手元にある500万円を運用したいけれど、具体的に何をすれば良いのか分からない方も多いでしょう。できる限りリスクを抑えて効率良く運用するには、金融商品の特徴や資産運用のポイントをしっかり把握することが重要です。
このコラムでは、500万円の運用方法や成功するためのポイント、投資で利用できるお得な制度を解説します。運用方法で悩んでいる方は、このコラムを読んでいただければ金融商品への理解が深まり、ご自身に合った運用方法を選択できるでしょう。
この記事を読んでわかること
- 500万円の最適な運用方法は目的によって変わる。なるべくリスクをとりたくない方は、定期預金や債券など、安定性の高い方法がおすすめ。
- 反対に、リスクがあっても大きく利益を出したい方には、FXや信用取引などの方法がある。
- まずは投資を成功させるためにNISAやiDeCoなどのお得な制度を上手に活用し、ご自身が資産運用を行う目的を明確にして、目的を達成できる手段を考えることが大切。
500万円を運用したい!あまりリスクをとりたくない方向けの金融商品
資金運用にはリスクが付きものですが、なるべくリスクを抑えて運用したい方も多いでしょう。そのような方におすすめの金融商品は以下の3つです。
- 普通預金や定期預金
- 債券
- 外貨預金
それぞれについて詳しく解説します。
普通預金や定期預金
普通預金や定期預金は、最もリスクの低い金融商品です。どちらも元本が保証されており、万が一金融機関が破綻した場合は、預金保険制度により1金融機関につき預金者1人あたり1,000万円までの預金と破綻日までの利息が保護されます。
一方で、他の金融商品に比べて利率の低い点がデメリットです。大手銀行の場合、普通預金が年利0.001%、定期預金が年利0.002%程度(2023年6月現在)。
比較的金利が高いといわれているネット銀行でも、普通預金は年利0.01~0.2%程度、定期預金は1年もので0.01~0.21%程度(2023年6月現在)となっています。投資の世界ではリスクとリターンが表裏一体の関係にあるため、リスクを抑えたい場合、リターンも限定されると考えましょう。
普通預金や定期預金はリスクを負いたくない方に向いています。普通預金より定期預金のほうが金利が高いため、すぐに引き出す予定がなければ資産の一部を定期預金に預けるのがおすすめです。
債券
債券とは、国や地方公共団体、企業などが、一般の投資家から資金を調達するために発行する有価証券の一種です。株式と違い、あらかじめ利率や満期日が決められており、購入した投資家は毎年利子を受け取れることに加え、満期日には額面金額が払い戻されます。
債券には、国内債券や外国債券があります。
- 国内債券:国内で発行された債券(日本円建て)
- 外国債券:日本以外で発行された債券(主に外貨建て)
どちらも市場金利の動きや景気に影響を受けて、債券価格が変動します。発行元の信用状況にも影響され、発行元が経営破綻すれば利子や元本は支払われません。個人向け国債は国内債券の一種です。
国内債券、外国債券、個人向け国債には以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
国内債券 | 安全度が高い | 価値変動のリスクがある |
外国債券 | 利率が高い円安になれば為替差益を得られる | 円高になると損をする信用リスクがある |
個人向け国債 | 安全性が高い普通預金より高金利少額から購入できて中途換金も可能 | インフレに弱い高リターンは期待できない |
国内債券は円建てのため市場金利の影響を受けやすく、市場金利が上昇すると価値が下がります。また、発行元の信用状況によっても価値が変動するリスクもあるのです。
外国債券は市場金利だけでなく、為替相場の影響を受けやすいため、円安になれば為替差益を得られますが、円高になると損をするおそれがあります。また、債券を発行している国の政治情勢に影響を受けやすく、信用が下がれば利子や元本の支払いが滞るリスクがあるため、世界情勢に注意が必要です。
個人向け国債は、債券でリスクをとりたくない方におすすめです。国が発行するため安全性が高く、年2回の利子と満期時の元本を受け取れます。利子の下限が0.05%に設定されているため、普通預金より高金利で運用が可能です。
一方で、インフレが生じて円安になると、価値が下がるリスクがあります。安全性が高い反面、高リターンは期待できない点もデメリットです。
外貨預金
