ワインに詳しくない方でも一度は聞いたことはあるであろう「ボジョレー・ヌーボー」。今回はボジョレー・ヌーボーの基礎知識から日本で流行った理由、ボジョレー・ヌーボーとペアリングできるおつまみまで幅広く解説していきます。
1.毎年話題になる「ボジョレー・ヌーボー」とは?
毎年秋になると話題になるボジョレー・ヌーボーはどんなワインなのか、また解禁日や、醸造方法といった基本情報について解説していきます。
1-1.ボジョレー・ヌーボーはフランス・ボジョレー地区の新酒
ボジョレー・ヌーボーは「Beaujolais Nouveau」と表記。カタカナでの表記だと「ボジョレー・ヌーヴォー」や「ボジョレー・ヌーボー」「ボージョレ・ヌーボ」などとさまざまな表記パターンがあります。
「Beaujolais」はフランスのブルゴーニュ地方にある地区の名前で、「Nouveau」は新酒という意味。つまり、ボジョレー・ヌーボーは「ボジョレー地区で造られたその年の新酒」という意味を表しています。
また、ボジョレー・ヌーボーにはランクがあり、一般的に流通しているボジョレー・ヌーボーと、より品質の高い「ボジョレー・ヴィラージュ」、さらに品質の高い「クリュ・ボジョレー」の3種類。その比率は、ベーシックなボジョレー・ヌーボーは全生産量の60%、ボジョレー・ヴィラージュは25%、最高品質のクリュ・ボジョレーは15%。「クリュ」はフランス語で、一定の品質が認められたブドウ畑のことを指し、品質の優れた産地に与えられるものです。
1-2.ボジョレー・ヌーボーの解禁日は毎年決まっている【2022年はいつ?】
ボジョレー・ヌーボーの解禁日は毎年「11月の第3木曜日午前0時」と決まっています。2022年は11月17日(木)です。
なぜこの時期かというと、もともとは早出し競争による品質低下防止のために作られた制度だから。当初、ボジョレー・ヌーボーの解禁日は11月15日と決められていましたが、年の周期によって土日に当たる場合はワインを運搬する専門会社が休日に当たるため、1985年から11月の第3木曜日に改定されました。
ボジョレー・ヌーボー以外の解禁日
ボジョレー・ヌーボー以外にも、ワインにはさまざまな新酒の解禁日があります。
イタリアの新酒「ノヴェッロ」は10月30日、ドイツの新酒「デア ノイエ」は11月1日、オーストリアの「ホイリゲ」、スペインの「ヴィノ ヌエボ」は11月11日が解禁日。
そしてまだまだ認知度は低いですが、日本でも新酒を祝う解禁日があります。山梨の甲州(白ワイン)とマスカット・ベーリーA(赤ワイン)の新酒を祝う日を山梨県ワイン酒造組合が11月3日に制定しました。こちらはぜひ覚えておきたい日です。
1-3.他のワインとなにが違う?味わいは?
