近年、記録的な豪雨に伴う大きな水害が発生しています。ときには水害の被害が、車に及ぶこともあります。このコラムでは、車が水没したとき、どのような場合に保険が適用されるのかを解説します。保険を使うときの注意点や水没に備えた保険の特約についても併せて確認しましょう。
車両保険で補償される車の水没
2021年8月、西日本の広い地域で大雨による警報が発表され、広島や山口、九州の佐賀、福岡で土砂崩れや冠水など多くの被害が出ました。特に佐賀県武雄市では市内を流れる六角川が氾濫し、国土交通省と気象台は5段階の警報レベルのうち最も高いレベル5にあたる「氾濫発生情報」を出して、最大級の警報を呼びかけました。
主要幹線道路が冠水し、周辺の店舗や住宅の駐車場にあった自動車は屋根まで水没、または流されてしまうという大災害でした。自動車が水没してしまうと、修理には費用も時間もかかります。今や災害はどこにいても起こる可能性があり、誰もが備えておくべきだといえるでしょう。
自動車の水没を補償してくれるのが車両保険です。車両保険は大雨や洪水、ゲリラ豪雨といった災害による自動車の水没も補償します。自動車は地域によってはなくてはならない生活手段でもあります。災害により自動車が被害を受けた場合でも早く元の暮らしに戻れるよう、車両保険の内容をきちんと把握しておくことが求められます。
車の修理を補償する3つの車両保険
自動車の修理費用を補償する車両保険は3種類あり、補償内容は異なります。車両保険に入っていても、補償の範囲外でいざというとき補償を受けられなくては意味がありません。
ここでは、3種類の車両保険の特徴と補償内容について解説します。これを参考に、今加入している車両保険が、水没による被害も補償されるのかどうか、しっかり確認しましょう。
一般条件の車両保険
車両保険で一般的に必要な補償を備えているのが、この一般条件の車両保険です。3種類の中で最も補償範囲が広く、次のような条件での損害を補償します。
- 飛来中または落下中の物との衝突
- 台風や竜巻、洪水、高潮
- ひょうやあられ
- 火災
- 他車との衝突や接触
- 落書きやいたずら
- 盗難
- 当て逃げ
- 転覆や墜落
- 単独での事故
- 自転車との接触
含まれていないのは、地震や噴火、津波くらいで、その他日常生活で起こりそうな損害のほとんどがカバーされています。水没も上記の2に該当する補償内の災害です。
エコノミー保険
エコノミー保険は、一般条件の車両保険より補償が少なく、その分保険料が安い車両保険です。次のような損害について補償が得られます。
- 飛来中または落下中の物との衝突
- 台風や竜巻、洪水、高潮
- ひょうやあられ
- 火災
- 他車との衝突や接触
- 落書きやいたずら
- 盗難
水没はしっかりカバーされており、加入していないよりはずっと安心できる補償内容だといえます。しかし、運転中に起こる単独での事故や自転車との接触が含まれないのはやや不安に感じるかもしれません。車の往来の多い地域で暮らすなら、当て逃げも心配です。
そのため、エコノミー保険は車に乗る頻度が少ない方には適した車両保険だといえるでしょう。
車対車の車両保険
車対車の車両保険は、他の自動車との衝突や接触といった事故に限定し補償するものです。その分保険料も安い傾向がありますが、大雨など自然災害による損害は補償されません。火災や盗難、当て逃げ、単独事故の補償もないので、あまり安心できないという方も多いでしょう。
車の水没で車両保険を使うときの注意点2つ
災害による自動車の水没が補償される車両保険を使うときは注意しておきたい点が2つあります。1つは補償されないケースがあることで、もう1つは保険を使うと保険料が上がることです。
万が一、車両保険を使うときにはこれらの注意点をしっかり理解しておく必要があります。以下で車両保険を使うときの注意点を詳しく解説します。
補償されないケースがある
自動車が水没した場合、補償されないケースがあることには注意が必要です。補償されるのはすべての水没ではなく、一定の条件を満たす水没に限られます。これらの条件についても正しく把握しておくことが大切です。
ここでは補償されない水没のケースを2つ紹介します。どちらも十分あり得るケースなので、補償されない理由も併せてしっかり理解しておきましょう。
【ケース1】地震が原因の津波による水没
一般条件の車両保険でも、地震による損害は補償の対象外とされています。地震は広範囲かつ甚大な被害をもたらす可能性があることから、保険料の算定が困難であるためです。
