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2024年1月から開始の「新NISA」 はなにが変わった?旧NISA利用者こそ知っておきたい【8つのポイント】

2024年1月から開始の「新NISA」 はなにが変わった?旧NISA利用者こそ知っておきたい、8つのポイント
セゾンのくらし大研究 編集部

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投資による利益が非課税となる「NISA(少額投資非課税制度)」。2024年1月から、旧NISAから進化した新NISAがスタートしました。新制度では、非課税投資枠の拡大や非課税保有期間の無期限化などが図られ、より長期的な非課税投資ができるようになりました。本記事では、旧NISAとの違いや注意すべきポイントを、税理士兼CFPである西原会計事務所代表の西原憲一氏が解説します。

「新NISA」と「旧NISA」の違い

「新NISA」と「現行NISA」の違い

新しいNISAの注目ポイントは次のとおりです。

  • 年間投資枠が拡大(つみたて投資枠と成長投資枠の合計最大年間360万円まで)
  • 非課税保有限度額は全体で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円・投資枠の再利用可)にアップ
  • 制度が一本化(つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能)
  • 非課税保有期間が無期限に
  • 口座開設期間が恒久化

以下比較表に新NISAと旧NISAの違いをまとめます。

新NISAと現行NISAの違い
[図表]「新NISA」と「旧NISA」の違い 比較表 出所:筆者作成

NISAのメリット

NISAのメリット

ここでは、新NISAと旧NISAで共通するメリット、旧NISAと比べて新NISAのほうがメリットが大きい点についてまとめます。

新NISA・旧NISA共通

●運用益が非課税になる

新・旧問わずNISAのなによりもの大きなメリットは、株式や投資信託など金融商品の運用で得た利益が非課税となる点です。売却益(譲渡益)だけでなく、配当金や分配金も対象です。NISAを利用することにより、利益に対して20.315%相当の税金がかからないので、長期運用の視点からは利益確定後の資金を次の運用に回せば、その分多くの複利効果が期待できます。

●確定申告をしなくてよい

「NISA口座」内で運用した金融商品の利益は、非課税所得になるので確定申告をする必要がありません。ただし、「源泉徴収なしの特定口座」や「一般口座」といった課税口座内の利益については、原則的に確定申告をしなければならないことに留意してください。

新NISAのメリット(旧NISAとの比較において)

●制度の内容がパワーアップされた

年間投資枠が最大360万円、非課税保有限度額が最大1,800万円(うち成長投資枠は最大1,200万円)に拡充されたため、旧NISAに比べて多くの資金を非課税で運用できるようになりました。

そして非課税保有期間が無期限になります。旧NISAの場合、非課税期間が満了するまでに「課税口座に払い出す」、「投資商品を売却する」、または「ロールオーバーする(一般NISAのみ)」のいずれかを検討して選択しなければならない仕組みでしたが、新NISAではこれらの処理を検討する必要がなくなりました。

また、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が認められているため、一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選択する必要があった旧制度よりも、投資戦略の幅が広がったといえます。たとえば「つみたて投資枠で投資信託商品へ積み立てながら、成長投資枠で現物の株式へ投資する」というように、旧NISAではできない組み合わせの運用をすることもできるようになります。

NISAのデメリット

NISAのデメリット

続いて、新NISAと旧NISAで共通するデメリット、新NISAと比べて旧NISAのほうがデメリットが大きい点についてまとめます。

新NISA・旧NISA共通

●損益通算ができない

複数の課税口座において取引をしていて、その年に利益が出た口座と損失が出た口座がある場合、利益と損失を合算して相殺する「損益通算」ができます。

たとえば、A口座で100万円の利益、B口座で80万円の損失が出たとき、これらを相殺すれば純利益(損益通算後の譲渡所得)は20万円となるので、結果的にその分税負担を減らすことができます。しかしながらNISA口座内で取引した投資損益は、他の課税口座(特定口座や一般口座)と相殺(つまり損益通算)をすることができません

●損失の繰越控除ができない

課税口座内で一定の金融商品を売却して損失が出た場合、または損益通算をしても相殺しきれなかった金額がある場合に、その損失を翌年以降最長3年間繰り越して、それぞれの年の利益と相殺することができます。これを「損失の繰越控除」といい、翌年以降の投資利益に対する税負担を軽くすることができる制度です。

ちなみに、繰越控除は損失が生じた年より確定申告をすることが要件になっています。一方、NISA口座内で取引した利益は非課税なので、損失に対しても課税関係を生じさせないという前提から、繰越控除の制度を適用することができません

旧NISAのデメリット(新NISAとの比較において)

●NISA枠の年度を超えた繰り越しはできない

旧NISAは、年間投資枠(つみたてNISA 40万円、一般NISA 120万円)に使い残しがあったとしても、翌年に繰り越せないというルールです。

たとえば2023年に一般NISAにおいて新規の投資額が100万円であった場合、残りの20万円は翌年以降に繰り越すことができずに消滅します。なお、旧NISAの新規投資は2023年末まで。どのみち使い残しは繰り越せません。

一方、新NISAも年間投資枠の使い残しを翌年に繰り越せませんが、非課税保有期間が無期限であることから、非課税保有限度額(生涯投資枠)に達するまでは、その年の使い残しを将来において取り戻すことができます。

