歳を重ねると、体力や筋力に衰えを感じることもありますよね。人生100年時代を迎えようとしている今、自らの足でいつまでも健康的に歩くためには、運動習慣を持つことが大切です。高齢期の健康や、生活維持のためにおすすめなのが、ダンスを趣味にするということです。音楽やリズムに合わせて踊るダンスはとても楽しいものです。今回のコラムでは、60代からの「人生が楽しくなる」をテーマに、ダンスの魅力やシニアの方に向いているダンスのジャンルを紹介します。
1.ダンスを趣味にするメリットは
趣味というのは、自身のやりたいことや、得意なことと照らし合わせながら選んでいく方も多いでしょう。しかし、趣味を通してプライベートや仕事を充実していきたい場合は、「生活習慣病を予防したい」「運動不足の解消・体型維持を目指したい」「定年後も多くの人とつながりを持ちたい」など、目標から逆算して趣味を見つけることも必要です。
ここからは、ダンスを続けることで得られることや、メリットについて紹介します。
1-1.日頃の運動不足の解消
ダンスは全身を使った有酸素運動です。一定時間リズムに合わせて全身を動かすため、心肺機能の強化や、全身持久力、体力、筋力を高める効果が期待できます。「運動」と聞くと、つらいトレーニングなどを思い浮かべてしまい、継続することが難しいという可能性もあります。ダンスを趣味にすれば、身体を動かす運動習慣を無理なく生活の中に取り入れることができ、日頃の運動不足の解消をすることができるでしょう。
1-2.認知症の予防にも
ダンスは、認知症の予防にも有効な趣味の一つです。ダンスは頭と身体を使う運動であり、振り付けを覚えたり、リズムに合わせて身体を動かしたりすることは、脳の働きを活性化させます。ダンスを趣味にする人は、アルツハイマー型認知症の発症率が低いというデータもあります。こちらのデータによると、ダンスをよくする人は、ほとんどしない人に比べ、発症の危険度が4分の1程度になっています。
有酸素運動は脳への血流を促進し、高血圧の改善やコレステロールを下げる効果があり、このことが認知症の発症率に関係しています。高齢化が進み、認知症を発症する人も増えています。日ごろの生活の中で認知症予防のための生活習慣をいくつか取り入れることが大切です。ダンスは身体能力の向上にもつながり、いくつになっても活動的で元気な生活をおくるきっかけにもなってくれるでしょう。
【知的活動とアルツハイマー型認知症の危険度】
行動習慣 | 回答 | 危険度 |
チェスなどのゲーム | ほとんどしない | 1 |
よくする | 0.26 | |
文章を読む | ほとんどしない | 1 |
よくする | 0.65 | |
楽器の演奏 | ほとんどしない | 1 |
よくする | 0.31 | |
ダンス | ほとんどしない | 1 |
よくする | 0.24 | |
新聞を読む、 チェスのようなゲームをする、 博物館や観劇に行くなどの知的な行動 |
ほとんどしない | 1 |
よくする | 0.58 |
出典元:認知症予防・支援マニュアル
1-3.ダンスを通して交流が増える
ダンスは世代を超えて、さまざまな人と一緒に楽しめるものです。中学校でダンスは必修科目となりましたし、子どもや孫と共通の趣味として楽しむこともできます。ダンスが上達すれば、周りの人に披露したり、一緒に踊りたくなったりします。ダンスは、社会的交流の活性化につながり、色々な人と絆を深めるきっかけにできるでしょう。
1-4.身体を動かしてストレス発散
有酸素運動をすることで、脳内のセロトニンの分泌を活性化させることができます。セロトニンは幸せホルモンともいわれており、心のバランスを整える効果もあります。また、運動をすると、身体中の血流が良くなり、老廃物の排出もスムーズになるでしょう。ダンスはストレス発散にも効果があり、身体だけでなく心も健康に導くサポートをしてくれます。
1-5.人生にハリが出る
