秋本番!きのこがおいしい季節になりましたね。ところで、最近、乾しいたけを食べましたか。 乾しいたけは戻さなければならないので、「ちょっと面倒!」と敬遠していませんか。乾しいたけの戻し汁を「捨ててしまった!」という声まで聞こえてきます。この戻し汁に旨みと身体に良い有効成分がたっぷり含まれているのです。
少し前までは、しいたけといえば乾しいたけのことで、家庭でも定番食材として欠かすことのできない大きな存在でした。和食の良さが世界的にも認められるようになったなか、和洋中と万能に使える乾しいたけの魅力を知って、再発見してみませんか。
乾しいたけとは
昔は枯木に自然発生したしいたけを採るだけでしたが、江戸時代に栽培が始まりました。乾しいたけは生のしいたけを乾燥させたものです。その歴史は古く、千年以上も前から品質が良かったためか、中国に輸出していました。乾かすことでうま味と香り、生しいたけよりもたくさんの薬効もあるのが乾しいたけです。
以前は、乾しいたけはマツタケよりも高価だったそうです。最近では無農薬で作られる品質の良い乾しいたけは、オーガニック食材として、海外でも注目を集めています。
きのこは野菜?
きのこは植物ではなく菌類に属します。基本的に野菜ではありません。糸状の菌糸で生育し、胞子で繁殖します。きのこで作られた胞子が風などで飛び、倒木や落ち葉などの上に落ちて発芽することがあります。この胞子から菌糸が伸びて養分を吸収して拡がり、菌糸体となります。その後、温度や湿度、栄養などの環境条件によって、菌糸体が集まり、時間をかけてきのことなります。乾しいたけはしいたけ菌の胞子によりできたものです。
乾しいたけはエコ食品
しいたけには、自然力を生かした原木栽培と生鮮キノコの菌床栽培があります。
- 原木栽培
乾しいたけはほとんどが原木栽培です。豊かな自然の森林内で主に作られています。木漏れ日の光や心地よい風、寒暖のある気候の中、ゆっくりと時間をかけて育てられます。伐採したクヌギなどの原木にしいたけ菌を植えつけます。2年かけて原木内に菌糸をのばすとほだ木と呼ばれ、収穫が始まります。
木の養分をもらって成長しますが、風や雨、湿度などが大切です。しいたけの発生には刺激が必要ですが、収穫前には雨に当たらないようにし、傘が開ききる前にひとつひとつ手でもぎ取ります。採取後、乾燥機に入れて乾燥させると品質の良い乾しいたけになります。2~5年間、収穫し終わると朽ちたほだ木は土に還り、そしてその土から木が育ちます。自然環境を循環させて作られるため、CO2削減にもつながります。
- 菌床栽培
菌床栽培はおがくずにふすまや米ぬかなど、さまざまな栄養源を加えた菌床にしいたけ菌を植えて、ハウスなどの栽培施設で栽培されます。3~4カ月でしいたけが発生し、1年中収穫できます。スーパーなどで販売されている生しいたけはこの栽培が主流です。
- 乾しいたけの主な種類
- 冬菇(どんこ)
傘の肉が厚く、縁が強く内側に巻き込んで、全体が丸みを帯びています。肉厚なので水戻しに時間がかかります。含め煮やしいたけステーキなど、そのまま使って歯ごたえを楽しむ料理に適しています。
- 香信(こうしん)
傘の肉が薄く、巻き込みは浅く扁平な形をしています。薄いので水戻しやすく、炒め物やちらし寿司、スライスやみじん切りすることができるなど、幅広い料理に利用されます。
乾しいたけの選び方と保存方法
おいしい乾しいたけを見分けるポイント
- 傘の内側(ヒダ)が乳白色か淡黄色のもの。古くなると赤茶色になります。
- 傘の表面が茶褐色でしわがなく、ツヤがあるもの。
- 軸が短いものは寒い冬に育ったもので香りと味、品質が良い。
- 原木乾しいたけの表示のあるもの。
乾しいたけの保存法
常温保存が基本です。保存の大敵は、湿気と、空気中の酸素です。
特に、開封後はジッパー付き保存袋や密閉容器に入れ、冷蔵庫や冷凍庫で保存するのがよいです。賞味期限は1年程度ですが、保存を上手にすればそれ以上経過しても心配なく召し上がれます。
乾しいたけのパワー
乾しいたけはおいしいだけのキノコではありません。多くの健康作用が素晴らしいです。
旨みと香り
生しいたけを乾燥すると乾しいたけになりますが、生しいたけに比べて、乾しいたけは美味しさ(グアニル酸量)が10倍にも増えます。乾燥させると細胞が壊れることでコントロールができなくなり、調理加熱すると酵素が働きはじめ、うま味成分が増えるのです。同じように、香りもレンチオニンという料理の香りを高めるといわれる強い香り成分が生まれます。保存性の良さもありますが、それ以上に美味しさと香りがプラスされます。
ビタミンD
ビタミンDが豊富な乾しいたけ
ビタミンDが豊富な食品は多いですが、乾しいたけにはビタミンDが特に多く含まれています。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯を健康に働きがあり、骨粗しょう症やお子様の骨の成長、大腸がん予防やアンチエイジング効果があることも明らかになってきました。カルシウムとセットでビタミンDを食べましょう。
それ以外にも、「冬季うつ病」の改善に効果があることが分かっています。寒くなるとやる気もなくなり、憂鬱な気分になる時に必要な栄養素です。他にも、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果、高齢者の健康維持のためにも重要な成分です。
ビタミンDが増える!
