春だけしか味わえない「新たまねぎ」が、店頭に並ぶ季節になりました。
たまねぎの原産地は中近東から中央アジアのあたりとされています。紀元前から栽培されていたらしいですが、古代エジプトのピラミッドの建設現場で働く労働者たちに、毎日たまねぎやにんにくが支給されていたとか。体力を回復させ、健康を維持するためだったようです。
たまねぎは万能野菜として、和洋中問わずさまざまな家庭料理に欠かせませんね。今回は春先に出回る新たまねぎをご紹介いたします。美味しく食べるコツや保存方法など、旬の新たまねぎは辛みが少なくて甘みもあり、サラダや炒め物に大活躍です。
1.たまねぎとは
葉の根元が膨らんで大きくなった鱗茎といわれるもので“葉”の部分を食べる葉野菜です。キャベツやほうれん草などと同じです。
春に種をまき秋に収穫するもの(おもに北海道・兵庫県・愛知県など)と、秋に種をまき春から初夏にかけて収穫するもの(おもに静岡県、愛知県、佐賀県など)があります。
1-1.たまねぎの種類
種類は色で分けられます。
黄たまねぎ(辛たまねぎ)
一般的なたまねぎと呼ばれているものです。収穫後、乾燥・貯蔵されてから集荷されるため、一年中食べることができます。辛みが強く、貯蔵性にも優れています。
新たまねぎ(白たまねぎ)
春のわずかな期間に出回る黄たまねぎの早生種で早取りのたまねぎのことです。生食でも食べられ、しかも美味しい。貯蔵性はあまりよくありません。他に、春先に葉付きのまま出荷される若いたまねぎも「葉たまねぎ」または「新たまねぎ」と呼ばれています。
赤たまねぎ(紫たまねぎ)
薄皮や実の皮の部分が鮮やかな紫色をしていて、水分が多くて、香りや辛み、刺激臭もマイルド、甘みが強いので、生食やサラダに向いています。抗酸化作用があるアントシアニンを含みます。
2.新たまねぎとは
独特の甘みがあり、春の訪れを感じさせてくれる野菜の代表格です。主に、春先の3月〜5月、7月まで出回るものもあります。
新たまねぎは「黄たまねぎ」や「白たまねぎ」を収穫後すぐに出荷させたものです。通常、たまねぎは日持ちを良くするために、収穫してから1ヵ月くらい風にあてて乾燥させますが、新たまねぎはすぐに出荷されます。
皮は白くて薄く扁平で、水分が多くてやわらかく、たまねぎ独特の苦みや匂いが少ないという特徴があります。辛みはマイルドでサクサクした歯ごたえがあり、そのまま生で美味しく食べられます。新たまねぎを選ぶポイントは、新鮮で首が細いもの、ずっしり重みがあるものがジューシーで美味しいです。最近は、果物に匹敵するほど糖度が高いものもあります。
3.新たまねぎの栄養素
新たまねぎと普通のたまねぎに栄養成分の違いは特にないといわれています。
主成分は糖類(炭水化物)で、豊富に含まれています。ビタミン類やミネラル類をバランスよく含んで炭水化物などを体内で効率良く燃やす働きがあり、良いエネルギー補給源となります。中でもカリウムが豊富なので、塩分の排泄を促して血圧を低下させる働きがあると考えられています。
たまねぎの辛みの元である硫化アリルも豊富に含まれます。硫化アリルには、消化液の分泌を促進して新陳代謝を盛んにして血液をサラサラにする働きや、体温を上昇させるので風邪の予防や脂肪の燃焼も促進させるといわれています。
硫化アリルは水溶性で熱に弱いので、新たまねぎを生で食べることで、硫化アリルを効率良く摂ることができます。ビタミンB1が含まれる豚肉やハムなどと一緒に食べれば、ビタミンB1の吸収率をサポートするので、疲労回復や新陳代謝アップにも効果的です。
ケルセチンというポリフェノールの一種の黄色い色素が含まれています。普通のたまねぎの外皮に豊富に含まれているといわれていますが、新たまねぎでも十分摂取することができます。抗酸化作用があるので、発ガンの抑制や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病の予防、改善効果などのさまざまな働きがあると注目されています。
独特の香りにはイライラや不眠を改善する効果も期待されています。また、胃が弱い方や胃の調子が悪いときは、生で食べずに、加熱して食べるようにしましょう。
4.新たまねぎの調理法
4-1.切ると涙が出る
たまねぎは切ると、刺激臭と辛みをもつ硫化アリルが発生します。常温で揮発しやすいこの硫化アリルが目や鼻の粘膜を刺激するためです。
