春から夏にかけてあたたかくなると、私たちにとってやっかいな虫たちが活動を始めます。中でも、刺されると命の危険もある蜂は巣があるだけでも注意が必要です。今回は危険な蜂の巣の駆除方法について解説します。安全に駆除することのできる蜂の巣の種類や駆除方法のポイントも解説していますので、今回の記事を参考により安全に蜂の巣の処理を行ってください。
この記事を読んでわかること
日本で見られる蜂のうち、人を刺す恐れのある蜂はスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3種類です。スズメバチはとくに攻撃性が強く、アナフィラキシーによる死亡事故も多くあるため大変危険です。そのため、攻撃性の低いミツバチなどの小さい巣であればご自身での駆除も可能ですが、それ以外の場合は自治体やプロに相談するようにしましょう。
ご自身で蜂の巣を撤去するときには、防護服を着用し、殺虫スプレーを充分に使い、しっかりと蜂を駆除してから巣を撤去します。駆除した蜂は死んでからも反射的に毒針を出す恐れがあるので、ほうきやちりとりで処理してください。巣がなくなった場所は蜂が戻ってくる可能性があるので、1週間程度殺虫スプレーを撒いておきましょう。
家に巣を作る代表的な蜂
数多くの殺虫剤を開発・販売しているフマキラーによると、日本に生息している蜂は約4,000種を超えるといわれています。しかし、この中でも人を刺す蜂はごく一部です。ここからは人を刺す危険性のある蜂をご紹介します。
スズメバチ
スズメバチは毎年死者を出すほど攻撃性が高いため、蜂や巣を見つけたらうかつに近づかないことが重要です。
スズメバチは日本に生息している蜂の中でも最も大きく体長3~5㎝あり、オレンジの大きな頭と黒い胸、茶色と黄色のしま模様の腹部が特徴的です。巣は茶色やベージュのマーブル模様でボールのような形をしています。
おもに庭木や建物の軒下に巣を作ることが多く見られます。最大で25~30cmほどの大きさになりますが、冬になると蜂が活動をやめるため、巣は1年しか使われません。
アシナガバチ
アシナガバチはスズメバチに比べると攻撃性は低く、人を刺すことはほぼありません。スズメバチよりもひと回り小さく、3cm弱ほどの大きさになります。
全体的に細身でその名のとおり長い後ろ脚を垂らしてフワフワとゆっくり飛ぶのが特徴です。アシナガバチの巣は蜂の巣らしい六角形の構造がむき出しになったシャワーヘッドのようになっています。雨風を避けられる庭木や軒下、玄関やベランダといったさまざまな場所に巣を作ることが多い種類です。
巣の大きさは最大で10~15cmほどになりますが、寒くなると蜂が死んでしまい、巣が翌年も使われることはありません。
ミツバチ
ミツバチは目にする機会も多いため、比較的なじみがある種類でしょう。針を持っていますが、護身用としてしか使わないほど、おとなしく攻撃性の弱い蜂です。
ミツバチの巣は平たい板状になっていて、何枚にも重なっていることがあります。運んできた蜜で巣が作られているため、作り始めの巣は白っぽく、次第に蜜色になります。
自然のなかでは木の裏のような暗いところに巣を作る習性があるため、屋根裏や床下などに巣を作ることが多く、年々大きくなってしまうため、早めに発見して対応することが必要です。
蜂の活動時期は?
蜂はおもに春から初夏にかけて活動を開始し、寒くなる秋ごろになると活動をやめます。蜂の多くは春先に巣を作り始めるため、巣が発達して蜂の数が多くなる時期に危険が高まります。
スズメバチは、4〜11月にかけて活動する種類が多く、7月ごろにかけて働き蜂が増えます。繁殖期の7〜10月にかけてスズメバチに刺される被害が多発するため、とくに危険な時期だといえるでしょう。
アシナガバチは、4〜11月半ばにかけて活動する種類が多く、7月下旬〜8月にかけて働き蜂と新女王蜂が羽化し巣が大きくなります。活動期間が短いアシナガバチは、7〜8月ごろに攻撃性が高まり、8月に刺される被害が多発します。
一方ミツバチは、春から夏にかけては活動が穏やかになる傾向があります。ミツバチは、夏よりも花が咲き始める2〜3月や、越冬準備をする10〜11月に攻撃性が高まる傾向があります。
蜂に刺されるとどうなる?
