配当金に注目した投資を始めたいものの、利回りの計算方法がわからない方は多いのではないでしょうか。配当利回りを計算するためには、2つのデータを集める必要があります。
このコラムでは配当利回りの計算方法について解説します。投資初心者の方でも簡単に理解できる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
- 株式投資では「予想配当利回り」がよく活用されている
- 予想配当利回りの求め方は「一株当たりの予想年間配当金」を「現在の株価」で割る
- 株価の下落や増配は、配当利回りアップの要因になる
配当利回りとは
この章では、配当金や配当利回りの基礎知識について解説します。
配当金とは
配当金とは、企業の利益から株主に還元するお金を指します。株主が保有する株数に比例して金額が変動する仕組みで、日本企業の場合は現金で年間1〜2回支払われるのが一般的です。例えば配当金100円の株を200株保有している場合、税引き前の配当金は20,000円(100円×200株)です。配当金は合計20.315%の税金が源泉徴収されるため、受け取れる金額は15,937円(20,000円ー4,063円)となります。
また「特別配当」や「記念配当」のように、業績や記念の年には上乗せされた配当が分配されるケースがあります。
配当利回りとは
配当利回りとは、株価に対する一株あたりの年間配当金の割合を指します。パーセンテージで表記され、数字が大きいほど利回りが高いことを意味します。
配当利回りの種類は以下の2つです。
実績配当利回り | 企業が支払った実績配当金をもとに算出 |
予想配当利回り | 企業が発表している今期の予想配当金をもとに算出 |
株式投資では未来の情報が重視されるため、予想配当利回りがよく活用されます。
配当利回りの計算方法
予想配当利回りは「一株当たりの予想年間配当金」を「現在の株価」で割って求められます。例えば長谷工コーポレーション<1808>の予想配当利回りを計算した例は、以下のとおりです。
一株当たりの予想年間配当金 | 80円 |
現在の株価 | 1,870.5円 |
予想配当利回り | 4.27%(80÷1,870.5) ※小数点以下第3位を切り捨て |
予想配当利回りは、ツールやアプリを使うと簡単に計算できます。例えば大和コネクト証券では、配当利回りをはじめとしたデータをリアルタイムで管理できる「配当予報」を提供しています。
1年間保有した場合の配当利回りが一覧で表示されており、タップするだけで株価の確認や銘柄の売買が可能です。配当利回りを計算する際は、利便性の高いアプリを活用しましょう。
配当利回りに着目した投資のメリット・デメリット
この章では、配当利回りに着目して投資する際のメリットとデメリットについて解説します。株を購入する前に、配当利回りに注目した投資の特徴をしっかりと理解しておきましょう。
配当利回りに着目した投資のメリット
配当利回りに注目した投資のメリットは、銀行の普通預金や定期預金の金利と比較して高い利回りが見込める点です。日本は超低金利時代といわれています。2023年10月における預金金利の平均指標は、以下のとおりです。
預金の種類 | 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等 |
普通預金 | 0.001%/年 |
定期預金(預入額1,000万円以上・1年) | 0.005%/年 |
計算例で使用した長谷工コーポレーション<1808>の予想配当利回り4.27%と比較すると、預金金利とは大きく差があります。
また、配当利回りに注目した投資は、短期的な売却益を狙う手法ではありません。仕事や家庭で忙しい方でも取り組みやすいでしょう。
配当利回りに着目した投資のデメリット
一方、配当利回りに注目した投資のデメリットは以下の2点です。
- 配当金が支払われなくなるケースがある
- 株価が大幅に下落した場合、トータルで考えると損失となる
配当金は、株の所有者が確実に受け取れるお金ではありません。企業の業績によっては「減配」や「無配」のように、配当の見送りや減額が実施されるケースがあります。