以下の方法で切るのがおすすめです。
- 切る前にたまねぎを良く洗う
- 切り口を水で濡らす
- 冷蔵庫で冷やしてから切る
- よく切れる包丁で切る
4-2.切り方
薄く切る場合は、切る方向によって食感が異なります。
繊維に沿って切る(縦に切る)場合は、シャキシャキとした歯触りになります。炒めたり、蒸したり、加熱する場合は、形が崩れず、食感を楽しめます。
繊維と直角に切る(横に切る)場合は、柔らかい食感になります。そのまま生で食べる場合は、口当たりがまろやかになり、辛み成分も抜けやすくなります。
4-3.調理法
薄くスライスする。そのまま生で、薄くスライスしてサラダにします。水にさらさずに、サラダやサンドイッチの具にできます。
大きくカットする。水分が多く繊維がやわらかいのが特徴です。繊維に沿って大きくカット(くし形など)、やわらかな食感を楽しめます。炒め物や煮物に向いています。
炒める。油でサッと炒めることで新たまねぎのさわやかな食感を味わうことができます。
焼く。水分が多くやわらかいので、グリルなどで焼くと、水分が飛んで甘みが凝縮されます。
煮る。特に煮物は、2回に分けて加えて良い。肉じゃがなどにするときは、新たまねぎを2回に分けて加えると、シャキッとした食感とトロリとした甘みが楽しめます。煮込むことで辛みが甘みに変わります。
短時間で調理する。繊維がやわらかく、火の通りが早いので、短時間で調理しましょう。長く火を通すと、みずみずしさが失われてしまいます。
4-4.調理と抗酸化物質
疲労回復効果のために
抗酸化物質は緑黄色野菜に限らず、淡色野菜のたまねぎにも含まれています。
硫化アリルは生のたまねぎに含まれる栄養成分で独特の香りと辛みを出します。抗酸化力があり、ビタミンB1の吸収を高める働きがあり、疲労回復、免疫力アップ、新陳代謝促進、脂肪燃焼といった健康効果が期待できます 。ビタミンB1の多い豚肉やハム、真鯛や大豆などを使った料理がおすすめです。
抗酸化物質を増やすために
たまねぎの硫化アリルは、細胞を断ち切ることで量が増します。たまねぎの繊維は縦に走っているので、直角に繊維を断つように包丁でスライスしていくと切断する細胞が増えます。
生食で、辛みを抑えるために
硫化アリルが増えると、生たまねぎの辛みも増えます。辛みを抑えるためにスライスしたたまねぎを水にさらすのはNGです。硫化アリルをはじめケルセチン、水溶性のビタミン類やカリウム、オリゴ糖などの栄養成分が水に流れ出てしまいます。どうしても、さらす場合は手早く行うことが大事です。
たまねぎの辛みを抑えるためには、切った後で水にさらさず、そのまま重ならないように広げ、しばらく置いておきます。空気に触れるだけでもマイルドになります。できれば、15分~1時間くらいが目安です。また、繊維を断つように切ったほうが、辛みがより抜けます。硫化アリルの一部が揮発し、辛みが飛んで食べやすくなります。
甘みを引き立てるために加熱する
たまねぎを加熱すると、辛み成分の硫化アリルが揮発したり、分解するため、甘みが引き立ちます。
5.新たまねぎの保存方法
新たまねぎは、普通のたまねぎと違って、水分が多く含まれているので傷みやすいので、長期保存には向きません。
冷蔵保存方法
できれば、1つ1つ新聞紙やキッチンペーパーなどに包み、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存し、3日~1週間以内、なるべく早めに食べましょう。
冷凍保存方法
保存期間の目安はおよそ1ヵ月間です。食べやすい大きさにスライスして1食分ずつに分けて保存袋に入れて冷凍室で保存します。使う分だけ、解凍ができて便利です。きつね色にソテーしてから冷凍にします。水分によって味が損なわれることが少ないので美味しいです。
6.本日の新たまねぎ・美味レシピ
本日は、2022年3月 野菜ソムリエサミット銀賞 受賞、玉ねぎ品種「浜ゆたか」を生産する静岡県湖西市のすこやかファーム湖西をご紹介いたします。
「すこやかファーム湖西」は立ち上げてから約10年が経ちました。東京ドーム約2個半の広さの土地で、ハウス作物の育成や販売、農作業を行っています。
利用者とスタッフが協力して、畑で農作業を行い、収穫した作物の梱包、販売などを行って、地域に貢献しています。現在は40名近い利用者が働き、農業スキルを学び、日々の生活に必要な資金の獲得の一助となっています。利用者の就労活動の支援と生活のための就労サポート等を行っているファームです。
