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老後は安泰?老後2000万問題とは?なぜ資金が足りなくなってしまうのか。

老後は安泰?老後2000万問題とは?なぜ資金が足りなくなってしまうのか。
セゾンのくらし大研究 編集部

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老後の資産不足に不安を抱いている人は多いのではないでしょうか。特に、数年前にメディアで「老後2000万円問題」が取り上げられた時からそのような傾向が強くなったと思います。この「老後2000万円問題」とは、金融庁の「市場ワーキング・グループ」の試算を発端に物議が醸された問題で、その内容は「老後20〜30年間で約1300万円〜2000万円が不足する」というものでした。

たしかにこの試算のとおりになるとするならば、私たちはそういった資産不足の事態を避けるべく、対策をしていく必要があります。そこで今回、「老後2000万円問題のとおり本当に資産は不足してしまうのか」、また「そうならないために私たちに出来ることは何なのか」など解説します。

老後2000万円問題が起こる原因

まず老後2000万問題が取り沙汰されているのか確認していきましょう。

平均寿命の延び

老後2000万円問題が起こる原因の1つ目として、「平均寿命の延び」があります。人生100年時代といわれている現代ですが、簡易生命表(令和2年)によると、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳となっています。前年と比べ男性は0.23年、女性は0.29年延びています。男女ともに年々寿命が延びており、そう考えると必要になってくるお金も増えていきます。そのため平均寿命の伸びが老後2000万円問題の原因の1つとなっているのです。

退職金の減少傾向

老後2000万円問題の原因の2つ目は、「退職金が減少傾向にあるから」です。厚生労働省の「就労条件総合調査」によると平均退職給付額について、1997年は2,871万円だったものが、2018年では1,788万円になっており、20年前に比べ1000万円以上退職金が減っています。退職金は老後の資産として考えている方も多いと思われますが、この傾向を考えると老後の資産としてあまり退職金をあてにせず、資産形成のための努力をすることが必要になってきています。

働き方の多様化

老後2000万円問題の原因の3つ目は「働き方の多様化」です。近年は大転職時代ともいわれており、1つの会社に勤めあげるのではなく、転職しながらキャリア形成をする方や、フリーランスとして働く方も増え、働き方が多様化しています。そのため退職金を受け取ることが出来る働き方をしない方も増えてきたため、老後2000万円問題が加速するのではないかという推測もいわれています。

老後2,000万円問題に対応していくために

老後2,000万円問題に対応していくためには、収支バランスの管理を徹底し、限られた収入のなかで、いかに上手くやりくりするかが大切になってきます。

収支管理の習慣を付けておく

まずは、収支管理の習慣を付けるということが大切です。老後は現役の社会人時代のように、働いて稼ぐということが少なくなってきます。基本的には年金をメインの収入として暮らす方が多いため、そうなってくると収入が多くならない以上、支出を減らすことで対応することが非常に重要になってきます。

そうなったとき、現役社会人時代に浪費癖などがついてしまっている状態であると、老後苦労することになります。そもそも収入よりも支出が大きくなるからお金が足りなくなるわけで、支出が収入よりも少なくなれば、最低限の備えでも対応できるかもしれません。

老後以外の収入源を別で作る

老後に年金しか収入がない場合は支出を減らすことが先決です。しかし、老後の収入が増えればその分余裕が出てきて、貯金にもお金を回せるようになり、老後2000万円問題の解決にも近づきます。特に副業といっても、老後もコンスタントに収入が入ってくるような副業をおすすめします。

例えば、アルバイトなどで働き続けることは、高齢の身体には厳しくなってくることも多くなると思います。副業にも色々ありますが、特に老後でも身体の負担なくできるものとして投資がおすすめです。投資については具体的に次の項目で説明します。

投資で長期的な資産を形成など

投資で長期的な資産を形成することが老後の資産形成で特におすすめの手段です。特に、若いうちから少額でも良いので投資を始めることが大切です。

なかには老後不安をあおって、不要な投資、保険に勧誘されるケースも多いです。そういった勧誘に惑わされないように、若いうちから投資の知識をつけておき、老後に貴重な資産を浪費しないよう対策しておきましょう。

ただし、投資だけで老後2000万円問題は解決しようとは考えずに、収支管理やその他の収入源を増やすなど、他の対策と組み合わせながら活用していくことも大切です。特に、投資の知識のない初心者の方の場合、いきなり株やFXなどに手を出すのではなく、投資信託から始めることをおすすめします。投資信託では、プロが代わりに運用してくれるので、初心者の方に向いています。特に、NISA・つみたてNISAのもとで始めるのが良いでしょう。

老後2000万円で足りるのかシミュレーション

金融庁が試算した老後2000万円問題は、あくまで高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)を対象としたものです。それではその他の暮らし方をしている場合はどうなるのでしょうか。

老後を定年退職(60歳)から働かずに過ごす時間とします。平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳であるから、男性は21年ほど、女性は27年ほど老後があることになります。そこで今回は、老後が最低20年と考えて、最低限必要な金額として算出していきます。

また、老後には介護の費用が発生する可能性が高いです。生命保険文化センターの調べによると、介護にかかる費用は月々78,000円、期間は4年7ヵ月となっています。これをもとに計算すると、78,000円×55ヶ月=約430万円かかることになります。こちらも加味して算出していきます。

