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脳梗塞で救急搬送されたら急性期治療のあとはいったいどうなるのか?~大半の期間を回復期リハビリ病棟で過ごします~

脳梗塞で救急搬送されたら急性期治療のあとはいったいどうなるのか? ~大半の期間を回復期リハビリ病棟で過ごします
石川 秀雄 岸和田リハビリテーション病院 病院長

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石川 秀雄 岸和田リハビリテーション病院 病院長

南大阪随一の規模を誇る回復期リハビリテーション病院において、喀血・肺循環センターを運営。喀血に対するカテーテル治療である気管支動脈塞栓術を累計3800例の世界屈指のハイボリュームセンターであるばかりでなく、2017年以降精力的に査読英語論文を、Radiologyを筆頭に世界の一流ジャーナルに多数投稿し続ける喀血治療の世界的第一人者。第2のライフワークは、食、とりわけ大阪の食であり、高名なフードライター/食文化評論家である団田芳子氏のファン倶楽部会長を務める。

突然あなたやあなたのご家族を襲う脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが代表的で、一部は前兆があります)で急性期病院に救急搬送されたとき、1ヵ月程度は入院先の病院で急性期治療を受けることをご存知でしょうか。

そして救急搬送から退院した後のことも、あまりご存知ではない方も多いかもしれません。実は、退院後は多くの方が同じ病院の回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)に転棟、または回復期リハ病棟のある別の病院に転院され、最長6ヵ月にわたって機能回復や自宅復帰を目指してリハビリテーションに励むことになります。すなわち脳血管障害後の治療の大半を回復期リハビリ病棟で過ごすことになります。また入院期間は病状次第で、急性期病院からそのまま自宅退院されることもあります。

1.脳血管障害を発症して急性期病院へ

1-1.救急搬送

救急搬送

顔や手足の麻痺、しゃべりにくい、経験したことのない激しい頭痛、突然の視力低下などの症状がでたら躊躇せずに救急車を呼んで下さい。脳血管障害は、できるだけ後遺症を残さないために、一刻も早く専門医のいる救急病院に搬送してもらう必要があります。

1-2.急性期治療

脳梗塞であれば、詰まった血栓を溶かしたり回収したりする治療、脳出血ならば血圧を下げたり、出血量が多く部位的に可能な場合には血腫除去術(けっしゅじょきょじゅつ)、くも膜下出血であれば破れた脳動脈瘤の外科的なクリッピングやカテーテルによるコイル塞栓術などを実施する場合があります。特に脳梗塞の血栓溶解や回収は、早ければ早いほど梗塞(虚血による壊死)に陥りかかっている部分を救済する効果が大きいのです。救急搬送のタイミングと病状によっては、緊急手術や緊急カテーテル治療をせずに慎重に経過を観察する方が良い場合も多いです。

1-3.急性期病院におけるその後

病状に応じて、早期からリハビリテーションが開始されます。高血圧の薬や血液をさらさらにする薬(抗血小板剤と抗凝固剤の2種があります)などの内服薬の調整などもなされ、急性期治療を終了し、麻痺などが軽ければそのまま自宅退院、そうでなければ同じ病院または違う病院の回復期リハビリ病棟に移る準備が始まります。

日本脳卒中学会 脳卒中の予防、治療、退院後の対応について < 発症後社会支援の啓発資材 > 第2部 脳卒中の治療、次の段階です ~急性期病院退院時にお伝えしたいこと~より引用
日本脳卒中学会 脳卒中の予防、治療、退院後の対応について < 発症後社会支援の啓発資材 > 第2部 脳卒中の治療、次の段階です ~急性期病院退院時にお伝えしたいこと~より引用

2.急性期病院から回復期リハビリ病院へ

急性期病院から直接の自宅退院が難しい場合、一旦同じ病院の回復期リハビリ病棟に転棟、あるいは他の回復期リハビリ病院へや療養病院への転院を検討することになります。今回は、集中的なリハビリテーションに特化した回復期リハビリテーション病院に転院して、リハビリに専念し自宅退院を目指すパターンを解説します。

2-1.回復期リハビリ病棟への転棟/転院要件

回復期リハビリテーション病棟への入棟基準は、脳血管障害急発症後以外にも、骨折などの整形外科疾患術後、あるいは新型コロナウイルス感染症を含む、重篤な急性期疾患の集中治療後の衰弱した状態(廃用症候群:はいようしょうこうぐん)などが含まれます。詳しくは、病院の地域医療連携室などにお問い合わせください。

2-2.病病連携

ほとんどの病院には、病院間の連携を専門的に担当する部署があります。その名称は、「医療相談室」「地域医療連携室」などさまざまです。医療ソーシャルワーカーが勤務しており、病院の種々の職種の中でも最も患者さまと患者さまのご家族に寄り添って立つ重要な職種です。種々の社会経済背景、家庭状況を総合的に考慮して、さまざまな医療サービスや介護サービスをつないでいく高度に専門的な職種です。
日本医療ソーシャルワーカー協会

2-3.転院

新型コロナウイルス感染症で、面会ができなくなった病院が多い中で、転院はご家族にとって久々に顔を合わせる貴重な瞬間でもあります。ご家族の車で転院されたり、病状によっては事業者さんの有料寝台車や介護タクシーで転院される場合もあります。転院前には急性期病院で新型コロナウイルスPCRや抗原定量検査を実施し、転院先到着時に万が一発熱があれば転院先の病棟にウイルスを持ち込まないために病棟に上がる前に精査が必要になる場合もあります。