2011年に発生した東日本大震災では、津波によって多くの自動車が水没しました。しかし、このような地震を起因とした自動車の水没については、補償の対象外です。
また、火山の噴火による自動車の損害も、車両保険では補償されません。
【ケース2】運転者の不注意による事故での水没
運転者の不注意による事故で水没してしまった場合は、補償の対象外です。たとえば最低限の街灯しかない道を深夜に走っていたら、急カーブを曲がりきれず、先の川に転落してしまったというケースは、補償されない場合があります。これは補償内容の分類でいうと「転覆や墜落」および「単独事故(自損事故)」です。一般条件の車両保険では補償の対象ですが、エコノミー型保険では多くの場合補償対象外となってしまいます。つまり車両保険では補償されない場合があるのです。
ただし「ゲリラ豪雨で視界が悪かった」というような災害が影響しているケースでは、保険会社が詳細を調査し、補償するかどうかが変わる可能性はあります。
保険の等級が下がり保険料が上がる
水没による被害を補償してもらうために車両保険を使うと、保険の等級が下がり、保険料は上がります。洪水や大雨での水没の取り扱いは「1等級ダウン事故」です。保険を使うと等級は1つ下がり、割引率が下がるため以前より高い保険料を支払うことになります。
水没ではなく、車同士の事故や人身事故ほどの深刻な事故であれば「3等級ダウン事故」として、等級も3つ下がり、保険料もかなり上がります。災害による損害の場合は、それほどではなくても保険料が上がることはしっかり覚えておきましょう。
水没した車の買い替えがおすすめな理由2つ
車両保険で水没した自動車は修理できるとしても、修理には高額な費用がかかる場合があります。電気系統に異常がある、またはエンジンが動かない、シートまで水に浸かってしまったとなれば、修理費用が100万円を超えることも考えられます。また、たとえ修理してもらって大丈夫だと思っていても後で問題が発覚するかもしれません。
そのため、水没した自動車は修理より「買い替え」がおすすめです。ここでは買い替えをおすすめする理由を2つ解説します。
気づかぬうちにトラブルが発生している可能性がある
自動車が走るためにはエンジンが必要ですが、エンジンは燃料のガソリンをタイミングよく爆発させて動力を得る機械です。もし水没によって何らかのトラブルが発生しており、はじめは異変を感じていなくても、ある日突然発火する可能性は十分あります。
しかも異変が起こるまで、長い時間がかかることも考えられます。電気系統の部品が徐々に傷み、ある日突然動かなくなるかもしれません。修理をして外見は元どおりになったとしても、内部が損傷している場合がある点が水没車の恐ろしいところです。
水没した自動車は別の自動車に買い替える方が安心です。買い替えが難しければ、せめてディーラーや専門の工場で一度詳しく点検してもらうと良いでしょう。
部品が腐食すると車の価値が下がりやすい
一般に水没車は、自動車としての価値が大きく下がるといわれています。それは水没することで部品が腐食してしまうためです。特に海水による浸水で水没してしまった場合は、塩分により部品が腐食しやすくなります。
自動車としての価値がなくなっても、部品だけを買い取ってもらえる可能性はあります。しかし、買い替えずに長期間使っていれば腐食は進み、価値は下がっていくでしょう。水没してしまうと自動車を買い取ってもらえる可能性が低いため、早めに買い替えることをおすすめします。
買い替えできない事情があれば仕方ありませんが、水没してしまった自動車は数年後買い換えるときに下取りや買い取りに出すのが難しいことは理解しておきましょう。
車の水没におすすめの特約
車両保険で、すべての自動車の水没について補償を得ることはできません。しかし、保険には、基本となる保険契約に付加して効力を発揮する特約という仕組みがあります。車両保険でも、 通常では 補償されない損害に備えるため、特約を付加することは可能です。
特約には通常、別途保険料が発生します。必要な補償なら保険料とのバランスを考えて、付加することを検討する価値はあるでしょう。
ここでは車両保険に付加できる特約を3つご紹介します。保険会社によって名称が違うかもしれませんが、重要なのはその内容です。車両保険を選ぶときは特約の内容についてしっかり確認しましょう。
買い替えに備える車両新価保険特約