単身サラリーマン(男性)だった場合

家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支』によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の月々の可処分所得は112,649円であり、消費支出は139,739円だということが分かります。ここから考えると、毎月の27,090円の赤字だと考えられます。

20年に換算すると、27,090円×20年=約650万円ほどの貯蓄が必要だということになります。それに加え、介護費用430万円を足すと、1,080万円かかります。これだけ見ると「老後2000万円もいらないのでは」という気がしますが、実際には葬儀やその他のさまざまな出費が考えられます。

また、もっとゆとりのある老後生活を送りたいという場合は、その分上乗せでお金が必要になります。そうすると2,000万円ほどではなくとも、最低限1,080万円+αで貯蓄をする必要があると考えられます。

夫婦のどちらかが働いていた場合

続いて、夫もしくは妻のどちらかがずっと片働きだった場合について考えていきます。もし平均標準報酬43.9万円で40年間働いた場合、受け取れる年金受給額は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む一般的な年金額として月額219,593 円となります。(参考:平成 31 年度の年金額改定について

また、『家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支』によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の月々の消費支出は239,947円だということが分かります。

ここから考えると、毎月の20,354円の赤字だと考えられます。つまり、20,354円×20年=約488万円ほどの貯蓄が必要だということになります。ここに介護費用430万円×2名分=860万円を足すと、少なくとも1,348万円の貯金は必要ということになります。

ちなみに、上記は平均的な支出金額で算出した場合です。もし、夫婦でゆとりある老後生活を送ろうとすると、月々36.1万円必要といわれています。(参考:老後の生活費はいくらくらい必要と考える?

もしこの金額で考えると、219,593円-361,000円=141,407円が月々の赤字となります。141,407円×20年=約3,393万円と、介護の860万円を足し合わせると、4,253万円になります。老後ゆとりある生活を送ろうと考えると、4,000万円以上の貯金が必要になると考えられます。

夫婦共働きだった場合

次に、夫婦が共働きだった場合について考えていきます。もし平均標準報酬43.9万円で40年間働いた場合、受け取れる年金受給額は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む一般的な年金額として月額309,554円(厚生年金(基礎年金含む):154,777円×2人分)となります。

そして、『家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支』によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の月々の消費支出は239,947円だということが分かります。

ここから考えると、毎月69,607円の黒字だと考えられます。先ほど同様、ゆとりある生活を目指す場合で考えてみると、309,554円-361,000円=51,446円が月々の赤字となります。51,446円×20年=約1,235万円と、介護費用430万円×2名分=860万円を足すと、2,095万円近くの貯蓄が必要ということになります。

さて、3パターンにて老後2000万円問題のシミュレーションをしてみましたが、必ずしもこのパターンに当てはまらないケースも多いと思います。人それぞれ年収や環境など異なるからです。そのため、自分自身の今の過ごし方と年収、将来もらえる社会保障などから自分自身にあったシミュレーションをすることが大切です。それによって老後2000万円問題への対策をすべきなのかが見えてくるでしょう。

他国における老後資金問題

老後2000万円問題は日本国内の問題ですが、海外でも同じような老後問題はあるのでしょうか。まずアメリカでは、401(k)という年金プラン加入者1,000人(25〜70歳)を対象に行なった調査によると、平均170万ドル(約1億9,550万円)の老後資金が必要だと考えていることが分かっています。日本の老後2000万円問題よりも圧倒的に多い金額になりますが、実際にここまで用意できる方は多くないようです。そして、老後資金で長く生活ができない場合は、引退せずに働き続けるという選択をしているアメリカ人も多いようです。(参考:アメリカ人は老後資金はいくら必要だと考えているのか?

また、北欧の福祉大国でもあるスウェーデンでは、老後の生活費に対する備えとして1位が「個人年金」、2位が「債権/株式、投資信託」ということで、投資にも積極的な姿勢が感じられます。そして、スウェーデンでは、貯蓄や資産の満足度で、充分だと感じている方の割合は70%以上になっています。日本のように老後の資産に不安を抱いている方が少ないことが分かります。

一方日本人は、老後の生活費に対する備えとして、1位「預貯金」、2位「何もしていない」ということで、老後も継続して収入を得ようという姿勢の違いが老後資産の不安に、ひいては老後2000万円問題につながっているのかもしれません。北欧のように、投資などで自分自身で老後も収入を得ることができるよう準備することで、老後資産への不安も改善されるのではないでしょうか。(参考:内閣府資料より

おわりに

さて、今回は老後2000万円問題について解説させていただきました。まとめると、人によって生活環境は異なるので、老後資産が不足額についても変わってくるということです。また、老後資産の不安をなくすには、北欧諸国などのように、投資などで老後資金への準備をすることです。

とにかく老後2000万円問題などのメディアのあおりをそのまま真に受けて一喜一憂するのではなく、まずは自分自身の現状を踏まえてどうなのかを考えることが大切です。自身の状況では、老後資産が不足するかどうか、不足する場合の金額、有効な対策などを収支のシミュレーションをしてみたうえで考えて早めに準備していきましょう。

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