主菜と副菜と汁物をひとつにした鍋は、手軽に鍋一つで作れ、忙しい時にもうれしいですよね。特に、冷蔵庫にある食材を無駄なく使うことができて、体も温まる鍋は寒い冬の日の味方です。
ブロッコリーやさつまいもなど、すくすくと育った冬ならではの野菜をたくさん入れましょう。冬野菜は火を入れることで、甘みがいっぱいに広がり舌もとろけるような美味しさになります。肉や魚を加えれば、味・ボリューム・栄養ともにパーフェクトな鍋ができあがります。いつもの鍋を作る時のちょっとしたコツ、美味しい鍋レシピをご紹介いたします。
さあ、鍋の世界へ!
1.鍋の準備
出汁
水に昆布を浸けておく。昆布は5cm角をそのまま使うよりは、キッチンバサミなどで、細切りにすると出汁が出やすいです。取り出さずに、そのまま野菜などと一緒に食べましょう。生姜のスライスやにんにくは粒のまま加えると、味わいのアクセントになります。沸騰したら、かつお節や酒を加えることで、味に深みと旨みが生まれます。
味付け
基本的に、塩や醤油などでシンプルに味付けします。スープの味を引き出すのは塩の働き、加熱しても味の変化のない塩をベースに、醤油、味噌などを加えて、味付けしていくのがコツです。砂糖やみりんなどの甘みは、最後に少しだけ加えるのが良いです。
おすすめは薄口しょうゆや白しょうゆなどを使うと、濃口しょうゆに比べて色が薄いので、煮込んでも具材のきれいな色合いを活かしてくれ、素材の味わいを感じやすいです。ただし、濃口しょうゆより塩分が強いので、塩の量などで調整しましょう。
アクセント
煮込んだ素材から出た旨みと味付けしたスープをベースに、仕上げ時にごま油やオイスターソース、バター、カレー粉などのスパイスを適度に加えることで、旨みやコク、味に変化をつけることができます。
旨みをプラスする食材
鍋に加えると、旨みやコク、食感を加える役目もあります。
- トマト、ブロッコリー、アスパラガス、オクラ、キャベツ、大豆もやし、ほうれん草、大根、白菜などの野菜類。
- 干しシイタケ、しいたけ、えのきだけ、なめこ、しめじなどのきのこ類。
- まぐろ、かつお、真鯛、桜えび、ちりめんじゃこ、シーフードミックス、あさり、ホタテ貝などの魚介類。
- 鶏肉、豚肉、生ハム、ベーコン、ソーセージなどの肉類。
- 海苔、わかめ、とろろ昆布、大豆、キムチなど。
薬味
薬味は鍋の味わいを美味しく変化させてくれます。小分けに冷凍しておくのも良いです。
- 万能ネギ、白ネギ、しょうが、にんにく、三つ葉、パセリ、香菜など。
- ゆず、すだち、かぼす、レモンなどの柑橘類。
- 黒コショウ、胡麻、山椒、唐辛子(一味、七味など)、柚子胡椒、豆板醤、わさび、からし、粒マスタード、梅干しなど。
2.鍋の作り方
ここからは、鍋の作り方についてポイントを押さえながら解説していきます。
出汁が出るもの、火の通りにくいものは先に
出汁が出るもの、火の通りにくいものは先に入れます。水や出汁を沸騰させます。鶏肉や魚類などの出汁がでるものは先に入れます。火の通りにくいイモ類、にんじん、大根、白菜の芯、ネギなどは早めに入れます。
次に味を染み込ませたいもの、崩れやすいものを
味を染み込ませたいもの、崩れやすいものを入れます。しらたきやシイタケなどのキノコ類、豆腐を入れます。しらたきは煮込む前に下ゆでして、水分を切ってから使うと良いです。
最後にすぐに火が通る野菜や肉類を
すぐに火が通る野菜や肉類を入れます。白菜の葉や春菊、えのきだけなどを入れます。豚肉はしっかりと火を通し、牛肉はサッと火を通します。野菜類は煮すぎてクタクタよりは、煮えた頃が美味しいです。肉は強火で一気に火を通したり、沸騰した中に入れておくと固くなります。野菜も肉も食べたところを見計らって、次の具材を入れるのもおすすめです。
3.鍋の食べ方
