外貨建て保険とは、支払った保険料が外貨で運用される貯蓄型の保険です。米ドルのような外貨建ての保険では円建て保険にはない、高いリターンを期待できます。反面、為替変動による元本割れのリスクがあるため、「外貨建て保険はデメリットばかりなのでやめたほうが良い」という方もいるようです。
この記事では、外貨建て保険の特徴やメリット、デメリットなどを解説します。円以外の資産への分散投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2023年12月21日時点の情報です)
- 外貨建て保険とは外貨で運用される保険で、円建て保険より高いリターンを期待できる
- 外貨建て保険には為替変動による元本割れリスクがある
- 外貨建て保険は円安で円建ての資産の価値が目減りするリスクに対応できる
外貨建て保険(ドル建て保険)とはどういうものか
外貨建て保険とは契約者が支払う保険料を、米ドルや豪ドルのような外貨で運用する保険です。最初に、外貨建て保険の基礎知識を確認しておきましょう。
外貨建て保険とは?
外貨建て保険は、保険料を日本円以外の外貨で運用する保険です。主に終身保険や養老保険のような長期の貯蓄型の保険に、外貨建ての商品があります。
外貨建て保険の特徴は、為替変動の影響を受ける円建てより予定利率が高いことなどです。
一般的に円建てより高い予定利率が設定されており、外貨ベースでは円建て保険より高利回りを期待できるでしょう。しかし、為替変動によっては、損失を被る可能性がある点に注意が必要です。
保険金や解約返戻金の受け取りは、ほとんどの保険会社で円でも外貨でも可能です。
本当にデメリットばかりなのか
一般社団法人生命保険協会によると、銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情件数は2018年から2019年に大きく増えました。これは、為替変動による元本割れリスクなどの説明不足が原因の1つと考えられます。このような背景から、「外貨建て保険はやめたほうが良い」「やってはいけない」といったSNSでの投稿も見られるようになりました。
しかし、外貨建て保険には円建て保険にはないメリットもあり、リスクを十分に理解すれば不利益ばかりとはいえません。今後、外貨建て保険を検討するなら仕組みやメリット、リスクを知り、納得したうえで加入しましょう。
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外貨建て保険のデメリット
米ドル建てなどの外貨建て保険に加入する場合、メリットだけでなくデメリットを理解しておくことも大切です。外貨建て保険には、以下のようなデメリットがあります。
【外貨建て保険のデメリット】
- 為替変動のリスクがある
- 費用や手数料がかかる
為替変動のリスクがある
外貨建て保険には、円建て保険にはない為替変動リスクがあることはたしかです。外貨建て保険における為替変動リスクは保険料を日本円で支払う際や、日本円で保険金や解約返戻金を受け取る際に起こります。
外貨建て保険の保険料を日本円で払い込む場合、為替相場によって保険料の金額が変わります。例えば、毎月の保険料が100米ドルの場合、1米ドルが110円であれば日本円では11,000円です。
しかし、1米ドルが120円になると、日本円では12,000円の保険料を支払わなければなりません。為替が円高になると円で支払う保険料は安くなり、円安になると円で支払う保険料は高くなる仕組みです。
また、保険金や解約返戻金の円での受取金額も為替の影響を受けます。例えば、1万米ドルの保険金を円で受け取る場合、1米ドルが110円であれば日本円では110万円の受取になりますが、1米ドルが100円になると100万円の受取額になります。
つまり、円高になると円での受取額は少なくなり、円安になると円での受取額は増えるわけです。
為替の変動によっては、円で受け取る保険金や解約返戻金が支払った保険料を下回る可能性がある点を十分に理解しておきましょう。
費用や手数料がかかる
外貨建て保険では支払った保険料から、さまざまな諸費用が差し引かれます。外貨建て保険で差し引かれる一般的な諸費用は、以下の通りです。
保険関係費 | 保障にかかる費用や保険契約の維持管理に必要な費用 |
年金管理費 | 保険金を分割で受け取る期間中にかかる費用 |
解約控除 | 短期間(通常は10年以内)で保険を解約した場合に差し引かれる費用 |
為替手数料 | 外貨と円の両替にかかる手数料 |
外貨建て保険は円建て保険より多くの費用がかかるため、特に短期で解約した場合には損をするリスクが高くなります。
外貨建て保険の魅力
外貨建て保険の円建て保険にはないメリットや魅力も確認しておきましょう。
【外貨建て保険の魅力】
- 日本円よりも金利が高い傾向にある
- 保障がついているため万一に備えられる
- 資産のリスク分散になる
日本円よりも金利が高い傾向にある
米ドルや豪ドルのような外貨は日本円よりも高い利率で運用でき、外貨建て保険は円建ての保険よりも高い利回りが見込めます。また、為替変動によって為替差損を被るリスクがある反面、為替差益を得る可能性もあるでしょう。
低金利の続く日本では主に国債で運用される円建ての保険では、お金をほとんど増やせません。外貨建て生命保険の多くは貯蓄型であり、保障ばかりでなく高いリターンも期待できます。
保障がついているため万一に備えられる
外貨建て保険の多くは貯蓄型ではありますが、保険商品であるため、万一のときには保障も得られます。外貨建て保険の予定利率が高いため、同じ保障に対する保険料も安くなるでしょう。
1本の商品で万一に備えつつ、高めのリターンでの運用が期待できる点は、外貨建て保険の大きな魅力です。
資産のリスク分散になる
円安になると円の資産の価値は目減りします。すべての資産が円建ての場合、円安による資産価値の減少リスクにさらされかねません。
反対に、円安になると外貨建ての金融商品は資産価値が上昇します。資産の一部に外貨建て保険のような外貨の運用商品を取り入れるとリスク分散効果を期待できるでしょう。
外貨建て保険加入に向いている方とは?