商船三井 <9104>は2023年4月の決算発表で、今期の年間配当は前期比380円減の180円に大幅減配する方針としました。2024年3月期の連結経常利益が前期比75.4%減に大きく落ち込む見通しとなった点が、要因として挙げられています。
また配当金を目的とした投資先が株価を下げた場合、トータルの収支がマイナスになる可能性があります。配当金を受け取れているにもかかわらず、保有資産の価値が目減りしているケースに注意が必要です。
配当利回りがアップする2つの要因
配当利回りがアップする要因には大きく分けて「株価下落」と「増配」の2つがあります。配当利回りに注目した投資を実施するにあたって、押さえておきたい2つのタイミングについて解説します。
株価が下落したとき
「現在の株価」は配当利回りの計算式における分母になります。分子になる「配当金」が変わらなければ、分母が小さくなるほど割り算の計算結果は大きくなるため、株価の下落は配当利回りがアップする要因になります。
ただし株価が下落している際には、なぜ価格が変動したのかを見極めることが大切です。例えば企業の財務状況や今後の事業展開が不安視され、株価が下がっている可能性があります。減配のリスクもあるため、配当利回りだけにとらわれない企業選びが求められます。
増配が行われたとき
企業が配当金を増やす施策を増配と呼びます。配当利回りの計算式において分子となる「一株当たりの予想年間配当金」が大きくなるため、増配は配当利回りアップの要因のひとつです。
配当利回りが高くなった銘柄は、投資家の注目を集める可能性があります。増配により保有している株に人気が集まると、株価上昇により値上がり益を得られるケースもあるでしょう。
配当利回りは株を購入するタイミングで変わる?
同じ銘柄でも、購入のタイミングによって配当利回りは変わります。この章では配当利回りに注目する際に、株を購入するタイミングの考え方について解説します。
株価が下がったタイミングがベスト
株価が下落したタイミングで購入すると、配当利回りは高くなります。株式相場の値動きに注目して、購入のタイミングを図ると良いでしょう。
株式相場には値動きが予想されるタイミングがいくつかあります。例えば配当や株主優待など株主としての権利を取得できる最終日の「権利付最終日」周辺は、株価の変動が予想されます。
配当の権利を得るための購入や、株主優待の権利が確定した株の売却など、さまざまな考えをもった投資家が市場にいるためです。年間を通じて値動きが予想されるタイミングを把握し、株価の動きをチェックすると良いでしょう。
数回に分けて購入する
株を高値で購入するほど、配当利回りは下がります。しかし株価の動きは読みにくく、正確な値動きを予想するのはプロのファンドマネージャーでも困難です。高値づかみを避けるため、購入のタイミングは数回に分けるのが望ましいといえます。
投資の基本は「長期・積立・分散」です。積立設定や定期買付を活用して、長期的な視点で資産形成を図りましょう。
証券会社の選び方
ネット証券を選ぶ際は、以下の3つのポイントに注目することが大切です。
- 信頼性
- 手数料・取引コスト
- 取扱商品
それぞれ順番に解説します。
信頼性
企業の信頼性は証券会社を選ぶポイントのひとつになります。ネット証券の信頼性を評価する際に参考になるのは「口座開設数」や「自己資本規制比率」です。データは各証券会社のホームページで公開されているため、事前にチェックしておきましょう。
手数料・取引コスト
手数料や取引コストは、証券会社によって異なります。取引を繰り返すごとに支払う手数料の差は大きくなるため、証券会社ごとにコストを確認しておきましょう。
取扱商品
商品の取り扱い数は証券会社ごとに特徴があります。将来幅広い銘柄への投資を検討している方は、取り扱い銘柄の多い証券会社を選ぶと良いでしょう。
なかには1株から購入できる「単元未満株」を取り扱う証券会社もあります。資産形成を少額からスタートさせたい方は、単元未満株の取り扱いをチェックしてみましょう。
おわりに
予想配当利回りは「一株当たりの予想年間配当金」を「現在の株価」で割って求められます。配当利回りを計算する際は、ツールやアプリが役立ちます。株価が下落した銘柄や増配株を狙うと、配当利回りのアップが期待できるでしょう。