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最近話題の「NFT」って何?

最近話題の「NFT」って何?
正木 伸城(記事を編むライター)

執筆者

記事を編むライター

正木 伸城

15,000冊超の読書で得た知識を武器に生活やビジネス上の出来事を言葉にし、思想的に深堀りする記事を編むのを得意としているライター。その他、マーケターやフリーランス広報なども生業にしている。「社会的弱者の方の声を聴診器のようにして聞いて、自身が拡声器となってその声を社会に広げる」が自身のテーマ。

最近、テレビやSNSなどで「NFT(エヌエフティ―)」という言葉が話題になっています。特に、2021年3月に、アーティスト・Beeple(ビープル)氏の作品『Everydays:The First 5,000 Days』が6930万ドル(約75億円)もの金額で落札されたというニュースに触れた方は、少なからずいらっしゃるでしょう。同氏の作品は、5000日間作成し続けたデジタルアートをつなぎ合わせて(コラージュして)1枚のデジタル絵画にしたものです。この第一報が流れた時に、「NFTって何? なぜ、そんなに高い金額で値がつくの?」と疑問を抱いた方もいるかもしれません。 

とはいえ、NFTといっても「何となく難しそう」ということで理解を敬遠している人も多いはず。ここでは、そんなNFTについて解説します。  

1.デジタルは元データとコピーの区別がつかない 

デジタルは元データとコピーの区別がつかない
元データ
デジタルは元データとコピーの区別がつかない
コピーデータ

みなさんの多くは、パソコンなどで「コピー&ペースト」(コピーとは文字やデータを写すことで、ペーストは写した文字やデータを貼り付けることです。)の作業をしたことがあるでしょう。デジタルデータはこれまで、オリジナルのデータも、それをコピーしたデータも、まったく同じものになっていました。たとえば、有名な絵画をスキャンしたデータがインターネット上にあるとします(「モナリザ」などの絵を想像してみてください)。もしあなたが、そのデータをコピー&ペーストできれば、新しいデータは元のデータと同じデータになり、区別はつきません。 

これは、NFT誕生以前のデジタルアートにもいえました。もし仮に、あるデジタルアーティストが汗水たらして作成したデジタルアートを、あなたがコピー&ペーストしてしまったとしましょう。すると、その後はどちらがオリジナルの作品データだったかを判別することはできません。そしてそのコピー作品がさらなるコピー&ペーストでネット上を駆け巡ってしまったら……作品はあっという間に広まって認知されはしますが、作品のオリジナルデータは急速に「ありふれたもの」になり、価値が下がってしまいますし、誰もが作品のオリジナルデータの所有者になることができてしまいます(なぜなら、どれがオリジナルなのか区別がつかないからです)。 

ところが、今回ご紹介するNFTという技術を使うと、こういった問題が解消されます。NFTにできることは主に2つです。 

  • デジタルデータのオリジナルの所有者を明確にできる 
  • デジタルデータの希少性を守ることができる 

順を追って説明しましょう。 

2.オリジナルのアートに価値があるのは希少だから

オリジナルのアートに価値があるのは希少だから

先ほどBeeple氏の作品が約75億円で落札されたという話をしましたが、そもそもリアルなアートでも高額取引は行われています。特に、オリジナルであればあるほど -たとえば原画など -価値は高まります。 

なぜ、アート作品は高額で取引されるのでしょうか。キーワードになるのは「希少性」です。つまり、この世に限られたものしか存在しないアート作品は、値段が高くなるということです。一点ものであったり、最初の作品となると、他には替えられないものなので希少性も高く、価格もつり上がります。たとえば、仮に『モナリザ』の原画がオークションに出品されたとしましょう。おそらくその絵には幾億円、幾十億円という値がつけられるはずです。ですが、一方で、『モナリザ』を複製したものやコピーをしたものには、当然ながら、同じほどの値段はつきません。また、絵画というと、贋作、つまり精巧な偽物が作られることもありますが、こちらも贋作だと判明したところで価値は暴落します。 

なぜ、そうなるのでしょうか。やはり、元の、オリジナルなものに希少性があるからです。贋作の中には、作家の魂が込められたような、時代を超えて人々を魅了したものもありますが、やはり原画の価値には及びません。“コピー”された絵は、希少でないがゆえに、価値が低くなるのです。 