●つみたてNISAと一般NISAの併用はできない

旧NISAの口座は1人1口座のみ。つみたてNISAと一般NISAを併用することはできません。 それぞれの仕組みをよく理解し、口座を開設する際に自分の投資方針に合った制度を選択しなければなりません。

一方、新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠が併用でき、そして成長投資枠においても投資信託の積立投資をすることができるので、非課税投資のバリエーションが増えるといえます。

「新NISA」を活用するうえで気をつけたいポイント、8つ

「新NISA」を活用するうえで気をつけたいポイント、8つ

2024年1月以降、新NISAの活用を検討中の方へ知っておいていただきたいポイントは、以下の8つです。特に旧NISA利用者は注意ください。

①旧NISAから新NISAへ移管できない

新NISAと旧NISAは別の制度として取り扱われます。したがって、旧NISAで運用している資産をそのまま新NISA口座にロールオーバー(移管)できません。旧NISA口座で運用している資産を新NISA口座に移したい場合、いったんその商品を売却してから、改めて新NISA口座において購入しなおさなければなりません。

②新NISAでは買えない商品がある

つみたて投資枠で投資できる商品は、旧NISAにおいてつみたてNISAで選べる商品と同じです。金融機関によって多少異なりますが、現状では250本くらいの投資信託がラインアップされています。一方、成長投資枠では個別株やETFも選べますが、信託期間20年未満、毎月分配型、ハイレバレッジ型の投資信託等は選べません。

③旧NISAと新NISAの口座は別枠で利用可

旧NISAは2023年末までは口座の開設および投資をすることができました。 上述のとおり、新NISAは旧NISAとは別枠で取り扱うので、2023年までに旧NISAを利用していた方は、新NISAの非課税投資枠に加えて、旧NISAの投資枠も利用できることになります。

ただし旧NISAは、投資商品の価額が大きく下落したまま回復できずに非課税保有期間が終了となってしまうケースも考えられるので、リスクを想定しないまま駆け込み購入するのは避けるべきでしょう。

④新NISA口座開設は、1人につき1つの金融機関のみ(旧NISAと同じ)

新NISA口座の開設は、1人につき1金融機関に限られます。これは旧NISAと同様です。したがって、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関で利用することはできません

⑤新NISA口座の金融機関は変更できる

年単位で(1年ごとに)金融機関の変更が可能です。ただし変更が認められている期間は、NISA口座の変更を希望する前年の10月1日から、変更を希望する年の9月30日までです。なお、変更前のNISA口座で運用している金融商品は、そのまま保有しておくことができます。利用者それぞれの非課税保有限度額については、国税庁において一括管理されることになります。

⑥投資の許容度・リスク管理が甘くなりがち

新NISAは旧NISAよりも非課税投資枠が大きくなっているため、投資に回すお金を増やそうと考える人も多いでしょう。また、商品の選定についても“流行りもの”や“値がさ株”などに目を向けやすくなるかもしれません。

長い期間では、急に現金が必要になったりすることもありますので、生活に必要な資金(生活防衛資金など)とのバランスを無視して、非課税限度額いっぱいの無理な投資を優先するような安易な姿勢はできるかぎり慎むべきでしょう。

⑦デイトレードには向いていない

新NISAの成長投資枠では短期投資もできなくはないですが、その年に売却した分の投資枠が復活するのは翌年からなので、短期売買を日々繰り返すといったデイトレードには不向きです。

新NISAは非課税保有期間が無期限となるわけですから、長期運用で価格上昇が期待できる商品との相性がよいといえます。たとえば、毎月10万円(年間120万円)を年利5%の1年複利でコツコツとつみたて投資をしたと仮定すれば、20年目には約1,675万円の利益を得ることになります。

これはあくまで理論上の試算であって、必ずしも長期にわたって利回りが安定するとは限りません。しかし、過去のデータ分析により、資産運用の効果は「金額×時間」と相関するということが証明されています。

⑧分配金や配当金の受け取り方次第では課税される

旧NISA・新NISA共通の注意事項ですが、NISA口座で買付けた上場株式の配当金等を非課税とするためには、証券会社で配当金等を受け取る「株式数比例配分方式」に変更する必要があります。ちなみに株式投資信託の分配金については上記の手続は不要です。

なお、「配当金領収証方式(ゆうちょ銀行または郵便局窓口に「配当金領収証」を持ち込んで受け取る方式)」や「登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式(指定の銀行口座に振り込んでもらう方式)」では非課税にならないので注意してください。

それぞれのライフプランに合わせた投資額で新NISAを始めてみよう

それぞれのライフプランに合わせた投資額で新NISAを始めてみよう

新NISAは投資初心者でも活用できるように整備された制度です。もちろん、非課税投資の幅が広がったことにより投資経験者にとっても使い勝手が良くなります。初心者も経験者もこの新しい制度を上手に活用するためには、ご自身のライフプランを踏まえて目標や方針を定め、情報収集をし、そしてご自身のペースに合わせて投資することです。

たとえばお勤めの若年層の方々のように、非課税投資枠に比べてまだ運用資産が少ない場合は、毎月1万~5万円など、可能な金額ペースでつみたて投資を行うことが、その時点での最適な投資額であると考えてください。もちろん、つみたて投資額は柔軟に変更できますし、もし急なお金が必要になったときには部分解約もできますので、新NISAはどのような方にとっても利用しやすい制度です。

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