外貨預金とは、他国の通貨を購入することです。外貨預金のメリットは金利の高さ。日本より外国のほうが金利が高い傾向があるため、日本の定期預金などに預けるより効率良く運用できます。
また、為替の状況によっては為替差益を得られる点もメリットです。例えば、1ドル130円で米ドルを購入したあとに1ドル150円になった場合は、差額が利益になります。反対に円高になると損をする点には注意しましょう。
外貨預金のデメリットは元本割れのリスクがあることです。預入時より円高のときに引き出せば為替差損が発生します。外貨預金は預金保険制度の保証の対象外ですので、元本の保証はありません。
外貨預金は、金利が高い代わりに損をするリスクもある運用方法です。外貨の購入や引き出しのタイミング、海外情勢、各種手数料などをしっかりと学んでから始めましょう。
リスクを理解した上で運用を始めたい方向けの金融商品
投資にリスクがあるのは理解した上で、一定の利益を得たいという方に向けて、以下4つの運用方法をご紹介します。
- 株式
- 投資信託
- ETFやREIT
- 変額保険や外貨建て保険
それぞれの概要とメリット・デメリットを詳しく解説します。
株式
株式投資は、株式会社が発行する株式を売買して売却益や配当金を得る運用方法です。
株式投資の最大のメリットは、キャピタルゲインを得られること。キャピタルゲインとは、売買によって得られる利益を指します。株式を安く買って値上がりした後に売れば、その差額が利益となります。
また、株式を保有することでインカムゲイン(配当金や株主優待)を得られることや、保有割合に応じて議決権が与えられるのも、株式投資のメリットです。
しかし、株式投資には元本保証がありません。購入時よりも値下がりすれば、損をします。また、倒産すればせっかく買った株式の価値はなくなります。さらに、企業が減益すれば配当金が減る可能性もあるため、インカムゲインも減少するでしょう。
株式の購入にはある程度まとまった資金が必要なため、得られる利益が大きい一方で、損をするときも損失が大きくなる点に注意は必要です。
株式には、ご自身で銘柄を選べる自由さはありますが、しっかりと勉強して運用しなければ利益を得るのは難しいと考えましょう。
投資信託
投資信託とは、投資のプロにお金を預けて株式や債券などに投資・運用してもらう商品のことです。
投資信託の最大のメリットは、運用自体はプロが行うため、初心者でも手軽に始められること。投資の基本である分散投資をご自身で行うのは困難ですが、投資信託であれば世界中の資産に自動的に分散投資されるためリスクを軽減できます。
また、少額からでも始められるため、投資を始める際にまとまった資金は必要ありません。
一方で、投資のプロによる運用でも、リスクがゼロになる訳ではありません。元本保証はないため、社会情勢の変化による相場の急変動などによっては損をする可能性があります。また、投資信託の運用には一定のコストがかかります。手数料で利益を減らしてしまわないように、コストの低い商品を選びましょう。
ETFやREIT
ETFやREITは投資信託の一種です。
- ETF:証券取引所に上場した投資信託
- REIT:不動産投資ができる投資信託
ETFは、投資信託と同じ仕組みであり、株価指数などの指標に連動して値動きするように運用されています。一方REITは、投資家から集めた資金で投資不動産を購入し、賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。
それぞれに、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
ETF | ・コストが少ない | ・価格変動のリスクがある |
REIT | ・安定収益が期待できる ・流動性が高い ・少額で不動産投資ができる | ・不動産市場の影響を受ける ・元本割れのリスクがある ・運営元の信用リスクがある |
ETFは、組み入れている有価証券の価格が変動したり、需要がなく取引が成立しなかったりすると、価格が下がる恐れがあります。市場変動により連動している指標の値動きから離れてしまう可能性もデメリットです。
REITで得られる分配金や売却益は不動産市場の影響を受けて変動するため、分配金の支払いが滞るリスクがあります。上場が廃止になったり不動産の運営法人が倒産したりすれば、取引ができなくなり価格が大幅に下落するでしょう。
変額保険や外貨建て保険
