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「IoT」家電で生活はこんなに便利になる

正木 伸城(記事を編むライター)

執筆者
正木 伸城(記事を編むライター)

15,000冊超の読書で得た知識を武器に生活やビジネス上の出来事を言葉にし、思想的に深堀りする記事を編むのを得意としているライター。その他、マーケターやフリーランス広報なども生業にしている。「社会的弱者の方の声を聴診器のようにして聞いて、自身が拡声器となってその声を社会に広げる」が自身のテーマ。

「IoT(アイオーティー)」という言葉を近頃よく耳にするようになりました。IoTとは「モノのインターネット」といわれていて、ニュース等でも取り上げられるようになりましたが、その意味については、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。じつは、IoTはすでに私たちの生活を大きく変えており、その影響を与えています。近年、注目を集めているDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進においても、AIやビッグデータと並ぶ重要な要素になっています。ここでは、そんなIoTについて解説します。 

1.IoTとは何か 

IoTは「Internet of Things」の略で、再度の確認になりますが「モノのインターネット」と訳されています。IoTは、インターネットを経由してモノ同士が通信し合うことを意味します。 

IoTという言葉ができる以前のインターネットは、コンピュータ同士を接続するためのものでした。そのため、従来であれば、インターネットでつながるのはパソコンやサーバーといったIT関連機器がメインでした。しかし、現在はスマートフォンやタブレット端末・モバイル端末はもとより、テレビ、デジタルカメラ、スマートスピーカー、さらには電子レンジや冷蔵庫、自動車までもがネットワークでつながる時代になっています。たとえば、デジタル情報家電をインターネットに接続する流れは今後も加速していくことは間違いないでしょう。 

このように、さまざまなモノがインターネットによってつながり、情報をやりとりする状況が生まれています。その「モノをつなぐこと」を「IoT」と呼ぶのです。 

じつは、IoTという言葉が広まる以前にも、「M2M(Machine to Machine〈マシーン・ツー・マシーン〉)」という、モノ同士を接続する手法はありました。こちらも、人間の介在なしに機器同士がコミュニケーションをして動作するシステムのことを指します。ただし、M2Mが機械のセンサーネットワークなどで相互にやりとりをするのに対し、IoTはインターネットを経由して通信をします(M2Mはインターネットに接続しません)。M2Mは、センサーネットワーク同士をつなぐネットワークがなかったりしますが、インターネットは「ネットワークのネットワーク」が構築されているため、より開かれたやりとりも可能です。IoTはモノ自体が通信機能を持っていて、インターネットによって送受信することができるのです。 

2.IoTによって私たちの生活はどう変わる? 

IoTが進むことによって、インターネット上の情報も変わってきています。従来であれば、ネットにあるデータの多くは、人間がパソコン等を使って入力したものでしたが、現在はモノに取りつけられたセンサーが感知したデータも、人手を介さずにインターネット経由で送受信できるようになっています。センサーは、人間が「見たり」「聞いたり」「触れたり」することができる情報、あるいは人間が感じ取れないような情報ですらも数値化して収集可能なものにします。これによって、ネット上には、それこそ「ビッグデータ」と呼ばれるような、解析に充分なほどの情報がたくわえられるようになりました。 

さて、では、IoTが生活に浸透していくと、私たちの日常はどのように変化するのでしょうか。 

たとえば、IoTの家電や住宅設備に向かって音声で指示を出すだけで、それをセンサーが感知し、一斉に機器を起動させる、なんてこともできるようになります。朝起きたときに、「おはよう」と声をかけるだけで、カーテンが開き、エアコンが作動し、湯沸かしが始まって、テレビではニュースや天気予報が流れ始める、といった環境をつくることも可能です。  

また、別の例を出しましょう。最近では「スマートロック」という、スマートフォンなどの電子機器で開錠や施錠を行う鍵が登場し、すでに使われ始めています。スマートロックを使って家の鍵を開ければ、アプリなどを経由して、誰がいま帰宅したかが他の家族に分かります。これは、子どもの帰宅情報などを確認するのにも便利です。また、鍵の開閉状況も分かるため、鍵の閉め忘れ防止にも役立ちます。あたかも、ネットを経由してドアがあなたに「いま、ドアが開いています」と語りかけてくるようなものです。さらには、仮にスマートロックと家のエアコンを連動させているのなら、帰宅した瞬間にエアコンのスイッチがオンになるといった環境設定を行うこともできます(もちろん、家の外からスマートフォンでエアコンを入れるといった操作もできる時代になっています)。 

IoTというとよく引き合いに出されるのが、人感センサーでスイッチが切り替わる照明機器や帰宅時間に合わせて空調を整える技術ですが、このようにモノ同士がネットワークでつながることで、相乗効果的に便利な生活環境が実現できます。そして、これら以外にもたくさんのIoTの事例が日々生まれています。 

3.いまIoTが求められている理由 

このようなIoTですが、市場規模の急拡大にはすさまじいものがあります。IT専門調査会社・IDC Japanの『国内IoT市場 産業分野別予測、2021年~2025年』は、国内IoT市場を対象にした調査ですが、同調査によれば、IoT市場におけるユーザーの支出額は、2025年には10兆1902億円に達するとされています。年間平均成長率は、なんと10.1%にも及ぶと見込まれているのです。 

では、なぜこれほどにIoTは求められているのでしょうか。 

一つには、日本の急激な人口減少・少子高齢化が挙げられます。労働人口が急速に減っているなかで、ビジネス競争は激化している。そんなビジネスシーンの生存戦略として、業務効率化を推進する目的でIoTの導入が進んでいるのです。 

また、IoTが求められる要因をもう一つ挙げるとすれば、やはり技術の急速な進歩が挙げられます。センサーが小型化する一方で、コストパフォーマンスは向上し、無線通信技術も発展しています。Wi-Fi環境もアップデートされてきていますし、昨今では通信が「5G」に移行・台頭してきています。 

これによって、家のなかにある多くの設備がインターネットに接続されている状態を指す「スマートハウス」であったり、道路の混雑状況を逐次把握して効率的な走行を可能にする自動運転システムなどがより高精度で実現できるようになります。IoTは今後、こういった私たちの身近な生活環境だけでなく、医療の現場の生体データの連携や物流・生産の効率化、空港での設備管理、農業の作物状態管理等、さまざまな領域でさらなる活躍をしていくでしょう。 

以上、IoTについて概説をしてきました。IoTはまだまだ大きな可能性を秘めた市場です。技術も発展し続けます。私たちがより快適で、便利な生活を享受するためにも、よくチェックしていきたいですね。

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