更新日
公開日

遺族年金はいつまで受け取れる?要件や手続きの流れについて

遺族年金はいつまで受け取れる?要件や手続きの流れについて
セゾンのくらし大研究 編集部

執筆者

セゾンのくらし大研究 編集部

豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

一家を支える大黒柱が亡くなった場合、どう生活すれば良いのか困ってしまうこともあるでしょう。そんなときに支えてくれるのが、国から提供される遺族年金です。遺族年金は、年金の納付状況や働き方などにより受給できる条件が異なり、金額もさまざまです。

そのため、「遺族年金をもらっているけどいつまでもらえるの?」「遺族年金についてよく分からない」という方も少なくないでしょう。そこで今回は、遺族年金について詳しく解説していきます。

この記事でわかること

生計を支えている家族が亡くなったときに頼れるのが、遺族年金です。遺族年金は老齢年金と同様、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがあり、受け取れる期間や額はそれぞれ要件により異なります。要件によっては対象にならない可能性もあるでしょう。また、遺族年金は自動的に支給がスタートするわけではなく、受給するためにはまず手続きが必要です。いざというときに備えるため、貯蓄するのはもちろんのこと、投資信託や株式投資などを検討するのも良いでしょう。

1.遺族年金には2種類ある!

「大黒柱である夫が亡くなった……」そんなときに生活費の助けになってくれるのが、遺族年金です。遺族年金とはどんなものか、基本情報を確認していきましょう。

1-1.そもそも遺族年金とは

遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が死亡した場合に遺族が受け取ることのできる公的年金です。家族を養っていた方が死亡した場合において、残された家族にとって大切な生活の資金となるでしょう。

遺族年金には年金の納付状況や年齢、優先順位などといった条件が設けられており、金額もさまざまです。遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金という2つがあり、それぞれ受給資格が異なります。

1-2.遺族基礎年金について

遺族基礎年金は、20歳以上の国民が全員加入する国民年金の一部です。国民年金に加入している方が亡くなった場合に、国民年金から遺族基礎年金が支払われます。

国民年金は自営業者や会社員、公務員など、雇用形態にかかわらず加入しなければならない国民皆保険です。会社員の場合、給与から控除される厚生年金保険料の中に、国民年金の保険料も含まれています。

1-3.遺族厚生年金について

遺族厚生年金について

遺族厚生年金は、厚生年金に加入している会社員や公務員が亡くなったときに支給される年金です。自営業者は厚生年金には加入できないため、もらえる遺族年金は遺族基礎年金だけですが、会社員の場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえる可能性があるでしょう。

2.遺族年金はいつまで受け取れる?

遺族年金はいつまで受け取ることができるのでしょうか。

2-1.遺族基礎年金の場合

遺族基礎年金の受け取りは、子どもが高校を卒業するまでです。遺族基礎年金の対象は、亡くなった方の子どもと子どものいる配偶者となっています。子どもの場合、遺族基礎年金の受け取りは18歳の誕生日が属する年度末までです。子どもに2級以上の障害がある場合は、20歳未満までと通常よりも2年間長く設定されています。

子どものある配偶者が遺族基礎年金を受給している間は、子どもに遺族基礎年金は支給されません。子どものいない配偶者は、遺族基礎年金はもらえません

2-2.遺族厚生年金の場合

遺族厚生年金の場合

遺族厚生年金は受給要件を満たしていれば、いつまでといった期限がなく、受給要件を満たしている間は受け取ることができます。遺族基礎年金は子どものいる家庭の子どもと配偶者が対象でしたが、遺族厚生年金の場合は、子どもがいない家庭の配偶者も対象になります。その他、父母、孫または祖父母が受け取ることができます。

3.遺族基礎年金の受給要件とは

遺族基礎年金を受け取るためには、亡くなった方と受け取る方がそれぞれの要件を満たしていることが条件となります。それぞれの要件について詳しく確認していきましょう。

3-1.遺族基礎年金の亡くなった方の要件

遺族基礎年金を受け取るためには、亡くなった方が以下の要件のいずれかを満たしている必要があります。

【遺族基礎年金の支払い要件<死亡した方(被保険者)】

  1. 国民年金の被保険者である
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所がある
  3. 老齢基礎年金の受給権者であった
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たしていた

遺族基礎年金は、上記の1、2の要件に該当する方の場合は、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の2/3以上あることが必要となります。

3、4の要件については、保険料納付期間(保険料免除期間を含む)及び合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方が対象となります。

3-2.遺族基礎年金の受給要件

続いて、受け取る方の要件です。

【遺族基礎年金の支払い要件<受け取る方】

  • 死亡した方により生計を維持されていた
  • 子どものいる配偶者もしくは子ども

※子どもは18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級か2級の状態にある方を指します。子どものある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や子どもに生計を同じくする父または母がいる場合は、子どもは遺族基礎年金は支給されません。

亡くなった方が要件を満たしていて、かつ受け取る方も要件を満たしていれば、遺族基礎年金が支払われることとなります。ここでいう「生計を維持されていた」とは、配偶者の年収が850万円未満だった場合です。配偶者が年収850万円以上だった場合、要件を満たしていないこととなり遺族基礎年金の対象とはなりません。

ただし、亡くなったタイミングでは年収が850万円あったとしても、配偶者の死亡により働き方を変えなくてはならず、年収が下がる方もいるでしょう。5年以内に年収が下がると認められる事由があれば、遺族基礎年金が受け取れる可能性もあります。

3-3.遺族基礎年金はいくらもらえる?

