養老保険には保険料が高く、高い利回りを期待できないといったデメリットがあります。一方で万が一の保障と貯蓄機能の両方を備えられるため、加入すべきか知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、養老保険のメリットやデメリット、向いている方、選び方などについて紹介します。死亡保険金や満期保険金を受け取る際の税金もわかり、ご自身に合う保険を総合的に判断できるでしょう。
養老保険とは
養老保険は被保険者(保険の対象者)が保険期間中に亡くなった時には死亡保険金、高度障害になった時には高度障害保険金が支払われる保険です。加えて被保険者が満期まで生存していれば満期保険金が受け取れます。
死亡や高度障害といった万が一に備えつつも、老後や教育資金などのための資産形成ができるのが魅力でしょう。
養老保険と終身保険の違い
終身保険は一生涯の保障と貯蓄機能の両方を準備できる保険です。ただし終身保険でいう「貯蓄機能」は満期保険金ではなく「解約返戻金がある」こと。
養老保険と終身保険では保険期間や保険料、解約返戻率が高い期間、満期保険金の有無などが異なります。それらの違いを以下の表にまとめました。
養老保険 | 終身保険 | |
保険期間 | 「10年・20年」や「60歳まで・70歳まで」など、期間が定められている | 加入してから一生涯 |
保険料 | 高い | 安い |
解約返戻率が高い期間 | 長い | 短い |
満期保険金の有無 | あり | なし |
保険期間
養老保険では保険期間(保障される期間)が定められており、「10年・20年」といった年満了タイプと、「60歳まで・70歳まで」といった歳満了タイプがあります。例えば30歳で「10年」の保険期間で加入した場合には、40歳までが保険期間になります。この期間内に死亡すれば死亡保険金が、40歳まで生存すれば満期保険金が受け取れます。
一方で終身保険の保険期間は解約や失効がない限り一生涯続く点が、養老保険との違います。30歳で終身保険に加入し、80歳で亡くなった場合には80歳の時点で受取人に死亡保険金が支払われます。
保険料
保険料を比較すると、「死亡保険金500万円」といった保険金額が同じであれば、養老保険の方が高くなります。それは、解約した時に受け取れる「解約返戻金」が終身保険よりも高く、満期保険金があるためです。
保険金額が高額で、契約年齢が上がるほど、保険料は高くなります。これは養老保険・終身保険同様の特徴です。
解約返戻率
解約返戻率とは、「払い込んだ保険料に対して解約返戻金はいくらになるか」を割合で表したもので、「解約返戻金÷払い込んだ保険料の総額×100%」で算出。例えば解約返戻金が800,000円で払い込んだ保険料の総額が100万円であれば、解約返戻率は80%になり、いわゆる「元本割れ」の状態です。
保険では加入後すぐに解約返戻率が100%を超える状態にはなりませんが、解約返戻率の高い期間を比べると、基本的に養老保険の方が長くなります。
保険を契約する際、すぐに解約することを考える方は少ないかもしれませんが、万が一のために契約時に解約返戻率について確認しましょう。
満期保険金
基本的に養老保険の死亡保険金と満期保険金は同額。例えば死亡保険金が500万円であれば満期保険金も500万円です。商品によっては「2倍保障型」など、死亡保険金を満期保険金の2倍などにした保険もあります。
一方で終身保険は一生涯の保障のため、満期がありません。生存していても保険金を受け取れるわけではないため注意しましょう。
養老保険のメリットとデメリット
養老保険にはご自身の希望に合わせて保険期間を設定できるといったメリットがある一方で、保険料が高いため、充分充分に検討しないと月々の支払いが大変になることも考えられます。ここでは養老保険のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
養老保険のメリット
養老保険には、以下の3つのメリットがあります。
- 保険期間を設定できる
- 基本的に満期保険金と同額の死亡保険金を受け取れる
- 解約返戻率の高い期間が長い
メリットを知り、ご自身にとってぴったりの保障を選択できるか検討しましょう。
保険期間を設定できる
養老保険では「20年満期」「60歳まで」などと保険期間をご自身で設定できます。ライフプランに合わせた資産形成ができるのが魅力です。
具体的には40歳で「20歳満期」に加入し、死亡保障と老後の楽しみとして貯蓄性を持たせるのも良いでしょう。
なお年齢によっては設定できない保険期間があるため、注意が必要です。