ダンスを趣味にすることで、仕事や家庭以外でのコミュニティを持つことができます。共通の趣味を通して気の合う友人を見つけたり、異なる世代の人たちとの交流をしたりすることは、自分自身にとっても良い刺激となってくれるはずです。
新しい趣味を持つことは、新たな経験を生みだし、ご自身の可能性を広げることにもなります。60代を過ぎてから「こんなこともできる!」という自信を持つことは、積極的に行動しようという気持ちにさせてくれ、ハリのある毎日を送るきっかけを与えてくれるでしょう。
2.シニアの方に人気なダンスは?おすすめのダンスのジャンルについて
ヒップホップダンス、社交ダンス、フォークダンス、フラダンス、ジャズダンス、日本舞踊、サルサ、フラメンコ、ベリーダンス、バレエなど、ダンスにはさまざまな種類があります。それぞれ曲調やリズムのテンポ、テーマなどが異なるので、振り付けや身体への負荷の掛かり具合はかなり変わってきます。どのジャンルのダンスを趣味にすれば良いか分からない方に向けて、シニアの方に人気なダンスやおすすめのダンスのジャンルについてご紹介します。
2-1.ヒップホップダンス
ヒップホップは、かっこいいを意味する「HIP」と、弾けるを意味する「HOP」を組み合わせた造語で、1970年代にニューヨークで生まれたといわれています。ヒップホップダンスに明確な決まりや踊りの型はなく、音楽・曲・ビートに合わせて自由に踊る、ポピュラーなストリートダンスです。 好きなように振付をし、思いのままリズムにのって踊ることができるので、ダンス初心者の方でも親しみやすいジャンルといえるでしょう。
ヒップホップといえば「若者向け」というイメージがありますが、50歳、60歳のシニアの方向けのダンス教室やレッスンも増えているようです。若い人と一緒に取り組んだり、同じような趣味を持ったりすることで、気持ちが若返り、フレッシュな毎日を過ごすことができそうです。
参照元:日経
2-2.社交ダンス
社交ダンスはペアで踊るダンスで、発祥は12世紀のヨーロッパの宮廷舞踊からといわれています。社交ダンスはシニア世代から高い支持を受けており、大人の趣味として人気があります。社交ダンスは一人ではできず、ペアが必須となるため、パートナーと絆を深めたり、友人を作ったりなど、人間関係の輪を広げることができるのが魅力的な部分です。
2-3.フラダンス
世界一美しいといわれるフラダンスは、ハワイ発祥の伝統舞踊です。南国ムードの音楽に合わせ、美しく優雅に踊るフラダンス。他のダンスのジャンルと比べると、テンポがゆったりとしているので、身体への負担も少ないです。また、性別や世代に関係なく始められるので、お孫さんと共通の趣味を持ちたいと思っている方にもおすすめです。
3.ダンス上達のコツとは
ダンスが上達し、スキルや表現の幅が広がると、踊ることがもっと楽しくなります。踊っている本人が楽しそうにしていれば、周りの人も笑顔になりますし、ダンスを踊る時間をより有意義なものにすることができます。
ここからは、ダンス上達のコツについて紹介しましょう。
3-1.自信を持って踊る
上手に踊れているか不安、ダンスが苦手で踊るのが恥ずかしい、そのように感じていると、どうしても一つひとつの動きが小さくなってしまいます。自信が持てず、動きが小さいまま練習を続けると、上達も遅くなってしまいます。
気持ち良く、楽しく踊るためには、まずは自信を持って堂々と大きく動くことが重要です。ライバルを昨日の自分だと思えば、周りの人よりもダンスが苦手でも、恥ずかしくありません。ミスを恐れずに、自信をもって踊る意識を持ちましょう。
3-2.楽しみながら踊る
「好きこそものの上手なれ」という言葉もある通り、好きなことであれば主体性が増して物事に費やす時間が増えたり、どうすればもっとうまくなれるだろうと熱心に努力をしたりするようになります。そもそも、ダンスが楽しくなければ、趣味としてダンスを続けることはできません。ダンスが上達したいならば、楽しみながら踊ることが大切です。笑いながら踊ったり、歌を口ずさみながら踊ったり、自身の好きな曲の振り付けを考えたりなど、ちょっとした工夫で、ダンスはより楽しいものになります。