保険料を運用する生命保険に加入すれば、毎月決められた保険料を支払うだけで手軽に運用が可能です。運用実績がよければ、想定より高額な保険金や解約払戻金を受け取れます。運用できる生命保険には、変額保険と外貨建て保険があります。
- 変額保険:保険料を株式や投資信託などで運用する
- 外貨建て保険:保険料を米ドルや豪ドル、ユーロなどの外貨で運用する
それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
変額保険 | ・通常より高額の保険金を受け取れる | ・受取金額が減るリスクがある |
外貨建て保険 | ・保険料を安く抑えられる ・円安のリスクを抑えられる | ・為替変動のリスクがある ・外貨の交換に手数料がかかる |
変額保険は、運用実績がよければ通常より高額の保険金や解約払戻金を受け取れます。一方で、株式や債券、投資信託などで運用するため、受け取る金額が想定より少なくなるリスクのあることがデメリットです。
外貨建て保険は金利の高い外貨で運用するため、保険金や解約払戻金を想定より多く受け取れる可能性があります。予定利率が高いため、保険料を安く抑えることも可能です。
また、資産の一部を外貨建て保険にしておくことで円安時に価値が下がるリスクを抑えられるでしょう。
外貨建て保険の保険料の払い込みや保険金の受け取りは原則として外貨ですが、特約を付ければ日本円で受け取れます。
円で受け取る場合は、損をしないように為替の動向を見極めなければなりません。外貨の交換には手数料がかかるため、保険会社ごとの手数料を確認して余計な支出にならないように注意しましょう。
さらなるリスクを理解した上で運用したい方向けの金融商品
リスクとリターンは表裏一体の関係であり、大きな利益を得られる金融商品には大きな損失リスクが伴います。
例えリスクがあったとしても大きく利益を出したい方には、以下3つの金融商品がおすすめです。
- FX
- 信用取引
- 先物取引
それぞれについて詳しく解説します。
FX
FXは外国為替証拠金取引といい、二カ国間の通貨を取引した際の差益で利益を得る取引です。
FXと外貨預金の違いはレバレッジをかけられること。レバレッジとは取引会社に預けたお金の数倍の金額まで取り引きできる仕組みを指します(国内FX口座の最大レバレッジは25倍)。
また、金利差の大きい通貨をペアにすれば、保有しているだけで毎日金利差による利益(スワップポイント)を得られるのも魅力です。
レバレッジは効率的に資産を増やせる反面、損失も大きくなる点に注意しましょう。例えば、レバレッジ25倍で取引すると、利益も損失も通常の25倍に膨らみます。
また、保有しているポジションの含み損が一定額を超えると強制的に決済(ロスカット)されるため、急激な相場変動によって一瞬で資産を失うおそれもあります。
国の金融政策や要人の会見、国際情勢によって相場は変動するため、FXで利益を得るにはさまざまなことにアンテナを立てておかなければなりません。
信用取引
信用取引とは、証券会社に委託保証金として担保を提供し、お金や株式を借りて行う取引です。担保として提供するのは現金や株式が該当します。
信用取引のメリットは、預けた委託保証金の3.3倍までのレバレッジをかけられることです。また、株式の売り(信用売り)から取引を始められるため、下落相場でも利益を狙えます。
しかし、信用取引ではマイナスが生じる可能性がある点に注意しましょう。信用取引では損失によって減った保証金を追加しなければなりません。追証が多額になれば借金を背負う恐れがあります。
先物取引
先物取引とは、将来の売買についてあらかじめ現時点で約束する取引です。将来の期日に株価が値上がりをしていても、約束した時点の価格で取引できるため、差額が利益となります。逆に、取引期日に値下がりしていれば損をします。
信用取引と似ていますが、先物取引ではお金や株を借りません。また、信用取引は現物取引と同じ市場で売買できますが、先物取引は現物取引とは別の先物市場で取引されます。
先物取引はレバレッジ取引であるため、預けた証拠金の数倍の金額まで取引できます。レバレッジをかければ少額で大きな利益を出せるのがメリットです。
一方で、市場の動向によっては大きな損失が出ます。決められた期日がくると自動的に決済されてしまうため、常に市場の動向を把握し、計画的に取引することが重要です。レバレッジの倍率は商品や証券会社によって異なるため、取引を始める前に確認しましょう。
500万円の運用を成功させるポイントは?