以前は、自然薯やアスパラガス、キャベツなど38品目にチャレンジしたこともありましたが、利用者がみんなで無理なくできる作業を優先するために、収穫時期が多少ずれても問題がない作物を中心に扱っています。主に玉ねぎやサツマイモ、ニンニクなどを栽培しています。
新玉ねぎは、品種「浜ゆたか」を3月~5月に収穫しています。根と葉をとり、1日~2日ほど乾燥させてから出荷しています。風が強く、サラサラとした砂状で水はけが良い土壌が特徴です。水はけが良いからか、玉ねぎの根が水分を多く吸収するのでみずみずしく、冬を越すと糖分が増して甘みが強くなり、美味しい新玉ねぎが出来上がります。
食べ方のおすすめは、新玉ねぎを輪切りにして、フライパンで焼くだけですが、簡単で、甘みが楽しめる一品です。また、味噌汁に加えれば、新玉ねぎがトロッと溶けて、甘みたっぷりです。野菜炒めに加えても、すぐに火が通るので、調理時間も時短になります。
〇美味レシピ
★MICHIKO’s COOKING
★丸ごと新たまのおかかレンジ蒸し
・ホクホクでトロトロ、甘みがギュッと詰まった新玉ねぎを丸ごと♪
・レンチンだけでとは思えない美味しさ♪
【材料】(2人分)
新玉ねぎ 1個(250g)、鰹節、万能ねぎ、醤油 各少々。
【作り方】
1.新玉ねぎは皮を剥いて、上下を切り落とし、8等分に切り込みを入れる。(根元を1cmほど、切り残すと良い。)
2.耐熱皿に①をおき、ふんわりとラップをかけ、電子レンジ(600w)で5分ほど加熱する。
3.器に盛り付け、鰹節と小口切りした万能ネギをかけ、醤油をひと回しする。
*醤油やポン酢、マヨネーズ、バター、味噌など、お好みの調味料を!
★新たまと豚バラ肉のレモンマリネ
・忙しい時には、新玉ねぎと豚肉効果で新陳代謝をアップ♪
・新玉ねぎの甘さとレモンの酸味が相性よし♪
【材料】(2~3人分)
新玉ねぎ(小) 1個、豚バラ肉 120g、ルッコラ 1/2袋(30g)、レモン(マイヤー) 1/4個、
A:レモン汁、オリーブ油 各大さじ1、はちみつ、塩、こしょう 各少々、
【作り方】
1.新玉ねぎは繊維に沿って縦に薄切りにする。ルッコラは3cm長さに切り、レモンはいちょう切りにする。
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、豚肉を入れて、沸騰したら火を止める。菜箸で肉をほぐしながら茹で、茹で上がれば、ざるに上げてそのまま冷ます。
3.ボウルに、(A)を加えて混ぜ、①と②を加えて、サッとあえる。
*新玉ねぎは繊維に直角に薄切りし、そのまま30分ほど置くと、辛みが和らぎます。
*そのまますぐに食べても、冷蔵庫で冷やして味をなじませても。
*マイヤーレモンは、ふつうのレモンより酸味が少なく、甘みがあって食べやすいです。
★新たまと桜えび、春の炊き込みご飯
・旬の新玉ねぎ、桜エビ、スナップエンドウを入れた春の炊き込みご飯♪
・新玉ねぎの甘みと桜えびの風味が口いっぱいに広がる♪
【材料】【2~3人分】
新玉ねぎ 1個、桜えび(乾) 20g、スナップエンドウ 5枚、カッシュナッツ 10個、米 2合、
A:酒 大さじ1、塩 小さじ1╱2、
【作り方】
1.米は洗って30分間浸水させ、ざるに上げて水けをきる。
2.炊飯器の内釜に①を入れ、(A)を加える。水を2合の目盛りより少なめに注いでひと混ぜする。中央に新玉ねぎを丸ごとのせて、普通に炊く。
3.炊き上がれば、桜えびと①と斜め5mm幅に切ったスナップエンドウと刻んだカシューナッツを加えて、蓋をして5分ほど蒸らす。
4.新玉ねぎを切るようにサックリと混ぜ、器に盛る。
*新玉ねぎは柔らかいのでしゃもじでも切れます。
*水の量は、新玉ねぎの水分があるので、少なめに加えるのがコツ!
おわりに
1年中食べられる普通のたまねぎと違い、新たまねぎは春だけしか味わうことができない、ごちそうです。嬉しい栄養成分がたくさん含まれているので、そのまま生でオニオンスライスしたり、いつものサラダに加えたり、ヘルシーなのでダイエット中でもおすすめの野菜です。
春は何かと忙しい時期、「ちょっと疲れたな。」と感じた時は、新たまねぎをたっぷり入れた豚肉の生姜焼きなどはいかがでしょうか。
甘みが増した新たまねぎで、春の風味を楽しみましょう。