3-3.できるだけ毎日練習をする
ダンスは経験をコツコツ積み重ねて、身体の使い方や感性を養って上達していくものなのです。また、ダンスの振り付けをかっこ良く踊るためには、基礎がとても大切になります。基礎となるダンスのステップ、技は5分〜30分でも良いので、できるだけ毎日練習をするようにしましょう。毎日身体を動かすことは柔軟性や基礎体力をつけることにもつながります。
4.ダンスをする続ける上での注意点
ダンスを趣味にする上で注意しなければならないのは、ダンスはケガのリスクがあるということです。高齢者の方の転倒は、大きなケガにつながることもあります。
ここからは、ダンスを長く安全に続けることができるよう、注意点について紹介します。
4-1.自身に合ったジャンルのダンスを選ぶ
一口にダンスといっても、その種類は実に多彩です。ゆっくりと踊るものだったり、アップテンポで激しい動きが要求されたり、自由に踊ることができたりとさまざまなスタイルがあります。自身に合うか合わないかは、ダンスを長く続ける上でとても重要になります。ダンスを趣味にする前に、どんなダンスがあるのか、周りの同じ年齢の人たちはどんなダンスに挑戦しているのかをチェックしてみることが大切です。
4-2.ダンスの前には入念にストレッチ
ダンスの前にストレッチを行うことで、身体の柔軟性を高めることができ、ケガの防止やダンスの表現の幅を広げることができます。ストレッチは、静的ストレッチと動的ストレッチの2つがあります。静的ストレッチとは、筋肉をゆっくりと伸ばし、伸展した状態を維持するストレッチで、筋肉を緩めリラックス効果があり、運動後におすすめのストレッチです。一方、動的ストレッチは弾みや反動を使い、身体を動かしながら行うストレッチです。血流を促進し、筋肉の柔軟性や可動範囲を広げることができるので、運動前のウォーミングアップに適しています。安全性を高めるためにも、ダンスの前後にはストレッチを入念に行いましょう。
4-3.こまめに水分補給をする
夏場のダンスは大量に汗をかき、身体の水分が失われます。そうすると、血液濃度が高くなり熱中症や心筋梗塞、脳梗塞などのリスクも増加します。ダンスで汗をかいたときは、こまめに水分補給をしましょう。運動をする時は、水分だけでなくミネラルや糖分などの栄養素が必要な場合は、スポーツドリンクなどを用意しましょう。
4-4.適度に休憩を挟む
身体が疲れていると集中力も落ちてきて、ケガなどのリスクも増加します。気分が乗らない時や身体がだるいときは、何らかの不調のサインになっているかもしれません。ダンス中は適度に休憩を挟むようにし、調子が悪いときは早めに切り上げたり別の日に改めて練習したりしましょう。
4-5.必要な道具を揃える
ダンスの服装は、ジャンルによってさまざまな特徴があります。そのダンスに合う服装を身に付ければ、気分も乗ってきますし、気持ちも引き締まり、自信を持ってダンスに挑戦することもできます。また、ケガを防止するためには、服装の機能性を意識することも重要です。動きやすい服装、滑りにくい靴、頭を守るための帽子なども安全にダンスを続ける上で必要です。他には、細かな振り付けや動きを確認するための全身鏡、ダンスの曲を再生する音楽プレーヤー、汗を拭うタオルなどがあると便利です。
おわりに
趣味を変えたり、有意義なことを毎日の習慣にしたりすることで、見える人生の景色も変わってくるものです。ダンスを趣味にすれば、楽しみながら脳も健康もいきいきし、今よりももっと楽しく、前向きに生きていくきっかけを与えてくれるはずです。60代を迎えると、さまざまな疾患にかかるリスクも高まっていきます。シニアの方が身体を動かす趣味を持つということは、若い頃とは違った、とても大きな意味を持つこともあります。これからの人生に向け、楽しみながら身体を動かすことができ、自身だけでなく周りの人を元気づけられるダンスのような趣味をひとつ作ってみてはいかがでしょうか?