リアルなアートでさえこうですが、デジタルとなるとどうなるでしょうか。デジタルデータであれば、先ほども述べたとおり手軽にコピーができます。コピーのコピーも簡単に複製できます。しかも、コピーのコピーとオリジナルデータはやはり変わりません。「オリジナルか、コピーか」を区別する意味がないのです。すると、コピー作品の価値が低いのはもとより、元のデータも区別がつかないがゆえに価値が下がってしまいます。NFT以前には、このようなことが起こり得たのです。それゆえに、作品をネットに出す時には、複製されないようなデジタル上の工夫が幾重にも施されていました。映画や音楽の配信サービスがコピー防止機能を入れているのをご存じの方もいるでしょう。 

3.オリジナルとコピーを区別する仕組み 

オリジナルとコピーを区別する仕組み

そんなデジタルの世界に、オリジナルとコピーを区別する仕組みとして登場したのがNFTです。 

これまでは、デジタルデータに著作権は持たせられるものの、「この作品の唯一の所有者は私である」ということを証明することはできませんでした。繰り返しになりますが、理由は「オリジナルとコピーの区別ができなかった」からです。 

ところが、NFTは、オリジナルデータがどこにあるかを常に指し示してくれます。NFTは、オリジナルがこの世界のどこに保存されているのかを記録する仕組みです。イメージ的にいえば、いま現在、オリジナルのデータを持っている人に「オリジナルを所有している証明書」が印づけられるようなものです。しかも、NFTは「ブロックチェーン」という技術を用いて改ざんができないようになっています。デジタル上の「コピー」というと、所有の証明書すらコピーできてしまいそうですが、それを防ぐのがブロックチェーンです。 

ブロックチェーンという単語については、仮想通貨などの話題を通じて聞いたことがある方もいるかもしれません。なぜ、この技術だと改ざんができない(非常に困難な)のでしょうか。ブロックチェーンを理解していただくのに助けとなるのは、「帳簿」のイメージです。ブロックチェーンは取引履歴を記録するもので、たとえば「ビットコインがA口座からB口座へいくら送金された」という最初の取引から、いまこの瞬間のリアルタイムのものまで、全ての取引が記録されています。いわば、巨大な帳簿なのです。しかも、この帳簿は、ビットコインを使っている世界中のコンピュータに瞬時にコピーされ、常に更新されます。そのため、誰かが目の前のパソコンでブロックチェーンのデータを書き換えても、他に膨大にあるデータとは違うことが判別され、すぐに修正されます。このため、ブロックチェーンを使ったデータも、またNFTも、書き換え・改ざんができないのです。 

4.NFTの市場規模と今後 

NFTとは、「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)」の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」と訳されます。これまでの記事内容を踏まえれば、「非代替性」とは、オリジナルとコピーが代替できない性質という意味になります。また、「トークン」という語も聞きなれない単語かもしれませんが、こちらは国が定めた法定通貨の「代用硬貨」という意味です。広い意味でいえば、電車の切符や回数券、電子マネーや地域振興券などがお金の代用になるので、トークンということになります。 

このようなNFTによって、デジタル上のデータ、たとえばデジタルアートなどの所有権をハッキリさせ、希少性を守ることができるようになりました。そのため、データのオリジナルに価値が出るようになり、NFTのアートが高額で取引されるようになったのです。 

ちなみに、NFTとして販売されているものは何も美術作品だけではありません。デジタルであれば何でも扱えます。音楽や電子書籍、あるいは仮想空間の不動産(=オンラインゲームの中の仮想空間の土地)、ドメイン(=インターネット上の住所のようなもの)などもNFT化してすでに販売されています。 

NFTは現在、市場規模を急速に拡大しています。NFTは、2018年には日本円で300億円ほどの規模でしたが、2020年には約3億3803万ドル(約2兆円)と、市場を急拡大しています。2025年には800億ドル(約9兆1,000億円)以上になるとの予測もあります。 

まさに指数関数的に拡大している市場ですが、今後、NFTという言葉はさまざまなところでさらに聞かれることになるでしょう。その市場動向も含め、ぜひ意味を押さえておきたいところです。 

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