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【医師執筆】人生100年時代に突入、生活習慣病対策に取り組もう

人生100年時代に突入、生活習慣病対策に取り組もう
甲斐沼 孟 医師

執筆者

医師

甲斐沼 孟

私は医師として15年以上キャリアを積んできました。これまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。全国学会での学術発表や論文執筆などの多角的な視点で医療活動を積極的に実践しています。さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門的知識を活かして誠心誠意対応します。

今や、日本では人生100年時代に突入しています。日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。我が国は近年、65 歳以上の高齢者が総人口の30%に達しており、世界に類を見ない高齢化社会となっています。

その高齢者が寝たきりや要介護になる主な原因としては脳卒中や認知症、老衰や転倒・骨折が挙げられ、それらの発症には動脈硬化が深く関連しています。また生活習慣病は遺伝素因に加えて過食や運動不足をはじめとする環境因子が加わり発症するといわれています。

今回、健康でいられる時間を増やすために生活習慣病に焦点を当てた役立つ情報を紹介しますのでどうか最後までお読みいただけると幸いです。

生活習慣病について

生活習慣病について

生活習慣病とは、食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与して発症する疾患の総称です。いわゆる日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であると認識されています1)。

過食と運動不足を含む生活習慣の歪みは内臓肥満や糖代謝異常、高血圧、トリグリセライド値の増加および HDL コレステロール値の減少を引き起こして、心筋梗塞を始めとする動脈硬化性疾患を発症する原因にもなり得ます。

それゆえに、動脈硬化の予防は生命予後の改善を望めるのみならず、健康寿命を延伸させることで今後も日本が活力ある社会を維持するためにも必要不可欠なキーポイントです。

わが国では、戦後の高度成長期における復興や経済の発展が進むにつれて、脳血管疾患や心疾患、悪性新生物の死因に占める割合が急増してきました。

急性心筋梗塞に代表される循環器疾患や脳卒中をはじめとする脳血管障害は、わが国の死因の上位であるだけでなく健康寿命にも深く関連しており、これらの動脈硬化疾患の発症及び死亡には危険因子に該当する生活習慣病に深く関わっていることがわかってきました。

また、生活習慣病を予防するためには、良好な周囲環境や生活基盤の形成が重要であり、生活習慣病対策の効果的な推進のためには常にその変化に着眼しながら企画、実行、検証、評価という一連のサイクルを展開していく必要があります。

日本人は比較的健康への関心度は高く、常日頃よりヘルスリテラシー(健康への情報)を求めていることから、生活習慣病に関わる問題についてはメディア情報でも政策でも透明性のある正しい情報が今以上に正確に伝わるような取り組みが一層重要です。

また、生活習慣病は、いまや健康長寿の最大の阻害要因となるだけでなく、国民医療費にも大きな影響を与えています2)。

日本では、消費されるサプリなどを含め1人当たりの国民医療費はこの半世紀を比較すると約20 倍以上となっていますが、生活習慣病を予防することに力を注ぐ方が結果的に医療費を含めた社会保障費も抑えられるのではないかと考えられています。

肥満症対策について

昨今では先進国を中心に生活習慣病が蔓延しており、その中でも特に「肥満症」については世界人口の1/3は肥満者であるといわれている程に多くの患者が存在しています。

肥満症は身体に過剰な脂質が蓄積している状況であり、この蓄積が引き金のひとつとなって身体の末梢組織に膵臓から分泌されるインスリンの抵抗性を誘発します。

インスリン抵抗性になると、食後の血糖値を処理しにくくなる耐糖能障害が現れる以外にも、脂質異常の増悪や高血圧の発症にも深く関与しているとされており、過剰な脂質の蓄積を改善するための早急な手立てが社会課題として認識されています。

一般的な肥満症の治療は食事・運動療法を基本としますが、減量のため食事だけを制限すると、重要な骨格筋までもが減少してしまうために食事療法と運動療法の併用が推奨されています。

肥満予防のために継続的かつ効果的な治療方法を実施するには、個人の努力だけでは困難であるため、適切に対処するための具体的な実践方法を専門家の指導下で実践することを心掛けましょう。

日本を含めるアジア諸国人は欧米人に比べて肥満程度が低レベル域から糖尿病の発症を認めることが知られており、単純にBody mass index(以下、BMI)の値だけではなく肥満がもたらす健康障害に留意する必要があります。肥満は、糖尿病や脂質異常症などの代謝性疾患を引き起こし、動脈硬化を促進するのみならず睡眠時無呼吸症候群や運動器疾患の原因ともなり得ます。

特に肥満症の中でもBMI35以上の場合は高度肥満症と位置付けられ、心不全や肺胞低換気症候群など重篤な合併症を伴う場合が多く、最近では減量手術など外科療法の応用が考慮されています。

生活習慣病に対する運動対策について

生活習慣病に対する運動対策について

生活習慣病の克服は重要な命題と考えられますが、国民が日々の暮らしの習慣の中で特に運動と食事をうまくコントロールできれば生活習慣病への対処法になる可能性があります。

その中でも生活習慣病の予防に対する運動の効果については全世界で多数のエビデンスが研究されつつあり、ウォーキングを代表とする有酸素性運動の効果は各々の地域や職域において一般的になりつつあります。

一般的に、喫煙や飲酒、運動をはじめとする身体活動不足、過食、睡眠不足等の好ましくない生活習慣は、いわゆる壮年期(25~44歳)前後から定着しやすいものです。

運動不足は冠動脈危険因子である糖尿病や高脂血症、高血圧、肥満、高インスリン血症などの危険因子といわれ、冠動脈疾患や脳梗塞をはじめとする動脈硬化性疾患の原因につながります。

生活習慣病予防に効果的な身体活動と運動としては、歩行と同等以上の身体活動を毎日60分以上行うこと、65歳以上では身体活動の内容は問わず毎日40分以上行うことなどが推奨されています3)。

また、生活習慣病予防のための筋力トレーニングは、筋力トレーニング単独の効果を期待するよりも持久性トレーニングと食事コントロールを組み合わせた複合型で実施されるプログラムがより効率的で効果的な方法であると考えられています。

ただし、運動を開始する際には事前のメディカルチェックが重要であり、心筋梗塞やメタボリックシンドローム合併例や高齢者などでは無症状の虚血性心疾患が潜在している可能性が充分あります。

したがって、医師による生活歴や既往歴、家族歴などの問診のみならず身体チェックに加えて運動負荷心電図を含めた循環器系に重点を置いた検査を実施することが未然の事故を防ぐためには重要であると考えられています。

おわりに

人生100年時代というこの世界で、高齢者から若者に至るまで、全ての国民に自分らしく活躍できる環境があり、あらゆる方が元気に活動し続けられ、なおかつ安心して暮らすことができる社会を形成していくことが重要な課題です。

これまでの過去数十年に生じた急激な生活の変化は少なくとも本邦を含む先進諸国においては身体を動かさなくてすむ生活と豊富な食料をもたらし、その結果として高度肥満を招いて過剰に蓄積した脂肪組織には炎症細胞が浸潤して代謝障害をもたらしてきました。

これらの諸問題に対して文明を退行させることなく健康長寿を実現させることは重要であり、将来的にも最善の予防対策を探り続けて新たな検査・治療手段を追求することが今後も肝要であると考えられます。

健康寿命が延びる中、自分自身のライフデザインを描き、国民の一人ひとりが生涯生きがいをもって社会に参加できるように生活習慣病対策に取り組んでいきましょう。今回のコラムが少しでも参考になれば幸いです。

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