乾しいたけに含まれるエルゴステロールという成分が、紫外線に当たるとビタミンD₂に変わります。太陽の光を浴びることでビタミンDを豊富に含む食材になり、炒め物や揚げ物など調理に油を使うことでビタミンDをより効率的に吸収しやすくなります。
お日様に当てて、ビタミンDを増やす
乾しいたけは太陽の光を浴びることで、ビタミンDを豊富に含む食材になります。
エルゴステロールはひと月で半減するので、使う前に乾しいたけの内側のヒダの部分を上にして、日光(紫外線)に30分~3時間ほど当てて、ビタミンDを増やしてから調理に使いましょう。
健康のために、毎日20分ほど日光浴や散歩したり、魚やきのこ類(特に乾しいたけ)を食べるといった生活は、十分なビタミンD量を保つためにも効果的なことです。
食物繊維
きのこは、食物繊維が豊富に含まれています。コレステロールの吸収をおさえ、発がん物質などの有害物質を吸着し排泄を速め、生活習慣病やがんの予防に期待できます。また、腸を元気にして便通も整えます。
βグルカン(食物繊維の仲間)も豊富に含まれています。免疫力を高め、感染症やがんの予防に役立つなど、さまざまな働きが知られています。
食品100gに含まれる不溶性食物繊維量は、乾しいたけ38.0g、ごぼう 3.4g、レタス 1.0gと乾しいたけは群を抜いて多くなっています。
カリウム
乾しいたけにはカリウムが多く含まれていますが、カリウムは「ナトリウムの排泄を促し血圧を下げる」「筋肉や心筋の活動を正常に保つ」「便秘解消に働きかける」「老廃物の腎臓における排泄を促す」など様々な働きがあります。
エリタデニン
しいたけに含まれる特有の成分で、血中のコレステロール値を下げる働きや血圧を下げる作用も確認されています。エリタデニンは水溶性のため、乾しいたけの水戻し汁に多く含まれます。
シイタケ水
乾しいたけの戻し汁をそのまま飲むと、血圧やコレステロール値を正常に保つ効果があるといわれています。乾しいたけ(1~2枚)のほこりをとり、コップなどの容器に入れて水(150ml)を注ぎ、冷蔵庫内で一晩入れておくだけです。翌朝、飲むようにしましょう。戻したしいたけは料理に使えます。かつお節や昆布を一緒に加えて戻すと飲みやすいだけでなく、さらに健康効果がアップします。飲むときに、醤油を1、2滴加えると美味しく飲めます。
レンチナン
この成分はβ-グルカンの一種でしいたけから抽出されたレンチナンには、身体の免疫に働きかけることでガン細胞の増殖を抑える効果が認められています。
抗酸化作用
きのこなど菌類にはエルゴチオネインというアミノ酸の一種が含まれています。ビタミンEの約7000倍の抗酸化作用があるといわれています。水溶性なので、乾しいたけの戻し汁もしっかり使いましょう。また、熱に強いためスープや炒め物など、加熱しても失われません。
他に、味覚を正常に保ってくれるという亜鉛、体のすみずみに酸素や栄養素を運ぶ鉄、体にたいせつなタンパク質やビタミンB群、疲労回復のあるビタミンB1、不足すると肌荒れの原因にもなる美肌効果のあるビタミンB2、ミネラルなども補給することができます。また、しいたけはローカロリーなので、ダイエットフードとしても注目されています。
乾しいたけのおいしい戻し方と使い方
おいしく食べるために一番大切なことは、“戻し方”です。5℃ぐらいの冷たい水(冷蔵庫内)でゆっくり戻すと酵素が働き、うま味成分のグルタミン酸が増えます。
美味しい戻し方
乾しいたけのほこりをとり(払い落したり、濡れ布巾でふく)、容器に入れてひたひたの水を注ぎます。蓋かラップをして、冷蔵庫にいれます。