3.回復期リハビリテーション病院での入院生活

3-1.入院期間

入院期間

廃用症候群や整形外科疾患は3ヵ月が上限、脳血管障害は5ヵ月が上限ですが、脳血管障害による高次脳機能障害(脳血管障害による認知機能の低下)を伴った重症脳血管障害の場合には最長6ヵ月となります。

3-2.どんなリハビリテーションをするのか

脳血管障害により、意識がはっきりしない、手足が動かない、うまく話すことができない、物品の使用ができないなどさまざまな症状が生じることがあります。さまざまな症状のリハビリテーションを担当する療法士(セラピスト)には3職種あります。それぞれ簡単にご紹介させていただきます。これら3職種は、リハビリ関連の学校に入学したときからすでに進路が分かれています。セラピスト養成学校は専門学校から大学まで多岐にわたります。

理学療法士(PT)

座る・立つ・歩くなど、基本的な日常生活動作や運動麻痺などの身体機能の回復を図るリハビリテーションを担当します。
理学療法士とは

作業療法士(OT)

物品使用能力や認知機能、興味・関心などを評価し、食事、トイレ、家事、更衣動作などの日常生活動作や、余暇活動の支援といった作業活動に焦点を当てたリハビリテーションを担当します。

作業療法士ってどんな仕事?

言語聴覚士(ST)

ものを飲み込む(嚥下えんげ)、失語症、高次脳機能障害などに対するリハビリテーションを担当します。

言語聴覚士とは

3-3.ロボットなどによるリハビリ

種々のロボットが開発されており、弊院には上肢用リハビリロボットのReoGo®-JやCoCoroe AR2®などがあります。

ReoGo®-J
https://medical.teijin-pharma.co.jp/product/zaitaku/reogo-j/index.html

3-4.VRリハビリ

VR(バーチャルリアリティー)を用いた画期的なリハビリ装置で、mediVRカグラ®が有名です。弊院はこの装置を、いち早く導入し活用しており、この装置によるリハビリに関する学術論文も多数執筆しております。以下にmediVR社のリンクと、弊院からのVRリハビリに関する論文のリンクを貼らせていただきます。

VRリハビリ
引用元:mediVR

3-5.脳卒中に固有のリハビリというのはあるのか

もちろんあります。たとえば私どもの病院では、脳卒中リハビリの権威 畿央大学 森岡周教授のご指導の下、脳卒中リハビリテーション研究所を運営しておりますので参考にしていただけましたら幸いです。

岸和田リハビリテーション病院 脳卒中リハビリテーション研究所
森岡周研究室

3-6.回復期リハビリテーション病院退院後は

回復期リハビリテーション病院は、退院後の生活を左右する重要な役割を担っており、最大限の回復とご自宅への退院を目指す病棟ですが、自宅退院が難しい場合には、療養病院や介護医療院あるいは老人ホームなどの施設への入所を検討することになります。在宅復帰率は、回復期リハビリテーション病院の評価項目のひとつとして重視されています。

3-7.回復期リハビリテーション病院の今後

厚生労働省による地域医療構想という施策があります。これは、地域ごとに2025年の4つの医療機能の必要病床数を推計し、受給関係に見合った病床構成を実現していくシステムです。以下の、全日本病院協会による説明がわかりやすいと思います。療養病棟は削減方向の地域が多い中、回復期リハビリ病棟は多くの地域において増床の必要性が指摘されています。

全日本病院協会 みんなの医療ガイド 地域医療構想より引用
全日本病院協会 みんなの医療ガイド 地域医療構想:みんなの医療ガイド | 公益社団法人全日本病院協会より引用

4.どのような回復期リハビリ病棟を選べばいいのか

脳卒中リハビリ病棟では豊かな環境(治療機器が豊富、ざまざまな環境を再現したリハビリ環境)で、運動負荷が強く、かつたくさん実施されることが良いといわれています。自宅を再現した環境でのリハビリはもちろん、家屋訪問、調理練習、自転車や電車の乗車練習、買い物練習などさまざまなリハビリが提供できる施設が好ましいと思われます。

リハビリ提供数が多い病院、さまざまな治療・評価機器がある病院、学術的にも活発な活動をしている病院、施設基準の高い病院、在宅復帰率の高い病院などが回復期リハビリ病棟を選択する基準になるでしょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか?脳血管障害は突然起きて、その後の人生に大きく影響する重大な疾患ですが、身近に脳血管障害を経験された方がおられないとイメージがわきにくいのではないでしょうか?急性期病院での入院期間を含めると最長およそ7ヶ月間の入院期間の大半を回復期リハビリテーション病棟で過ごされることを知って驚かれたのではないでしょうか。

通常、病院に入院するのは病院の外来ないし救急外来を受診して、という流れがほとんどですが、回復期リハビリテーション病院への入院は、ほぼほぼ急性期病院からの転院になります。このため病病連携という仕組みが大切になってくるわけです。今後、病病連携、リハビリテーション、地域医療構想などについても機会があれば解説していきたいと思います。

―参考文献―

日本脳卒中学会「脳卒中の予防、治療、退院後の対応について

日本語論文

注意障害を伴うくも膜下出血患者に対して仮想現実技術を用いた介入により注意機能が改善した1例

英語論文

Electrical stimulation and virtual reality-guided balance training for managing paraplegia and trunk dysfunction due to spinal cord infarction | BMJ Case Reports

Case of cerebellar ataxia successfully treated by virtual reality-guided rehabilitation | BMJ Case Reports

Virtual Reality-guided, Dual-task, Body Trunk Balance Training in the Sitting Position Improved Walking Ability without Improving Leg Strength

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