蜂に刺されると、刺された部分に激しい痛みや腫れが生じますが、それだけではありません。スズメバチに刺されたというニュースを目にしたこともあるかと思いますが、ひどい時には蜂に刺されて命に関わることもあるのです。
蜂に刺されて重篤な症状が出る原因はアレルギーです。一度蜂に刺された経験があると、その時に作られた抗体がアレルギー反応を起こすことによって、蕁麻疹やからだのだるさ、嘔吐やめまいといった症状が引き起こされます。
ひどい場合にはアレルギー反応によるアナフィラキシーショックを起こす原因にもなるため、一度蜂に刺された経験のある方は蜂の種類関係なく注意する必要があるのです。
蜂の巣が作られる家の特徴
蜂の巣が作られやすい家にはどのような傾向があるのでしょうか。以下のような特徴があると蜂が巣を作りやすいので注意しましょう。
- 雨風が防げる場所に軒下や玄関がある
- 動物や鳥など天敵が入りにくい場所がある
- エサになる虫や花が多い
蜂は高速で羽を動かすことによって飛ぶため、安定して飛ぶために雨や風の影響を避ける傾向にあります。より安全な巣を作るためには、鳥や動物など天敵に晒されないエアコンの室外機や屋根裏、床下などが最適です。
さらに、エサとなる虫や花が多い場所をより好みます。また、積まれたタイヤや物置の中など、外に放置されているものにも巣を作ることがあるので注意が必要です。
蜂の巣を自分で駆除できる?その基準は?
それでは、実際に蜂の巣を見つけたらどのように対処したら良いのでしょうか。ご自身で蜂の巣を駆除できる場合もありますが、安全に駆除するためにはその見極めが重要です。以下でご紹介する基準にすべて当てはまる場合のみ、ご自身での駆除を検討すると良いでしょう。
蜂の種類で判断する
穏やかな性格で攻撃性の低いミツバチの巣は、ご自身でも比較的安全に駆除できます。スズメバチやアシナガバチといった攻撃性の高い種類の蜂の巣は、やめておくのが無難です。
ただし、ミツバチでも巣を壊されるなどの刺激を加えると、集団で襲ってくることもあるので、ご自身で駆除するときには細心の注意を払う必要があります。
蜂の巣がある場所で判断する
基本的に蜂の巣の駆除は、殺虫スプレーを使用して蜂を弱らせてから駆除するため、スプレーが届かないような高い場所や土の中に巣がある場合は、ご自身での駆除は難しくなります。
また、床下や屋根裏といった狭く閉じた空間の場合、駆除するときに逃げ場がなく、蜂も密集して攻撃してくる可能性があるため大変危険です。ご自身で蜂の巣を駆除する場合は、開放的でスプレーが届く範囲にとどめましょう。
蜂の巣の大きさで判断する
蜂が巣を作り始めたばかりの段階は働き蜂の数も少ないため、ご自身で駆除できる場合もあります。4〜5月ごろに見られる直径15cm以下の巣であれば、ご自身で駆除することもできるでしょう。
巣の大きさに比例して、働き蜂の数も増えるため、危険度も高まります。15cmよりも小さい巣でも蜂が多く出入りしているようであれば、ご自身での駆除は避けるのがベストです。
自分で蜂の巣を駆除する際の準備
それではご自身で蜂の巣を駆除する場合、何が必要でしょうか。蜂をスムーズに駆除するには、刺されないように身を守れる服装と速やかに巣を駆除できる道具をそろえておくことが重要です。いざ駆除を始めてから足りないものがないように、事前にしっかりと確認しておきましょう。
蜂の巣駆除をする際の服装
