き放ってみましょう。そこには、新しい自分との出会いが待っているかもしれません。花とともに、素敵な時間を過ごされますように。
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