【解説】定年前に知っておくべき各種保険の基礎知識

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【解説】定年前に知っておくべき各種保険の基礎知識

「人生100年」といわれるこの時代において定年は、人生の6割ほどを経過したに過ぎず、これから長い老後が待っています。その老後の安心を支える保険については、実際に定年を迎える前にある程度の基礎知識を理解しておくことは大切なことです。このコラムでは、失業保険、健康保険、介護保険について解説していきます。

1.失業保険

定年後は継続雇用を受けずに、これまでとは違う仕事に就いてみたいと考える方にとって、再就職の支えとなるのが、ハローワークと失業保険(雇用保険の失業等給付)です。

雇用保険の失業等給付のなかには、「求職者給付」があります。求職者給付には、一般被保険者に対する「基本手当」、高年齢被保険者に対する「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者に対する「特例一時金」などがあります。以下では、最も代表的な「基本手当」(いわゆる失業手当)を中心に、その内容や手続きを説明します。

1-1.失業保険認定について

定年退職の場合も含め、65歳未満での離職において、基本手当(失業手当)がもらえる条件は以下の通りです。

・「働く意思と能力」があるにもかかわらず就職できない「失業の状態」であること

・離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上であること

65歳未満の方が受け取る失業保険は基本手当と呼ばれ、受給期間は原則として退職日の翌日から1年間となります。退職後すぐに求職活動ができない場合は延長することも可能です。

60歳以上65歳未満の定年退職者であれば、退職日の翌日から2ヵ月以内にハローワークで申請手続きをすることで、受給期間を2年間まで延長できます。現在では新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、給付日数を延長する特例も設けられています。基本手当の給付日数と目安額は、退職時の年齢や雇用保険の加入期間などにより異なります。

60歳以上65歳未満で20年以上の加入であれば、給付日数は最大150日、目安額は退職前6ヵ月間の平均給与のおよそ45%~80%です。基本手当を受けるには住所地を管轄するハローワークに出向いて、求職の申し込みをします。

そのあと7日間の待機期間を経て、説明会に出席します。以降は4週間ごとに指定の認定日にハローワークへ出向き、失業の認定を受けることで基本手当を受給できます。また失業認定の際は、前回の認定日以降、原則として2回以上の求職活動の実績(求人への応募や職業相談など)が義務付けられています。

1-2.雇用保険の基本手当と年金の同時受給はできない

原則65歳未満の方は、雇用保険の基本手当と老齢厚生年金は同時に受給できませんので、ご注意点ください。一般的に年金よりも基本手当のほうが高いケースが多いですが、加給年金の対象者は年金のほうが高くなるケースがあります。その場合は求職の申し込みをしないようにすれば、年金受給が可能となります。

失業等給付には基本手当のほかに、再就職手当や就業促進定着手当、就業手当といった給付も用意されており、いずれも早期再就職者への祝い金のような特徴があります。無職の期間が長ければ長いほど就職活動は難航することが多いので、1日も早い再就職を目指すことが大切です。

このほか、雇用保険の高年齢雇用継続給付制度には、基本手当を100日分以上残して再就職し、給与が60歳時点の75%未満に下がるなどの条件を満たした方に高年齢再就職給付金が支給される仕組みもあります。

基本手当の支給残日数が100日以上200日未満の場合は1年間、再就職先の給与の最大15%に相当する給付金を65歳に達する月まで受けることが可能です。ただし、再就職手当との併給はできませんので注意が必要です。

また65歳以上で退職した場合は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金という一時金を受給することができます。年金と同時受給できますが、支給額は基本手当と比べて大きく減りますのでこれも注意が必要です。

<参考>退職から基本手当給付までの流れ

①退職

②会社から離職票が届く(退職日から10日以内)

③ハローワークで求職の申し込みをする

④待機期間

⑤初回講習・説明会に出席(申し込みから1週間から10日後)

⑥初回認定日(申し込みから4週間後)

⑦基本手当の振込(認定日から5営業日以内)

2.健康保険

健康保険に入っていないと、ご自身や扶養家族が病気、ケガをして医療機関を受診した場合、医療費が全額自己負担になることがあります。定年退職後は、直前まで入っていた健康保険の任意継続もしくは他の健康保険への加入の手続きを、期日内に滞りなくすることが大切です。定年後も再雇用で引き続き同じ会社で働く場合は、勤務先の健康保険に加入できますが、それ以外の場合は以下の三つの選択肢から選ぶことになります。

①退職前に加入していた健康保険を任意継続する

②家族の健康保険の被扶養者になる

③国民健康保険に加入する

①の任意継続は、勤務していた会社の健康保険を最長2年間、退職後に個人で継続して加入できる制度です。在職中は保険料の半分を会社が負担していましたが、任意継続では全額自己負担となります

②は配偶者や子どもの扶養に入るケースです。被保険者である家族が保険料を負担するので、保険料を支払う必要がありません。ただし加入要件が厳しく、家族と生計を1つ(同居など)にし、自身の年収が180万円未満(60歳未満では130万円未満)で、扶養してくれる

家族の年収の2分の1未満であることが条件となります。

さらに、一定額以上の失業保険の基本手当を受給している間は、原則として被扶養者になることはできませんので注意が必要です。

③は国民健康保険に加入するケースです。退職日より原則14日以内に住民票のある各自治体へ申し込みを行います。勤務先が発行した退職証明書または資格喪失証明書もしくは離職票、本人確認書類などが必要になりますので、確認が必要です。