まずは蜂に刺されないために身を守れる防護服が必要です。専門の防護服を購入しようとすると数万円もかかりますが、蜂の巣の駆除のために防護服や駆除道具を無料で貸し出している自治体もあるので、市役所の環境課などに問い合わせてみましょう。
自治体による貸し出しがなく、専門の防護服が用意できない場合は、蜂の侵入する隙間のない丈夫な作業着がおすすめです。襟元や袖口にすき間のない厚手の長袖・長ズボンに帽子をかぶり、さらにフード付きのレインコートを着ると安心です。
顔は厚手のマスクやタオルを巻いて守り、2枚重ねした厚手の軍手と長靴で手足を守ります。また、黒色は蜂を引き寄せる恐れがあるため、白っぽい色のものを選んでください。
蜂の巣駆除で必要な道具
蜂の巣を撤去するには、蜂を駆除する必要があります。殺虫剤を選ぶときには噴射距離が長い殺虫スプレーがおすすめです。蜂への効き目が高い合成ピレスロイド系の殺虫剤は、噴射後すぐに蜂を駆除できます。巣穴に大量に殺虫剤を噴射するためにも2本以上用意しておくと安心です。
蜂の巣を落とすためには剪定バサミや長い棒があると良いでしょう。また、落とした蜂の巣をキャッチするために、虫取り網にゴミ袋をかぶせたものを用意しておくと、そのまま捨てることができるので便利です。
蜂の巣の駆除は日没後が適しているといわれています。しかし、暗いからといって懐中電灯などでそのまま光を当ててしまうと蜂を刺激してしまうため危険です。そのため、蜂に刺激を与えにくい赤い光のライトや、赤いセロファンを貼った懐中電灯を用意するなどして対策をしておきましょう。
蜂の巣を駆除する方法
必要なものが準備できたら、いよいよ駆除です。いざ始めてから、怖くなってしまうこともあるかもしれませんが、中途半端に駆除を始めてしまうと、かえって蜂を刺激してしまうことになり大変危険です。最後まで安全に駆除できるようにあらかじめ手順を確認しておきましょう。
蜂の巣に殺虫剤をスプレーする
まずは、静かに巣に近づき、距離を置きつつ殺虫剤の射程圏内から巣穴に向かって殺虫剤を噴射します。殺虫剤の効果で蜂が羽音を立てて出てきますが、ひるまずに連続噴射できるよう、両手にスプレーを持っておくと安心です。約2〜3分ほど蜂の動きがなくなるまで噴射を続けます。
道具を使って蜂の巣を除去する
蜂がいなくなったら、剪定バサミや長い棒を使って、蜂の巣を根元から落とします。この時、駆除しきれなかった蜂が巣の中から出てくることもあるので、その場合はできるだけ蜂を刺激しないように落ち着いて殺虫剤で駆除しましょう。
虫取り網がある場合は、袋をかけた状態で巣の下に構えておくと、落ちてきた巣をそのままキャッチできます。虫取り網がない場合は、落とす巣の下にゴミ袋を広げておくと処分しやすいです。
蜂の巣があった場所に再度スプレーする
巣がなくなったあとには、殺虫剤のスプレーを撒いておきます。駆除したときに巣にいなかった蜂は巣があった場所に再び戻り、巣を作ろうとする習性があります。とくに、巣がないことで狂暴化することもあるので、このような蜂を遠ざけるためにも、巣があった場所にスプレーを撒いておきましょう。
蜂の巣を処分する
蜂の巣をゴミ袋に入れた状態で念のため再び殺虫剤を吹きかけておきましょう。ゴミ収集の日までに期間がある場合は、袋を二重にしておくと安心です。その後、燃やせるゴミなど、自治体のルールに従って処分します。
自分で蜂の巣を駆除する際のポイント!