基本的に満期保険金と同額の死亡保険金が受け取れる
加入してからすぐに死亡しても、満期保険金と同額の死亡保険金を受け取れます。払込保険料が少なくても死亡保障がある点は、残されたご家族の生活費になりメリットが大きいでしょう。
商品によっては死亡保険金を満期保険金の2倍や5倍にし、死亡保障を手厚くできる商品もあります。ご自身やご家族の希望に応じて選択することが大切です。
解約返戻率の高い期間が長い
養老保険は解約返戻率の高い期間が長く設定されているため、基本的に終身保険よりも解約返戻金の額が多くなります。解約返戻金が多いことは、急にお金が必要になった時にも安心でしょう。
また保険料を支払えなくなった場合にも、商品によっては解約返戻金を使って払済保険(解約返戻金をもとに同じ保険期間の養老保険に変更すること)にできます。払済保険にすることで保険金額は低くなりますが、万が一の保障と貯蓄性を継続できるためおすすめです。
養老保険のデメリット
養老保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 毎月の保険料は比較的高め
- 高い利回りは期待できない
- 満期後に更新できない場合がある
- 解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回る場合がある
デメリットを理解することで、他の保険と比較しやすくなります。ぜひ参考にしてみてください。
毎月の保険料は比較的高め
高い貯蓄性と保障を備えているため、かけ捨ての保険よりも保険料は高額になります。
契約する際には、10年、20年と無理なく払えるか、充分に検討することが大切です。保険料の支払い方法には年払いや半年払い、月払いなどがありますが、少しでも割り引かれる方法を担当者に聞いてみましょう。
高い利回りは期待できない
養老保険などの貯蓄性のある商品は、保険料を運用することでより高額な保険金を受け取れるのが魅力です。一方で日本では低金利の状態が続いているため、資産の増加を目的に円建ての養老保険に加入するのは適切ではないでしょう。
養老保険への加入を検討する際には、払い込む保険料の総額と満期保険金を確認することが大切です。
満期後に更新できない場合がある
一般的に養老保険の保障期間は満期で終了します。ただし満期後に更新できる商品もあるため、さまざまな商品を比較することが重要です。
万が一更新ができない場合には、満期保険金を活用して、別の保険に加入するのも良いでしょう。
解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回る場合がある
解約の時期によっては、解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回る可能性があります。保険証書などに解約返戻金の推移が記載されている場合もあるため、解約のタイミングを知りたい時には参考にしましょう。
養老保険が向いている方と向いていない方
養老保険は強制的に貯蓄をしたい方などに向いています。ただしできるだけ保険料を安くしたい方などであれば、他の保険と比較検討することが大切です。ここでは、養老保険が向いている方と向いていない方について詳しく解説しましょう。
向いている方
養老保険は、貯蓄が苦手な方や、ご自身の好きなタイミングでお金を受け取りたい方などに向いています。基本的に毎月の保険料は口座から引き落とされたり、カード払いが可能な場合もあるため、強制的にコツコツとお金を貯めたい方にぴったりです。また30年後に退職するといった方であれば「30年満期」にすることで、退職後の生活費にできるでしょう。
ただし保険金額を高額にすると保険料も上がるため、必要な金額を計算してから加入することが重要です。
向いていない方
養老保険は、保険料をできるだけ抑えたい方や一生涯の保障を求めている方などには向いていません。基本的に高い保険料を長期間支払う必要があるため、出産やマイホーム購入など支出が多くなることがわかっていれば、他の保険を考えるのが良いでしょう。
また一生涯の死亡保障に備えたい方は終身保険も視野に入れることをおすすめいたします。
養老保険の選び方
養老保険を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 円建てか外貨建てか
- 保険料の払込期間
- 解約返戻金の総額
3点に気をつけることで、よりご自身に合った養老保険を選択できます。
円建てか外貨建てか