さまざまな投資の種類を紹介しましたが、具体的に何に気を付けて始めれば良いのか疑問に感じている方も多いでしょう。500万円の運用を成功させるには、押さえておくべきポイントが4つあります。
- 失敗しても良いと思える余剰資金で行う
- 分散投資する
- 長期運用を意識する
- 情報収集に時間をかける
それぞれについて解説します。
失敗しても良いと思える余剰資金で行う
投資はお金が増える可能性がある一方で、損失を被る恐れがあります。そのため、貯金をすべて投資に回すのではなく、最悪失っても良いと思える余剰資金で行う必要があります。
仮に500万円の貯金がある場合は、350万円には手を付けず、残りの150万円を運用するのも良いでしょう。
また、貯蓄をすべて投資に回すと急な支出に対応できません。流動性の低い金融商品に投資すると途中で解約できなかったり、解約時に損をしたりする恐れがあります。出金までに時間がかかるケースもあるため、突発的な支出に備えられるだけの貯金は残しておきましょう。
分散投資する
500万円の資金は、いくつかの金融商品に分散して運用しましょう。
なぜなら、ひとつの金融商品に集中投資すると、万が一の際に投資資金をすべて失う恐れがあるためです。いくつかの金融商品に分散しておけば、ひとつの金融商品で損失が出ても、資産を一気に失うリスクを抑えられます。
集中投資は成功した際のリターンが大きい傾向にありますが、確率が低く初心者にとっては難しいでしょう。最初のころは集中投資ではなく分散投資でリスクを抑えるのがおすすめです。
長期運用を意識する
運用は長期間で考えましょう。なぜなら、複利の効果を得られるからです。複利とは元本だけでなく利息にも利子が付くこと。期間が長くなるほど利子が積み上げられていくため、効果が大きくなります。特に積立タイプの金融商品は、長期運用によって効果的に利益を得られます。
長期運用は、市場変動のリスクを抑えるのにも効果的です。長い目で見ると短期の市場の上下は一時的なものであるため、全体的に緩やかに上昇して満期時に契約時よりあがっていれば利益を得られます。
情報収集に時間をかける
資産運用では、常に新しい情報を集めることが重要。なぜなら、株やFXなどは情報によって価格が大きく変動するためです。具体的には以下のとおりです。
- 金融政策
- 要人の発言
- 国際情勢
- 企業のIR情報
- 企業の不祥事
- 企業の新商品の発表 など
投資対象によって得るべき情報は異なりますが、株やFXのように値動きが激しいものに投資する場合はしっかりと情報をする必要があります。また、投資信託などは新しいファンド情報をチェックし、優良な投資先を見つけましょう。
投資の際に利用できる制度とは?
本来投資では、利益や掛け金に対して税金が課されますが、以下の制度を利用することで優遇が受けられます。
- NISA
- iDeCo
それぞれについて解説します。
NISA
NISAとは個人投資家向けの非課税制度です。これまでのNISAには、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAと、3つの種類がありましたが、2024年からは一般NISAとつみたてNISAを新NISAとして一本化し、ジュニアNISAは廃止されました。
NISAの最大のメリットは、売却時の譲渡益と分配金が非課税になる点です。旧NISAと新NISAの違いは以下のとおりです。
新NISA | 一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | ||
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | ||||
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 | 120万円 | 40万円 | 80万円 |
併用可(合わせて360万円) | |||||
非課税保有期間 | 無制限 | 5年間 | 20年間 | 5年間 | |
非課税保有限度額 | 1,800万円(このうち、成長投資枠に利用できるのは1200万円 | 600万円 | 800万円 | 400万円 | |
口座開設期間 | 恒久化 | 2028年まで(新NISA開始に伴い2023年まで) | 2042年まで(新NISA開始に伴い2023年まで) | ||
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託等 | 上場株式・投資信託等 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託等 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 |
新NISAは、非課税で保有できる期間と口座開設できる期間が無期限です。非課税枠が増額されるほか、売却した投資枠を再度利用できます。
参照元:金融庁ホームページ 新しいNISA、金融庁ホームページ ジュニアNISAの概要
iDeCo
iDeCoとは、公的年金にプラスする私的年金制度のことです。ご自身で掛け金を拠出し、ご自身で運用方法を選んで運用します。掛け金は65歳まで拠出可能で、原則60歳を過ぎると受け取りを開始できます。
iDeCoは掛け金、運用益、給付金の受け取りに、以下のような税制の優遇措置を受けられます。
- 掛け金を全額所得控除できる
- 運用益が非課税で再投資される
- 給付金の受給時に所得控除を受けられる
税制の優遇措置を受けながら、将来の年金を増やせます。
おわりに
500万円を運用する際に、リスクをとりたくない方は定期預金や債券などの商品がおすすめです。リスクを理解した上で投資したい方は、株式や投資信託、ETF、REITなど、定期預金や債券よりも大きなリターンを得られるものを検討しましょう。
運用を成功させるには、分散投資や長期運用の考えが重要です。NISAやiDeCoの制度を利用すれば、非課税や控除の優遇措置が適用されます。節税によって支出を減らすことで、より大きな利益を得られるでしょう。数多くの金融商品のメリットやデメリットをしっかり把握して、500万円を上手に運用しましょう。