遺族基礎年金でいくらもえらえるのかという点も重要な項目でしょう。遺族基礎年金額を算出する式は以下のとおりです。

  • 777,800円。+子どもの加算額
  • 1人目・2人目の子どもの加算額:223,800円(1人当たり)
  • 3人目以降の加算額:74,600円(1人当たり)

この式で算出するのは、年間の遺族基礎年金です。777,800円がベースとなり、子どもの人数により支給額が変動します。例えば、子どもが2人の家庭で妻が遺族基礎年金を受け取る場合、777,800円+223,800円+223,800円で、年間支給金額は合わせて1,225,400円です。

両親が亡くなるなどして子どもが遺族基礎年金を受け取る場合、子どもが1人ならベースの778,800円のみですが、2人以上の場合は223,800円が加算され、3人目以降は74,600円が加算されます。例えば子どもが3人の場合、777,800+223,800+74,600で1,076,200円が年間支給額です。

参照元:日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

4.遺族厚生年金の受給要件とは

続いては、遺族厚生年金を受け取るための受給要件です。こちらも、遺族基礎年金と同じく、受け取るためには死亡した方と受け取る方がそれぞれの要件を満たしていることが条件となります。

4-1.遺族厚生年金の亡くなった方の要件

遺族厚生年金の亡くなった方の要件

亡くなった方の要件は、以下のようになっています。

  1. 厚生年金の被保険者である
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日のある病気やケガにより、初診日から5年以内に死亡した
  3. 1級・2級の障害厚生年金(障害共済年金)を受け取っている
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた

遺族厚生年金には短期要件と長期要件があり、どちらに該当していたかによって年金額の計算方法が変わります。

<短期要件>

  • 在職中の死亡
  • 在職中に初診日がある病気やケガにより、初診日から5年以内に死亡した
  • 障害等級1級もしくは2級に該当する障害厚生年金受給者が死亡した

<長期要件>

  • 受給資格期間が25年以上、または老齢厚生年金等の受給権者(受給資格期間が25年以上)のある方が死亡した

ずっと会社員として働いていた方は長期要件になる可能性が高いでしょう。

4-2.遺族厚生年金の受給要件

続いては、遺族厚生年金を受け取る方の受給要件です。遺族厚生年金は、亡くなった方に生計を維持されていた方が対象になります。

  • 妻:要件なし(ただし、30歳未満であれば5年間のみ)
  • 夫:死亡時55歳以上で受給開始は60歳から。ただし、遺族基礎年金を受給できる場合、55歳から60歳の間であっても受給できる
  • 子ども:18歳の誕生日がある年度の年度末まで、または20歳未満で障害年金の等級1級、2級の障害者
  • 父母:死亡時55歳以上
  • 孫:18歳の誕生日がある年度の年度末まで、または20歳未満で障害年金の等級1級、2級の障害者
  • 祖父母:死亡時55歳以上

遺族厚生年金の受給対象者は妻、夫、子ども、父母、孫、祖父母と、遺族基礎年金に比べて広いのが特徴です。遺族基礎年金は子どもがいることが受給要件ですが、遺族厚生年金の場合は子どもの有無は問いません。優先順位の第一位は妻、夫、子どもで、続いて父母、孫、祖父母の順になっています。

また、子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受給している間は、子どもには遺族厚生年金は支給されません。

妻が30歳未満だった場合、遺族厚生年金が受給できるのは5年間のみでそれ以降は支給停止されます。また、夫の場合は死亡時に55歳以上でないと遺族厚生年金を受け取ることはできません。

4-3.遺族厚生年金で受け取れる金額は?