①~③の健康保険の加入の仕方がどういったケースで適しているかについて、いずれの健康保険に入ったとしても、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合は原則同じです。したがって選択するポイントとしては、毎月支払う保険料といえるでしょう。

前述のとおり、家族の健康保険の被扶養者になれば、保険料はかかりません。それが難しいなら、任意継続か国民健康保険を選択します。一般的に任意継続の方が国民健康保険より保険料が安い傾向にあります。任意継続の保険料は、協会けんぽの場合、退職時の平均月収(標準報酬月額)に都道府県の保険料率を乗じた額となります。保険料には上限があり、標準報酬月額が30万円を超えた場合でも、30万円で算出した保険料が適応されます。

また国民健康保険の保険料は前年の所得をもとに算出されるため、退職前の所得が高かった方は1年目の保険料が高額になる傾向があります。加えて、任意継続では扶養家族がいても保険料に変化はありませんが、国民健康保険は世帯の加入者全員の保険料が加算されます。

国民健康保険の保険料は、市区役所・町村役場の窓口に源泉徴収票など前年の所得がわかる資料を持参すれば、試算してもらえます。任意継続の保険料は手続き先となる協会けんぽまたは健康保険組合で確認できます。双方を比較して、費用負担の軽い方を選ばれてはいかがでしょうか。

3.介護保険

最後は介護保険についてご紹介いたします。介護が必要になったときに頼りになるのは介護保険です。介護保険は、高齢化と長寿化が急激に進んだことから、2000年に導入された保険です。

介護保険料は65歳以上の第1号被保険者が負担する第1号保険料と、40歳から64歳までの第2号被保険者が負担する第2号保険料に分かれています。

第1号保険料は、各市区町村が3年ごとに1人あたりの基準額(介護保険事業計画予算の23% ÷ 第1号被保険者の総数)を定めます。ただし全員が同じ保険料では収入に対して保険料の負担が重くなってしまう方も出てくるため、本人や世帯の合計所得に応じて負担率を細分化しています。この所得区分は標準で9段階とされていますが、市区町村の条例によってより細かく設定することもできます。第1号保険料は、年金が年額18万円以上の場合は年金から天引きされ(特別徴収)、年額18万円未満の場合は納付書や口座振替で納めます(普通徴収)第1号保険料の基準額は更新のたびに上がっており、第1期と第7期でその差は約2倍にもなっています。

第2号保険料は、厚生労働省が毎年1人あたりの保険料率(介護保険事業計画の予算の27% ÷ 第2号被保険者の総報酬額総額の見込み)を定めます。その保険料率を基に、各健康保険団体(公的医療保険の保険者)が医療保険料に介護保険料を上乗せして徴収します。

つまり、給与所得者の場合は給与から天引きされ、自営業者や未就業者の場合は納付書や口座振替で納めます。第1号保険料同様、第2号保険料の1人あたり負担見込額も毎年上がっており、2000年度と2020年度でその差は約2.6倍となっています。

3-1.介護保険を利用するために

介護保険サービスを利用するためには、要介護(要支援)の認定を受ける必要があり、認定結果によって利用できるサービスが異なってきます。介護保険で利用できるサービスには、法令で定められた保険給付と、各市区町村がそれぞれの地域の特性に合わせて実施する地域支援事業の2点があります。

要介護1〜要介護5に認定された方は「介護給付」を利用でき、要支援1・要支援2に認定された方は「予防給付」を利用することができます。介護保険施設に入居できるのは要介護1〜要介護5に認定された方に限られます。

特に特別養護老人ホームに入居できるのは、原則要介護3以上の方のみとされていますのでよく確認しておきましょう。また民間企業が運営する特定施設(介護付き有料老人ホーム、ケアハウスなど)には要支援の方でも入居することが可能となっており、費用は施設ごとに異なります。

3-2.自己負担額について

要介護(要支援)の認定を受けると、介護保険サービスを利用したときの自己負担額の割合が記された「介護保険負担割合証」が交付されます。負担割合は所得によって1割〜3割に変動しますが、65歳以上で要介護(要支援)認定を受けている方のうち、約9割が1割負担となっています。

3-3.介護が必要な期間

介護が必要な期間を平均寿命 − 健康寿命とした場合、男性で約9年、女性で約12年となり、この期間は少しずつ延びています。もちろんこれは1つの目安に過ぎませんので、一概にはいえませんが参考情報として約10年程度は見ておいた方が良いでしょう。ただしそれぞれ介護が必要な期間がどのくらいになるかは個人差が大きく、予測することは非常に難しいです。

おわりに

このコラムでは、定年前に知っておくべき保険の基礎知識として代表的な失業保険、健康保険、介護保険について解説しました。保険は安心を買うものとよくいわれますが、特に歳を重ねると、今までのように身体は動かず気力も落ち、さらに退職後には収入も劇的に落ちるといったネガティブなことが多くなりがちですが、これらの保険についてよく調べ勉強したうえで、ご自身にとってのベストな保険の利用の仕方を是非一度検討してみてはいかがでしょうか。実り多き老後を送るうえでのヒントになれば幸いです。