外貨建て保険がおすすめの方の特徴は、以下のとおりです。
【外貨建て保険加入に向いている方の特徴】
- 外貨資産に興味がある方
- 投資に興味がある方
- 相続について考えている方
- 海外に縁のある方
外貨資産に興味がある方
円以外の資産での運用に興味関心のある方は、外貨建て保険が向いています。2022年から円安の傾向が続き、円だけで資産を保有するリスクを懸念する方も多いでしょう。
資産の一部に外貨建て保険のような商品を組み込んで通貨を分散すると、資産全体の価値の目減りを防ぐ効果を期待できます。
外貨建て保険には一時払いも月払いもあり、まとまったお金のない方でも取り組みやすい資産運用方法です。
投資に興味がある方
外貨建て保険は、投資に興味がある方に適した保険商品です。外貨建て保険の多くは貯蓄型であり、日本円建ての保険より高いリターンを見込めます。
投資に興味はあっても株式や投資信託では、将来の受取金額がわからなくて不安を感じるかもしれません。しかし、外貨建て保険は、多くの商品で外貨ベースでの将来の受取金額が確定しています。為替リスクはあるものの、比較的堅実に高めのリターンを期待できるため、投資初心者にも取り組みやすいといえるでしょう。
相続について考えている方
相続対策が必要な方には、外貨建て保険が役立ちます。外貨建て保険は予定利率が円建て保険より高いため、同程度の保険金額に対する保険料が低めになるからです。そのため、同じ保険料でより高額の保障を得られます。
生命保険の死亡保険金は、以下のような相続対策に活用できます。
遺産分割対策
生命保険の死亡保険金は、遺産分割に有効活用できます。死亡保険金は受取人固有の財産となるため、契約者が死亡保険金の受取人を指定しておくことで相続争いを回避できるでしょう。
納税資金対策
死亡保険金は、相続税の納税資金に充てられます。相続税は金銭での一括納付が原則ですが、相続財産が不動産に偏っているようなケースでは納税が難しい相続人もいるかもしれません。そのような場合、被相続人が納税資金分の保険金を受け取れる生命保険に加入しておくと、相続税の納税がスムーズにできます。
相続税節税対策
生命保険金には相続税の非課税枠があり、相続財産を減らして相続税の負担を軽減できます。相続人が死亡保険金を受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」が非課税となる仕組みです。
例えば、妻と3人の子どものいる夫が死亡し、妻が3,000万円の死亡保険金を受け取った場合、1,500万円(500万円×3人)は非課税となります。
海外に縁のある方
今後、海外留学や移住などの予定がある方には外貨建て保険が向いています。外貨建て保険の保険金や解約返戻金は外貨で受け取れるため、現地で受け取れば両替の必要がありません。為替変動の影響を受けることなく、外貨建て保険の高いリターンの恩恵を受けられます。
外貨建て保険を選ぶ際に注意したいこと
外貨建て保険では円建て保険にはないメリットもありますが、リスクもあります。実際に外貨建て保険に加入する際の、選び方の注意点を解説します。
【外貨建て保険を選ぶ際に注意したいこと】
- 商品の仕組みやリスクを理解する
- 加入目的について考える
- 他社の商品と比較する
商品の仕組みやリスクを理解する
外貨建て保険の加入にあたっては、商品の仕組みやリスクの理解が重要です。外貨建て保険には為替変動リスクがあり、為替レートの変動によって支払う保険料や受け取る金額が変わります。
また、外貨建て保険は、円建て保険よりもコストが高い傾向にあり、商品ごとのコストの確認が必要です。
加入目的について考える
外貨建て保険を選ぶ場合、加入目的について考えることも大切です。外貨建て保険は円建ての保険より利率が高く、高いリターンを期待できます。教育資金や老後資金準備のために加入する場合、いつまでにいくら必要なのかの目標を確認しましょう。
そのうえで、加入を検討する外貨建て保険が、目標を達成できる商品なのか確認することが大切です。
他社の商品と比較する
外貨建て保険の商品を選ぶときには、複数社の商品の比較も忘れずに行いましょう。外貨建て保険は、保険会社ごとに商品内容や条件が異なります。保険料に見合った受取金額なのか、最低積立利率は何%か、為替手数料のような費用はいくらかなど複数の角度から商品を比較してください。
保険商品としてではなく投資目的で加入を検討している方には、商品同士の比較だけでなく投資信託のような別の運用商品との比較もしてみることをおすすめします。
おわりに
外貨建て保険は円建て保険より高い貯蓄性があり、万一の保障機能もある運用商品です。円以外の資産に分散投資をしたい方の選択肢のひとつといえるでしょう。ただし、外貨建て保険には為替変動リスクや、保険特有の費用負担に注意が必要です。
分散投資を考える場合、新NISAでの投資信託の積立なども併せて検討してみてはいかがでしょうか。