車両新価保険特約は、新車で購入した場合におすすめの特約です。通常の車両保険では契約後1年以内の水没で購入時とほぼ同額を上限とした保険金が支払われますが、年数が経つにつれて金額は下がります。もし3年目に水没し、全損となったとするとおおむね1年目の6割が支払われる程度です。
ところが車両新価保険特約を付加しておくと、5年間はずっと、1年目と同額の保険金額が補償されます。さらに多くの保険会社が支払いの条件を「全損になった場合または修理費が新車価格相当額の50%以上となった場合」としているため、新車に買い替えることもできるでしょう。
ただし、この特約は新車購入からおおむね5年以内でしか付加できないことに注意しましょう。
高額な修理費用に備える車両全損修理時特約
車両全損修理時特約は、今の自動車が新車登録から5年以上経過している場合におすすめの特約です。この特約を付加していれば、車両保険による通常の保険金に、さらにプラスアルファの費用が支払われます。
例えば時価相当額が40万円の自動車が水没し、修理費がその他の費用など合わせて60万円必要な場合を考えましょう。通常は全損でも支払われる保険金は最高でも40万円です。しかし、この特約があれば、あらかじめ定められた上限金額を上乗せした保険金を受け取ることができます。
自動車が水没した場合、高額な修理費が必要です。また買い換えるにしても多額の費用が必要です。車両全損修理特約は、新車ではない自動車が水没に備えるにはぴったりな特約だといえます。
自然災害に備える地震・噴火・津波車両全損時一時金特約
この特約は、通常の車両保険では補償の対象外とされる地震や津波、噴火による損害も補償します。自動車が全損した場合、最大で50万円までの一時金が支払われます。上限50万円という金額は物足りないかもしれません。しかし、通常の車両保険だけでは新車でも地震による全損では保険金が支払われないことを考えれば、非常に安心できる特約です。
しかもこの特約の保険料は年間5,000円程度で、支払いの負担が少ないという特徴があります。月あたり400円ほどで地震に備えられるので、おすすめの特約といえるでしょう。
「保険@SAISON CARD」でぴったりな保険を見つけよう
車両保険の概要や特約について十分理解できたら、次は自身に最適な車両保険を選びましょう。しかし、保険会社は多く、それぞれ販売している保険商品は多種多様で、どれを選ぶか考えるだけでも大きな手間と時間がかかります。
そんなときは「おとなの自動車保険」など複数の保険の見積もりをネットで取ることができる「保険@SAISON CARD」を利用すると良いでしょう。このサイトでは4社の自動車保険の他、バイク保険やドライバー保険のネット見積もりや申し込みができます。それぞれの自動車保険のサービス内容を比較しながら、検討することができます。
例えばテレビCMでおなじみの「おとなの自動車保険」の見積もりで必要なのは、生年月日と免許証の色、現在加入している自動車保険など、最短5分で完了するような簡単な入力だけです。
車両新価特約や車両全損修理時特約も付加でき、その場合の保険料もシミュレーションできちんと確認できるので、補償とのバランスの取れた保険がきっと見つかります。見積もりはもちろん無料です。より詳しく知りたいときは、お客さまサポートセンターへ問い合わせることもできます。
車両保険を他社とも比較してみたいという方は保険@SAISON CARDをご覧ください。
おわりに
ここ数年、毎年のように日本の各地を襲う大雨や台風は、これまでにないほどの大きな水害をもたらしています。もし災害に襲われたらまず命を守るのが先決ですが、できることなら今ある財産も守りたいと願うのは当然でしょう。
自動車は生活に欠かせない財産のひとつといえます。自動車が使えなくなると、地域によってはそのまま仕事を失い、生活を苦しめることさえあります。自動車が水没してしまった場合にしっかり補償してくれるのが車両保険です。
車両保険の中には水没が補償されない種類もあるため、慎重に選ぶ必要があります。さらに手厚い補償を得たいなら、特約を付加するのも良い方法です。いつ起こるかわからない災害にしっかり備えるには、自身の暮らしや状況に適した保険を選ぶ必要があります。自動車保険は、車両保険の補償内容もしっかり確認しつつ、保険料とのバランスを見て選びましょう。
自動車保険(バイク・ドライバー保険)自動車・バイク保険などの損害保険のご相談・お見積もりは保険@SAISON CARD