取り分けには、取り箸を使いましょう。取り分けるときは、その日のメイン食材の肉や魚介類を上にのせます。取り分け用の小鉢などに、野菜類を入れてから、その上にメインの肉や魚介類をのせ、お玉などでスープを注ぎます。火が入ったものから、バランス良くいただきましょう。
4.鍋の締め
鍋の締めには、雑炊やリゾット、麺類・・・、やはり、炭水化物が主流のようです。鍋のいろいろな締めを楽しみましょう。
そうめん
そうめんには塩が練り込まれているので、そのまま汁に入れて仕込むと、しょっぱくなるので、気を付けましょう。しゃぶしゃぶなどあっさりとした鍋の締めに加えて、味付けは加減しましょう。
ご飯やうどん
鍋の締めといえば、ご飯やうどんが定番ですが、冷凍のものをそのまま加えて煮込むのも便利です。スープが少なくなっている場合は水や豆乳などを足すとよいです。
ラーメン
生のラーメンは、表面に小麦粉がまぶしてあるので、煮込むととろみが出るので、スープを多めにするか、あらかじめ下ゆでしてから加えると良いです。また、インスタントラーメンを手軽に使うのもおすすめです。
パスタ
茹で時間の短いパスタを加えたり、あらかじめ茹でておいたり、冷凍したものを使うのも良いです。冷凍する場合は、茹でてから油をからめたり、水でしっかり洗ってから冷凍しましょう。また、ショートパスタなら、長く煮込んでもコシが強く、一口サイズなので食べやすいです。
パン
洋風鍋やエスニック鍋には、パンを加えるのも美味しいです。フランスパン(バケットなど)は煮込んでも崩れず、スープを吸うと美味しくなります。また、固くなったパンは軽くトーストして、クルトンのような食感を楽しみましょう。
卵とチーズ
卵やチーズなどは、どんな味わいの鍋にも合わせても美味しいです。卵はスープが少なくなるまで煮込んでから、溶き卵を加えて火を止め、蓋をして余熱で火を通すのがコツです。チーズは、粉チーズや、ピザ用チーズ、モッツアレラチーズなどのお好きな種類のものをダブルで加えるのも良いです。特に、パルメザンチーズはグルタミン酸量が豊富で旨みと深みのある味が生まれます。
5.「美味鍋」レシピ2選
“うまみ=UMAMI”は世界共通用語です。グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸を多く含む食材を組み合わせた旨み成分たっぷりの鍋レシピを紹介します。
美味鍋①「鯛とエビ団子のトムヤムクン風鍋」
- 具だくさん、ボリュームのある鍋!
- 澄んだスープからは想像もできないほど、深みのある味わいの鍋!
- 出汁は魚類とナンプラーの濃厚な旨みがベース!
- グレープフルーツの酸味がアクセント!
【材料】(2人分)
鯛(刺身用) 100g、むきエビ 200g、さつまいも 100g、しいたけ 2枚、小松菜 1╱3袋、厚揚げ 1個、緑豆春雨(乾) 40g、グレープフルーツ(ルビー) 1╱2個、
A:ねぎ(みじん切り) 大さじ2、生姜(みじん切り)大さじ1、片栗粉 大さじ1、
B:水 600ml、生姜(スライス) 2枚、赤唐辛子(そのまま) 1本、ナンプラー 大さじ2強、
【作り方】
1.さつまいもは1cm幅の半月切り、しいたけは石突を取って厚めに切り、厚揚げは縦半分、横4等分に切る。・・①
2.むきエビは背ワタを取り除き、包丁でたたき、(A)を加えて混ぜ、8等分に丸める。・・②
3.鯛は斜め薄切りにし、小松菜は長さを半分に切る。グレープフルーツは皮をむき、房に分けて袋をとる。・・③
4.鍋に(B)を加えて煮立て、①と②、春雨を加えて、弱火で5分ほど煮込む。
5.③を加えて、ひと煮立ちしたら、食べごろ。
ポイント
鯛は、しゃぶしゃぶにしながら、食べましょう。グレープフルーツ以外に文旦やスウィーティーなど、酸味がある春の柑橘類がおすすめです。味が薄ければ、食べながらナンプラーを少しずつ加えて調整しましょう。小鉢に、ナンプラーにレモンを各同量加えて、エスニックたれにしても、good!