ボジョレー・ヌーボーは通常のワインの醸造方法とは異なります。通常はブドウの房から実を取り、種と果皮を一緒に浸して発酵させますが、ボジョレー・ヌーボーは房ごと発酵槽へ。
すると、ブドウは積み重なった重みで自然と潰れて果汁が出てきます。そのブドウが自然に発酵するとタンクの中に炭酸ガスが充満。その中で数日間漬け込んでいきます。
この醸造方法は「マセラシオン・カルボニック製法」。充満する二酸化炭素と一緒にタンクの中で発酵させることで、ブドウ本来のフレッシュなアロマをきれいに残すことが特徴です。
マセラシオン・カルボニック製法で造られたボジョレー・ヌーボーは、タンニンが少なく、イチゴキャンディのような甘くフルーティな香り。またはバナナやヨーグルトといったまろやかなアロマも感じられます。ライトな飲み口でするすると飲めるので、ワイン初心者にもおすすめです。
2.ボジョレー・ヌーボーの故郷、ボジョレーとは
ボジョレー・ヌーボーはフランスのブルゴーニュ地方にあるボジョレー地区で生まれたワインです。ボジョレーとはどのような気候、土壌なのか、またボジョレー・ヌーボーに使われているブドウ品種「ガメイ」について説明していきます。
2-1.フランスのブルゴーニュ地方「ボジョレー」
ボジョレー地区は、単一品種の「ガメイ」というブドウから造られるフルーティな赤ワインの産地です。生産量の約95%を占めます。ボジョレー地区は南北55kmにわたり、北部は花崗岩土壌、南部は石灰岩、泥炭岩土壌などが多いのが特徴。ボジョレー地区は赤ワインが有名なので影が薄いですが、ロゼワインや白ワインも一部造られています。
2-2.ボジョレー・ヌーボーに欠かせない「ガメイ」
ガメイはボジョレー地区では欠かせないブドウ品種で、フランスで栽培されているガメイのうち、約75%がボジョレー地方で作られています。タンニンが少なく、果実味のあるフレッシュな味わいが特徴。そのため早飲みタイプといえます。
一般的にポリフェノール量が多いワインは長持ちするので長期熟成向け。ポリフェノールの一種であるタンニンが少ないと、あまり熟成には向いているとはいえません。ラズベリーやスミレのようなアロマをもち、ボディは軽めなので飲みやすい味わいに仕上がることが多いです。
3.ボジョレー・ヌーボーが日本人の心をつかむ理由
ボジョレー・ヌーボーは特に日本で人気がありますが、その理由を解説していきます。
3-1.ボジョレー・ヌーボーはいつから日本に広まった?
1970年代にボジョレー・ヌーボーが日本に入ってきた後、1986年頃からのバブル景気が後押ししたこともあり、ボジョレー・ヌーボーブームに火が付き始めました。
また、1987年に「第4次ワインブーム」が巻き起こると、ボジョレー・ヌーボーだけでなく、高級ワインなどもよく売れるようになっていきました。1990年代後半には本格的な赤ワインブームが到来し、以来すっかり日本に定着したワインになりました。
3-2.ボジョレー・ヌーボーのキャッチコピーの力
ボジョレー・ヌーボーといえば目を引くキャッチコピーが毎年話題になっています。数あるワインの中でもボジョレー・ヌーボーほどキャッチコピーに力を入れているワインは他にありません。
キャッチコピーが毎年メディアに出ると、自然と消費者は「今年はどんな味わいなのかな」と購買意欲を掻き立てられるわけです。ここ数年では以下のようなコピーが話題を呼びました。
- 2018年:「2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう」「理想的な条件の下、すばらしいヴィンテージへの期待高まる」
- 2019年「天候などの条件は厳しかったが、有望で生産者のテクニックが重要な年」「バランスの取れた味で、適度な量と高い品質のワイン」
- 2020年:「極めて早い成熟と乾燥した夏による、究極のミレジム(ヴィンテージ)」「非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり」
- 2021年:「挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー」
2022年はどんなキャッチコピーが生まれるのか、気になるところです。
3-3.最速!本国よりも早く味わえる解禁日の妙
日本では日付変更線の関係上、ボジョレー・ヌーボーの生産地であるフランスよりも約8時間早く楽しむことができます。そのため、「本場フランスよりも早く味わえる」というポイントに惹かれる方も多いようです。
3-4.「初物」を好む日本人の価値観に沿う文化