肉厚の冬菇(どんこ)なら8時間以上、香信などのスライスや薄いものなら約4時間が目安です。手で砕いた乾しいたけを戻したり、冷蔵庫で1時間くらい戻した乾しいたけを4つ切りか、八つ切りに切って、再度水戻しすると短時間で戻ります。
急ぐ時のお助け戻し方(旨みは減ります)
- 40~50℃の湯に1時間浸ける。
- ぬるま湯に浸けて、ラップをして、電子レンジに2分ほど入れる。
- 砂糖を少し入れた水かぬるま湯で戻す。
*戻す容器は密閉容器やジッパー付き保存袋などに入れます。しっかりと蓋をするのは、こぼさないためと移り香を防ぐためです。
*乾しいたけと一緒に、かつお節や昆布を入れるとしっかりとしただし汁として使えます。
原木乾しいたけと菌床乾しいたけの違い
水で戻すと原木乾しいたけはもとの重さの5~8倍に増えるのに対し、菌床乾しいたけは3~5倍という違いがあります。
戻し汁と戻した後のしいたけの使い方
- 戻し汁は、だし汁として使えます。
- 戻したしいたけは、軽く水けを絞り、普通の生しいたけと同じように料理に使えます。
*すぐに使わないときは冷凍保存も可。
乾しいたけでCOOKING
しいたけは動物性脂肪と相性がよいです。焼き肉や肉入りのスープなどに加えたりして、一緒に食べると食べ合わせが良い。中華料理では、脂っこさを和らげてくれます。また、調理に油を使う炒め物や揚げ物のほうが、ビタミンDをより効率的に吸収しやすくなります。
大分の乾しいたけ
大分県の乾しいたけは、都道府県別の生産量全国第一位、全国シェアは40%を占めています。(令和2年 農林水産省)
大分トレーサビリティシステム
安心して使える乾しいたけを提供していますが、履歴証明する制度として、大分乾しいたけトレーサビリティを導入しています。「大分県産」と表示され、販売されている乾しいたけの商品が、確かに大分県内で生産されたものだと証明できる仕組みです。商品に記載しているシリアルナンバーから、流通履歴を追跡できます。
大分ブランド「うまみだけ」
乾しいたけの生産量全国No.1の大分県から生まれた、新ブランド商品です。お好みの特徴を持つ品種を選ぶことができます。一般的な乾しいたけの商品は、傘の形状(主に冬菇、香信など)で選別して袋詰めするため、多くのの品種が混ざっていました。同じ袋に入っているため、水戻しの時間、食べた時の食感や味わいが違っていました。
そこで、同じ品種の乾しいたけを同じ袋に詰めているのが、「うまみだけ」です。品種ごとに異なる「うま味・香り・歯ごたえ」などの特徴があります。作る料理に合わせて、お好みの商品を選び、美味しく食べて、楽しんでください。
うまみだけ ラインナップ
品種 | 味わい | こんな料理に |
ゆう次郎 | やさしい香り | 中華、餃子、出汁、お好み焼き、カレーなど |
115 | 肉厚でしっかり | ステーキ、バター焼き、味の濃い煮物など |
193 | 香り高く芳醇 | パスタ、シチュー、ハンバーグ、フライなど |
とよくに | 柔らかくマイルド | 洋食、クリーム系の料理、天ぷらなど |
新908 | 柔らかく濃厚 | 雑炊、味噌汁、野菜スープ、親子丼など |
240 | プリプリの食感 | マリネ、アヒージョ、パエリア、中華炒めなど |
にく丸 | 歯ごたえ抜群 | 唐揚げ、ひき肉料理、カレー、麻婆など |
金太郎 | 弾力たっぷり | バターソテー、野菜炒め、シチューなど |
*「ゆう次郎」「115」「193」が人気の商品です。
*販売サイト「うまみだけ」でも購入できます。
乾しいたけの香りが立ち、うま味がたっぷり!乾しいたけとキャベツの豚しゃぶ鍋
具材をサッと切って、鍋に入れるだけの簡単レシピ!豚肉との相性も抜群です!