食材
・ナンプラー
タイの魚醤。カタクチイワシなどの小魚を塩漬けして発酵させた上澄み液です。半年から1年くらい発酵させたもので、濃厚な旨みが特徴です。加熱することで、甘みが増し、魚特有の香りも弱まります。
・鯛
豊富なタンパク質には旨み成分を多く含み、むくみを取るカリウムや、DHAやEPAも含まれています。養殖の鯛が出回っていますが、天然より脂質は2倍ほど多いといわれています。
・エビ
高タンパク質で低脂肪、タウリンやバナジウムなどを含み、旨み成分も豊富です。
・生姜
薬味だけでなく、くさみ消しの効果、辛み成分には殺菌作用、食欲増進、代謝アップ、発汗作用促進などが期待できます。風邪気味、冷え性の方は積極的に食べましょう。
・緑豆春雨
緑豆とはもやしを作るときに使われます。豆のデンプンから作られ、食物繊維やカルシウム、鉄分などが含まれている春雨です。乾物のまま、鍋に入れられるので便利です。また、すぐに火が通り、具材から染み出た汁をたっぷり吸いこんで美味しくなります。
・さつまいも
主成分はでんぷんなどの糖質ですが、オリゴ糖や加熱しても壊れにくいビタミンC、食物繊維など、栄養価の高い野菜です。皮には抗酸化作用のあるポロフェノールが含まれているので、皮ごと食べましょう。
・シイタケ
食物繊維やビタミンD、葉酸、シイタケ特有の栄養成分を多く含みます。1時間ほどでも、天日に干すと栄養成分がさらに増してくれます。水洗いはなるべくせずに使います。
・小松菜
栄養価の高い野菜で、貧血の予防や改善をする働きのある鉄分、牛乳に匹敵するほど豊富なカルシウム、抗酸化作用が高いβ-カロテンやビタミンCを含んでいます。アクが少ないため、下ゆでせずに使えます。
美味鍋②「豚バラ肉となめこの茶鍋」
- 香りまで美味しい鍋!
- 昆布と緑茶の旨みの汁に、具材の旨みが合わさり、お茶のほどよい渋みと香りで、肉も野菜もさわやかに!
【材料】(2人分)
豚バラ肉 160g、ブロッコリー 1╱3個、なめこ(生) 1╱2パック、ミニトマト 6個、豆腐 1╱2丁(180g)、ポン酢(市販) 適量、
A:水 600ml、緑茶(ティーバック) 2袋、昆布(細切り) 3g(5cm角)、
【作り方】
1.ブロッコリーは小房に分け、なめこは石づきを落としてほぐす。ミニトマトは半分に切り、豆腐は4等分に切る。
2.鍋に、(A)を煮立て、煮立つ手前で緑茶を取り出します。
3.②に①を加えて軽く煮込みます。
4.豚バラ肉を上にのせて、蓋をして、弱火で火を通します。
5.お好みに、取り分けていただきます。
ポイント
昆布は細切りにした方が、出汁が出やすいようです。緑茶が出づらい時は、箸で少しかき混ぜましょう。うどんを鍋の下に加えて、煮込んでも良いです。柚子胡椒や一味唐辛子、すだちやかぼすの汁を加えても良いです。
緑茶は旨み成分を多く含む
緑茶は、旨み成分であるグルタミン酸を多く含みます。旨みとすがすがしい香りが特徴です。発酵させていないため、ビタミンA、C、Kが多く含まれ、強い抗酸化作用を持つカテキンを豊富に含んでいます。肉が柔らかく、臭みも和らぎ、脂肪分の多い肉もさっぱりといただけます。
おわりに
鍋の材料の肉や魚に含まれるタンパク質は、ブドウ糖に分解されて脳や筋肉にとって大切なエネルギー源となります。食物繊維が豊富な野菜は、煮ることでかさが減り、スープに溶けだしたビタミン類やミネラル類、色素などに含まれる抗酸化成分も無駄なく摂ることができます。
卵や乳製品、大豆製品などを加えることで栄養バランスが良く、満足感もアップします。滋味と栄養が溶け込んだ熱々の鍋を食べて、体の芯からポカポカ温まり、寒い冬をのり切りましょう。