ご自身で蜂の巣駆除をするときの進め方についておわかりいただけたと思います。次に、より安全に作業を行うためのポイントについても押さえておきましょう。
蜂の巣を駆除する時間帯に注意
蜂の巣を駆除するには蜂が活動を終える夕方から夜間が適しています。エサを探しに出て巣にいない蜂が多い昼間に比べて、暗くなって動きが鈍くなり、巣に戻って休憩している蜂が多い日没後のほうが、一気に駆除することができます。
そのため、日没後2〜3時間後を目安に作業を始めると良いでしょう。
香りに注意
蜂の巣をゴミ袋に入れた状態で念のため再び殺虫剤を吹きかけておきましょう。ゴミ収集の日までに期間がある場合は、袋を二重にしておくと安心です。その後、燃やせるゴミなど、自治体のルールに従って処分します。
蜂の巣を自分で駆除できない場合の対処法
ここまではあくまでも危険が少ない蜂の巣駆除の場合です。大きくなってしまった蜂の巣は危険が多いため、ご自身での駆除はおすすめできません。ご自身で蜂の巣を駆除できない場合は、行政かプロに相談しましょう。
市役所に相談する
まずは市役所など、お住まいの自治体で蜂の巣駆除を行っているか確認しましょう。自治体によっては、自治体の負担で委託会社による駆除を行ってくれたり、駆除費用に対して補助金が申請できたりする場合があります。自治体名と「蜂の巣駆除」で検索してみたり、直接自治体に問い合わせてみたりすると良いでしょう。
ただし、自治体によっては対応していない場合や、スズメバチ以外の巣は対応していないといった場合もあります。また、依頼してから作業までに時間がかかるケースや、駆除会社ではなくボランティアが対応するといったケースもあるため、緊急性が高い場合にはプロに依頼することも検討してください。
消防署・保健所
地域によっては、消防署や保健所が対応してくれるケースもあります。茨城県日立市では、蜂の巣駆除を消防本部が対応するため、最寄りの消防署へ相談が可能です。
また、東京都江東区では蜂の巣駆除について保健所が対応しています。ただし、消防署や保健所が対応している自治体は少ないため、自治体に相談するのが確実かもしれません。
蜂の巣の駆除会社に依頼する
徹底して蜂の巣を駆除したい場合は、プロに任せるのが一番安全です。自治体に依頼するよりもコストはかかりますが、害虫駆除の専門家だからこそ、再発防止までしっかりと対策して作業を進めてくれるため安心です。
くらしのセゾンが提供している害虫駆除サービスでも、蜂の巣の駆除を行っています。即効性の高い蜂専用の薬剤を使って蜂を駆除し、安全性を確保したうえで蜂の巣を撤去します。予防方法についてもご相談いただけるので、お気軽にお問い合わせください。
蜂の巣を作られないための予防策
蜂の巣を撤去できたら、二度と巣を作らせないように対策しておくと良いでしょう。ここからは蜂の巣を予防する方法をご紹介します。
防虫ネットを活用する
基本的に蜂は毎年巣のある場所を変えるのですが、巣作りに快適な場所だと再び同じ場所に巣を作ってしまうことがあります。同じ場所に巣を作ることのないよう、蜂の巣を撤去したら防虫ネットなど巣を作られるのを防ぐのがおすすめです。
また、巣のあった場所や蜂が好みそうな場所にあらかじめ殺虫剤をまいておくというのもひとつの手です。
蜂のエサになるものを置かない
甘い香りに反応して蜂が寄ってくるため、お菓子の食べかすやジュースの空き缶などを放置していると、蜂が巣を作る原因になってしまいます。また、ニオイの強いゴミ袋なども蜂が寄ってきやすいため注意が必要です。
蜂が嫌がる香りを設置する
蜂はニオイに敏感であるからこそ、苦手なニオイを設置することで遠ざけることができます。蜂が巣を作りやすい場所や一度巣を作ってしまった場所には、ハッカ油や木酢液といった蜂が嫌うニオイを塗っておくと効果的です。
木酢液は木炭を作るときに出た煙を冷やして作られ、土壌の改良にも使えるナチュラルな成分でできています。そのため、薬剤を使うには抵抗があるという方にもおすすめできる方法です。
おわりに
蜂の巣の駆除は命の危険にもかかわるため、ご自身での駆除に少しでも心配がある方は自治体やプロへの相談がおすすめです。働き蜂が活動を始める前の小さな巣であればご自身での駆除も可能ですが、ご紹介した駆除方法をよく確認し、ぬかりなく準備したうえで行うようにしましょう。