養老保険には円で運用される「円建て養老保険」の他に、ドルなどの外貨で運用される「外貨建て養老保険」があります。外貨建て商品は、外貨で保険料を支払い、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金を外貨で受け取る仕組みです。
外貨建て養老保険のメリットは、より多くのリターンを期待できる点です。
一方で「円を外貨に」「外貨を円に」交換する際に為替手数料がかかるといったリスクがあり、想像以上に受け取れるお金が少なくなる可能性も。仕組みを充分に理解してから契約することが重要です。
保険料の払込期間
保険料の払込期間をどのくらいにするかも検討しましょう。一般的に保険料払込期間は「10年」「20年」「60歳まで」「70歳まで」などと長い期間ですが、商品によっては契約時にまとめて支払う「一時払い」や「短期払い」もあります。
保険料払込期間が変わることで、保険料の総額はどのくらい増減するのかシミュレーションして決めましょう。
解約返戻金の総額
万が一途中で解約することも踏まえて、解約返戻金も確認しましょう。解約のタイミングによっては、払い込んだ保険料の総額よりも解約返戻金が低くなる可能性があります。
保険期間内に「退職する」「家をリフォームする」「車を買い替える」など、起こりうるイベントを書き出し、そのときの解約返戻金をメモしておきましょう。
養老保険金の受取時にかかる税金
養老保険の死亡保険金や満期保険金、解約返戻金には税金がかかる場合があります。ここでは、養老保険の税金について詳しく解説しましょう。
死亡保険金にかかる税金
生命保険では受取人が死亡保険金を受け取り、受取人に対して税金が発生します。契約者と被保険者、受取人の関係によって課せられる税金が変わるため、注意が必要です。
契約者と被保険者が同一なら相続税
契約者と被保険者が同じ場合には、相続税が発生する可能性があります。例えば契約者と被保険者が夫で、受取人が妻の契約などです。
相続税とは相続財産を受け取る側に課せられる税金です。残されたご家族の生活保障の観点から死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。具体的には死亡保険金が2,000万円で法定相続人が3人の場合「500万円×3人=1,500万円」までが非課税となり、残りの500万円のみが相続税の対象です。
なお法定相続人とは民法で定められた相続人のことで、配偶者は常に法定相続人となり、子どもや親などが当てはまる場合もあります。
契約者と受取人が同一なら所得税
契約者と受取人が同じで、一時金で受け取った場合には一時所得とみなされ所得税が発生する可能性があります。具体的には契約者と受取人が夫で、被保険者が妻のケースなど。
一時所得は「死亡保険金−払い込んだ保険料の総額−特別控除500,000円」で算出し、その半分を他の所得と合算して最終的な所得税額を計算します。例えば死亡保険金が100万円で払い込んだ保険料の総額が110万円であれば、一時所得は「100万円−110万円−500,000円」でマイナスになるため、死亡保険金に対する所得税はかかりません。
契約者と被保険者と受取人がすべて異なるなら贈与税
契約者と被保険者と受取人が全員異なる契約では、受取人に贈与税が課せられる可能性があります。契約者が夫で、被保険者が妻、受取人が子どものケースなど。
例えば死亡保険金500万円を受け取り、暦年課税を選択した場合、他に贈与された財産がなければ「500万円−110万円(基礎控除額)=390万円」に対して税率をかけて贈与税額を算出します。
満期保険金、解約保険金にかかる税金
養老保険では受取人が満期保険金や解約返戻金を受け取った場合、契約者と受取人の関係によって、所得税もしくは贈与税が発生するケースがあります。
契約者と受取人が同一なら所得税
契約者と受取人が同じ契約の場合で、一時金として満期保険金、解約返戻金を受け取ると、一時所得として所得税が課せられる可能性があります。計算方法は死亡保険金と同様です。
契約者と受取人が異なるなら贈与税
契約者と受取人が異なる場合には、受取人に対して贈与税が発生する可能性もあります。死亡保険金と同様に計算することで、贈与税額を算出できます。
おわりに
養老保険は保険料が比較的高く、昔よりも高い利回りを期待できないといったデメリットがあります。一方で高い貯蓄性からご自身やご家族のライフイベントに応じて保険金額や保険期間などを設定できるのも魅力です。
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