日本人はワインだけでなく、マグロの初競りや新米、新酒など、あらゆる食材で「初物」を好む傾向にあります。
その理由は江戸時代にまで遡ります。当時はその年初めて収穫されたものは生気に満ちあふれていて、初物を食べれば活力を得られて健康になると考えられていたのです。その名残からか、特に日本人は初物を好みます。
4.ボジョレー・ヌーボーのおすすめの楽しみ方
解禁日に一斉に乾杯して盛りあがるのはもちろんですが、普段の食事と合わせて楽しむのもおすすめです。ボジョレー・ヌーボーの選び方や、おすすめのおつまみなどを紹介していきます。
4-1.自分に合ったボジョレー・ヌーボーの選び方
先述したように、ボジョレー・ヌーボーには通常の「ボジョレー・ヌーボー」と、より品質の高い「ボジョレー・ヴィラージュ」、さらに品質の高い「クリュ・ボジョレー」 に分かれています。品質が高くなるに連れて値段も上がっていきますので、予算に合わせて選んでみましょう。
また、他の多くのワインと同じく、ボジョレー・ヌーボーも生産者によって味わいや香りのスタイルが大きく異なるのも面白いところ。スーパーなどでも見かける名門ワイナリー「ジョルジュ デュブッフ」「アンリ・フェッシ」だけでなく、個性豊かな生産者がたくさんいます。複数人で数本楽しむシーンなら、生産者ごとの飲み比べをしてみるのもおすすめ。
VV(ヴィエィユ・ヴィーニュ)という表記は、樹齢の長い古樹から造られたという意味合いです。VVは複雑味のあるアロマと奥行きのある味わいに仕上がることが多いので通向きともいえます。
4-2.ボジョレー・ヌーボーの最もおいしい飲み方
通常赤ワインは2、3年寝かせても問題なく、むしろ熟成を経て味わい深さが増すことが多いですが、ボジョレー・ヌーボーは基本的には熟成させず、その年に抜栓して飲むのがおすすめ。なぜなら前述したように、ボジョレー・ヌーボーはタンニンが少ないため熟成には不向きで、そのうえその年の収穫を祝う新酒だからです。
また、軽めの味わいとタンニンが少ないため、通常の赤ワインよりも若干冷やし目の温度帯(12~13℃)あたりがベスト。冷蔵庫でしっかり冷やして、飲む時間の15分程度前に室温に置いておくと、ちょうど良い温度帯になります。
開栓後は早めに飲み切るのが良いですが、瓶内の空気をしっかり抜いて冷蔵庫で保存すれば3日程度は美味しく飲むことができるでしょう。
4-3.秋の味覚と味わいたい!ボジョレー・ヌーボー
ボジョレー・ヌーボーは軽やかな味わいとフレッシュな飲み口から、さまざまなジャンルの料理と相性が良いです。定番のチーズやトマトソースベースのパスタはもちろん、焼き鳥や肉じゃが、鍋料理にもおすすめ。
以降では、ボジョレー・ヌーボーに合うおすすめレシピを紹介していきます。
簡単アイデアおつまみ「生ハムとカマンベールチーズのインボルティーニ」
ボジョレー・ヌーボーの軽やかな飲み口に合わせやすい前菜です。火を使わずにできるフィンガーフードなので気軽に簡単に作れるのもうれしいポイント。
- 材料:生ハム、カマンベールチーズ、黒胡椒
- 作り方:カマンベールチーズをカットして、生ハムで巻く。皿に盛ったら黒胡椒を上からかける。
家族で楽しめる「舞茸とベーコンのガーリック炒め」
秋の味覚である香り豊かな舞茸を、ベーコンの塩気とにんにくでいただくシンプルな逸品。意外かもしれませんが軽めの赤ワインときのこはとても相性が良いです。
- 材料:舞茸、ベーコン、にんにく、オリーブオイル
- 作り方:フライパンにオリーブオイルを入れ、粗みじん切りしたニンニクを弱火で炒める。適当な大きさに切ったベーコンと舞茸を手際良く炒めたら皿に盛り付ける。
旬をいただく「さつまいもと鶏もも肉の照り炒め」
同じく秋の味覚である「さつまいも」を使った料理です。ボジョレー・ヌーボーは和食との相性も良いのでぜひ試してみてください。
- 材料:さつまいも、鶏もも肉、醤油、砂糖、みりん、塩胡椒
- 作り方:さつまいもを適切な大きさにカットして耐熱皿に入れて電子レンジで加熱する。鶏肉は適当な大きさにカットし、塩胡椒をして小麦粉をまぶしたら皮目から中火で焼いていく。さつまいもを投入し、醤油、砂糖、みりんを入れて煮絡ませたら完成。
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おわりに
ボジョレー・ヌーボーは年々日本でも消費量は減ってきていますが、未だに根強い人気があります。それは和食とも合わせやすい軽やかな飲み口やフレッシュな味わいが日本人の舌に合っているからでしょう。今年の解禁日は11月17日です。ぜひボジョレー・ヌーボーを美味しいおつまみと一緒に楽しんでみてください。