※うまみだけ「193」を使っています。
【材料】(2人分)
- 乾しいたけ(戻し)5枚
- 豚バラ肉(しゃぶしゃぶ用) 160g
- キャベツ 200g
- にんじん 100g
A
- 乾しいたけの戻し汁 400ml
- 昆布 5cm×5cm
- にんにく 1かけ
B
- ぽん酢 適量
- 白すりごま 適量
【作り方】
- 乾しいたけは薄切り、にんじんとキャベツは千切りにする。
- 鍋に(A)を加えて、沸騰させる。アクが出れば、取り除く。
- ②ににんじんとしいたけを加えて数分煮る。キャベツを加え、豚バラ肉は切らずに1枚ずつ、ほぐしながら加える。
- 具材に火が通ったら、器に(B)を入れ、スープごと取り分けていただく。
- お好みで七味唐辛子やかぼす汁を加えても。
乾しいたけ(ゆう次郎)のやさしい香りと食感を楽しむ三色の和風サラダ
三色の素材の味わいが絶妙にまとまっている!
※うまみだけ(ゆう次郎)を使っています。
【材料】
- 乾しいたけ(戻し) 2枚
- れんこん 100g
- サーモン(生食用) 80g
- カイワレ大根 適量
A
- めんつゆ(三倍濃厚) 大さじ1
- 乾しいたけの戻し汁 大さじ1
- マヨネーズ 大さじ1
【作り方】
- しいたけは軽く水けを絞り、軸を取って薄切りにしてふんわりとラップで包み、電子レンジ(600w)で1分ほど加熱して冷ます。レンコンは薄い半月切りにし、酢水(分量外)に浸けて水けをとる。ふんわりとラップで包み、電子レンジ〈600W〉で2分ほど加熱して、冷ます。
- サーモンは一口大に切る。カイワレ大根は根を切り落とし、長さを半分に切る。
- ボウルに(A)を加えて混ぜ①と②入れて混ぜ合わせ、器に盛る。
甘みと辛みのバランスがよい味わい!エスニック風乾しいたけカレー
乾しいたけの肉厚でしっかりとした歯ごたえ、食べるほどに満足感アップ!
※うまみだけ(115)を使っています。
【材料】(2~3人分)
- 乾しいたけ(戻し) 4枚
- 鶏手羽肉 200g
- サツマイモ 100g
- オリーブ油 大さじ1
- カレー粉 大さじ2
- にんにく 1片
- 玉ねぎ 1╱4個
- 香菜 適宜
- ご飯 適宜
- レーズン 適宜
A
- ココナッツミルク 1缶(400ml)
- 乾しいたけの戻し汁 200ml
- 砂糖 小さじ2
- ナンプラー大さじ2
【作り方】
- しいたけは軽く水けを絞り、軸を取って、半分に切る。サツマイモは乱切りにして、水にさらす。
- にんにくと玉ねぎはみじん切りにする。
- 鍋にオリーブ油と②を入れてよく炒め、カレー粉を加えて炒め合わせる。さらに、鶏肉としいたけ、サツマイモを加えて炒め合わせる。
- ③に(A)を加え、弱火で12分ほど煮込む。
- 器に、ご飯にレーズンを混ぜて盛り、4cmの長さに切った香菜を添える。
*カレー粉の量はお子様向けなど調整してください。
おわりに
きのこの美味しさは、うま味、香り、食感にあり、西洋ではポルチーニ茸がキノコの王様といわれています。乾しいたけはそれに匹敵するものといえます。原木の養分で育ったしいたけは森の活力に満ちています。その生しいたけを乾すことにより、香りと旨みが飛躍的に増え、乾物の王様ともいわれます。
子供からお年寄りまで、さまざまな世代の健康を守る栄養が含まれており、多めに常備すれば、災害時の頼もしい備蓄にもなります。自然豊かな森からの贈り物、豊かな香りと旨みを楽しめる、いいこと尽くしの「乾しいたけライフ」を、始めてみませんか。