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貯めたお金を「使えない人」続出…豊かな老後のための“賢いお金の使い方”【FPが解説】

貯めたお金を「使えない人」続出…豊かな老後のための“賢いお金の使い方”【FPが解説】
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所 代表)

執筆者
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所 代表)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士。国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。

老後資金のために貯金をしているという人は多いでしょう。しかし同時に、老後への不安のあまり「せっかく貯めたお金を気持ちよく使えない」という悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。本記事では罪悪感をもたない、老後のための賢いお金の使い方について、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が解説します。

日本人の8割強「老後が不安…」

日本人の8割強「老後が不安…」

令和4年度に生命保険文化センターが行った調査によると、老後生活に「不安感あり」と回答した人の割合は82.2%と、多くの人が老後生活に対して不安を抱えている結果となっています。

このうち、「非常に不安を感じる」というは17.5%となっています。さらに老後生活に対する不安の具体的な内容をみると、「公的年金だけでは不十分」が79.4%と最も高く、この数字は公的年金を担う勤労者人口が今後も減り続けていく日本ではさらに増加していくと思われます。

[図表1]老後生活に対する不安の有無

[図表1]老後生活に対する不安の有無
出所:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度※1

[図表2]老後生活に対する不安の内容

[図表2]老後生活に対する不安の内容
出所:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度

さて、こういった不安感から「お金はあるけど使いにくい」と思ってしまう人も多いのではないでしょうか? 筆者は、将来が見えにくく計画が立てづらいことが、財布の紐を余計に硬くしてしまう要因のひとつだと考えます。

現役時代に築きあげた資産をどのように使っていくか――ここを数字で見えるようにすると、「ここまでは使っていい」というラインがわかり、老後の計画が立てやすくなります。

計画を立てないで老後を迎えてしまうと、実際は十分に使えるお金のある人でも、警戒するあまり、「趣味や外出にお金が使えない、楽しみのない老後だった」ということにもなりかねません。お金を長生きさせてゆとりのある老後生活を送るために、老後資金計画を立ててみましょう。

ゆとりのある老後生活を送るためのシミュレーション

ゆとりのある老後生活を送るためのシミュレーション

せっかく自分自身で作ってきた資産ですから、子どもたちばかりにお金を残しても夢がありません。お金を長生きさせて、なおかつ、ゆとりのある使い方をするために、筆者は「老後資金を運用しながら取り崩して使う」ことを提案しています。

たとえば、2,000万円を年3%で運用しながら30年間毎年引き出して使っていくことを考えてみましょう。何も運用せずにただ引き出すだけだと、2,000万円÷30年=約67万円となり、毎月約56,000円を使っていけることになります。

ですが、年3%で運用しながら引き出すと、毎年約102万円を使うことが可能となり、毎月約85,000円も引き出せるようになります。毎月3万円近く差が出るのは大きいですね。3万円あれば、非常に嬉しいお小遣いになると思います。

※下記の受け取り早見表を使って計算します。3%と30年の交わる「0.051」に元金の2,000万円を乗じて算出します。

2,000万円×0.051=102万円となります。

[図表3]受け取り早見表

[図表3]受け取り早見表 出所:筆者作成

さて、とてもいい話ですが、実際にはどのようにすればいいのでしょうか。特に高齢者の方にとっては悩ましいところですね。ですが、これを実現する方法があるのです。証券会社では退職金などまとまった資金を一括で預け、運用しながら取り崩せる投資信託の定期換金(売却)サービスというものがあります。

運用利益を年金のように受け取れるファンドを利用する

運用利益を年金のように受け取れるファンドを利用する

証券会社にもよりますが、この定期換金(売却)サービスには、「定口解約」と「定額解約」の2種類の取り崩し(受け取り)方法があります。違いをよく理解して、ご自身の老後資金設計に役立ててください。詳しく見ていきましょう。

定口解約

受け取りたい年数(例:30年など)を指定し、保有口数を解約年数で等分し、さらに1年間の解約回数(毎月受け取りの場合は12回)で等分した口数を都度解約していきます。確実に決められた期間で受け取れますが、受取額は解約時の基準価額により変動します。そのため、毎回決まった金額が受け取れることにはならないことにご注意ください。

下記の例は、当初400万円を一括で預け入れ、30年間で毎月受け取るケースです。

[図表4]30年で毎月解約する場合

[図表4]30年で毎月解約する場合 出所:セゾン投信HPより引用※2

定額解約

1年で受け取りたい金額(例:100万円など)を指定し、1年間の解約回数(毎月受け取りの場合は12回)で等分した金額相当分の保有口数を都度解約します。受取額は一定ですが、解約時の基準価額により解約する口数が変動するため、受け取れる期間は変動します。

受取金額が一定のため、生活費の補填など継続的に取り崩す場合に適しています。しかし、基準価額が下落した場合には売却口数が大きくなってしまい、想定していた期間よりも前に資金が枯渇してしまう恐れもあります。基準価額の暴落や下落局面が続いてしまった場合には、注意が必要です。

下記の例は、当初400万円を一括で預け入れ、毎月1万円ずつ受け取るケースです。

[図表5]毎月1万円解約する場合

[図表5]毎月1万円解約する場合 出所:セゾン投信HPより引用

なお、実際にご利用の場合は手数料や利益分には税金がかかりますので、窓口等で説明を受けて納得のうえ、意思決定しましょう。また、受け取り期間の途中で亡くなった場合は、残りの資産残額は相続財産となります。

高齢者にはインフレが最大の敵

高齢者にはインフレが最大の敵

公的年金の額は毎年「マクロ経済スライド」という方式で調整されます。しかし、人口減少で高齢者比率が高くなっている日本では、物価上昇分のすべてをカバーできるほど年金を増額できるものではありません。

多少年金額がアップしたとしても、物価上昇分には追い付かず、インフレ時の年金額は実質的に減少したも同然となります。さらに定期預金の金利も長引く超低金利で、ほとんど利息が付かず、インフレには弱く、長い老後期間では資産を目減りさせていくことになってしまいます。

人口が減り続け、高齢者問題が深刻度を増す日本では、今後も円安が進んだり人手が足りなくなったりすることで、物やサービスの価格は上がっていくと思われます。

「投資は怖い、苦手だ」と思われる人もまだまだ多いですが、ゆとりのある老後生活を手に入れるためにも老後生活の資金設計に一度しっかり向き合っていただきたいと思います。

<参考>
※1 生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度
※2 セゾン投信HPより引用

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