遺族厚生年金の額は、厚生年金加入時の報酬により異なります。

被保険者期間300ヵ月以上の場合:遺族厚生年金=【老齢厚生年金の報酬比例部分】×3/4

被保険者期間300ヵ月未満の場合:遺族厚生年金=【加入実績に応じた老齢厚生年金額】÷加入月数 × 300ヵ月×3/4

ただし、老齢厚生年金の計算は複雑なので、算出するときにはねんきん定期便に記載のある「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」を活用するのがおすすめです。

これに加え、40歳以上で生計を同じとする子どもがいない、もしくは子どもが18歳到達年度の末日に達した等により遺族基礎年金を受給できなくなった妻は、中高齢寡婦加算として65歳まで遺族基礎年金の3/4にあたる583,400円が、遺族厚生年金の年間支給額に加算されることになります。

遺族基礎年金の対象であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金が合算されて支給されることになるでしょう。実際の支給額は、住んでいるエリアの年金事務所で確認してください。

5.遺族年金を受け取る手続きについて

遺族年金を受け取る手続きについて

遺族年金を受け取るためには、手続きをしなくてはなりません。手続きの流れについて確認していきましょう。

5-1.手続きに必要な書類

必要書類は以下のとおりです。

<必ず必要な書類>

  • 年金手帳
  • 戸籍謄本(記載事項証明書)
  • 住民票の写し(世帯全員分)※マイナンバー記入により省略可能
  • 死亡者の住民票の除票
  • 請求者の収入証明書類※マイナンバー記入により省略可能
  • 子どもの収入証明書類※マイナンバー記入により省略可能
  • 死亡診断書(死体検案書など)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
  • 遺族年金の受取先金融機関の通帳など(本人名義のもの)
  • 印鑑

<状況に応じて必要な書類>

  • 他の公的年金から年金を受給している場合…年金証書
  • 合算対象期間が確認できる書類

<第三者に死亡原因がある場合>

  • 第三者行為事故状況届
  • 交通事故証明もしくは事故が確認できる書類
  • 確認書
  • 扶養していたことが分かる書類
  • 損害賠償金の算定書

手続きに必要な書類は、事前に用意しておくと手続きがスムーズです。

5-2.手続きの流れ

遺族年金の受給手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 手続きに必要な書類を用意する
  2. 遺族年金の申し込み窓口で年金請求書を記入
  3. 必要書類とともに年金請求書を提出
  4. 書類提出後、2ヵ月以内に自宅に年金証書が届く
  5. 年金証書を受け取ってから1~2ヵ月後に年金の振り込みがスタート

なお、申し込み窓口は遺族基礎年金のみか遺族厚生年金込みかで受け付け場所が異なります。

  • 遺族基礎年金のみ:死亡した方の住所がある市区町村役場
  • 遺族厚生年金込み:年金事務所もしくは年金相談センター

該当する方の窓口で手続きしてください。

5-3. 遺族年金以外に受け取れる可能性があるもの

遺族年金以外に受け取れる可能性があるもの

遺族年金の受給資格は限定的で、受け取れない方も少なくないでしょう。しかし、遺族年金以外にも遺族を守るための制度が用意されています。具体的には、寡婦年金と死亡一時金が挙げられます。

寡婦年金は死亡した夫がもらうはずだった老齢基礎年金の一部を妻が受け取れるというもの。寡婦年金はその名のとおり妻が残された場合に適用されるもので、夫が残された場合には寡婦年金の支給はありません。

寡婦年金が受け取れる要件は以下のとおりです。

<死亡した方側の要件>

  • 死亡日の前日において、死亡日の前月までの国民年金の保険料納付期間が10年以上
  • 老齢基礎年金や障害基礎年金をもらった経験がない

<受け取れる妻側の受給資格>

  • 夫の死亡時に65歳未満
  • 生計を同一にしており、妻の収入または所得が一定金額未満
  • 結婚期間が10年以上(内縁・事実婚でも可)
  • 繰り上げ支給の老齢基礎年金をもらっていない

これらの要件を満たした場合、妻は60歳から65歳まで、本来なら夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の3/4を受け取ることができます。

続いて死亡一時金です。亡くなった方が自営業者で、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていない場合に、一度だけ支給されます。

死亡した方側の要件は、死亡日の前日において、死亡日の前月までの保険料納付済期間が36ヵ月以上あったこと。生計を同じくしていた遺族が、①配偶者②子ども③父母④孫⑤祖父母⑥兄弟姉妹の順で受け取ることができます。

受け取れる額は保険料納付済期間により、以下のように定められています。

  • 36ヵ月以上180ヵ月未満:120,000円
  • 180ヵ月以上240ヵ月未満:145,000円
  • 240ヵ月以上300ヵ月未満:170,000円
  • 300ヵ月以上360ヵ月未満:220,000円
  • 360ヵ月以上420ヵ月未満:270,000円
  • 420ヵ月以上:320,000円

ここで注意しておきたいのは、寡婦年金と死亡一時金のどちらの要件を満たしていた場合でも、受け取れるのはどちらかひとつのみという点です。どちらをもらうべきか、状況に応じてしっかり検討する必要があるでしょう。

おわりに 

遺族年金受給にはさまざまな要件があり、すべての遺族が受け取れるわけではありません。また、自動的に給付されるわけではないため、要件に当てはまるかどうかきちんと確認し、忘れず手続きをする必要があるでしょう。ただし、金額の計算等複雑な点もあり、家族構成によっても異なるため、まずは市町村役場や年金事務所などで確認してみるのも良いかもしれません。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする